恋愛要素ありの死にゲーに転生して鉈を振り回す転生者   作:エヴォルヴ

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こう……腰をしっかり下ろして、ドンッ、と。そんでもってサクッと。

 黒い靄が示した先にあった洞窟は、なんか凄いことになっていた。季節外れの彼岸花が咲き誇り、バチクソに濃いアムリタが漂っている。……ダンジョンにはなっていなさそうだが、神の領域だ。洞窟の中が洞窟という可能性は少ないと思っていいだろう。

 

「さーて……霊薬は今のうちにがぶ飲みしておいて……」

 

『────いで』

 

「あ?」

 

『────おいで』

 

 洞窟の奥から声が聞えた。洞窟の奥というか、俺の脳に直接語りかけてくるような声がする。うーむ、小さい頃から実家にいる時たまーに聞こえていた声とそっくり。というか元凶こいつだろ。騒音被害で訴えることはしないから死んで素材を寄こせ。

 

『おいでおいでこっちにおいで』

 

 おう、今から行くからそこで待ってやがれぶっ殺してやる。

 そんな殺意を胸にしつつ、洞窟へと足を踏み入れる。戦士は夜目も利くので薄暗くても遠くまで見えているが……中々広いぞこの洞窟。何だか既視感があるような無いような。……いや、無いな。ここに来た記憶が全く無い。じゃあいつ山の中にいる神に呪われたんだって話にはなるが、この世界に理屈を求めてはいけないのだ。目に付いたから呪っただけかもしれん。

 

『……モフ・メグル。お前の記憶だが』

 

「うん?」

 

『恐らくだがな、何らかの理由で欠落しているぞ』

 

 欠落ねぇ……今のところ、全部覚えてるんだよなぁ。前世の常連さんの顔を思い出せないくらいで、残りは全部覚えている。しかし、ゲリュオンが冗談でそんなことを指摘するとは思えないから、欠落してるんだろうなぁ……何を忘れている? 霊薬バチクソに盛ってハイになったせいで覚えてないこともあるにはあるが、それ以外だと多分全部覚えているんだよな。

 

『記憶を断片的に見たが────不自然に切り抜かれたような場所があった』

 

「へぇ」

 

『恐らくだが……この山の記憶だ。お前には自然に感じているのだろうが、第三者である私やクリュサオルから見れば不自然な箇所がある』

 

「例えば?」

 

『入ったことがない山の中、なぜお前は何の迷いもなく歩けている?』

 

 それは呪いのせい、と言いたいところではあるが。ひいひいひい爺ちゃんの仕事場に行ったことはあるが、ここまで奥に進んだことはないはずだ。ふむ……まぁ、忘れてもいいことだから忘れていると見たね。俺はどうでもいいことは30秒程度で忘れる特技を持っている。────なんて冗談はともかく。この先にいるらしい神様は何をしたいがために俺の記憶を奪ったのか。何か悪意を持っているのか、それとも────あ? 

 

「おいゲリュオン、クリュサオル」

 

『ああ、使え。この瘴気、戦士と言えど吸い込めばただでは済まんぞ!』

 

『ブルッ……!』

 

 空気が変わったのを肌で感じ、人魔一戴を発動する。戦士だとしても吸い込んだらとんでもないデバフが盛られそうな程に目に見えて濃い瘴気だが、人魔一戴で人間と怪魔のハーフみたいな状態になっていれば問題ない。怪魔が混ざっているから動きやすいが、人間のままだったら全く動けないくらいには瘴気が沼の様に濃い。

 

 そんな瘴気を発生させているのは────巨大な肉の塊。ただの肉ではなく、腐って溶け落ちつつも、辛うじて肉の形を保っている何かだ。しかも肉は現在進行形でぼとっ、ぼとっ、と天井から落ちてきている。…………天井? 

