恋愛要素ありの死にゲーに転生して鉈を振り回す転生者 作:エヴォルヴ
禍津日様がいらっしゃる超高難易度DLCダンジョン『穢呼浄禍の大祭壇』は、怪魔が出現しない。一応出現してはいるが、出現した直後に禍津日様か過去の英雄がぶち殺してしまうので、出現していない判定である。穢れを纏って出現する怪魔は通常の怪魔よりも強いはずだが、それを片手間に処理してしまうのが化け物染みている。その処理された怪魔達は禍津日様の力で浄化された後、アムリタに変換されて、世界にそのアムリタや霊気を放流するそうな。これが禍津日様の仕事らしい。言い方は悪いが、浄水場みたいなものだ。
「やっぱり手土産とか欲しいのかね。お供え的な……」
うーん……何がいいんだろうか……やっぱり無難にお菓子か? 霊子化させて持っていけば保冷剤とかいらないし……いつ頃から引き篭もっているのかは知らないが、変わり種とかをお供えしたら喜ばれるだろうか。織田信長がカステラとか金平糖とかを好んで食べた感じで。
「……おい」
「でもなぁ……洋菓子と和菓子で味わいとか満足感が全然違うし……そもそも俺、洋菓子しか作れねぇし……葛粉使ったアイスとかありか?」
「おい、聞いているのか?」
「でも買った方が無難だよなぁ……生クリーム入ってるどら焼きとか和洋折衷でよろしいのでは……」
「声をかけてるのが聞えてないのか模歩巡!!」
連休が終わって、また始まった学園での生活の中、禍津日様にお供えするものを考えていると、少々苛立ちを宿した声が響いた。
「────呼んでたの俺だったんすね」
「……他に誰がいる」
俺が声の主がいる方向に顔を向けると、いかにも不機嫌ですと言わんばかりの表情を浮かべている白髪の少女がいた。琥珀色の瞳、女性にしてはまぁまぁ大きな背丈、制服の上に羽織っている虎とアザミの家紋の羽織。白虎の加護を与えられている少女、虎成琥珀さんである。黒いメッシュがかかっているのがちょっと虎の縞々模様みたいで面白い────なんてことは思ってもいない。
『はっはぁ、悪いねぇ坊主。うちの頭の固いお嬢にちょっと付き合ってくれや』
ははは、口ぶりからして悪いと思ってねぇだろ皮剥いで三味線作んぞ。……虎成さんの後ろから現れた羽衣みたいなのを纏っている白い虎が四象の神獣が一角、白虎である。性格は……まぁ、いい性格してんなって感じ。嫌いじゃないんだけどなぁ……お前の加護スキル槍使うこと前提だからなぁ…………あ、そういえばハルバードとかグレイヴって槍カテゴリーだったか? 斧『槍』だし、使えるのか? ……使えそうだな。虎成さんの筋力なら。そうか……俺のやりこみ検証不足だったってことか…………というのはさておき。
「何用で?」
「決まっている。決闘だ」
「誠に残念ではございますが、今回はご希望に沿いかねる結果となりました。ご期待に沿えず大変恐縮ではございますが、ご了承くださいますようお願い申し上げます。虎成様のより一層のご健勝とご活躍を心よりお祈り申し上げます」
はっ、しまった。いつもの癖でお祈りメールが口に出てしまった。手紙書く時に口に出しながら書くと間違いが減っていいんだよな。
「ふざけるなよ」
「いやお祈りメールにおふざけとか存在しねぇんだわ就活舐めてんのか就活生に謝罪してどうぞ」
『そうだぞお嬢。今も昔も就活ってのは大変なんだぜ。就活生に謝れ?』
「なぜ私を責める流れになっている!?」
打てば響くというのはまさにこのことだな。まぁ、それはそれとして決闘ねぇ……
「なんで決闘しなきゃいけないんです? 俺、虎成さんに何かしましたっけ?」
虎成さん相手にゲームセンターでクソみたいな即死コンボ叩き込んだ覚えはないんだが。即死コンボ喰らって目が死んだのは大耀さんだったと思うが。いやはや、ザンギ相手に真面目な戦い方しちゃダメよ大耀さん。豪鬼使ってんだから何もさせずに殺せ?
