恋愛要素ありの死にゲーに転生して鉈を振り回す転生者 作:エヴォルヴ
夜なべして建築した拠点、中々イイ感じではないか? 参考にしたのがストームヴィルと赤獅子砦というチュートリアルエリアなせいもあって、学園長からも中々の高評価を得ている。本当ならエブレフェールと典礼街を参考にして作りたかったのだが、流石の豊穣の女神であってもユグドラシルみたいなものを生やすのは難しかったらしい。一応俺も植物の神様の要素持ちらしいが、神様の力────坩堝の諸相が使いこなせていないので、植物を生やすとかはできずにいる。
そもそも俺と先代、どっちもどんな神様なのかいまいち理解していないのだ。金属だったり、植物だったり、蜘蛛だったり、竜だったり、犀だったりと色々な要素が混ざっているせいでどんな神様なんだって感じである。天照大御神様曰く、先代が複数体の精霊が神になったことで竃の神、塞の神、足の神、樹木の神、水の神などの様々な神の要素があって、そのどれにも素質があるらしい。あと俺が混ざったことでアレス様やフォボス様のような血みどろの戦神や呪詛の神としての要素もあるらしいので、今度色んな神様が集まる会合に連れて行ってくれるらしい。凄く嫌なので遠慮したいが、行かないと天照大御神様の妹様に何をされるか分かったものじゃないので行かなくてはならない。月読様は天照大御神様ガチ勢なので……
「考え事とは余裕そうだなあ!?」
「え? ああ、うん。便利だぞ、占い師のスキル。まぁ、今の俺占い師じゃないけど」
敵の敵は味方理論なのか、東京校と京都校の生徒が混在したチームのうち、魔法使い達で構成されたチームから放たれる魔法の閃光を武器で弾いたり、体を捻ることで回避したりしつつ、近くで雑魚────は失礼か。雑兵レベルってわけでもないが、対人戦初心者みたいな新入生を含めた複数人相手に殺戮の限りを尽くしている遥斗と麗良を見る。いやあ、本当に強いな遥斗と麗良。ゲームで使っていたビルドをそのまま持ってきているということもあってか、凄く馴染んでいるように見えるのだ。
「詠唱破棄:【従無剣】」
「詠唱破棄された魔法は威力が低いし、時間も極めて短い! 見た目に怯まず囲んで攻撃しろ!!」
遥斗の周囲に展開される無属性の魔力が剣の形となった魔法、【従無剣】。詠唱せずに発動する代わりに威力が下がってしまうデメリットを抱えたスキル、『詠唱破棄』を用いて展開された無属性の刃を見て、そういう指示を出すのは高等部の一年生ではあるが、なんかカリスマ性がありそうな声を空気を纏う男。確か討魔2で登場した攻略対象の……なんだっけ、土御門だかツチノコだかいうやつ。五家と同じくらい格が高い家の人間だったはずだ。……実際、彼の周囲をフワフワと鱗粉ばら撒きながら飛んでいる虹色のアゲハ蝶、『極彩揚羽』は五家に加護を与えている神獣達と同じ神獣の格をお持ちである。属性は火と風。二属性とは贅沢な。
五家と同じ格をお持ちの家の人間ということもあって判断力は間違いなくある。実際、詠唱破棄を行うと魔法の威力はガクンと下がってしまうし、効果を発揮する時間や射程が短くなってしまうというデメリットがあるのだ。特に自分に追従するタイプの魔法────ファンネル系は効果時間が十数秒程度になってしまう。だが……俺の弟分である遥斗をそんじょそこらの魔法使いと同じだと思ってもらっては困るぜ。
「我が女神の名の下に、汝の名を告げよう。汝は天地の間に住まうもの。汝は死と再生を巡る者! 赦しの象徴! 循環はやがて、春を呼ぶ!!」
「ぎゃっ!?」
「ま、魔法使いなのに近接戦!? しかも詠唱しながら────かはっ!?」
「な、なんでまだ消え────ぎゃあああああ!!?」
あ、なんかすり下ろされてる人がいる。俺が【幻影の再演】を使ったことも理由の一つだが、一番は遥斗が使っている【従無剣】に【やまびこ】というスキルが重ね掛けされて使われているせいだろう。
