恋愛要素ありの死にゲーに転生して鉈を振り回す転生者   作:エヴォルヴ

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そのうちやろうと思っているのが人魔戴冠獲得前なのに無理矢理出張ってきた新選組&薩長同盟VS大規模百鬼夜行。

クソ暑くてもリハビリは涼しい部屋の中。


いざ駆けよ伊勢神宮

 天照大御神様を祀る内宮と、天照大御神様の食事を司る神である豊受大御神(トヨウケノオオカミ)様を祀る外宮の二つが代表的な伊勢神宮。しかしこの伊勢神宮、125社が集合したものだそうだ。一般的には伊勢神宮と言われているが、正式名称は神宮らしい。神宮ってもしかして、伊勢にしか存在しないのだろうか。

 

「参拝、こんな朝早くからやってるもんなんですね」

 

「朝の5時からやってるみたいね」

 

 今俺達がいるのは伊勢神宮の外宮、その入口と言ってもいいのかもしれない火除橋を渡った先にある手水舎。清盛楠もでかい木だなぁ、と思いつつ、この木の枝を素材にした杖とか絶対強いだろうなぁという罰当たりなことを思いながら見てきた。

 

 お清めを終えた俺達は鳥居の前で一礼した後、鳥居の先に足を踏み入れると……入っただけのはずなのに、世界が切り替わるレベルで空気中のアムリタや霊気の量が爆増した。神域というのは大体そんな感じなのかもしれないが、地元の神社とか祠とは別物かと思うレベルだ。

 

「凄いな……ダンジョンともまた違う、なんかこう……安心する感じがする」

 

「迷宮の霊気やアムリタは怪魔の力で穢れているからそう感じるのかもしれないわね」

 

「アムリタ結晶にしたらどんな純度のやつになるのか気になる」

 

「罰当たりなこと言わないの」

 

 実際、討魔では加護のレベルが最大になった神様や神獣、守護獣を祀っている神社や祠に行くとその属性に対応したアムリタ結晶や素材が手に入る。無属性がメインである宇迦様であれば『透明無垢なるアムリタ純結晶』と『豊穣女神の稲束』というものが手に入るし、麒麟であれば『聖光放つアムリタ純結晶』と『麒麟の輝角(きかく)』が手に入り、鳳凰なら『聖火燃ゆるアムリタ純結晶』と『鳳凰の尾羽』が手に入るのだ。これらの素材とアムリタを使って専用武器を強化したり、最強武器を作ったりするというのも討魔のエンドコンテンツであった。

 

 なお最強装備を作った後、二周目に行くと店に売っている普通の武器が最強武器の攻撃力を上回っているとかがざらなのが美しさポイント。難易度レベルがカンストする8周目以降であれば最強武器の強化派生が生えてくるので、8周目以降が本番な武器だ。なお、8周目以降に登場する強化派生は素材が他にもあれこれ要求されるので素材マラソンが開催される。色々と美しすぎる。

 

「ふぅむ……」

 

「師匠?」

 

 引率係としてついてきてくれた師匠が意味深に唸った。

 

「前に来た時とは何やらアムリタと霊気が違うようだな。……混ざっている、と言うべきか?」

 

「混ざっている……?」

 

 何と何が混ざっているというのか。いつもダンジョンに潜っている俺達よりもアムリタや霊気の感知能力が高いらしい師匠が何か違和感を感じているのだから、何かが起こっているのだろうが……神様のいる場所に喧嘩を売りに来るような命知らず、いるんだろうか。

 

「邪気はない。しかし、ここで祀られている神でもない何かが、この神域に入り込んでいるようだな」

 

「怪魔ではない、俺達が知らない神様ってことです?」

 

「おうよ。この感じからして、日ノ本の神ではないな」

 

 うーん……となると、海外の神様か。日本の神様に会いに来るようなフットワークの軽い神様……結構いるな。討魔の神様は仕事はきっちりこなすが、プライベートは自由に観光したりしている。DLCで追加された神────神というか天使か、あれは。ミカエル、ウリエル、ラファエル、ガブリエル、サンダルフォン、メタトロンなども観光で色々食べて回っていたり、遊園地ではしゃいでいたりしていたし。なぜか社畜なイメージがあるハデス様も家族サービスと言って家族とペットを連れて慰安旅行をやったりしている。オンオフしっかり切り替えられるのはできるやつの証拠よ、と北欧の神様であるオーディンが言っていた。