 

「…………ああん?」

 

 周囲がほんのりと明るくなり、そいつの全容が明らかになる。神の力で空間が色々とおかしくなっているらしく、洞窟とは思えないほどの広さとなっているこの場所に、まるで自分を縛り上げるように包帯や糸などを巻き付けている────何か色んな生物とか物質が混ざっているような、よく分からないナニカがいた。手があって、脚も……それらしいものがある。目と口が大量にあるのがちょっと奇妙だが、彼ら、と言われていたから大量に色々混ざっていそうな感じがするな。

 

『まってたまってた』

 

『おいでおいでこっちにおいで』

 

『殺しにおいで、核を壊しにおいで』

 

 経験則上絶対言うこと聞いちゃいけないやつじゃねぇかなこれ。だが俺はこういう時、とりあえずデッドエンドから確認してみるタイプの気狂い。というわけで────とりあえず火縄銃で銃弾をプレゼントしてみる。うーむ、こうして呪い版の方を使っているが、こっちの方が使い勝手がいいような気がしなくもない。

 

 ガチンッ、パァンッ! という音と共に吐き出される弾丸は、ちょっとばかしSAN値を削ってきそうな見た目をしている神の示す核に当たる────ことはなく。鋼鉄にぶち当たったかのような甲高い音を響かせながら弾かれた。……うん、そうだよね。こうなるよね。

 

『ちがう……ちがう……!』

 

『違うのに違うのに違うのに違うのに!!』

 

『止めて止めて止めて止めて!!』

 

『逃げて! 逃げて!』

 

「は? ────ッ!?」

 

 人魔一戴でゲリュオンとクリュサオルの力を使っていなかったら、どうなっていたのか分からない攻撃が飛んできたのでギリギリで回避するが────若干掠った。ゲリュオンの鎧のお蔭で無傷だが、これ本来なら掠っただけでミンチになりかねないぞ。

 

『………………』

 

 ────それは、蜘蛛のような目を持った蛇であった。腐ってはいるが木のような肉、腐り落ちた肉の隙間から見える錆びている鋼鉄の骨、一枚一枚が剃刀のように鋭い鱗など、殺意剥き出しな外見の蛇だ。顔だけ見れば竜にも見えなくもない。中々の異形系イケメンではなかろうか。異種族恋愛とか超王道的でいい感じのルート生まれそう。

 

『無駄なことを考えている暇はないぞ。見たところ、こいつを殺さねばやつらの心臓に刃は届かん!』

 

「……ハッ、上等!」

 

 さっき掠った時に感じたが、防御は考えない方が良さそうだ。剃刀みたいな鱗が逆立っていて、下手に防御しようとすると武器も腕も持っていかれる。防御するにしても受け流す感じが最適解。けど、腐っているとはいえ凄い質量だ。タワーシールドみたいなデカい盾と馬鹿みたいな耐久が無いと防御できる気がしない。マジで防御は捨てて攻撃は全て回避だな。

 

 さっきは油断していたせいで不意を突かれたが、思い出す限りそこまで速度は驚異的ではなかった。腐ってなかったらもっと速かったんだろうが……腐っているお蔭で速度はそこそこに留まっている。なおサイズ。図鑑で見た記憶のあるティタノボアが6匹まとまっているようなレベルの直径。直径6メートルの図体が車と同じくらいの速度で突っ込んでくるのだから、戦士じゃなければまともに相手できるようなやつじゃない。攻撃手段は突進、噛みつき、ボディプレスといったところか。あとは……毒とか? 

 

「とりあえず……制限時間もあるからさっさと伐採してやる!!」

 

 というか肉が木材で、骨が鋼鉄の蛇って何の神だ? そんな神いたっけかな……まぁ考えることは後にしよう。とりあえずぶっ殺す。

 黒銀の────クリュサオルの剣を握りしめ、その首を両断しようと目星を付ける。スサノオはヤマタノオロチの首を一息で切り裂いた後、生き血を酒に混ぜて飲んでいたというが、俺にそんな技量も力もない。なので、何度も何度も同じ場所を切って首を刈り取る方向で戦う。

 

「ゲリュオン、クリュサオル!」

 

『心得た。魔剣はないが────クリュサオル、脚だ!』

 

『ブルルルッ!!』

 

 黒い鎧が解けるように外れ、俺の脚に纏わりつく。右腕の代わりに右脚へと移動した黒い鎧は踝の部分に、銀の車輪を顕現させた。

 

「これは……」

 

『我が戦車の車輪だ。上手く使え』

 

「ああ、そういう感じね!」

 

 右脚に現れた車輪をクリュサオルの剣で叩くと、青い炎が点火し、車輪が高速で回転を始める。その状態で一歩足を踏み出せば、俺の体は風となり、蛇の首へと迫る。火縄銃を撃った時に何となく察したが、こいつは俺が使っている鉈をどれだけエンチャントしようが殺せない。だが、ゲリュオンとクリュサオルの力であれば殺せるはずだ。狙うは腐って骨が見えている部分────!! 