遥斗が使っているスキル、【やまびこ】はスキルや魔法の効果と威力を延長させるスキル。体感1.25倍くらい伸びる。そんでもって、このスキル、ゲームにおいて変な挙動? を発生させることができるのだ。【やまびこ】に【やまびこ】が使えるのである。何を言っているのかさっぱり分からないかもしれないが、俺も自分で何を言っているのかさっぱり分かっていない。1.25倍に1.25倍を掛けてざっくり1.5倍くらいの効果延長、そこに俺が【幻影の再演】を使うことでさらに理解できない挙動が発生する。多分挙動的に1.5倍された後に【幻影の再演】の効果が発生しているのだ。もう頭が混乱しているのでざっくばらんに言うが、今の遥斗は歩く人間ミキサーと言ったところである。
「終末の冬を越え、春の訪れを告げるヤドリギよ! 我らの害を除け!! 【擬典:ミストルティン】!!」
詠唱を完成させた遥斗の錫杖の内側から食い破るように生えてきた植物、その枝が何度も枝分かれを繰り返し、絡み合うように伸びていく。絡み合うように伸びていった枝はやがてギチギチと音を立てながら神聖な、それでいて妖しげな光を放つ槍と化した。俺がインドラ様の雷を再現した時とは違う、豊穣の女神の記憶から再現した魔法だ。
明日夢さんが因果を捻じ曲げる絶対必中の剣を顕現させたり、複数の加護を解放して様々な姿を見せるように、討魔2の主人公達も特殊な力を持っている。討魔2の主人公は加護を与えてくれた精霊、守護獣、神獣、神々などの記憶をイドゥン様を介して共有、記憶の中にある武器を再現する力があるのだ。もちろんレベルや自身の力量によって再現レベルも上がったり下がったりするし、強力すぎる武器を再現するとキックバックでしばらく動けなくなったりもする。
今回遥斗が再現したのはイドゥン様の記憶から抽出したであろう、ヤドリギで作られた槍……ミストルティン。本来であれば槍ではなく、矢のはずだが、恐らくイドゥン様の記憶を元にしているせいで他の植物の要素も混ざってしまったのだと思われる。精度によって武器の姿形が変わるのもまた、面白い所ではある。
さて、遥斗のビルドは近接戦ができる魔法使いビルドというわけではない。どちらかと言えば遠距離戦ができる近接魔法職である。普段は後ろで魔法を放つことが多いが、真骨頂は殴り合いをしながら魔法をほぼゼロ距離でぶっ放すところにある。
「詠唱破棄:【爆炎発破】!!」
「ぐっ!? だが、この程度の火、土御門には────!?」
「詠唱破棄:【
俺も所持している魔法スキル、【雷哮砲】が前線切ってチームリーダーを務めていた土御門の若旦那に叩き込まれる。八束爬戯クラスにはほとんど通用しないスタン効果持ちの魔法だが、対人戦であれば効果は絶大。耐性にもよってくるだろうが、確定で数秒のスタンを叩き込める。正直これが入った時点で遥斗の勝ちは確定したと言ってもいいだろう。
「うおおおお! 今の俺はジーク・ナハトファルターゲイルシャコガイルだ!!」
「何を言って……るんだ!!」
「デュエマをご存じない!? あ、詠唱破棄:【激流発破】」
「ごあっ!?」
「詠唱破棄:【暴風発破】」
「ぶふ!?」
始まってしまったかあ、と呑気なことを考えながら、魔法を放ってくる連中に向けて毒を塗りたくったナイフを大量に投擲しつつ一人一人フックバスターで捕まえて膝治療していく。対策ができないとマジで抜け出せないんだよな、あの怯みハメループ。ダメージが少ない代わりに相手を怯ませやすい【発破】シリーズをループさせることでリキャストを回し続ける高等怯みハメループの金字塔だ。MP切れを狙おうにも、今の遥斗がMP切れになることはないし。ミストルティンは攻撃がヒットした際と、敵を倒した際にMPを回復する力がある。なので、ミストルティン状態が解除されるまで遥斗が魔法を使えなくなることはない。
他にも敵がいる集団戦とはいえ、土御門の若旦那が率いるチームは大型武器使いばかりで、遥斗のことを攻撃しようものなら、土御門の若旦那ごと攻撃しないといけない感じで攻めあぐねている。攻めあぐねて動きが止まっているところにうちのパリピイケメンボーイズの狙撃が飛んでくる。俺ごとやれ! って指示くらい出そうぜ? というか土御門の若旦那、その大太刀は飾りか?
