恋愛要素ありの死にゲーに転生して鉈を振り回す転生者   作:エヴォルヴ

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これもリハビリになるかもしれない、ということで娯楽もある程度許可された男が通ります。なお消灯時間。明日からリハビリだそうです。私の強靭度が高まるリハビリです。死ぬほどキツイと聞きます。楽しみですね。


一人の人間によって滅ぶ世界なんて美しいの

 とりあえず趣味に走りやがった世界史の教師は絶対に許さねぇ。ダレイオス三世は何度に亘ってアレキサンダー大王と戦ったかなんざ知るわけねぇだろうがぶっ飛ばすぞ。教科書に載ってる範囲でテスト出せよ。

 

「お、終わった……テストはやっぱり苦手だなあ……」

 

「同じく。何点想定よ?」

 

「全教科70点行ってたらご褒美のパフェを食べに行くよ」

 

「俺は全教科60点行ってればいいかなレベルだな……文章系はいいんだけどなぁ」

 

 いきなりポンと化学式が置かれると混乱してしまう。数学の公式? 覚えても使えなきゃ意味がねぇ……! 覚えているのにどの問題にどの公式を使えばいいのか分からなくて点数獲れないとかなんて愚かな。俺のことだが。

 

「まぁ……これでゴールデンウイークの代休を全て伊勢神宮と禍津日様に費やせるわけだが」

 

「そうだね」

 

 ゴールデンウイークが百鬼夜行で潰されたので、経済を回すためにも振替休日が国から発表された。やったぜ。お蔭で長期休暇で不在だとしても怪しまれることがない。怪しまれたとしても、俺達には宇迦様経由で伊勢に呼ばれたって言い訳が使える。そう何度も使える手段ではないが、一回、二回くらいは問題ないだろう。

 

「……それにしても、伊勢神宮か……小さい頃一回だけ行ったことあるみたいだけど覚えてないや」

 

「へー……俺は初伊勢参り。うどん食べようぜうどん」

 

 伊勢参りに行ったら伊勢うどん、と前世から聞き及んでいる。柔らかくてぶっというどんらしいが、中々楽しみだ。

 

「ところで模歩君、百鬼夜行の時の戦い方なんだけど……あれ、毎回やってるの?」

 

「ん? ああ、大耀さんは記憶消さなかったのか。誉れの素質あるよ誇ってどうぞ」

 

「どうしよう、誇りたくない────じゃなくて」

 

「戦い方だろ? 自爆前提は……まぁ、ゲリュオンとクリュサオルが来ない限りはやらないわな。動けなくなって自爆はたまにするけど」

 

 ボロボロになって戦うよりも死に戻って、少しの間デスぺナもらって戦線復帰した方が効率いいし。その方が経験値たくさん稼げるから、基本的には瀕死の状態で動けない、なんてことにならない限りは自爆特攻超新星は使わない。ゲリュオンとクリュサオルはそれくらいしないと死なないからやってるだけで。

 

「そっか。たまに自爆するのは聞き捨てならないけど、てっきりいつもあんな感じなのかと」

 

「俺を何だと思っている?」

 

「ちょっと心がおかしい人、かな」

 

「褒めんなよブルーベリーベーグルしかねぇぞ」

 

「なんでそれが出てくるんだい?」

 

 今世パンと菓子の店の息子舐めんな。前世からずっと日課で作ってんだぞこちとら。なぜか定食屋にデザートセットとかパンランチが生まれる予定だったんだぞ。店主と女将さんノリノリでメニュー開発に付き合ってくれたんだぞ気付いたら日課だわ。

 

「まぁ、貰うんだけどさ……君が作るパン、美味しいし」

 

「ジャムいるか? キウイビネガードリンクもあるぞ」

 

「君の鞄はどうなっているんだい?」

 

「ほぼ何もないぞ。小麦粉強中薄各種、牛乳、イースト酵母、水、バター、携帯ガスコンロをアムリタの転用技術で霊子化させて持ち歩いてるくらいだな」

 

「それを持ち歩くためだけに霊子化使ってるの君くらいだと思うよ」

 

 ごもっとも。本来なら武器とかを持ち歩くために使うもんだからな。だが、これが便利なもんで、俺はよく重い買い物をした時とかに使っている。いやはや、ゲームと現実が同じなことに感謝したことはこれ以上にないね。装備はな、背中と腰と懐に装備できてれば問題ないんだよ。

 