『おおう、こりゃマジで忘れてんな?』
「お前……! 私に何を言ったのか忘れたのか!?」
え、何か言ったっけ? 虎成さんと俺、接点全くないと思うんだけど。……あるとしても瑞騎先輩とローズ先輩くらいか。となると瑞騎先輩とローズ先輩について何かあるとか? ……いやあ、ゲームでもそうだったけど、言いたいことがあるならちゃんと言うキャラだったし、直接言ってると思うんだけどな。
「虎成さんと俺、中等部の頃からクラス違うから話したことすらないと思うんだけど」
『はっはぁっ、マジかよ! お嬢の空回りってか! 空回りし過ぎてバターになるかもしれねぇなぁハハハハハッ!』
「笑いごとじゃないぞ白虎……!」
『まあそれはそうだな』
いきなりスンッ、てなったな白虎お前な。
『坊主、マジで忘れてんのか? ほら、思い出してみ? 坊主が初めて参加した百鬼夜行のこと』
「百鬼夜行ぉ? …………………………大変申し訳ないがゲリュオンとクリュサオルが鮮烈過ぎてそれ以外のこと全く覚えてねぇな」
いや、本当に最初の百鬼夜行で戦ったゲリュオンとクリュサオルが鮮烈過ぎてよ、全く覚えてないんだよな。あの時俺がいた前線の参加者は俺、瑞騎先輩、ローズ先輩、重錨さんと愉快な蛮族達と…………ん?
「もしかして、虎成さんも参加してた? ゲリュオンとクリュサオル戦。ソリストだと思ってたけど、実はデュオだった?」
「…………いや」
『お嬢のやつ、あの怪魔の殺気に足竦んじまって参加してねぇんだよ』
「あ、そうなのか。まぁ、しゃあねえと思う。俺も霊薬がぶ飲みして恐怖心麻痺ってなかったら挑んでないし」
初めての百鬼夜行はなぁ……こう、臆病風に吹かれて逃げ腰にならないように色んな霊薬を中毒になる一歩手前までがぶ飲みして赴いたから、色々記憶が飛んでたりするんだよな。そんな状態でも
『あー……ちなみにだが、なんの霊薬をどれだけ飲んだか覚えてたりするか?』
「狂刃、狂旺、乱進、乱撃、勇追、呪血、毒血、剛鉄」
『そりゃ忘れるわな!? ハイになってたのそれが理由かよ!』
「今は耐性できちゃってさぁ、ハイにならないんだよ。超新星の使いどころミスらなくていいぜ……!」
「…………超新星とはなんだ、模歩巡」
なぜにフルネーム? だがしかし、超新星に興味を持つとはお目が高い。やはり人間誰しも誉れある戦に夢を見るものなのだな。
「飲み込んだ爆弾とか毒薬とか、忍ばせておいた諸々を使った自爆」
「ッ! それは戦士の戦い方ではない! そんなのはただの死兵だ!」
おっと、虎成さんはこの誉れを理解できないのか……このステージに至る人間が少なくて俺は悲しいよ……
「誉れある戦い方に何たる言いぐさ。仁、誉れある戦を忘れるな」
「お前の戦いのどこに誉れがある!? 私達戦士の背中を民に見せ、安心させることこそが誉れある戦い方だろう!! というか仁とは誰だ!?」
誉れ高い対馬の侍だよ。
「そんな誉れ、うちの流派にはないよ」
『どこの流派だよ』
「刹那無心流」
『お前あのとんでもねぇ野郎の弟子かよ!!?』
俺の流派は刹那無心流。戦いの中、刹那の時まで勝つことに無心しろという教えの流派である。この流派を修めるにあたり、読むことになる指南書や流派の技が記された巻物などには色々書かれているが、全て文の最後を『勝て』で締める勝利こそが最大の誉れであるという流派なのだ。この流派において勝利に至るまでにありとあらゆるものを駆使し、勝利を収めれば全てが誉れである。
