恋愛要素ありの死にゲーに転生して鉈を振り回す転生者   作:エヴォルヴ

103 / 108
我ながら酷い拠点だあ…モデル?赤獅子アロレとストームヴィル。


誰もが思う、一度はクソ拠点を自分で運用したいと

 討魔学園で年に何度か行われている陣取り合戦は、交流戦と同じように全国放送が行われる。新人戦とかクラスマッチみたいなところもあるのかもしれないが、それにしては少々血腥い。そもそも新人戦と呼ぶならば全学年混同で行うんじゃないという話だ。

 

 全国放送している理由は主に討魔学園に入学した生徒はどんなものか、みたいなものを見せる意味合いが強いらしい。主に五家の人間や、貴族の家の人間など────とにかく怪魔と戦っている人間の次世代がちゃんと集まってきているというのを世間に見せるのが目的だそうだ。文化祭の交流戦もそういう意味合いが強いらしい。

 

 まぁ、そんな話はともかくとして。京都校、東京校の陣取り合戦が間もなく始まる中で、俺と遥斗と麗良は両陣営からバレないように認識阻害の結界と霧を用いた隠蔽工作で塹壕などの陣地を作成していた。人魔戴冠に到達した影響もあってか、怪魔化を一部分のみにすることができるようになった。現在は醜怪餓鬼の霧を使っているが、俺の背中から生えているスチームパンクな管から霧が発生している。それ以外はただの人間状態である。完全変化、半変化、部分変化など、使い分けが大事になってきたな、このスキル。

 

「戦いは数だよ兄貴って言葉があるが……俺個人としては戦いはある程度の質と数だよ兄貴」

 

「尺の問題で省いてたんじゃね?」

 

「ジオンに兵無し……小規模国家の悲哀を感じますね」

 

 脳筋の麗良が一気に掘り進め、上質ビルドな俺が細部を調整、魔法使いの遥斗が拠点の重要箇所を補強。うーん、完璧な拠点製作の布陣だぁ……

 

「メグパイセン、外の準備オッケーッス」

 

 そう言って塹壕に入ってきたのは、元々垢抜けた感じがあってパリピイケメンボーイだったが、二年生になって筋肉も付いてきたせいか色気が出始めているパリピイケメンボーイズの一人、金髪のテツだ。ツッチーとヒロは……設営中か。あいつらも色気出てきたよなあ……絶対モテるぜパリピイケメンボーイズ。実際、バレンタインチョコ貰ってたしな、三人共。ホワイトデーのお返しもちゃんと考えて選んでたし……本当に色々イケメンなんだよな、パリピイケメンボーイズ。

 

「相変わらずいい仕事するぜ。プロトタイプの解析も助かったわ」

 

「いやあ、あれだけで寿命が10年は延びるデータだったんで、お礼言いたいのはこっちっすわ」

 

 俺が京都校に向かった後、春休みが終わった頃にプロトタイプの戦闘データ解析が終わったと連絡があった。京谷先生に、黒田先生、そしてパリピイケメンボーイズが寝る間も惜しんで解析してくれたお蔭で、プロトタイプを使った際の戦闘力がどう推移していったのかとか、大嶽丸の戦い方とか、色んなデータが確保できたわけである。公開? できるわけねえだろぶっ飛ばすぞ。大国主様含めた日本の官僚(鵐頼首相の腹心達)の判断で非公開になったわ。

 

 そもそも大嶽丸を討伐したのは明日夢さんを含めた五家の人間や突入チームってことになってるんだ。よく分からんやつがよく分からん装備を使った結果、単騎で倒せましたなんてことになってみろ。天眼夜叉と両面宿儺の封印を解いて討伐しちゃおうとか、怪魔なんて恐れる必要なし的な考えが広まって日本が滅びるわ。蜈蚣姫とか、八束爬戯とかが本気になって現世を攻めてきたら対抗できる人間なんて限られてるぞ。

 

「んで、そっちがメグパイセンの新しい仲間ってことでいいんすか?」

 

「おうよ。遥斗、麗良、このパリピイケメンボーイがテツ。俺の装備のほとんどの作成者」

 

「へー! あ、陽之輪遥斗です。魔法職やってますけど、ぶん殴るために前線立ったりします」

 

