恋愛要素ありの死にゲーに転生して鉈を振り回す転生者   作:エヴォルヴ

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伊勢参り、生きてる間にやりたいものです。


おいでませ伊勢神宮(まだお宿)

「ふぅむ……三途の川でカロン様に会うかと思った」

 

「あなたその程度で済んでること自体おかしいわよ? あと三途の川なら奪衣婆じゃないかしら」

 

「呵々ッ、久しぶりに滾ったわい。よく鍛えているようだな、巡よ」

 

 寝台列車から降りた後、俺達はホテル────というよりも旅館────にチェックイン。師匠が宿泊予定だった宿もここだったのが巡り合い感じる、と思って部屋に荷物を置いたりどこに何があるのかを確認していた時。師匠が俺とローズ先輩がいる部屋にやってきて、外の庭園を借りたから久しぶりに修行をつけてやると言ってきたのだ。

 

 トラウマがあるとはいえ、師匠との修行が楽しかったことは事実。そして師匠に逆らえるわけがないので、俺は師匠についていき────いつものようにぶん投げられるわぶった切られるわぶっ叩かれるわの三十三重苦を叩き込まれた。師匠の流派の教えは『勝て』。それだけである。なので師匠も何を使ってでも勝て、という教えを俺に叩き込んだわけだ。

 

 そして今日は回復ができるローズ先輩、瑞騎先輩、大耀さんがいたのでいつも以上に厳しい訓練であった……俺は普通に自分の得物を使っていたが、師匠は木刀。なのに思い切り腕を切られたり、胸を掻っ捌かれたりしました。『茶菓子同好会』の皆さんの回復魔法や俺自身が使える回復スキルが無かったら今頃あの世にいる頃だ。俺が学園に入るまでの6年間、師匠が色々と教えてくれていたが、手加減していたんだなぁ……と思いつつ、今は宿の温泉に浸かっている。

 

「そういえば師匠、ここの旅館の庭園、汚して良かったんです?」

 

「おうよ。元々ここの庭園は戦士同士で戦うことで神々や神獣、守護獣に戦いを捧げ、技を磨く場所だからな」

 

「相撲と同じってことですか?」

 

「言い得て妙だな。今は廃れて久しいものではあるが……大将と女将からは大いに喜ばれたわい」

 

 廃れて久しい文化をこの目で見れて良かったと喜んでいたそうだ。……今思うとご年配のお客さんらしき人達や、地元の人かなって人達が庭園に集まっていたような気がする。なるほど、廃れてしまった文化だけど、皆の楽しみでもあったわけだ。……血の気が多くねえですかね。

 

「この温泉も戦士が傷を癒すために利用したと言われている秘湯、だわな」

 

「へー……いつの話です?」

 

「この温泉の記録が残ってるのは戦国乱世の時代ね」

 

 中々歴史のある温泉のようで。

 

「それにしても……あなた、綺麗な戦い方もできたのね」

 

「? そりゃあ、守破離って言葉があるくらいですし、基礎は大事でしょうに」

 

「それはそうだけど、あなたに言われるとちょっとあれね」

 

 言い方酷くない? ……まぁ、気持ちは分からんでもないけど。俺も久しくやっていなかったが、演武と言われるような戦い方も一応はできる。やらないだけで、やれる。普段なら絶対にやらないけど。綺麗な戦い方で怪魔を圧倒できるならいいが、それで勝てる自信が全くないから俺は何でも使う戦法を取っているわけで。配信者のようなプレイスキルなんて存在しないし、武を極めた師匠のような戦士でもないのだ。

 

『基礎があれならば、どうしてあんな戦い方になったんだ』

 

「世の中鉈で頭かち割られて生きてるやつなんざいねぇんですわ」

 

「斬れば死ぬ。殺せば死ぬ。血が流れるのなら殺せる。道理よな」

 

『この師匠あってこの弟子ありか』

 

 ダメージが通るなら殺せる。血が出るなら殺せる。ロックオンできるのが悪い。俺達死にゲーマーなんて、大体の敵に対してその程度の認識である。

 

「して、巡よ」

 

「はい」

 

「伊勢参りの目的はなんだ?」

 

「天照大御神様に禍津日様がいるところに行く許可貰います」

 

「ほう、禍津日……知らぬ神だな」

 

 師匠でも知らない神だったのか、禍津日様。それだけやらかしたことが大きいということなのか、それとも神様や神獣がそれだけ全力で秘匿した存在なのか……どちらかと言えば前者か? まぁ、ひいひいひい爺ちゃんの走り書きから読み取るに、定期的に出歩いているようだが。自由な神様だなおい。

 

「何故その神に会いに行く?」

 

「加護が貰えればいいなってのが5割、過去の英雄と戦いたいのが5割」

 

「ほう! 過去の英雄とは何ともそそる戦ではないか」

 

 師匠ならそこに反応すると思って口に出したが、やはり反応したか。これで禍津日様のところに行く時も引率者的な立場で来てくれる可能性が高くなった。だが一番槍は絶対に譲らねえ。まずは俺が挑んでからだ。そこだけは絶対に譲るつもりはない。