 

「その首、置いていいいいいいいいいいいいいい!!?」

 

 剃刀のような鱗を右脚で蹴り飛ばして飛び退く。分裂しやがったぞこいつ!? しかも蛇じゃねぇし! サイと蜘蛛ってなんだ!? マジで何の神だてめぇ!? 

 

『分裂とは面妖な……ヒュドラでももっと大人しいぞ』

 

『逃げて逃げて逃げて!』

 

『嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ』

 

 んでもってさっきからうるせぇぞ山神ィ!! こっちに来いって言ったり逃げろって言ったり忙しい奴だねてめぇは!! てめぇを殺すのは決定事項だ! 黙って待ってろ!! というかよ、こいつら殺しにおいでって言っておきながらなんで攻撃してくるんだよ。

 

『恐らくだが私達が原因だ! この瘴気の主────あの神は怪魔を喰らい続けている! あの黒い靄が元人間だとすれば……あれらは怪魔に殺された者達の残滓なのだろう』

 

 つまり……復讐とか、贖罪のために怪魔を倒してたのか? 

 

 確かにあの黒い靄は何か負い目を感じているような雰囲気で話をしていた。終わらせてやってほしい、眠らせてやってほしい、というのは、こんな姿になるまで戦い続けた山神を休ませてやりたいということなのだと思う。そして我らの声では云々。これは恐らく……あの黒い靄達が生きていた頃に起こった怪魔の襲撃か何かが、山神がこんな姿になるまで戦う理由となってしまったから、それを思い出させてしまうということなのだろう。

 

 ゲリュオンとクリュサオルは神でもあるが、怪魔だ。こいつらの力を使っているから怪魔を殺す、という本能的なものが発揮して、この蛇とかサイとか蜘蛛とかが現れているのか。斬っても斬ってもきりがないレベルで分裂しやがる。ははは、こやつめ。殺す。

 

『このままでは埒が明かんな……! 制限時間も近付いている…………モフ・メグル、お前は恐らくこの神に会っている! 呪われたのなら、間違いなく!』

 

「は? 知らん知らん。あんな異形系においてのイケメン見たら忘れねぇって」

 

 クリュサオルの剣で分裂したやつらを切り裂く。分裂した分、耐久力が減っているのか難なく斬り裂ける。クリュサオルの剣がとんでもない切れ味っていうのもあるが。

 いや、本当に知らない。あんな姿になっても戦い続けるほど覚悟が決まっている誉れ高い、心からのイケメンと会ったことがあるなら俺は絶対に忘れねぇぞ? 

 

『会ったことがあるはずだ! 不自然な虫食いがあった記憶! あの部分が彼の神の記憶のはずだ!』

 

「初対面ですが!?」

 

『これまでの瘴気、人間では耐え切れん! だというのにお前は会って、ここまで生きている! その理由に心当たりはあるか!?』

 

 いや、知らんが。俺が生身でこの瘴気を吸い込んでみろ? 即効で溶けて物言わぬ肉塊よ。某エルデンなリングのDLCで出てきた壺巫女みてぇな姿か腐肉スライムの出来上がりだよ。けど、ゲリュオンがここまで言うってことは、俺が小さい頃にやってたであろうことが理由にありそうだが……小さい頃に何をやってたかな……実家の厨房でパンを作ったり、お菓子を焼いたり……あとは師匠のところで修行して小学校に行って……地域の人達と交流したり。あとは……………………あ。

 

『何か思い出したな?』

 

「剣舞やってたわ、俺。師匠とか地元の人達に叩き込まれたわ」

 

『ふむ? …………記憶が流れてきた。恐らくこれだ!』

 

 剣舞。多分念仏剣舞の一種であろうそれは、鬼の面を被り、大地を踏みしめ舞い踊る地元の伝統芸能。五穀豊穣、疫病退散を祈願する踊りだったはず。なんか死ぬほどやっていた記憶がある。前世は芸能とかに興味が無かったが、今世では身近にあったからやっていたが……これ、この世界だと、もしかして陰陽術とか降霊術とかに属するものだったりする? 鬼を宿し、大地を踏みしめ、念仏を唱えて……うーむ、陰陽師かな? 