「なるほど、鍛冶師でしたか。陽之輪麗良です。見ての通り前線でぶん殴る脳筋スタイルです」

 

「鑪(たたら)徹也(てつや)です。見た感じタメっぽいし、敬語いらねえっすよ。俺のことは気軽にテツって呼んじゃってください! よろしくオナシャス!」

 

 チャラい感じの言葉遣いなのに全然不快感がないんだよなぁ、テツも含めたパリピイケメンボーイズ。世のチャラ男と呼ばれている人種はうちのパリピイケメンボーイズを見習った方がいいんじゃなかろうか。

 

「あ、ちょい、武器見てもいいっすか遥斗君、麗良さん」

 

「「いいですとも」」

 

「あざーす!」

 

 軽い口調ながらも、遥斗と麗良から渡された武器を見る目は真剣そのもの。俺が初めてこいつらの工房に入った際に武器を見せた時もこんな感じだった気がする。

 

「遥斗君も麗良さんも渋いっすね。これ、どっちも既製品の重厚加工っしょ?」

 

「おー、それ気付くんだ」

 

「最近は派手さとかスキルを求める戦士が多いせいで、武器の派生加工とかしない人が多いんすけどね」

 

 皆ステータスはちゃんと育てる癖に、武器はステータスに合わせて加工とかしないからなぁ。昨今の戦士は、怪魔の素材を使って一から自分のステータスに合った武器を作るっていうオーダーメイドが多い。既製品の量産品を色んな加工を施して戦う玄人なスタイルも悪くないんだが……使い分けるのが面倒だって人が多いのだろう。そもそも怪魔の素材を使った武器自体が強力なものばかりなので、既製品を使い回す必要がないってこともある。

 

 俺? 普通に鉄花荒轟とか妖蜂連華みたいなオーダーメイドも使っているが、案外量産品も使ってる。もちろんパリピイケメンボーイズ謹製なので量産品と言っていいのかちょっと疑問な品だけど。投擲物の他に銃とか、あと様々な加工を施した鉈とか。二代目重厚な鉈、二代目炎刃の鉈、鋭利な鉈、鈍器鉈、魔力の鉈など諸々。対人戦において鉄花荒轟が使えないから、鉈を大量に用意したのだ。もちろん刹那無心流の技を使うための武器も各種取り揃えております。神棚に飾ってある喰い裂き丸も使いたいんだが……あれはもう死んでしまった御神体として扱ってるからなぁ……

 

「にしても大剣は分かるけど、錫杖も重厚加工っていうのは、ドユコト?」

 

「「? 殴れば敵は死ぬでしょ」」

 

「「「それメグパイセンと同じ思考なやつ~!」」」

 

 作業が終わったのか塹壕に入ってきたツッチーとヒロもテツと一緒にウェイウェイ騒ぎ始めた。この三人がいるだけで空気が軽く、明るくなるんだよなあ……人と仲良くなるのも上手いパリピイケメンボーイズ、間違いなく俺が討魔学園に入ってから作って良かったと思える縁の一つである。

 

「ところで外の準備どんなもんよ?」

 

「もうバッチリすよメグパイセン!」

 

「我ながら突破しようとする人達に同情しますわ」

 

「サスガダァ……」

 

 遥斗と麗良から聞かされた東京校京都校両軍粉砕計画は、もうひたすらに東京校と京都校にゲリラ戦を仕掛けてジワジワと潰していく計画だった。それも間違いなく面白そうだったのだが、俺個人としてはもっとシンプルかつ楽しい方がいいと思ったので、東京校のパリピイケメンボーイズを招集して計画をブラッシュアップしたわけだ。

 

 もちろん黒田先生と京谷先生にも連絡して許可も取っている。あと京都校の先生。何だかんだで陣取り合戦はスキルの打ち合いになってマンネリ化していたらしいし、いい刺激かつふるい落としにも使えるというとんでもないことを仰っていた。神様? 今俺の隣でゲラゲラ笑いながら酒飲んでるが。しかもイドゥン様に酌してもらいながら飲んでる。贅沢なもんだな。

 

「にしても、これOK出した学園側も凄いっすね」

 

「この程度で折れるやつはいらねぇだとさ。これ学園長のお言葉な」

 

「うはぁ、さっすが学園長……」

 

