恋愛要素ありの死にゲーに転生して鉈を振り回す転生者 作:エヴォルヴ
遥斗、麗良は巡がいる時、「ray」、「アカシア」、「金字塔」などが常に流れているようなレベルだと思われる。
「では、講評を始めるが────まず、東京校も京都校も第三者に目が行き過ぎたな」
陣取り合戦、やっぱり経験値が全然入ってこないから美味しくねえな。上がったとすれば武器の愛用度が若干上がった程度だ。やはり同格や格上との戦いで使わないと愛用度が上がりにくいなぁ……愛用度が上がった戦いなんて光銘君と暮奈さん、羽津さんに……ネームド連中と軽く打ち合った時くらいしか上がらなかった。あとで酒吞童子のところにでも行くか。いや、羅刹のところに行くか? いやしかし、蜈蚣姫のところも捨てがたい……パリィの練習なら八束爬戯のところがいいんだが、八束爬戯のところは蜈蚣姫のダンジョン以上に危険だ。
何せ八束爬戯のダンジョンに住んでいる怪魔共、全員俺を食う気でいる。蜘蛛は巣にかかった獲物を糸でグルグル巻きにして保存したりするそうだが、八束爬戯のところの連中もそういう習性があるようなのだ。糸で拘束しようとしてくるやつ、フィジカルで爆速追跡してくるやつ、毒で動けなくしようとしてくるやつなど様々だが、明らかに食おうとしてくる連中しかいない。涎隠せてないのはどうにかしてくれ。ビジュアルはいいのに色々台無しだろ。
その点、酒吞童子と黒焔羅刹&白澪羅刹のところは凄くいい。ただひたすらに戦いたいだけっていうのがシンプルで分かりやすい。黒焔羅刹&白澪羅刹のところはあいつらしかいないけどな。道中がちょっと面倒なギミックがある程度で。修験道って感じだな。
「巡、ここよくね?」
あとで行くダンジョンの予定を考えていると、遥斗がタブレットの画面を見せてきた。陣取り合戦の打ち上げ会場候補が見つかったようだ。
「どれどれ……お、いいじゃん。へい、パリピイケメンボーイズと万莱君。打ち上げの会場ここでいいか?」
「おや、僕も参加していいんですか? ほとんど何もしていませんが」
「いや何言ってんだよ。MVPを選ぶとしたら万莱君かパリピイケメンボーイズの誰かだぞ」
明日夢さんと琥珀さんと辰巻さん相手にしていた遥斗と麗良が首が千切れんばかりに縦に振っているように、あの三人を相手にして被弾が少なかったのは間違いなく援護射撃を絶え間なく打ち込んでいたパリピイケメンボーイズのお蔭だし、俺がゲリュオンとクリュサオルと一緒に暴れ回った時に結構楽に擂り潰せたのは万莱君が魔力による連射式バリスタで竹槍の雨を降らせていたからだ。矢面に立った人間だけではなく、裏で微に入り細を穿つ素晴らしい仕事をしてくれた人間も評価する……そんな人間に私はなりたい。
「おや、こちらは瑞騎家が経営する温泉宿ですね。素敵な場所ですよ」
「お金の方は大丈夫っすか?」
「あれだったら俺らも出すんすけど」
「てか打ち上げなんだし皆で出し合うって感じが丸くねーすか?」
「うんや、ここは俺が払うと決めている。提案したのは俺だしな。結局飯連れてく約束果たせてないし、このくらいはな?」
「「「ごちになりまーす!」」」
にしても瑞騎家が運営してる店って結構あるもんだな。酒屋は翡翠先輩に連れられていくつか見に行ったことがあったけど、温泉も経営していたのか。……考えてみると、あれやこれやと手を出しているのも経営難の原因だったりするのか? いやしかし、色々と手広くやってる企業ってのは案外少なくないし、瑞騎家にはちょっと負担が大きかったってだけか?