 

「メグちゃんのことだから、加護目的だけじゃないと思ってたけど……」

 

「過去の英雄に会えるかもしれない、しかも戦えるかもってんなら心躍るでしょうが」

 

「気持ちは分からなくはないけどね」

 

 露天温泉に浸かりつつ、俺は岩を手すり代わりにして立ち上がる。大分長湯していたし、そろそろ上がらないとのぼせてしまう。湯上りの水分補給も大事である。前世はそれを怠って死にかけたことがあるからな……そのこともあって1日2リットルの水分補給は心掛けているつもりだ。ウォーターサーバーもあったし、ちょっと水を飲んでから部屋に戻ろう────そう思った矢先。

 

『やっぱり綺麗ですよね、瑞騎先輩の体』

 

『それを言うならあなたも出るところが出ていて羨ましいわ。ほら、私は……ちょっと、ね?』

 

『そうですかね? 私は先輩の方が綺麗だなって思いますよ』

 

『きゃっ……ちょっと、変なところ触らないで?』

 

 絶対に聞いてはいけないであろう声が聞えてきた。露天風呂ということもあって、竹によって仕切られてはいるが、話し声が聞こえてしまう。盗み聞きする趣味もないし、聞いているのがバレたらどんな目で見られるか分かったもんじゃない。社会的に俺が死ぬ。ローズ先輩と師匠は……サウナに行ったようだ。俺はサウナ苦手だから行かないが……さっさと上がって部屋に戻ろう。……いや、マッサージチェアがあったな? あそこに行こう。うん、そうしよう。乙女の秘密を男である俺が聞いてはならぬだろう。

 

 そんなことより旅館の夕食が気になるところである。ホームページを見た感じ、採れたばかりの海鮮を楽しめるとのことだったので楽しみだ。これでエビカツバーガーとか出てきたら俺は笑ってしまう自信がある。あ、でも瑞騎先輩は喜びそうだな。あの人なぜかは知らないがジャンクフード好きだし。ゲーム本編でもジャンクフード好きな理由は……語られていたな、そういえば。確か、戦士になったばかりの頃にちょっとした興味で食べたハンバーガーが美味しくて、それから好きになったんだったか? よく覚えていないが、そんな感じだったと思う。まぁ、いいとこのお嬢様が栄養バランスとか全く考えて無さそうな味の暴力と言っても過言ではないハンバーガーを食べたらそりゃハマる時はハマるわな。なぜ初っ端からダブルパテ&三種のチーズバーガーセットを注文してしまったのか……コレガワカラナイ。いい趣味してるよね。

 

 体の水気を拭き取ってから髪を乾かし、部屋から持ってきた浴衣を着て待合室? に置いてあるマッサージチェアに腰かけてスイッチオン。うーむ、お高いマッサージチェアだからなのか、素晴らしいマッサージ体験が見込める……もう皆が帰ってくるまでここでマッサージされつつ寝てしまおうか? いやしかし、それをしてしまうと夜眠れなくなってしまう……くっ、俺はどうすれば……! 

 

「……ぐぅ」

 

 マッサージチェアには勝てなかったよ……

 

 

 

 

 

 ──────────────────────────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

「ねぇ瑞騎先輩、コイバナしましょ、コイバナ」

 

「唐突ね?」

 

「女の子が二人きりになったんですし、コイバナするのが必然ですよ」

 

「そうなのかしら……?」

 

 我らが気狂い巡が温泉から上がり、マッサージチェアの上でどこぞの玉葱騎士のような寝息を立てつつ仮眠に興じている頃。温泉に浸かっているうら若き乙女二人はコイバナをしようとしていた。これに聞き耳を立てる人間もいるかもしれないが、そんな無粋な真似をするような人間はここにいない。そんなことをすれば宇迦之御魂と麒麟が容赦なく鉄槌を下すだろう。

 

「とはいえ、私は気になってる男の子とかはいないんですけどね」

 

「コイバナできないじゃない」

 

「できますよ? 瑞騎先輩のコイバナ聞きたいですし」

 

 それが目的なのでは、と翡翠が気付いた時にはもう遅い。気狂いの戦闘を超新星まで見ても記憶を消すことをせず────ギャン泣きはしたが────巡があんな戦い方をせずともいいくらいに強くなろうと心に決めたほどに誉れの素質(不名誉)を持っている大耀明日夢は、もう目がキラッキラしている。もう絶対に翡翠からコイバナを聞き出すまで引こうとしないレベルでキラッキラ目を輝かせている。

 

 戦士と言えども女の子。色恋が気になるお年頃というやつである。自分はまだそういう気になる人を見つけているわけではないが、気になる人がいるであろう恋する乙女が自分の近くにいるなら根掘り葉掘り聞きまくりたいお年頃。カセキホリダーならぬコイバナホリダーである。黒い化石を手に入れて赤骨100%になるまで掘って掘って掘りまくりたいお年頃なのだ。

 

「私のコイバナ、と言っても、面白いものは何も────」

 