 東京校の学園長は京都校の学園長とはまた別ベクトルの傑物である。京都校が政治的な怪物だとすれば、東京校の学園長は戦士としての怪物。加護を与えているのは経津主神(ふつぬしのかみ)。鵐頼首相と同じく、日本の最終防衛ラインと言って差し支えない存在である。

 

「まぁ、実際、俺達が作ったこの拠点で心折れてたらダンジョン攻略なんてできねぇよ」

 

「「「それはそう」」」

 

「「これがチュートリアルまである」」

 

 東京校も京都校も俺達の屍を越えてゆけならぬ、俺達の拠点を越えてゆけ。これを攻略できたのなら、君達はきっと高難易度ダンジョンや、DLCダンジョンを前にしてもある程度の戦いはできるだろう。退院してリハビリ直後に陣取り合戦というハードスケジュールをこなしている人もいるかもしれないが、頑張ってほしい。

 

「ところで巡君。始まる前にお茶でもいかがですか?」

 

「お、万莱君も準備できたんか。よし、秘蔵の羊羹も出してやろうな」

 

「いいですね。抹茶ラテに合わせましょう」

 

 利休先生もそうだったが、茶の湯に対して結構ラフだよな千茶家。普通ならなんかこう……色々言いたいことがありそうなもんだけど。

 

「お茶は誰もが楽しめることが一番ですよ、巡君」

 

「顔に出てた?」

 

「口に出てましたよ」

 

 あらやだ、本音が漏れちゃったわ。

 

 

 

 

 

 

 * * *

 

 

 

 

 

 

 陣取り合戦が始まる数分前。明日夢は何だかんだでこうして東京校の人達と合同演習をする機会がなかったような気がすると感じた。百鬼夜行、ダンジョン攻略、装備更新、素材マラソン、英雄達との戦いなど────普通なら絶対に体験することがないような経験をしてきた一年間で、関わってきた人達を考えてみると、やっぱり普通じゃない。演習がある日もダンジョンにいたり、神様の命令という題目で伊勢参りをしたりした。家族や、元々の学校で仲が良かった友達以外で素を見せても平気なくらい仲良くなった友達や、頼れる先輩もできた。

 

 ちょっと変わってはいるが、彼氏もできた。間違いなくリア充と呼ばれて差し支えないくらい、充実していると言っていいだろう。

 

 ……しかし、考えれば考えるほど、あまり仲の良い人達以外との交流が少ない。もちろんクラスメイトと世間話をしたりもするし、勉強を教え合ったりもする。だが、プライベートで買い物に行ったり、どこかに遊びに行ったりとかはしたことがない。まぁ、別にそれは問題はないと思っているのもまた事実。両親曰く、仲のいい友人が数名いれば人生は普通に楽しいのだという。

 

「明日夢、体調はどうだ?」

 

「あ、琥珀ちゃん」

 

 琥珀色の瞳、女性にしてはまぁまぁ大きな背丈、スキルなどの兼ね合いで鎧が邪魔になったのか布系の装備と虎とアザミの家紋の羽織という、斧槍を背負っていなければどこかの令嬢と勘違いしてしまう────本当に令嬢ではあるが────少女が明日夢に声をかけてきた。虎成琥珀。日本の由緒ある戦士の家系、その中でも五家と呼ばれる家の少女であり、明日夢とは友人でもあり、ある意味家族でもある少女だ。

 

「体の方は大丈夫。玻璃ちゃんもそうだと思うよ」

 

「そうか。だが、あまり無理はするなよ?」

 

「うん、ありがとう」

 

 そこそこご立派な胸部装甲をお持ちである明日夢から見ても、ご立派な胸部装甲をお持ちである琥珀の心配に対してそう返した明日夢は、京都校の陣地がある方角を見据えて何とも言えない表情を浮かべる。

 

「巡君が相手かぁ……」

 

「それと、巡と波長の合うあの双子もな。特別扱いするわけではないが、あの双子も豊穣の女神の加護持ちだ」

 

「うん。写真で飯テロされた」

 

「飯テロ……? とにかく、あいつがいるから何が起きてもおかしくは────そういえば、あの三人組はどこにいる?」

 

