恋愛要素ありの死にゲーに転生して鉈を振り回す転生者   作:エヴォルヴ

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特に爺さん系師匠が参戦すると興奮する。


師匠キャラ参戦すると興奮する

 駅弁を買ってから寝台列車に乗り込んだ俺達は、男女で分けられた部屋に荷物を置いて外の景色を眺めていた。前世も今世も自然や町並みというのは変わらないもので、綺麗なものは綺麗なままだ。

 

「メグちゃん、スイちゃんとムーちゃんはカフェスペースで軽く何か食べるみたいだけどどうする?」

 

「なら俺も行きますかね。今後の動きはそこまですり合わせる必要ないっすけど」

 

 カフェスペースで提供される料理や飲み物なども、この寝台列車の醍醐味の一つだ。学割や学生向けのプランもあったりするので、利用してみるのもありだろうということでこの寝台列車のチケットを買ったのだ。新幹線ですぐに行ってもいいが、こういうゆったりとした時間も大事にしたい、そんな年頃である。

 

 ローズ先輩と話をしながら列車の中を歩き、落ち着いた内装のカフェスペースに足を運ぶと、一般のお客さん────ご年配のお客さんが多い────に混ざるように大耀さんと瑞騎先輩がソファ席に座っていた。ちなみに俺もローズ先輩も制服ではなく私服で、大耀さんも瑞騎先輩ももれなく私服である。ローズ先輩と瑞騎先輩は……なんかお忍びで旅行に来た麗人って感じ。ローズ先輩、ドレスシャツってどこで買ったんですか? で、大耀さんは動きやすそうなワンピース系の服。俺? 紺色のポロシャツと動きやすい黒いパンツだが? 着やすくてとてもいい。今は着ていないが、カーディガンも持ってきている。

 

 もちろん霊子化させた状態で戦士の装備も持ってきている。と言っても俺の装備は金属製のものが少なくて、獣の皮を重ねて作っている軽装なのだが。もちろんアムリタとか霊薬とかその他諸々で強化されているので、下手な鎧よりも頑丈だ。……それはそれとして。

 

「何だそのパフェ」

 

「もはや塔ね」

 

 それは、パフェというにはあまりにも大きすぎた。

 大きく、

 高さがあり、

 彩り豊かで、

 そして甘い香りを漂わせている。

 それはまさに塔であった。

 

「いやぁ、どんなものかなって興味で頼んだら出てきたんだよね」

 

「想定よりも大きかったわね」

 

「そりゃあそうでしょうよ……」

 

 大耀さんと瑞騎先輩が食べているのは、何の何の何なのか分からないレベルで巨大なパフェだ。いや、分かる。分かるんだ。メロンだ。メロンのパフェだ。それは分かる。だが、そのサイズが理解不能なレベルだ。なんだ80cm越えのパフェって。どんなバランスで成り立ってんだよ。というかメロンの量が尋常じゃねぇ! 一個以上は使ってるだろ!? しかもそこに牛乳ソフトクリームに筒状のラングドシャに照り輝いているフロランタン……一番下はカスタードプリンか? 頭おかしいんじゃねぇの? それを目を輝かせてパクパク食べている二人の女の子にも尊敬するが。

 

「食べる?」

 

「いやぁ……甘いのはそこまで得意じゃなくて……すいません、フルーツサンドと紅茶2つずつください」

 

「クリームはどうなさいますか?」

 

「一つは生クリーム、一つはカスタードの……大盛で」

 

「かしこまりました」

 

「甘いの好きなんじゃない」

 

 流石に間接キスとかちょっと気にする年頃なのです。というかこちとら前世バイト戦士だったけど学生で死んでる人間だぞ。色々考えたり勘違いしちゃう年頃だぞ。なおちゃんと弁えるところは弁える空気読みの能力はある。あるけど使わないだけで。

 

「あ、ローズ先輩の分も頼んじゃいましたけど、紅茶で良かったです?」

 

「ええ、もちろん。あたしの好み覚えてたのね?」

 

「いやぁ、かれこれ何年付き合いあると思ってんすか」

 

 こちとら中等部からの付き合いぞ? 中等部の頃から気狂い根性極まれりな戦い方してたからな、俺。しつこくローズ先輩に関わりに行ってたのもあるかもだが、俺の戦い方を見かねて注意されたりもした。注意の結果変わったか? 変わらないから超新星も使うんだが? 