『ところで講評を聞かなくてもいいのですか?』
「んー、あんまり意味はないからなぁ……スキルとかポイントとか貰えるわけでもないし……」
正直もうさっさと撤収して打ち上げに行きたいくらいなのだ。店に連絡して……明日から三日間は休みだから泊まりにして……あ、宿泊にするなら今日じゃない方がいいのか? 男女比率的にも、麗良の他にも参加者募るか……とりあえず明日夢さんと琥珀さんだろ? 都合が合えば辰巻さんと暮奈さん。あとは……あ、あの人。羽津さんみたく、裏五家の武術修めてる人。暮奈さんと一緒に殿してた瑞騎先輩の従妹だっていう人にも声かけよ。あの人も強かったなあ……身長も2メートルくらいあって、筋肉が凄い人だった。マリーザかよって思ったね。確か名前は────
「お、いたいた! そこの連中!」
「っと、考えてた傍から」
豪快さを声だけで感じられる女性の声に首を動かせば、そこには背丈が高くて筋骨隆々なイケメン女子が立っていた。身長は目測で2メートル、筋肉量を考えると体重は120キロを超えているであろう、戦うための筋肉でがっちりしている「私は戦士です!!」と言わんばかりの姿。装備しているのは人が使うものじゃないだろと思う程に大きな、源為朝が使っているような巨大な大弓と、もはや鉄塊ではないかと思うような重量感を感じさせるガントレット。遠距離戦が強い代わりに近距離戦が強いという、誉れある装備をしている女性……翡翠先輩の従妹にあたる方、
「鶏肉食べます? 皮取ってるやつ」
「ははは! ありがたいけど、今日はチートデイのつもりでね。ガッツリ行くつもりなんだ」
「お、なら丁度いいや。黒曜さん、予定無かったら打ち上げどうすか?」
「打ち上げ?」
講評は聞いても聞かなくてもいいと予め聞いているし、そもそも講評が必要な人間はスタートラインに立っていない人間が多い。特に新入生とか、高等部入りたての連中とかな。高等部二年、三年とかはどこが悪かったのかなんて自分で理解できる領域にいるし、五家に連なる人間なんかもそうだ。ポツポツと学園長の講評を聞かずに今回の陣取り合戦について話し合いをしながら去っていく生徒が見える。
一応、真剣に聞いている人間もいるだろうから、俺の周囲にはちゃんと防音の符を使って防音対策をしているので、こうしてあれこれ話しても問題ないというわけだ。そんな環境の中で、打ち上げについて黒曜さんに話すと、ニッカリと笑って口を開く。
「いいじゃないか! 是非とも参加させてもらうよ! あ、暮奈も連れてってもいいかい? あいつも息抜きさせたい」
「あ、いっすよ。面子が揃っていくぜ……」
ありがたや、ありがたや…………にしても黒曜さんの制服の上に羽織ってるジャケットカッコいいな……どこのメーカーか後で調べておこうかな? ファッションにそこまで興味がない人間ではあるが、カッコいいジャケットとかを見ると、どこのメーカーか調べたくなるのもまた事実。なお、買うとは言ってない。
「ところで、あんたジョブは何なんだい? あんなの見たことが無いよ」
「占い師の進化先。【
「ううん? 聞いたことないねぇ。資料にも載ってなかったと思うけど」
そりゃそうだろう。この世界のジョブシステム自体、人間の可能性を抽出するとかいうよく分からない技術で生み出されたものなのだから。なんだっけ……アムリタから怪魔の記憶? エネルギー? を抽出して武器を作る鍛冶技術の応用だとかなんとか言ってた気がする。そんな意味の分からないものの中でも、上級ジョブは人間の最高到達点の一つだそうだが……【
「そもそもジョブ自体が色々未知数なところばっかりだし、そうなんじゃね? 俺だっていつ進化条件満たしたのか知らないし」
「なるほどねえ。確か私が上級ジョブを手に入れた時は、留骸との殴り合いを制した時だった時だったけど、他のジョブがそうとも限らないか」
おっと、この人留骸撃破者だったか。道理で留骸が俺対策っぽい骨格形成の他に、妙な成長の仕方していると思ったら。スーパーアーマーとかハイパーアーマー対策のディレイを混ぜ込むようになってたしなぁ、あいつ。もうあのダンジョンを挑戦するレベル帯では勝てない領域に行ってる気がするが……まぁ、俺は楽しいからOKです。
問題があるとすれば、神代回帰の火種が使えないことくらいだろうか? あいつって神代回帰の火種を使ったらどうなるんだ? 肉とか付いたりするのか?