 

『仏の鬼を一時的に降ろし、舞い踊る……なるほど、穢れに対して最も有効的な結界を無自覚に張れていてもおかしくはない!』

 

「…………え、まさかゲリュオン、やれって言ってる? あの舞を今ここで?」

 

『私とクリュサオルの力で殺せるとはいえ、このままでは近付けん。場を浄化し、一瞬の隙を突いて核を斬る────これが最も可能性がある方法だろう』

 

『ブルルルッ……!』

 

「……本音は?」

 

『一応私達も神だからな。神に奉納されるのは祝詞や舞と相場が決まっているだろう?』

 

『ブル』

 

 こいつらマジで……つか、剣舞は念仏だからどっちかって言うと神に奉げるものではなく、死者とか怨霊とか御霊に────ん? 御霊って神様のことか? 間違いではないのか? ああいや、二番庭があったな。神社仏閣参詣の際、最初にこっちを踊るわ。

 

「鬼の面は……無いけど、まぁ、ゲリュオンの仮面が鬼の面代わりってことでいいか。剣はあるし。扇は……まあ、鉄扇でいいや」

 

『こうなるとカグラ、だったか? それに近いな』

 

「じゃかあしい」

 

 暴れまくる蛇やら何やらから大きく距離を取り、血の様に赤い涙を流してこちらを見ている山の神を見据え、グッと腹に力を込めて叫ぶ。

 

「荒ぶる神よ、ご照覧あれ!!」

 

『──────ぁ』

 

「これより踊るは剣の舞! 五穀豊穣、疫病退散を祈り、大地を踏みしめ舞い踊る舞なれば!!」

 

 久しぶりに踊るが、体に染みついてる踊りだ! 若干うろ覚えにはなっちまうが、そこは寛大な心で許せ!! 

 

 

 

 

 

 

 * * *

 

 

 

 

 

 

 その神は、精霊達は見ていた。魅せられていた。

 

「ッハァッ!!」

 

 力強く大地を踏みしめ、鬼神が如き形相で叫び、舞い踊る男────あの頃よりもずっと大きくなった巡の姿を。記憶を奪い、呪った我らを殺すために来てくれた彼が、ゲリュオンとクリュサオルと呼ばれた怪魔と神が入り混じる存在の力を御しきり、舞い踊っている。

 

 華麗で、しかし激しい踊り。地面を踏みしめる度に世界が揺れ、穢れに満ちた瘴気が浄化されていく。浄化されていく度に、腐り落ちた体が燃えるような痛みに襲われる。しかし、そんな痛みなどどうでも良くなるほどに、精霊達は巡の舞に魅せられていた。

 

「ゼァッ!!」

 

 舞が次の項目に移ったのか、剣を振り回し舞い踊る。黒銀の剣から放たれる斬撃が、近付く蛇やサイ、蜘蛛を切り裂き、祓い清めていく。

 

『────きれい』

 

『綺麗』

 

『綺麗だね』

 

 無作為に掛け声を放っているように見えるが、叫ぶ度に場の穢れや、精霊達が喰らってきた怪魔の、油汚れのようにこびりついた負の感情などが恐れおののく様に弾かれている。弾けなかったものについても、大地を踏みしめる時や剣を振った時に放たれる浄化の波によって消し去られていた。

 

 焼ける。

 

 燃える。

 

 燃えている。

 

 焼けている。

 

 けれど、痛みはない。痛みは確かにあるが、痛くない。人間でいうところの、凝り固まってしまっている状態でツボを押されると痛みを感じるような、そんな感覚を精霊達は味わっていた。

 

 緩んでいく。癒えていく。安らぎを感じる。全てが変わってしまったあの日からずっと感じることの無かった安らぎ。穏やかなあの日の木漏れ日のような、暖かな光。守れなかった日常、ずっと見ていたかった人々の営みに感じた温かさに、ぐちゃぐちゃになって腐り落ちた身と心が解されていく。

 

「精霊様」

 