 

「考えてみると、何年も学園にいるのに、四象の神獣から加護貰ってる人で関わり持ってるのお二人だけっすね」

 

「寮で会ったりも……しないものねぇ。女の子だもの」

 

「まぁ、白虎と青龍の加護貰ってる人、女性ですしね」

 

 なぜか俺に決闘の申し込みしてきやがる一人は白虎の加護を貰っている同級生である。一応丁寧にお断りの手紙を出してるが、そろそろ面倒くさいので紙ごみに出そうかな……資源ごみ1キロを1ポイントに変換してくれるスーパーあるし。

 

「というか瑞騎先輩とローズ先輩、決闘申し込みやめさせてくれません? 断わり入れんの面倒になってきたんですが」

 

「決闘なんかあるんだ、学園って」

 

「そのうち大耀さんもやることになるぞ」

 

「ええ……戦うのは怪魔だけで十分なんだけどな」

 

 真夏の体育祭と言わんばかりに、学園では生徒達がしのぎを削る決闘祭ってのがあるからな。ゲームでは優勝賞品でクリア済みのダンジョンのボスアムリタ結晶とレア素材がランダムで入手可能なイベントだったので、参加することが多かったが……俺はそれより仙骨周回に忙しいのでいつも不参加だった。仕方ないだろ、俺が欲しい装備を作るために必要な仙骨の要求数が700個なんだから。馬鹿じゃねぇのか。

 

「お待たせしました、フルーツサンドと紅茶セットでございます」

 

 そうこうしているうちに届けられたフルーツサンドと紅茶。フルーツサンドはメロンと甘夏か……甘夏、丸ごと一個入ってないかこれ。最高かよ。

 

「んじゃ、いただきます────んが」

 

「丸ごと行った!?」

 

「いつ見ても蛇みたいね」

 

「顎外れないのが凄いわ」

 

 うーむ、甘夏半分に切れてるから行けると思ったけど予想通り半分いけた。いや美味いな。甘夏の甘酸っぱい果汁とカスタードの濃厚な甘み、そしてふわふわ食感パンが脳髄に直接殴り込みをかけているような味わいだ。こういう美味しいものを食べると生きててよかったって思うわけ。

 

「呵々ッ、相も変わらずいい食いっぷりよな」

 

「いやぁ、師匠には負けますよ────────────ん?」

 

「さらに場数を踏んだと見える。あの時の瘦せっぽちが、いい気を纏うようになったものよ」

 

 ギギギッ……と、思わず反応してしまった声がした方を向くと、俺がお世話になったと同時にトラウマを植え付けていった人が、酒が入っているであろう徳利を片手に立っていた。

 

「しししししししししししししっ、師匠!?!?!?!?!?」

 

「おう、息災だったか巡よ」

 

「師匠の方は相変わらず三途の川が干上がるレベルで元気そうですけどねぇ! 本当に100歳超えてんすかあんた!?」

 

「今年で120を迎えたわい」

 

「なんで死んでねぇんだあんた!?」

 

「呵々ッ、武を極めれば寿命など些事も同然よ」

 

 何言ってんだこの人!? いや、まあ確かにこの人が死ぬビジョンが見えないのもまた事実なんだけどさ。

 

「ねぇ模歩君、その人は……一体?」

 

「俺の師匠」

 

「へぇ、君の師匠! …………師匠!?」

 

 さっきも俺が叫んだだろうが聞こえてなかったのか大耀さん。パフェに夢中になってたのか? ……まぁ、それはともかくとして。まさかここで師匠に出会えるとは思ってもいなかった。確かに旅行好きだとは聞いていたし、小さい頃に一度だけ連れて行ってもらったことがあったが……

 

「して……そっちの男児はお主の友人だとして……そっちの少女二人、どちらがお主のコレだ?」

 

「違いますー! 大耀さんは俺の友達で、瑞騎先輩とローズ先輩は俺の尊敬する先輩ですー!」

 

「まさか二人どちらもか!?」

 

「耳がイカレて聞えてねぇのかこの爺!?」

 

「呵々ッ、冗談というやつよ。笑って聞き流さんか」

 

「洒落にならねぇってんだよ……」

 

 酔っ払ってんのか、師匠。今の一瞬だけで凄ぇ疲れたんだが……俺が討魔主人公たる大耀さんか討魔屈指の人気キャラたる瑞騎先輩の恋人になるとか烏滸がましいにも程があるだろうが。ただの一般家庭出身気狂いだぞ俺は。シバき倒すぞこの爺。

 

「自己紹介が遅れたな。儂は藤原禅明(ふじわらぜんみょう)。ただの(いくさ)狂いの爺よ」

 

 着流しを着ている背筋がまっすぐなご老体、藤原禅明。討魔には登場しなかった、この世界に生きる実力者だ。重錨さんもそうだが、普通に子供以上に化け物染みた実力を持ってる大人がこの世界には存在する。もちろんそれは上澄みの人達であることは間違いない。だが、その中でも師匠は別格の実力を持っていると言っていいだろう。

 

 だって、師匠は神様や神獣の加護を貰っているわけでもないのに、斬撃飛ばすわ鎧を壊さずに中身だけ壊すわ百鬼夜行で討ち漏らしたらしい怪魔を木刀の居合で切り捨てるわで頭のおかしい人なのだ。そんな人を師匠にした俺も俺ではあるが……師匠のお蔭でここまで来たと言っても過言ではない。ありがとうございます師匠。でもやっぱりスキル無しで斬撃飛ばすのは無理ですって師匠。

 

「藤原禅明……羅刹剣聖と謳われたあの?」

 

「おお、懐かしい話よな! 荒れておったからなあ、あの頃は……しかし、100年以上昔の話をよくもまぁ知っておるものよ」

 

「瑞騎先輩、師匠のこと知ってるんです?」

 

「知っているも何も……四象の神獣の加護を与えられている家の人間や、長く続いてる家であれば誰でも知ってる方よ?」

 

 そんなに有名人なのか、師匠は。……そういえば、正月であろうが関係なくやっていた修行中、何か物腰が柔らかくて貴族みたいな雰囲気を纏っている人が師匠の住んでるミニサイズ武家屋敷にやってきて、色々話をしていたような……? 