「なおさら私は、お前に決闘を挑まねばならない」
「
「その流派を超えることも、武芸を修める名家の悲願だからだ」
師匠、あんたの因縁が俺に降りかかってきています。下手すりゃ師匠の師匠の因縁も降りかかってくるような気がしないでもないです。というか瑞騎先輩曰く、黒歴史にしてるくせに刹那無心流を超えることを悲願にしてる名家があるのか……
「俺じゃなくて師匠に挑んでみては? 連絡すれば飛んでくると思うし」
「ぐっ……それはそうだが、違う!」
「俺は刹那無心流、師匠も刹那無心流、そして虎成さんは名家の人間として刹那無心流を超えないといけない。なら師匠に戦い挑むのと俺に戦い挑むこと、そこになんの違いもないだろうが!」
「違うのだ!!」
何が違うってんだよ。お前もその(誉れ高い戦部の)仲間に入れてやるってんだよ!!
「とにかくだ! 決闘を受けろ模歩巡!」
「俺にメリットがねぇ……! あったとしてもデメリットの方が多い……!!」
『まぁ……それを言われちゃこちらとしても黙る他ねぇわな』
話が分かる白虎は嫌いじゃないよ。でも状態異常系のエンチャントが土属性に無いから嫌いだよ。でもお前の素材を使って作る武器は結構強いから嫌いじゃないよ。
「というわけで、お祈りということで……俺は仙骨マラソンに────」
「………………メリットがあればいいんだな?」
「おん?」
どこか覚悟ガンギマリになりかけてる感じの虎成さんが呟く。どうした? 変なものでも食べた? 霊薬キメた? キメちゃった?
「もし、お前が決闘を受けて勝ったなら────私ができる限りの報酬をお前に渡すことを約束しよう」
「えーと……?」
何を言ってるんだこの人?
「無論、その……わ、私の体を要求したとしても、私は受け入れ────」
「白虎様ー、あんた回復魔法使えたっけ?」
『いやぁ、悪いが俺は回復系は得意じゃなくてよ……やっぱり回復って言えば鳳凰だわな。坊主はどうよ』
「精神回復アイテム持ち合わせてねぇんだ……!」
「おい、人の話を聞け!?」
ご乱心なさっているお嬢様がいらっしゃる。回復魔法を叩き込んで差し上げろ。俺は自己回復系のスキルしか持ってないんだ。ローズ先輩呼んでくるかぁ……ん? 今は大耀さんと一緒にダンジョンアタック中だっけか? となると苦手だけど一応回復魔法使える瑞騎先輩が────いや待て、あの人今、用事があるっていらっしゃらねぇわ。三野先輩は……うん、あの人も回復系は自己回復系だったわ。おい亀公、もっと防御力高めたりサポート系のスキルも充実させろ? 何で
「で、ご乱心のお嬢様は何をお考えになってその提案を?」
「私は乱心などしていないぞ!?」
「いや、自分の体報酬にしてくる人見たらご乱心だと思うじゃん?」
『俺もそう思うな』
「『なぁ?』」
「お前達ィ……!!」
どうしよう、白虎と意外と気が合うかもしれねぇ……! というかさ……
「顔真っ赤にするくらいならそんな提案しなきゃいいじゃんね」
「ぐっ……! だが、メリットが無いから決闘を受けないとお前は言ったぞ!? なら、メリットを提示するのが道理というものだろう!」
「いや、自分のことをもっと大事にして差し上げろ?」