「うっそだ~! 瑞騎先輩、模歩君のこと見る時の目とか接する態度とか、全然違いますもん!」

 

「………………そんなに違う?」

 

「もう、全然。ザ・恋する乙女! って感じですよ?」

 

「………………そう」

 

 隠していたつもりだがそんなに分かりやすいか、と翡翠は思わずブクブクと温泉に口まで沈む。長く、艶やかな髪はまとめてあるので温泉に触れることは無い。

 

『この子が機微に鋭いだけだと思いますよ。現にあの玄武の────三野、でしたか? 彼は巡のことをあなたの盾役と認識していたようですし』

 

「まぁそれはそれとして! 模歩君のこと、いつから好きなんですか?」

 

「…………………………本当に、昔から。私が中等部1年の時に一目惚れ……一目惚れなのかしら、あれ。とにかくそれから、ずっと」

 

 ここまでバレているのならもうどうにでもなってしまえ、という思いで顔を真っ赤にしつつ口を開く翡翠。観念した翡翠の口から語られる馴れ初め────まだ付き合ってはいないが────にもう明日夢の乙女座の心は覚醒できるレベルまでゲージが溜まっている。なお乙女座の男のように阿修羅はまだ凌駕できない。

 

「凄い長い間片想いしてる……! あれ? でも模歩君って学園の初等部には入ってなかったんですよね?」

 

「ええ。……初めて会った時はその……私は凄く荒れていて、ちょっとダンジョンとか、学園とかそういうものから離れてメンタルケアに努めようってことで遠出したのよ」

 

 鮮明に思い出せる、最初の死に戻り。亜人の狂戦士と屍犬に手足を食いちぎられ、頭を叩き割られて死に戻りを経験した時。恐怖に呑まれたあの時のことは、未だに夢に見ることがあるくらいだ。

 

「そんな時に、彼に────巡君に出会ったわ。当時の私はやつれて、精神的にも弱ってて、凄く驚かれたわね」

 

「瑞騎先輩がそんなに憔悴するって……想像できないな……」

 

「昔のことだからもう死に戻りには慣れたわ。……それで、憔悴しきった私の手を引いてハンバーガーショップに連れてってくれたの」

 

「なんでハンバーガーショップ……」

 

「お肉を食べれば大体元気になれるって師匠が言ってた、だったかしら。そう言ってたわ」

 

「ええ……」

 

 憔悴している人に食べさせるものではないだろう、と思いつつも、翡翠の好物がハンバーガーなどのジャンクフードであることを知っている明日夢は内心これが理由か、と納得していた。

 

「その時のハンバーガーは本当に美味しかった。思わず泣いちゃって、巡君が大慌てしてたわね」

 

「あの模歩君が大慌てしてる姿……結構想像できるな」

 

 ダンジョンでもスキルの熟練度上げしている時に「怪魔の体力全然減ってねぇぞ!? 全く楽しませてくれる」とか、「レア素材が全く出てこないのなんて美しいの美しくないわぶっ飛ばすぞ」とか、「全力で戦士を遂行する!!」とか、「俺は勝利こそをリスペクトする!! グォレンダァ!!」とか、意味不明な言葉を発しつつ戦っていたりするので、大慌てしているのは想像できる。それは翡翠もなのか、楽し気にクスクスと笑う。

 

「まぁ、そういう出会いをしてから、両親が迎えに来るまで一緒に遊んだりもしたわ。川遊びなんてやったことがなかったから新鮮な体験だったわね」

 

「女の子と川遊びって……中々攻めてるなぁ、模歩君……楽しかったですか?」

 

「凄く楽しかったわ」

 

「それなら良しってやつかもしれませんね!」

 

「それで、気付いたら巡君のことが好きになってたわ。人生って分からないものね」

 

 恋する乙女のコイバナを聞いたことで明日夢の乙女座ゲージはマックスに至っている。この状態であればどんな怪魔が相手でも────ゲリュオンとクリュサオルが相手でも彼女は勝ちを獲りに行けるだろう。それくらいキュンキュンしている。寿命が10年は延びたと感じている。

 

『でも、あの時のことを話題に出せないのがこの子の悪い所よね。巡はとんでもない鈍チンだっていうのに』

 

「え!? アピールしましょうよ瑞騎先輩!?」

 

「私の心臓が持たないわ」

 

「心臓が持たないくらいなんですか! 恋は戦争ですよ!? もう模歩君が滅茶苦茶意識するレベルでガンガン行きましょう!?」

 

「それができたら苦労しないのよ……」

 

 甘酸っぱい恋模様に神も神獣も人間もエネルギーが補充される中、精神がガリガリ削られているのは翡翠のみ。悲しいかな、もっとグイグイイケイケドンドンしないと我らが気狂い巡は墜とせない。撃墜できても捕まえなければ意味がない。まだライバルはいないが、そのうち一人追加されることが決定されているので、今のうちに押せ押せでいかなくてはならないのだが、それが出来たら苦労していないのが翡翠クオリティ。恋する乙女の恋が成就する日はまだ先のようだ。




ちなみに恋する乙女のライバルは身近にいる。
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