 

「瑞騎……ほう、お主が当代の麒麟の加護を持つ戦士か。何とも可憐だが……よい目をしておるわ。となると、そっちの男児は朱雀か? 薔薇苑の坊に面影を感じるぞ?」

 

「師匠、ローズ先輩は鳳凰っす」

 

「呵々ッ! 鳳凰か! そういえば朱雀は仮の姿であったな! 真なる姿まで引き出すとは見事なものよ!」

 

「光栄です」

 

「いつも通り話さんか。爺にへりくだることはないぞ」

 

 いつの間にか俺の隣に座って呵々大笑している師匠は、何とも機嫌が良さそうだ。

 

「ならば、そっちの少女はどうだ? まだ戸口と言ったところだが……よい戦士の素質を感じる。名は?」

 

「わ、私は大耀明日夢で、加護は宇迦様……宇迦之御魂(ウカノミタマ)様から貰っています」

 

「宇迦之御魂……豊穣の女神か。豊穣はいい。いい酒が出回るしな!」

 

 まさかの酒である。だがまぁ……確かに分からんでもないことではある。前世でもいい米が収穫できると旨い酒が飲めると定食屋の常連さんが話していた記憶がある。朧げで、顔は全く思い出せないが、声は覚えている。

 

『相変わらずね、あなたは』

 

「おお、麒麟か!」

 

『まさか巡の師があなたとはね。……だからこそ、あんな戦い方なのかしら?』

 

「巡の戦い方とな?」

 

『毒も罠も何でも使うし自爆もする、勝てばいいの精神が具現化したような戦い方よ。私はアリだとは思うけれどね』

 

「ほう! 見事な戦をしているようだな、巡よ」

 

 当たり前ではあるが、師匠は俺の戦法を否定するどころか褒めてくる人だ。迷えば敗れると言わんばかりに、あるものは全て使って何が何でも勝利しろ、が師匠の教えである。仮にもしここで仕掛けたら、師匠はパフェのスプーンで俺の目を抉るくらいはやってくるだろう。それくらい戦いは何でもありが基本、という感じなのだ。そんなことする必要が無いレベルで師匠は武を極めているから、手刀で斬られる可能性すらあるが。

 

「して、お主らは何故この列車に乗っている?」

 

「伊勢参りです」

 

「ほう、伊勢参りか。単なる観光……という感じでもなさそうに見えるが?」

 

「まぁ、そうですね。そういう師匠はどうしてこの列車に?」

 

「趣味の旅行よ。長年生きていて寝台列車というやつは利用した試しがなくてな。物は試し、というやつよ」

 

 師匠でも体験したことがないことってあるんだなぁ……

 

「しかし伊勢か……めぐり合わせというやつか?」

 

「え?」

 

「儂の行先も伊勢よ」

 

 ……こんな偶然があっていいのだろうか? いやでもしかし、師匠がいるのであれば何かトラブルがあってもワンチャンあるか……? 

 俺が三人にさりげなく目くばせすると、俺の意図を汲み取ったのか、三人ほぼ同時に小さく頷いた。

 

「師匠、ちょっとお願いが……」

 

「ほう? お主が頼み事とは珍しい。何だ?」

 

「ある程度でいいので引率者的な感じで一緒に来てくれません?」

 

「その心は?」

 

「何かトラブル起こった時のリカバリー要員」

 

「呵々ッ! 久しぶりに会った師に対してそれか! いいだろう! 可愛い弟子の頼みを聞いてやるのも師としての務めだろうよ!」

 

 よっしゃ、引率者ゲット。




藤原禅明
羅刹剣聖と謳われたやべーやつ。道場破りみたいなノリで名家に突撃して全てを薙ぎ倒していった人。なお名家からすれば黒歴史もいいところなので公式の記録から抹消されている。
加護とか持ってないが、斬撃飛ばすくらいはしてくるお爺さん。御年120。何で死んでないだろうか。ちなみに百鬼夜行が起こると東北に鬼武者が現れて斬り倒していくという言い伝えがあるがこの人のせい。
巡の戦法が気狂いなのも大体この人のせいである。あるもの全てを使って戦に勝て、という教えによって極められた気狂いである。気狂い英才教育の才能がある。この人が師事していなかったら無難で安パイな戦いをする巡がいたはずである。
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