 そういえば、と周囲を見回してみるが、あの騒がしいが不快感を感じさせない騒がしさの三人組がいない。いつもなら、邪な視線を向けてくる男子などから明日夢を保護するため、男避けファンネルと名乗って集まってくる巡及びパリピイケメンボーイズ、そしてたまに美味しいお茶とお菓子をご馳走してくれる万莱もいない。

 

「琥珀先輩、明日夢先輩、少しいいですか?」

 

 明日夢と琥珀が違和感を感じていると、現在大学生である瑞騎翡翠と同じベクトルの綺麗系の美少女が声をかけてくる。水晶のようにキラキラと煌めく長い黒髪をポニーテールで纏めた、Theモデルと呼んで差し支えないすらりとした美しい肢体を軽鎧で包み、ウコンザクラと青龍の家紋の羽織を着た少女────辰巻玻璃である。

 

「玻璃ちゃん、どうかしたの?」

 

「実は……陣取りの拠点の一つから流れてくる風が、何か変なんです」

 

「「変?」」

 

「はい。霧がかっているというか、そこにあるはずなのに、感じ取りにくいというか……」

 

 明日夢と琥珀が顔を見合わせる。顔色はあまり良くない。

 パリピイケメンボーイズと万莱がここにおらず、陣取り合戦で取り合う拠点の一つに霧がかかっている。しかも風属性の使い手である玻璃が拠点の場所を感じ取りにくいと言ったのだ。もう嫌な予感が止まらない。

 

 

『これより討魔学園東京校、京都校合同演習、陣取り合戦を始める。死に戻りもできるようにしてあるので、両者、全力を尽くして挑むように』

 

 

 アナウンスが聞えた直後。嫌な予感に突き動かされるままに、明日夢と琥珀と玻璃は全力で走り出した。東京校の人間────主に新一年生が首をかしげる中、その嫌な予感は的中した。

 

「────ぁ?」

 

 明日夢達が飛び出した数秒後の出来事である。東京校の生徒の一人の頭が一本の竹槍によって貫かれて死に戻りを開始したのだ。それを見た新三年生、特に巡とクラスメイトであった生徒達が何者の襲撃なのかを察して叫ぶ。

 

「「「模歩の攻撃かよぉ!!?」」」

 

 その言葉を叫びつつも対空迎撃の体勢に入れるのは、やはり場数を踏んでいる証拠か。それぞれが加護を用いた迎撃の構えか、結界を張るか、盾を上空に構えることで絨毯爆撃のように降り注いでくる竹槍を防いでいる。

 

「中等部、高等部! 結界が使えるやつは雑でもいいから張れ!! 爆発しないから!!」

 

「盾持ちは傘を作るようにして隣り合ってる人を守りつつ防御系のスキルを使って!! 毒もないから!!」

 

「爆発しないだけ温情って思えるのは俺達も染まったよなぁって思う!!」

 

 初期対応が素早かった東京校の陣地は負傷者が出ているものの、回復魔法や回復アイテムでどうとでもなるレベル。もちろん京都校も負傷者がその程度で済んでいるだろう。指示系統がしっかりしていれば、という話だが。

 

 そんな陣地の阿鼻叫喚振りを背にしながら、霧がかっている拠点に向かって走る明日夢達はというと────

 

「最っ悪……!」

 

「趣味が悪い……」

 

「いっそ清々しいまでありますね」

 

 近付いてようやく見えてきた魔改造拠点を見て悪態を吐いていた。魔法などを使って作ったのか、小さな城のような外見となっている陣地だ。認識阻害の結界と、認識阻害の霧によって索敵スキルを鍛えていなければ道が見えにくく、しかも進む場所の嫌(イイ)ところに有刺鉄線やら、踏み抜いたら爆発しそうな膨らみやくぼみがある。

 

 壁を登ろうにも、監視塔のようになっている高台からは露骨にスコープの反射光をアピールしてくるタワーシールド持ちのスナイパーが三人、目を光らせているため、戦士のステータスに物を言わせて登ろうとしたところを撃ち抜かれるのがオチだ。竹槍投擲は高く積まれた壁の裏にあるらしい魔法を利用した連射式の弩によって放たれているらしく、弾切れはあるだろうが、殺意が尋常ではない。

 

 さらに言えば、この悪路を超えた大手門らしき場所で胡坐をかいてこちらを見ている三匹の哺乳類霊長目ヒト科ヒト属に凄く近しいだけの生物が心臓に悪い。

 