『『『────ぁ』』』

 

 不意に、声が聞えた。それは、ずっと聞きたかった声。ずっと聞きたくなかった声だ。忘れることはなかった、後悔の声。

 

 私が。

 

 僕が。

 

 俺が。

 

 ずっと見ていたかった、ずっと聞いていたかった、大好きだった人達の声。

 

「もう、良いのです」

 

 恨んでいるだろうと思っていた。

 

「もう、休みましょう、精霊様」

 

 あんなにも苦しんで死んだのだ。

 我らが加護を与えなかったから、死んでいったのに。だから、恨んでいるだろう、憎んでいるだろうと思っていたのに。

 

「あなたたちはもう、十分に頑張ってくださいました」

 

 彼らは。

 

「あなたたちはもう、十分に苦しんだ」

 

 彼女らは。

 

「そんなことをしなくても、僕達は精霊様を恨んだりしないよ。憎んだりしないよ」

 

「もう自分を許してあげて」

 

「もう、いいんだよ」

 

「だからもう、休みましょう、精霊様」

 

 優しく、笑っていた。

 

『『『──────────────―ぁあ』』』

 

 ポタ、と浄化され、炎に包まれた精霊達の瞳から透明な涙が零れ落ちる。赤くない、血や、瘴気や穢れを纏っていない、純粋な、本来の精霊達の涙。

 

『ごめんねぇ……ごめんねぇ……』

 

『ごめんなさい、ごめんなさい……!』

 

『助けて、あげられなくて……ごめんなさい……!』

 

 わんわんと、まるで幼子のように、精霊達は泣いた。泣いて、泣いて、川のように涙が流れていく。

 

 

 

 どれだけの時間が経っただろうか。いつの間にか、洞窟に満ちていた瘴気は全て消し去られ、彼らをこの世に繋ぎ止めていた楔────彼らの核となっている黒く錆びてしまった金属の箱が、その場にあった。

 

「…………ふんっ!」

 

 精霊達が涙を流し続けている間もずっと舞い踊り続けていた巡が、汗だくになりながらクリュサオルの剣を金属の箱に突き立て、貫く。パキンッ、と小気味よい音を立てて砕けた金属の箱から飛び出した、何の変哲もない────木と鉄が混ざり合ったような外見の大きな杯が、巡には見えていないが、心臓目掛けて飛び込んでいき。

 

「……うん、何かこう……ちゃんと何かが収まった感じがするな」

 

『……ふむ』

 

『ブルルルッ』

 

「あ? 何かあったか?」

 

 人魔一戴を発動したり解除したりを繰り返していたせいか、それともこの怪魔兼神がおかしいのか。いつの間にか勝手に巡の眷族となっていたゲリュオンとクリュサオルが、主である巡の変化に気付く。

 

『モフ・メグル。我が契約者よ』

 

「んだよ」

 

『貴殿は戸口に至った。土地は違えど、神の一柱たる私が祝福しよう。新たな現人神アラハバキよ』

 

「………………は?」

 

『まぁ、人間の方が濃いがな。神殺しを成し遂げたのだ。その神の名を継いだとしてもおかしくあるまい?』

 

「………………………………は?」

 

 我らが気狂い、模歩巡。神殺し達成により、まつろわぬ神アラハバキの名を襲名。

 なお、神気も権能も何も持っていないので、器が特殊になったこと以外は人間と全く変わりない。ただ、日本の神に一目置かれる存在になったことは間違いないだろう。

 

「………………………………………………何だかよく分からんが、素材がたくさんあるからヨシッ!!」

 

 そしてこれである。もはや気狂いの頭の中は素材を使って色々やることと、禍津日のダンジョンで鍛えることしか頭にない。情緒もクソもない男である。




アラハバキ
この世界では精霊の集合体。蛇であり、竜であり、犀(塞)であり、蜘蛛であり、鉄であり、木である。成仏した。どさくさに紛れて気狂いに自分の名前を襲名させてから彼らと一緒に眠りについた。神に成仏とかどういうこったみたいなツッコミは聞かない。


砕けた鉄の箱

零落した神の
核となっていた鉄の箱

武具の鍛造に使えば、特別な武具が生まれるだろう。

彼らは背負い、清算した。
ただそれだけで良いのだ。
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