 

 だから、ワンチャン伊勢神宮に海外の神様がやってきていて、天照大御神様とか豊受大御神様とかと話をしているのかもしれない。ママ友兼ファミリー云々言ってゼウス様の元人間の奥さん達とお茶しているヘラ様もいるくらいだ。まさかクレイジーサイコパスメンヘラレディとして描かれることが多いヘラ様が、他のゼウスの奥さんと仲良くしていて、しかも子供や孫を可愛がっているという描かれ方をされるとは思ってもおらず、当時のSNSの急上昇キーワードに『どうしたヘラ様』なんてキーワードがランクインしたくらいだ。理由は……うん、夜の相手がヘラ様だけだと、神様はどんなに乱暴に抱かれようと壊れないので滅茶苦茶に抱き潰されて腹上死してしまうからだそうだ。俺が知っている前世の神話のヘラ様的にはそれでも自分だけを愛してくれるならOKな気がしないでもないが……どうだろう? 違うか? ……違うか。

 

 とにかく、それくらい神話の内容とかも違ったりするこの世界、どんな神様がここに来ていてもおかしくはないだろう。誰が来ているのかは凄く気になるが……今回の目的は天照大御神様に許可を貰いに行くことだ。豊受大御神様にも挨拶ができればしていきたいところだが……討魔では毎日天照大御神様に料理を作って忙しくしていたし、多分いたとしても料理の研究に忙しくしているだろう。

 

「とりあえず参拝しに行きましょ」

 

「ですね。にしても今日は人がいないなぁ」

 

「まだ5時だからじゃないかな」

 

 朝っぱらでも人がたくさん来ているイメージがあったが、俺の見当違いだったか? 俺達以外の人間────伊勢神宮で働いている方々を除く────が一向に見当たらない。ゆっくり見て回れるからラッキーではあるが、何か変な感じだ。

 

 とりあえず伊勢参りの決まりである外宮からのお参りで豊受大御神様に形だけでもいいから挨拶とお参りを……なんて思っていた矢先のことだ。

 

「────────ブルッ」

 

「…………………………………………………………………………は???」

 

 ミオボエシカナイウマガイタ。

 夜の闇よりも黒く、光すらも飲み込むような漆黒の毛並みと、間違いなく普通の馬ではないと分かる神気にも似た、強いオーラと見事なまでの筋肉。華美な装飾は一切なく、ただ戦うためだけの馬鎧を装着しており、黒銀の戦車が繋がれている。そして右目は魔術的な刻印が刻まれた宝石の義眼。

 

「なんでここにてめぇがいるんだクリュサオル……!!?」

 

 百鬼夜行はまだ先のイベントだろうが!? いつの間に復活しやがった!? いやしかし今のところ敵意とかは全く感じないから戦うつもりはないのだろうが……というかこんな神域、怪魔であるクリュサオルにとっては猛毒の沼地みたいなもののはず…………いや待て、こいつがいるということは────

 

「待っていたぞォ──ー!! モフ・メグルウウウ──ー!!」

 

「やっぱりいるよなぁてめぇがよぉ!!?」

 

 上空から飛来した黒い影は某フルフルニィ忍者のような叫び声を上げつつ、俺に得物である大剣を叩き込む────ことはなく、魔剣を手にする対価として自由が利かなくなったはずの両足で石段にふわりと着地。なんで自由が利かない脚で立ててるんだよ。

 

「ゲリュオン!? 怪魔がどうしてここに……!?」

 

 ここにいるはずのない存在、黒騎士ゲリュオン。その姿を見た俺達の警戒レベルは一気にマックス。だが……向こうから敵意も戦意も感じない。

 

「うん? ああ、お前達はモフ・メグルの……そこな男児は戦友で、乙女二人は……まぁ、モフ・メグルの番か。英雄色を好むと言うしな。そっちの羅刹の類は誰だ?」

 