「まあ、後は遥斗の怯みハメループが終わるまであんな感じだろうし……麗良、首尾は────って、聞くまでもないか」
「はい? 何か言いましたか?」
「いんや、血まみれでも美人だなって話。お前らの結婚式見たかったぜ」
「ありがとうございます。今回はちゃんと来てくださいね」
刎ねた……というか、ぶん殴って引きちぎったのであろうイケメンの頭をゴミ箱に捨てるかのようにぶん投げた麗良の周囲は、死に戻りを開始している連中の死体が無数に転がっている。超脳筋ビルドの麗良の攻撃を耐久自慢以外が正面から受けようものなら、内臓爆散コースだろう。三野先輩もそうだが、マジで脳筋相手は頭を使わないと簡単に死ねる。
「ところでさっきのゆっくりイケメンフェイスは?」
「
「────ああ、女好きの」
男主人公だと「一緒に街に行ってナンパしようぜ」とか誘ってくるし、女主人公だと「んー、可愛いけど、俺好みじゃないな」とか初対面で言ってくる人だったと思う。なおその後思い切りぶん殴るっていう選択肢が出てきて、それを選択するとおもしれー女的な反応されて好感度が上がるのでマゾ扱いされるキャラだ。性癖はノーマルだった気がするけど。
「性能は悪くない人ですが、私が好きなのは遥斗だけです。あと、初対面でいきなり値踏みしたりする人と友達になるつもりはありません」
「うーん、正論」
ところで光銘君とか羽津さんとかどこに行った? こっちに来てないってことは、東京校の連中とやり合ってるのか? ……まあ、ルール上、俺達の拠点を攻めなくても問題はないからな。陣取り合戦の勝利条件は、『陣を全て確保している状態で一定時間経過』、『陣を相手陣営よりも確保している状態で制限時間を迎える』、『相手の陣営の死に戻り回数を一定以上にする』、『総大将を一回倒す』のどれか。俺達の陣地を攻撃するのと同時に、東京校も京都校も敵陣を攻めに行ったって感じかな?
「ところで先輩」
「ん?」
「隠しているやつ、ありますよね」
「それに気付くとは……やはり天才か」
黒いバトルドレスを血で染め上げた麗良に向けて放たれた魔法を空刃などで叩き落しつつ、腰にセットしてある小道具類の中から少し大きめの箱に納められた紙束を取り出す。幾何学模様が刻まれた神秘的な気配を纏っているカードの山こそ、俺がジョブで占い師を選んだ理由である。
「いやあ、小アルカナの方しか使ってなかったから大アルカナ忘れてたよね」
「まぁ、先輩のビルドだとステータスの底上げをするだけで爆アドですから。というか小アルカナを使ってる人の方が多いと思いますよ」
だよね。俺もそう思う。禍津日様の加護みたく、戦って勝たないと使えない大アルカナに比べて、ほとんどノーリスクで使える小アルカナの方がローリスクハイリターンだし。だが、それはゲームの討魔のお話。この世界は残念なことに現実……大アルカナの方もちゃんと使えるのだ!! というか、ゲームと違って大アルカナと小アルカナ、どっちも混ぜてしか使えないので、大アルカナも使わないといけない。
「というわけで……何が出るかなー、何が出るかなー」
「何が出ても相手には地獄でしかないと思うんですけど」
敵が迫ってくる中、デッキをシャッフルして一番上のカードを引く。カードを見るまで、どんな効果が発動するのかが分からないというのは、結構ワクワクする演出だ────なんて思いつつ、引いたカードを確認。そのカードの名を口にする。
「大アルカナ15────
名前を呼ばれたカードが薄暗い、どんよりとした光を放ち、空気が歪んでいく。
「これでも喰ら────?」