 だが最近靴にも仕込み始めた。いやはや、なんでやってなかったんだろうな、俺。鉄板仕込めば蹴りの威力上がるだろうに。刺突攻撃してきたやつを踏み躙るのにも使えるし。あとつま先と踵には装飾された短剣と同じように刺さって折れやすいナイフを仕込んでいる。嫌がらせ? 何か問題ですか? 戦いは嫌がらせだよ兄貴って偉い人も言ってた。

 

「そういえば、武器増やしたんだって?」

 

「うん。念願叶ってクロスボウ購入したよ」

 

「遠距離に厚みが出るな」

 

 クロスボウもまた、攻撃魔法を撃ち出すことができるので、矢を撃って魔法を撃つことができる。しかも大耀さんは麒麟の加護を分霊で貰っているから、雷の槍みたいなものをクロスボウで射出することもできるのだ。もちろんスキルを育てないと豆鉄砲なのは変わらないが。

 

「斬撃、打撃、射撃による刺突と魔法……隙が無いよね。でも俺は鉈で頑張るよ」

 

「そう言って毒とか投げてくるんだろう? 騙されないよ」

 

「甘いな。爆弾も投げるし、今わの際の置き土産で地雷も仕掛ける」

 

「敵に回したくないなぁ」

 

 俺としては大耀さんの方が敵に回したくないよ。大耀さんが敵に回ったのならそれはきっと人類滅亡ルート。一人で世界を滅ぼせる力を手に入れた主人公と戦ったら俺の負けが確実。ただで負けるつもりはないが、どうせ負ける。間違いなく死ぬ。というかメイケイオステイクザワールドする世界を見るくらいなら自害した方がいいわ。俺と大耀さんの両親祖父母含めた縁者とご友人悉くこの手で殺してから俺も死ぬわ。闇堕ちルートを踏み抜いたとしても友達に自分の肉親殺させるくらいなら俺が手を汚して自害するわ。

 

 それくらいの気概がないとやってられないこの世界。ディストピアでストレス社会ってレベルじゃねぇぞ。条件満たすと共闘できるゲリュオンとクリュサオルも「貴様が守る人間とは、こうも醜悪な欲望を持つ獣のことなのか?」って同情してくるレベルの人間の闇を見る最悪のシーンは絶対に踏みたくねぇでござる。あんなの見たら人の業さんがスンッ、ってなった後に全てをゼロにするわ。ルビコン川すら凍り付くわ。画面越しで友人達と「もう殺そうぜ! 俺我慢できねぇよ!」って世紀末チンピラなこと話した記憶あるぞ。友人なんか「とりあえず全部焼き溶かしてから考えない? ────メイケイオス!! テイク!! ザ・ワールド!!」とか、「これが主人公が身を削ってでも守ろうとした人間の姿か……? これが? じゃ、人魔一戴使うね……」とか言ってたぞ。あんな描写入れるからエロゲーとギャルゲーの皮を被った死にゲー兼ルート次第じゃ鬱ゲーって呼ばれんだぞ人の心どこいった運営。

 

 ああ、ちなみに『人魔一戴(じんまいったい)』というのは禍津日様の加護を手に入れると使えるスキルである。疑似的な怪魔化と言うべきなのか、妖怪化と言うべきなのかちょっと分からないが、今まで倒してきた怪魔の力を使えるようになる。このスキルを使う時に使うのは体力でも精神力でもなく、神秘を上げると伸びていく仙妖力というDLCで追加されたゲージである。仙人なのか妖怪なのかはっきりしろ。

 

 なお、こちらの人魔一戴というスキル、育てまくると英雄の召喚や英雄の力をお借りすることも可能である。禍津日様のところで戦い、勝利した英雄限定ではあるがそれでも強力なスキルなことには変わりないだろう。そこまで育つとスキルの名前が『人魔戴冠(じんまたいかん)』というお名前になる。なお英雄撃破の難易度たるや。

 

 もちろんデメリットもある。禍津日様の加護によって人魔一戴を使っている間、他のスキルは使えなくなるのだ。相性が悪いから使わない、とかではなく、他のスキルを使おうとすると体力減るわ精神力減るわスタミナ減るわステータス激減するわで大変なことになるのだ。あと、使い過ぎると魔に近付きすぎて戻れなくなって死ぬぞ! 人魔一戴は適宜解除しつつ使わないといけない。まぁ、デメリット以上に人魔一戴発動中の効果が強いので人気の高い加護であり、「あのボスの技カッコ良かったなぁ、使えたらなぁ」ができる夢のあるスキルなのだ。