 こちらを真っ直ぐ見ているのは、オソラクサル目ガイケンカラシテヒト科イデンシテキニハヒト属。手には肉も骨も力任せに叩き斬れるような鉈。よく見るとブービートラップに使われるようなワイヤーを張り巡らせている。間違いなくクソボス。

 

 抹茶ラテを飲みながらこちらを見ているのは、イッケンスルトサル目ミテクレテキニハヒト科クブクリンヒト属。手には魔法を詠唱するよりもぶん殴った方が早そうな錫杖。どういうわけか結晶のような棘が生えているのは恐らく殴った時のダメージを上げるため。遠距離の魔法が強い代わりに近距離の魔法(物理)が強い。恐らくクソボス。

 

 そして羊羹をちまちまと食べながらこちらを見ているのは、ミタカンジサル目トオメカラミルトヒト科ナンダカヨクワカランガヒト属。手には溢れんばかりの殺意が形になったかのようなグレートなクラブ。よく見ると殴りつける部分に分厚い刃がはめ込まれている。背には剣というにはあまりにも鉄塊過ぎる大剣。恐らく『こうそくいどう』を積んだメガライチュウY並みに素早く、色々積み上がったセグレイブ並みの物理攻撃力だと思われる。恐らくクソボス。

 

 そんな化物共に対してどう攻めるかと、これ見よがしに用意されていた遮蔽物に隠れつつ作戦会議を開こうとしていた三人は、京都校の人間らしき者が走ってくるのが見えた。

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

 凄まじい勢いだ。どこか怒っているような気配も感じる。恐らく初見殺しに対する殺意が滲み出ているのだろうと明日夢が考えていると、京都校の人間が叫ぶ。

 

「霧に紛れ、空から襲撃するとは何たる卑劣!! 正々堂々と戦ってこその陣取り合戦だろうが!!」

 

「「「……?」」」

 

 何を言ってるんだこいつ、と言わんばかりの表情になった東京校美少女三人組。大分気狂いの思想に染まっているかもしれないが、五家はそもそも裏五家という闇討ち、卑怯卑劣上等な影の立役者がいる家。心の成長によって五家の暗部についても知ることとなった琥珀と玻璃、そして巡のスタイルを学習してここまで育った明日夢は何を言っているのかさっぱり理解できていない。

 

 正々堂々を謳って突っ込んでいく十字架の首飾りを付けた重装備の男は、それなりに実力はあるのか、爆発を引き起こしつつも大手門に近付いていく。装備が壊れた様子もなく、満身創痍という感じでもない消耗が少ない男は────

 

「貴様らに決闘を────ガァ!!?」

 

「あ、ごめん、なんか言った?」

 

 胡坐の状態から一瞬で立ち上がった巡の鉈によって鎧ごと肩を切り裂かれる。

 

「しゅ、祝福を施した鎧が……!?」

 

「え? それ光属性エンチャついてんの? ごめん、俺って基本的に闇属性のエンチャつけてるから打ち消しちゃうわ。もしかして教会の人?」

 

「巡ー、撃破遅いんだけどー? DPS足りてないんじゃないのー?」

 

「初撃で行けると思ったんだよね。刹那無心流剣術の応用……で!!」

 

 食い込んだ鉈を引き抜くことなく、ウェポンラックに接続していた鉈を重装備の男に向けて振り下ろす巡。両手を用いた、上段構えの一撃。二の太刀を考えない、曇天を切り裂くかの如き速度の一太刀は見ている人間が思わず美しいと思ってしまうような見事な一撃で重装備の男の脳天をかち割り、死に戻りを始めさせた。

 

「刹那無心流剣術、『天裂き』」

 

「剣じゃない-114点」

 

「剣でなくとも流派の技を使える+514点」

 

「何点中?」

 

「「1000点」」

 

「赤点で草」

 

 化け物三匹を前にして、東京校、京都校は全滅せずにいられるだろうか。




月光の指輪
月光とは名ばかりの、ただの銀製の指輪。
月の意匠が施されているだけの、何の変哲もないただの指輪。
装備しても何が変化するわけでもない。

双子はある男の背を見て生きてきた。
暗闇の中、手を引いて歩く男はきっと、導きの光であったのだ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。