それに気付かないまま、俺に剣を突き立てようとしていた生徒が、虚空からヌルッと現れた赤と黒の禍々しい腕に捕まれて空に持ち上げられた。
「え、あ、なに────や、やめ……!! ぎぃいいあああああああああ!!?」
そしてそのまま、まるで新しい玩具を与えられた子供がその玩具がどれだけ頑丈かも分からずに振り回して遊ぶかのように、無垢な残虐性を見せるかのようにその手足を引き千切り、そのまま燃やして灰にしてしまった。
『『『御機嫌よう、我が主。素敵なステージへの招待に感謝を』』』
いつの間にか俺の前に立っていた、背筋も凍るような美女の姿をしているが、得体の知れない無数の何かが一つに固まっているソレが慇懃な礼をしながら声を発した。
うーむ、俺にはちゃんと聞こえているのだが、麗良には何を言っているのか分からないのか顔を顰めて何を言っているのか解読しようとしている。俺達に向かって攻撃してくる連中もこんなよく分からんやつが現れたせいで動きが止まっている。
大アルカナの15番目、悪魔のカードによって呼び出されたソレは、禍津日様曰く、人間でも怪魔でも神々でも神獣でも守護獣でも精霊でもない、山の執行者に近しいが山の執行者ともまた違う、契約者を守ってるから結果論的に人の味方となっているだけの存在とのこと。心を許したら一気に取り込まれかねないのが、大アルカナのカードによって飛び出す連中だそうだ。そんな埒外の存在を呼べてしまう【
『『『早速で申し訳ございませんが、契約の履行をしていただいても?』』』
「えーと、逆位置だから……自身に状態異常を2つ以上発生させるってやつね。丁度バフ切らしてたから助かる」
『『『契約の履行、ありがとうございます。ああ、それにしてもなんて素敵な鮮血と病魔……年甲斐もなく昂ってしまいそう』』』
「じゃ、ちゃんと仕事してくれよな」
『『『ええ、かしこまりました。この素敵なステージに見合う役を演じきってみせますわ』』』
そう言って
……あ、でも右腕になんか棘みたいなのがめっちゃ食い込んで血が! 血が出たじゃあないですか!! 何? 今の出血じゃ足りなかった? めっちゃ吸われてる気がするんだけど。
「あ、待たせてごめんな。時間も押してるしやろうぜー」
「お、お前……ソレは、なんだ!? 調伏した式神でも、精霊でもない、ソレは……!?」
「え? 知らね。というかあんたらが知らないことを俺が知るわけないじゃんね?」
ダイスロールをしてファンブル引いてSAN値がピンチになった時みたいに青ざめている魔法チームを率いていた男────蘆屋の若旦那にニッコリと笑いかけつつ、武器を構える。その腰に佩いている刀、間違いなくいい武器だ。ただの飾りじゃないよね? 飾りじゃないと言え。ゲーム本編でしっかり使ってるのを知っているんだ……式神や魔法だけに頼るようなもやしじゃないよなぁ?
「というわけでボス戦を開始する! あ、ちなみに俺が総大将なんでよろしく」
そう言って、俺は未だにこちらに来ない明日夢さん達にも注意しつつ、混成チームに飛び掛かった。
悪魔が言ってたこと
『『『御機嫌よう、我が主。素敵なステージへの招待に感謝を』』』
『『『早速で申し訳ございませんが、契約の履行をしていただいても?』』』
『『『契約の履行、ありがとうございます。ああ、それにしてもなんて素敵な鮮血と病魔……年甲斐もなく昂ってしまいそう』』』
『『『ええ、かしこまりました。この素敵なステージに見合う役を演じきってみせますわ』』』
『『『この素敵な舞台を、我が主と「あなた」に捧げましょう。素敵な読者様方。ぜひ、愉しんでくださいまし』』』