いや、本当に。自分の体を報酬に釣ろうとしてくるのお兄さん心配だよ……自分の体をもっと大事に可愛がって差し上げろ……文句なしに可愛いんだから、ダメだと思うよそういうの。というか虎成家ってそんなに男尊女卑な思想持ちばっかりだっけ? 女は子を産むのが役目的な考えのやついたっけ? ……………………いたな。本家の人間じゃなくて分家の人間にいたわ。虎成さんの恋人ルートでそいつをぶちのめした記憶があるわ。結構初期段階で虎成さんの恋人ルート通ったから何か記憶に残ってんぜ? なおエンディング。この子もうちの誉れ高い主人公君と心中しましたね。人類滅亡ルート踏み抜くの我慢できなかった……この子確か心中する時にめっちゃ泣いてた気がする。死にたくないとかじゃなくて、主人公だけに殺戮の業を背負わせてしまったことに対してぼろっぼろ泣いてたな。めっちゃいい子じゃんって思いました。でも心中する手は凄くスムーズ。三周目のエンディングに選ばれたのは人類滅亡ルートでした……二周目? 何徹もして思考力が鈍っていたせいもあって人類滅亡ルートのトリガー引いて孤独に人類滅亡させました。三周目はその勢い余った状態で突っ切った。四周目以降は落ち着いて別のエンディングに行きました……
「ならどうすれば決闘を受けてくれるんだ!?」
「いや……まぁ……うん……面倒くさいのでパスで……」
「面倒くさい!?」
「俺、そんな戦闘狂じゃないし。戦いこそが人間の可能性なのかもってたまに思うけど、主任レベルじゃないし」
「主任とは誰だ!?」
主任は主任だよ。それ以上でもそれ以下でもないよ。
「というわけで俺は決闘受けません。本日の営業は終了いたしましたってことでね。俺は仙骨マラソンに────」
「逃がすか!」
「何すんだおまっ……!」
「お前が決闘を受けるというまでお前をここから逃がさん!」
学園の敷地内にある川が見える森の中、虎成さんが俺の腕を自分の体に押し付けるように掴んできた。筋力が俺より上の彼女の拘束に俺は逃げることができない。
「さぁ言え! 決闘を受けると!」
「ん何だお前ッ!? 離せコラ! 俺は仙骨マラソンに行くんだよ! 離せオラッ!」
「お前が決闘を受けると言えば離そう!」
「誰が言うか面倒くさい!」
「なら解放するわけにはいかない!」
このお嬢様面倒くさいぞ!? おいこらそこの神獣、チェシャ猫みたいにニヤニヤ笑ってねぇでてめぇのお嬢様止めろやぶっ飛ばすぞ。
「ならば俺の答えはこうだっ!!」
「な────ッ!!?」
掴まれているということを逆手に取り、虎成さんの体を抱き締めるように腕を回し、少女の体を持ち上げ────力の限り飛び上がる。
「これが俺のッ! ボルシチッ!! ダイナマイトだァッッ!!」
「グアアアアアアアアアアアッ!!!??」
流石に頭からは行ってないので、柔らかい土の上に思い切り体を打ち付けた程度に留まっているはずだ。戦士の、それも白虎の加護を貰っている虎成さんなら少しの間動けなくなる程度で済むはず。
『ヒューッ!! マジかよ坊主! ゲームの技再現するとかやるじゃねぇか!!』
「あばよお嬢様ァ! 回復アイテムは置いてくから治療は自分でやってくれや!」
決闘なんて受けていられるか! 俺は仙骨マラソンに行かせてもらう!! いやぁ、人目がない場所で助かった! 人目がある場所で挑まれたら色々視線がやかましくて受けざるを得なかったかもしれねぇ!!
なお、仙骨マラソンは夜までやったのに10個しか手に入りませんでした。ドロップ率渋くない……?
なお100面ダイスでファンブル引いたので巡君にはそのうち決闘を受けてもらうことになってます。