「では最後に────今回第三勢力として私が用意したチームの総大将に話をしてもらおうか」
あ、打ち上げ行くんでパスで。
そう言いたい気分である。いや、本当に。何か話せと言われてもダンジョン潜って死に戻りに慣れて、勝つためになんでもやれってことしか言えないし。だけど、学園長の視線だけではなく、講評を聞くために残っている生徒の視線がこちらに集まっている。何か言わないと色々面倒になりそうな予感しかしない。具体的には琥珀さんの決闘BOTみたいなことが起きそうな気がする。面倒くせぇなぁ……としか思わないが、とりあえず学園長に手招きされたので学園長が立っている台に立つ。
「あー……学園長、これ言葉選んだ方がいいやつっすか?」
「いや? 君が思ったことを君の言葉で口にすればいい。なぁに、文句を言う人間はここにはいない。その文句は全て負け犬の遠吠えだからな」
カラカラと笑いながらバッサリ言い切ったよこの学園長。京都校の学園長は────うわ、笑うの滅茶苦茶耐えてる顔してる。そういえばこの二人は同期なんだっけ? 京都校の学園長は政治的な怪物と言ったが、実力も怪物級だ。
「えーと……まあ……皆焦ってスキル撃ちすぎ。状態異常対策してなさすぎ……は、新入生に言うのは酷か……」
いや待て、高等部にもなって状態異常耐性を積んでない人間がいるってのはどうなんだ? 状態異常なんて喰らったことないぜってこと? それか、状態異常耐性を成長させるのが面倒くさくなって育成してないのか? 俺が使ってる毒物の中でも結構弱めの毒でも毒になってるやついたよな? 状態異常耐性はマストだぞ。
「とりあえず言えるのは、ダンジョンでの死因の約3割がイレギュラーの対処や横やりへの対処が遅れたこと。今回は対応できる人が何人もいたけど……」
これが味方が少ない、もしくはいない状態のダンジョンであったのなら。対応できる人がいなかったのなら。多分、この場にいる多くの人が抵抗できずに死に戻りしてしまうのだろう。まぁ、こういうのは授業で……いや、最初の授業で学んでるのに身になってねえやつばっかじゃねぇか!? 実感が伴わないと授業のありがたみが分からないってこと、あると思います。
「なんでもできるようになれ、とは言わない。できないを補うのがパーティーなんだし。でも、できないところをできないままにしろとも言わない」
耳を傾けてくれる人達の顔は結構真面目だ。よく見ると、俺の醜態を目に焼き付けるためなのか明日夢さん達を含めた東京校の顔見知りや、光銘君、暮奈さんなんかも話を聞いてくれてる。遥斗と麗良? 解毒薬片手に毒キノコ齧って耐性つけるために頑張ってる。よく見たら明日夢さん達の手にはマンチニール。おやつ感覚で毒物摂取で耐性強化。悪くない傾向だ。ところでそのマンチニール、どこで仕入れたんだい? 俺にも分けてほしいんだけど。
まあ、マンチニールはそのうち強奪するとして……俺は何でもできるようになれって皆に言うつもりはない。誉れある戦いをしろとは言うけど。自分の不得意を仲間に補ってもらうことで100点には届かなくても80点くらいの戦いができるのが、パーティーのメリットなのだ。だからと言って、自分が苦手としていることをそのままにしろとは言わない。自分の苦手なことを補えるスキルがないか探してみるとか、自分の役職の立ち回りは本当にこのままでいいのか考えてみたりとか、やれることはたくさんあるはずだ。
「やれることが増えたら、パーティーが少し楽になる。楽になるってことは、余裕ができる。余裕ができれば、視野が広がる」
ソロであれば、なんでもできないといけないから順番が逆になったりするけど。視野を広げることで余裕を作って、そのできた余裕を使って後々の自分が楽をできるように道筋を作ると、やらなくちゃいけないことが見えてくる。
「派手なスキルばっかりに目を向けるんじゃなくて、今後の自分を助けるスキルを探してみるとか、今日帰ったらやれることは結構あると思う」