「おいこら大耀さんと瑞騎先輩に失礼だろぉ!? 立派な戦士だぞこの二人もよぉ!!?」

 

「模歩君の方がちょっと失礼だよ」

 

「なんてこった」

 

 向こうも戦意がないのでこちらとしても戦うつもりはないが、警戒は怠らない。というか何かしたら多分師匠が率先して斬る。加護を持っていないだけで師匠は普通に霊子化もできるので刀を持ち歩いているだろうし、向こうもそれが分かっているからなのか、下手な動きは見せない。いつもなら俺がいるのを見た瞬間殺しに来るレベルの戦闘狂なのだが……百鬼夜行じゃないからか? いやしかし、ダンジョンの探索中に乱入して殺し合いを所望してくるくらいには戦闘狂なんだよなこいつ……

 

「なるほど、お主、怪魔だが神の席に座った例外か」

 

「鋭いなご老体。いかにも。我が名はゲリュオンとクリュサオル。武神にして戦神。怪魔にして騎士神。戦士や弱き民草から信仰を受け、神の末席を与えられた者だ」

 

「…………ああ、そうか、だからてめぇらはこの神域に足を踏み込んでも何のダメージもないのか」

 

 曲がりなりにも神になった存在。百鬼夜行にて怪魔を率いて現れる姿は怪魔としての側面が強いので忘れがちだが、こいつらは一応神なのだ。よく観察してみれば、今のゲリュオンとクリュサオルは怪魔として現れる時よりも姿がきっちりしているし、どこか厳格さも感じさせる。怪魔が名のある神社や寺などの近くに足を踏み込むと問答無用で浄化されてしまうが、ゲリュオンとクリュサオルのような怪魔であって神でもあるようなやつはそうならない。こんな戦闘狂が騎士の神なんて世も末だろ。アーサー王とかカール大帝とかリチャード一世とかいただろうがどうなってんだ。

 

「てかてめぇはなんでここにいるんだよ」

 

「うん? これはまた異なことを。お前がいる。ならば私がいてもおかしくはなかろう」

 

「意味わかんねぇわぶっ飛ばすぞ」

 

「それもまた一興……と、言いたいところだがな、今回はお前と戦うためにいるのではない」

 

「じゃあなんでいるんだよ」

 

「それは私が呼んだから」

 

 凛とした、鈴の音のような声が耳に届く。誰だと思って声が聞えた方へ体を向けると、中々俗世に染まっていそうな姿の少女が立っていた。日輪を模した髪飾りを付け、真っ白なワンピースの上にライフジャケットを着た美少女の片手には焼きたてのいかの姿焼きと、何か色々入っていそうなクーラーボックス。背中には立派な釣り竿が。

 

「えっと……? 君は?」

 

「……ああ、生まれた時に見ただけで初対面か。宇迦から容姿は聞いてない?」

 

「宇迦様から?」

 

「聞いてないんだね。まぁ、いいよ。宇迦から聞いてたとしても、この服装なら気付かないだろうし」

 

 神気とかも色々抑えてるから、と微笑んだ黒髪の少女は片手に持っていたイカ焼きを一息に完食し、クーラーボックスからスポーツドリンクを取り出して俺達に差し出してきた。朝日の様に煌めく真っ赤な左目と、夕日の様に煌めく橙色の右目が特徴的な少女はにこりと笑って俺達にスポーツドリンクを押し付けてから口を開く。

 

「日ノ本に住んでいるなら、私の子供同然。権能でどうとでもできはするけど、しない……いや、できない? とにかく、熱中症にならないように気を付けて」

 

「うす」

 

「よろしい」

 

「………………まさか」

 

『相変わらず、人に紛れて色々と物色するのが好きなのですね、天照。その釣り竿などは?』

 

「奉納されてたから使わないと勿体ないかなって。さっきまでイカ釣りしてた。豊受の調理はやはり最高」

 

 ……この世界の天照大御神様もこんな感じなのかい!! とツッコミを入れたいのを抑えつつ、少々小柄なワンピースの少女を見据える。太陽を思わせる両目に、黒く長い髪、白磁の様に白い肌と日輪を模した髪飾り。あと頬にある太陽フレアのような刺青っぽい痣。彼女こそがこの討魔の世界における日本の太陽神、天照大御神様だ。

