恋愛要素ありの死にゲーに転生して鉈を振り回す転生者 作:エヴォルヴ
ちなみにゲリュオンは牙狼のザルバとアルトリウス一式装備を掛け合わせたような見た目です。旅行終わりですが短いです。
討魔の世界には一応、加護のスキルの方に必殺技が用意されていたりする。スキルと加護スキルは別枠なのでアムリタ稼ぎが本当に急務になる日がいつの日かやってきそうなものだが……日頃からダンジョン攻略に勤しみ、百鬼夜行に毎回参加し、素材マラソンをやっていればアムリタ不足に悩まされることはない。ステータスもどこに振るかをちゃんと考えていれば、そう簡単にアムリタ不足になることはないだろう。
「いやぁ……綺麗だなぁ」
「そうねぇ。まだ冷たいから海には入れないけど……眺めてるだけでもいいものね」
ステータスやスキル構成をあれこれ考えながら、伊勢の海を眺める今日この頃。借りてきたパラソルとビーチチェアーを設置して海を眺めているだけだというのに、どうしてここまで癒されるのやら。
「美味し国と言われるだけあって海も綺麗ですよねぇ」
「そうね。ホテルで食べたものも、商店街で食べたものも全部美味しいものばかりだったわ」
「旅行の最終日、こんなにゆっくりできるのもいいもんです」
ホテルでのチェックアウトはもう済ませているので、あとは帰りの寝台列車に乗り込むだけ。詳細は省くが、充実した旅行だった。天照大御神様や豊受大御神様にもご挨拶できたし、禍津日様のところに行く許可も貰えた。声についてはちょっと色々考えなくてはいけないが、とりあえず禍津日様のところに行くための口実はゲットした。加護については……まぁ、ちょっと分からないがどうにかなるだろ。
「そういえば、禅明さんは?」
「ああ、師匠なら禍津日様のところに行く時は呼べって言って帰りましたね」
「そっか。お礼言いたかったんだけどな」
「どうせ禍津日様のところに行く時に会えるし、その時に言えばいいんじゃない?」
結構キツめに扱かれたというのに、『茶菓子同好会』の三人は強くなれた実感があるのか満足そうだ。二日間みっちり地獄のような修行を行った後の観光と旅館でのゴロゴロタイムが超回復に丁度良かったのだろう。俺も久しぶりに師匠の修行を受けて研ぎ直しができたように感じるし、トラウマ以上の経験ができたように思える。
『それにしても彼、誰の加護も貰っていないのですね』
「ああ、師匠は加護なんざいらねぇって突っぱねてバグになった人なんで……」
それでも無理矢理与えようとしたら絶対に師匠はそいつを斬る。斬撃を飛ばすくらいはできてるし、神や神獣すら切り捨てる次元斬くらいは習得しそうなのが師匠なのだ。前に俺がプレイしてた某悪魔を泣かせるゲームを見て、意味深に笑っていたし、やりかねない。
『まぁ、そういう人間もいたりするからな。確か……関羽なんかは青龍の加護を突っぱねていたな』
おお、そんなことがあったのか。確かにゲームでも青龍が加護を与えようとしたら突っぱねられて拗ねた、なんて話があった気がする。それが関羽だったのか……流石と言うか何と言うか、だな。あの人も神様の座に至った人だし……そんな人が扱う武器が青龍偃月刀っていう名前なのはちょっと皮肉を感じる。
「さて……学園に帰ったら色々準備だぁ……仙骨マラソンもやらねぇと」
「学園入学当初からやってるみたいだけど、どれだけ幽鬼の仙骨集めてるの?」
「まだ500個です」
「それくらいあれば十分でしょうに」
何を言ってるんだ瑞騎先輩。最低でもあと200個は欲しいんだぞ。更なる高みを目指すなら700個どころか1500個欲しいんだぞ。それと同時に他のダンジョンにいる怪魔の素材とアムリタ結晶がそれぞれ30個以上は欲しいんだぞ。素材マラソンをしない連中の思考が俺には分からねぇ……
「琥珀の決闘を毎回断ってやってるのが素材集めとアムリタ集めって、あの子の心境察して余りあるわね」
「琥珀……あ、
虎成琥珀。白虎の加護を貰っている少女である。討魔は瑞騎先輩とローズ先輩を除いて、キャラの性別が変化したりするのだが、この性別の変化は主人公の性別とかには左右されないランダム要素で、トロコンや図鑑コンプ勢はいつも発狂していた。なお、主人公の性別によって性別が変わるキャラもいる。正気の沙汰ではない。アップデートである程度性別を固定できるようにはなったものの、初期は本当に発狂勢が多くてな……かく言う俺もアプデ前は苦労させられた人間である。この世界では白虎と青龍の人が女性である。
「にしても、俺なんでああも決闘を挑まれるんですかね? 俺、あの人と同級生ってことしか接点ないんですけど」
「……あなたそれ、本気で言ってる?」
「え? もしかして俺、あの人の気に障るようなことしました?」
『この小僧、本気で言っているな……あの小娘も哀れなものだ……』
え、何? マジで俺知らない……覚えてない……虎成さんとの接点……接点どこだよ……討魔プレイしてた時も虎成さんほとんど使ってないぞ? だって槍使いのくせに技量の数値ゴミだったし……そんなの持つよりも特大武器持たせた方が強かったし……そもそも土属性自体筋力補正が強い武器を使う前提のスキルが多くてな? なお白虎の加護スキルには槍を使うこと前提のスキルが多くて涙が出そうだった。三野先輩といい、なんでこうも噛み合わせが悪いやつらばっかなんだよ。