ステータスだけじゃなくて、自分なりに技術を磨くとかだってできるはずだ。自分の課題が見つかった途端に、人間という生き物はその課題のために邁進する。邁進するためのパーツを何個も見つけていく。それがいつだって遅くはないと、俺は思っている。
「ま、ごちゃごちゃ長々と言うのもあれだし。最後に一つ! 戦いってのは最後に立ってる奴が勝者なんだ。最後に立ってる奴になれるように、頑張ろう」
まぁ、俺の場合は最後に立っているやつになったりならなかったりするんだが。どちらかと言えば最後に立ってる奴を巻き添えにして共倒れにして倒している率の方が高いと思う。死戦臨界とか超新星とかがその最たる例だろ。
「よし、終わり。閉廷。以上。解散でいいですよね、学園長?」
「ああ。見事な総取りだった。今後もより一層励んでくれ」
よし、帰る! 帰るというか、打ち上げ行く! 今の俺は打ち上げに行きたいという思いだけで動いている生き物だ。だだっ広い草原が全部討魔学園の敷地なんだから驚きである。多分ヒロアカの雄英くらいかそれ以上の規模の敷地持ってる。いくらなんでも刺激的でファンタスティックすぎる。
そんなことを考えつつ、打ち上げ参加者共と一緒に一度学園に戻る。最近東京校と京都校間の移動を楽にするために『霊道』を調整したとかで、学園敷地内の行き来が滅茶苦茶楽になった。ほとんどファストトラベル。最初からそうして? しろ。とりあえず会場候補である温泉宿に電話しなきゃ……って、おや。
「翡翠先輩から電話とは珍しい」
「お前の推しじゃん」
「もはや運命とも言っていいくらいグッズ当たりましたよね先輩」
真っ先に着替えやシャワーが終わった俺達三人組しか周囲にいないとはいえ、こうして話を聞かれたら非公式グッズを買ってる無作法者って思われそうだな……でもこっちの世界でもちゃんと写真集を買ってるから安心してほしい。五家の皆さん全員分買ってる。凄いよね、ローズ先輩と治水先輩の写真集、下手なボディビル雑誌よりもクオリティが高い。あと明日夢さんのも出てたから買った。俺? 冗談はよしてくれ。仮にそんな仕事の依頼が来てもノールックでお断りだわ。
にしても、いきなりどうしたんだろう、翡翠先輩。いつもなら電話したい時はメッセージしてから電話かけてくるのに。
「もしもし?」
『あ、巡君。お疲れ様。陣取り合戦、見てたわよ』
ぐあああっ!!? 耳から攻撃が!!? ヘッドホンとか装備してたら死んでいるところだった。翡翠先輩の声は間近で聞いちゃいけないとんでも兵器だ。ASMR売り上げナンバーワンの実力は伊達じゃない。
『まぁ、陣取り合戦のことでとやかく言いたくて電話したわけじゃないし、そこはまた後でね』
「ん? ならどうしたんです?」
『ほら、明日から3連休でしょう? 私もちょっと京都の方に行くつもりだし、一緒に過ごさないかなって』
「ああ、そういうことですか。全然いいですけど……打ち上げで今から温泉宿行くんですよね。瑞騎家経営の」
『温泉宿? なら好都合ね。今、私もそこにいるもの。大学生メンバー三人で』
なんと。まさかそんな確率があるとは思わなんだ。しかもローズ先輩と治水先輩もいるともなれば、久しぶりってわけでもないけど、近況報告でもしたいところだ。ほとんど交流会みたいなことになりそうだけど、皆で集まって飯も食いたい。
『それで? 打ち上げに来る人はどれくらいいるの?』
「えーと、俺含めて……13人くらいですね」
『ちょっとした宴会席みたいになりそうね。部屋は……空いてるからいつでも来ていいわよ』
よっしゃ、翡翠先輩の許可いただいたぜ。でも、急に大人数で宿泊となると色々大変じゃないかとも思ってしまうが……まぁ、一応連絡だけはしておくか。大丈夫かどうかだけ聞くだけ聞いておこう。
『あ、泊まる部屋だけど、君だけは私と同じ部屋ね』
「
『なんでもよ。じゃ、あとでね』
その言葉の後、電話が切れる。うーむ、なんだか翡翠先輩の強引さが強化されたような気がする……前以上にグイグイ来るというか……ゲームでも恋人になると翡翠先輩って結構グイグイ来るようになってたし、気を許せる人にはそういう感じになるのだろう。多分。きっと。メイビー。