 

「この女の子が、天照大御神様……?」

 

『神気を押さえていれば人間と変わらんからな。気付かないのも無理はない』

 

「人間社会を見るなら必須技能。いつもオーラ全開でビリビリ出しまくってるやつはイキリたいやつか余裕がないやつ」

 

 ああ、確かに人間社会に旅行しに行ったりする神様とかは神気を全力で抑えて、人間にしか見えなくしてから遊びに行くらしいし……そういうものなのか、この世界の神様の常識って。

 

「あの、天照大御神様、今日なんですけど……」

 

「いいよ」

 

「はい?」

 

「禍津日のところに行きたいんでしょ? 付喪神とか、色んな方面から聞いてる」

 

 話が早いってレベルじゃねぇぞ!? いやでも天照大御神様ってこんな感じだったな、ゲームでも。何かつかみどころがないというか、色々と訳知りな感じというか……いや、あっさりしすぎてて逆に怖いというか……

 

「本当なら資格があるか確かめるところだけど、ゲリュとクリュを調伏したことあるなら大丈夫」

 

「調伏……?」

 

「? 君、百鬼夜行でゲリュとクリュを殺し尽くしたでしょ? あれが調伏として認められた」

 

「はい?」

 

 調伏なんてシステム、ゲームにあっただろうか? 無かった気がするんだが……こっちの世界特有のシステムか? 

 

「ただ調伏した後すぐに死んでたりするから調伏したかどうかの審議が大変で、こっちとしてもどうしようかなって思ってた。ゲリュとクリュも、毎回転生しちゃうし。でも禍津日のところに行くなら丁度いい。式神か、眷族化かを禍津日に学んできて」

 

「審議、というのは……?」

 

「君の戦い────というか、日ノ本の戦いは全部、日ノ本の神が見てる。加護を与えるか否かは別として」

 

 死に戻りができる理由も、それ。そう言ってクーラーボックスからスポーツドリンクを取り出して飲む天照大御神様。確かに神様と神獣、守護獣の制約が緩むからダンジョン外でも死に戻りができるようになるとはゲームでも説明されていたが、まさか全部見られているとは。

 

「特に君の戦い方は日ノ本の神としてはべりーぐっど。今のところ、日ノ本の神にとって君の戦いはおーるうぇいずべすとばうと」

 

 サムズアップして微笑む天照大御神様。なんか後ろで後方理解者面して頷いているストーカーがいるような気がするが、気にしたら負けだ。ただ、師匠以外の皆も頷いている気配がする。どうした? どっちかっていうと三人の戦いの方が華があってベストバウトだと思うんだけどなぁ。……まぁでも。

 

「光栄、です?」

 

「ただ加護はあげられない。あげたいけど、あげたらじゃあ私もって感じで与えようとして君が死ぬから」

 

「ははぁ、笑えねぇ」

 

「そう、笑えない。宇迦の加護持ってる子みたいな特異体質ならまだしも、君は器が出来上がり切ってないから、絶対に存在ごと抹消するレベルで死ぬ」

 

 ……………………おや? ということはつまり……

 

「俺、禍津日様の加護欲しくて会いに行きたいんですけど……」

 

「……………………ちょっと審議しなきゃいけない」

 

 ぐああああああああああああああああ!!? 計画があああああああああ! 俺の計画が狂っていくぅううううううううううう!! ………………まぁ、人生なんてそんなもんか。さーてどうしたもんかな。




日本の神々的には気狂い戦法が大人気。死んで勝つと死んでも勝つを両立させつつ、「お前を殺す。そして俺が勝つ。何か文句あるか?文句あるなら死ね」と言わんばかりの必ず敵をぶち殺すという気概と狂気に満ち溢れている戦い方が気に入られている。加護を与えたいのは山々だが、加護を与えると「じゃあ私も」とやりかねないし、我先にと加護を与えようとして大喧嘩が始まるので与えていない。なお現時点の巡に加護を複数与えると巡がいたという事実ごと消滅する可能性がある。というか間違いなく消滅する。神と神獣と守護獣以外、誰の記憶にも残らない。
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