うーむ……うーむ……うーむ……あの人がどうして俺に決闘を申し込むのか……コレガワカラナイ。マジで俺、虎成さんに何かしたのか? うーん……本人に聞いても教えてくれないだろうしなぁ……でもそろそろ決闘を申し込まれて、御断りのお手紙書くのも疲れてきたんだよな……うーむ……うーむ……
「禍津日様の加護貰ってから考えんは女々か?」
「名案にごつって言った方がいい?」
ご両親が色んな漫画を集めているらしく、漫画で育ったという大耀さんがすぐさま反応した。うーむ、俺と大耀さんの間に吹き荒れる瞬間最大風速。
「そもそもの話、決闘苦手なんだよなぁ。殺す戦いってより魅せる戦いってのが際立ってるって感じがして」
「まぁ、形はどうあれ学園の決闘は御前試合ってところが強いからどうしてもね」
大会ならまだしも、個人の決闘は報酬も無いので旨味が全くねぇのも相まって決闘なんて受けても素材マラソンの時間が無くなる程度の認識だ。これでアムリタ結晶とかが貰えるってんなら話は別だったが、そんなこともない。しかも誉れ高い戦術大体使えないから、俺が使い慣れてるエンチャントの殆どが使えなくなる。縛りプレイは嫌いじゃないが、自由にやりたい。
「でも模歩君はそういう方法に頼らなくても強いし、大丈夫じゃないかい?」
「勝っても負けても面倒」
「というと?」
「勝てば敵討ちだとか、まぐれ勝ちに過ぎねぇだとかグチグチ言ってくるやつが出てくるし、負ければ調子に乗った連中が色々グチグチ言ってくる未来が見える」
てめえら百鬼夜行の前線にほとんど参加しねぇくせにグチグチグチグチやかましいんだよぶっ殺すぞと俺が我慢できずに鉈を振り下ろしてしまうかもしれない。いや、マジではやらないけど、そういうやつらがいるのが討魔というゲームの世界。外野がとやかく言ってくるのは別にいいが、その火の粉が俺と交流してくれてる人達に降りかかるリスクを考えると、決闘なんて受けてもメリットよりもデメリットが勝る。……加護を手に入れれば、ピーピー騒ぐやつらもいなくなるだろうが……何か懐柔しようとするやつが出てくる気がしてるんだよな……そんなことはないと言い切れないこの世界。善性の塊みたいな大耀さんが滅亡ルート踏み抜くようなことをしでかす人間がいるような世界が真面なわけねぇんだ。狂ってなきゃやってられない、そんな世界。
「まぁ、そういう連中を黙らせるのにも加護は欲しいんすわ。あれば便利だなってのはこういうところが強い」
『加護を虫除け代わりに考える人間はあなたくらいでしょうね』
「俺以外にも、そういう考えの人いそうですけどね」
まぁ、少数派ではあるだろうが。…………あ、そうだ。
「そういえば皆に渡し忘れてたものがありまして」
「あら、チケットならもう受け取ってるけど?」
「そうじゃないですローズ先輩。アクセサリーです」
霊子化させていたアクセサリーを三つ実体化させて、三人にそれぞれ渡していく。
「……指輪?」
「太陽と天秤の指輪っていうやつだな。トテモ、イイモノ」
俺が三人に渡したのは、この旅行に行く前にアイテム合成をしたら出てきた指輪型アクセサリー、『太陽と天秤の指輪』だ。太陽に重なるように天秤が象られた金色の指輪の効果を凄く簡単に言うと、スタミナ微増加とスタミナ回復速度上昇という何周してもお世話になるレベルで強い効果である。
「大量に余った素材を全て捻じ込んだら偶然四つ手に入ったもんで……いらないなら合成素材にしちゃっていいんで」
「いや、人から貰ったものを素材にするようなことしないよ」
そうか……討魔でキャラから貰えるアクセサリーやアイテムを合成素材にすると、そのキャラクターにちなんだ効果のアクセサリーとかがゲットできるから、貰い物は合成素材にするもんだと思っていたが、皆そんなことしないのか……もちろん俺も瑞騎先輩とローズ先輩から貰ったものを合成したりはしてないが。…………ホントダヨ。
「でも派手だね、これ」
「そんなあなたにネックレス」
「ああ、なるほど。これを通してネックレスにすることもできるのか」
もちろん貴金属アレルギーがある人にはお勧めできないが、用意していますとも。激しい戦闘になっても千切れないよう各種霊薬に漬け込んだネックレスを。これでワンポイントアクセサリーとしても活躍できるので、ちょっとしたおしゃれにも……いけるかもしれない。しかし、この指輪、本当に便利な効果が付いてるよなぁ……たまに追加効果でドロップ率増加とかが付いたりするのだが……今回はダメだったよ。ところで麒麟様を中心とした皆様、その生暖かい視線は何ですか答えてくれないですかそうですか。
太陽と天秤の指輪
太陽に重なるように天秤が象られた黄金の指輪。持久力を微量ながら増やし、持久力を回復する速度を高める。
天秤とは、かつて商人を意味したという。どこまでも歩みを進め、商いを行う者達にとって、持久力とは必要なものだったのだろう。