 

「ま、俺が大耀さんの敵になるとかありえないでしょうよ────っと?」

 

「? どうかし────あ、瑞騎先輩と……」

 

「えーと……誰だったか……」

 

 何十周もしてるとソロに行きついちゃうからな……記憶に残っていないキャラはとことん記憶に残っていない。恋愛要素が飾りになってるなんて言ってはいけない。本来エロゲーとギャルゲーがメインだから、このゲーム。死にゲーとハクスラ要素がたくさんあるせいでプレイヤーの殆どが音を置き去りにする勢いで恋愛要素をすっぽかして走り抜けていくだけであって。なお、それでも多くのプレイヤーが瑞騎先輩のコミュだけは外さない辺り、瑞騎先輩の人気ぶりが凄まじい。

 

 そんな瑞騎先輩と共にいるのは────確か、四象の神獣の一角の加護を貰っているキャラクターだったと思うんだが……はて、誰だったか……四象はローズ先輩と瑞騎先輩以外使いにくいんだよ……!! てか瑞騎先輩を四象の神獣枠としていいのか疑問なんだが? 奥義ゲージと奥義ダメ上限上げてくれそうな黄龍はいずこ。あの人達使うんだったら茶道部にいる魔法職キャラである千茶万莱(せんちゃばんらい)さんとのコミュニティ築いた方がいいんだよ……! なんだあの頭バーサーカーソウルなキャラと勇魚とかいう鯨ァ!! 魔法使ってくださいと言わんばかりの性能しやがって……! 

 

 ……さて、そんな話は置いておいて。あの人誰だったかな……本当に思い出せない……顔じゃなくて性能と武器と加護で覚えてたせいで思い出せねぇ……えーと……あー……んー……? 頑張れ俺の記憶力。お前がまだ認知症とか若年性認知症とかではないというのなら、前世の記憶くらい思い出してみせろ。

 

「あ、思い出した。玄武の」

 

「大耀さんの方が早い……だと!?」

 

「模歩君、何でショック受けてるんだい?」

 

 しかし思い出したぞ。玄武のくせにぺらっぺらの紙装甲のキャラだったなあの人。おい亀、装甲値もっと上げろ? でないと蛇の目玉をくり抜いてから甲羅を焼いて叩き割って占いに使うぞ。

 

 記憶が正しければ彼は、玄武の加護を貰っている三年生、三野治水(みのちすい)。使う武器は確か大剣。玄武のスキルで受けてカウンターを決めろ的な紹介だったのに、装甲値が全キャラで最もカスの柔らか戦車を超えた柔らか戦車なので遠距離武器を使った方が強いという、この世全ての悲しみを背負ったキャラである。近接運用するならガッチガチの重鎧を着せて大盾と槍で盾チクさせるのが正解だが、それだけの装備を着せるくらいならどでかい遠距離武器を持たせた方が強い。悪口になってしまうが、キャラストーリーではどんな武器でも技を磨けば問題ないとか言って耐久力0に近い武器を持って突っ込んでダウンするとかいう情けない姿を見せることが多いので本当に遠距離でチクチクしてもらった方が強い。もはや運営がネタで作ったとしか思えない構成に美しさすら感じる。人気投票はまさかの3位。投票者の声は全会一致で「人気になればリワークが来ると思ったから」であった。なおずっと悲しいままだった。公式生放送でコメント欄に「ずっと悲しいまま?」ってコメントが出てきて、運営が「ずっと悲しいままだ」って言い切ったレベルでずっと悲しいままである。誰かが死ぬと発動するスキルのための必要な犠牲として人気ではあったが。

 

 ていうか狙ってんのかってレベルで四象の神獣の加護持ちは得意武器と豪語している武器じゃないやつを持たせるのが最適解である。適性バグってんぞどうなってんだ。

 

「そういえば、三野先輩に協力お願いしに行った時、婚約者に操? 立ててるから女性とは組めないとか何とか言ってたような……?」

 

「へー、あの人婚約者いるんだ。……まぁそりゃいるか。名家の跡取りだもんな。………………おん?」

 

「と、いうことは……?」

 

 我々の脳内CPUが弾き出した結論は…………………………………………

 

「「瑞騎先輩が三野先輩の婚約者……てこと!?」」

 

『わ……とか、ハァ? とか言った方がいいですかね?』

 

 ノリいいな宇迦様。

 しかし、婚約者……婚約者かあ……主人公を除くと一番の推しキャラと言っても過言ではない瑞騎先輩に婚約者……かぁ。まぁ、瑞騎先輩も名家の一人娘だもんな。名家と名家の縁を強くすると共に、後継ぎを作るのも役目、と言えば役目……なのか。古臭い使命だなおい。でも幸せならOKですが俺の推し活。馬に蹴られたくないので模歩巡は気配を消してクールに去るぜ────しようとしたその時だった。

 

「あら、巡君と明日夢さん。丁度良かったわ」

 

 まさかまさかの瑞騎先輩インターセプトである。あとなぜ俺の腕に腕を絡める。やめてくれ好きになってしまう。彼女いない歴=前世+今世の俺には刺激が強すぎる。それをやるべきは推定婚約者の柔らか戦車三野先輩なのではなかろうか。

 

「ちょっと前に美味しそうなお店を見つけたの。明日からのこともあるし、ちょっとお茶しない?」

 

「俺は一向に構いませんがね、構ってやるべき人が他にいるんじゃねぇかと」

 

「右に同じく、なんですけど」

 

「あら、後輩と親睦を深めたい先輩の気持ちをないがしろにするのかしら?」

 

「「しまったこの人逃がす気がない!」」

 

 いや、本当にどうした今の瑞騎先輩。いつもの冷静沈着というか、落ち着いた感じが無い気がするぞ? 一刻も早くこの場を離れたいと言わんばかりの強引さだ。どうした瑞騎先輩。

 

「というわけだから、あなたとの食事はまた今度にしてくれるかしら、三野」

 

「それは困る。今日のために色々と準備したというのに。それに、この婚約は翡翠、お前にも利が────」

 

「三野の子供を産むだけの人形に仕立てるための婚約に、何の利があるのかしらね」

 

 おっとぉ? 雲行きが変わってきたぞ?? 

 

「そんなことは俺が許さないし、お前の家はそうせざるを得ない程に弱っていると聞く。会食だけでも参加してくれ」

 

「嫌よ。面倒くさいし、変な薬が盛られてもおかしくないし」

 

「…………あれは俺が命じたことじゃない。家の連中が勝手にやったことだ」

 

「それでも前科がある。私は絶対に行かないわ」

 

 さてはこの闇、深いな? 名家の跡取り同士の家が勝手に決めた婚約、陰謀が渦巻かないはずもなく…………うーん、これは、あれじゃな? 瑞騎先輩を連れ去る悪役を演じることが今の最適解じゃな? だがしかし、いくらずっと悲しいままな柔らか戦車族であっても先輩。上下関係というのは大事と存じる俺としては、どうにか穏便に抜け出したいところなんだが……

 

「あら、チーちゃんじゃない!」

 

 救世主が光臨なさったぞ。三野先輩の意識を逸らした直後にさりげなく鳳凰の炎を使った幻影を使って俺達の姿を見えなくしている。────そのウィンク、今のうちに逃げろということですねローズ先輩。とりあえず讃えて差し上げろ? 

 

「今です!!(諸葛孔明)」

 

「あの漫画意外と面白いよね」

 

「ごめんなさいね、二人共。ところでどうして丸太みたいに担ぐのかだけ教えてくれる?」

 

 ローズ先輩には後でちょっとお高い感じのお菓子とパンを提供しよう。

 

「薔薇苑か。悪いが今は翡翠との会食について────」

 

「あら、あたしのことはローズって呼んでって何回も言ってるでしょ? そ・れ・と……スイちゃんなんて私の目には見えないけれど?」

 

「何?」

 

 あばよ、とっつぁん!! 俺達は瑞騎先輩の味方だぜぇええええええ!! 

 

「エッホエッホ、望まない婚約とDVはこの世全ての悪だって教えなきゃ!」

 

「エッホエッホ、人の心がない文化は廃れていくって伝えなきゃ!」

 

「二人共凄いコンビネーションだけどどうしたの?」

 

 当初の予定とはちょっと違うが、このまま伊勢参りまでの身支度も行う!! 神様から命じられたお役目に名家の柵が関与できる余地はねえぜ!! というか今日の午後から学生は休日なんだぜ!! ローズ先輩は……どうせ気付いたら合流するから問題ないな!!




三野先輩は普通にいい人です。家がクソなだけで。いい人です。柔らか戦車を超えた柔らか戦車でずっと悲しいままなだけでいい人です。それだけは勘違いしないでください。ずっと悲しいままですがいい人です。勘違いしないでください。
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