恋愛要素ありの死にゲーに転生して鉈を振り回す転生者 作:エヴォルヴ
実家の風呂が壊れていたことがちょっとショックだった今日この頃。アルカリ性の温泉に浸かってなんかヌルヌルするのが面白いと感じる中、俺は右腕を掲げてみる。禍津日様の呪いはあの山の神────アラハバキを祓ったことで解けてしまったようだ。まあ、呪いが解けるまでの期間限定、と言われていたから当然と言えば当然なのだが、ちょっと残念だなと思う。
ローズ先輩は銭湯内にある花風呂へと行った。中々趣があって嫌いじゃないよ。でも俺はこっちの温泉の方が好きだ。
『加護を得られんとしても、眷族を使役する術を学んでもらわんといかんがな』
「お前ら今まで黙ってたくせにいきなり話しかけてくるのな」
というか何自然な感じで温泉に浸かってんだてめぇ。しかもゲームと同じように超イケメンじゃねぇかてめぇ。異形なのにイケメンなのが分かるのが不思議。
『団欒を邪魔するわけにはいかんだろう?』
『ブルッ』
戦闘狂のくせにそういうところはきっちりしているのがちょっと腹立つ。こういうところが騎士神としての信仰を集めた由縁なのだろうが。挑んでくるなら子供だろうと斬り捨てるやつだが、家族を守るために盾を取った子供をれっきとした騎士であると認めるのがこいつらの気質だ。何だこいつら。
『誰かを守るため、武器ではなく盾を取る。身を挺してでも背中にいる誰かを守る姿は間違いなく騎士の姿だろう』
「お前らの騎士と戦士の基準が分からねぇよ」
『私達にとって騎士は守る者、戦士は戦う者のことだ。我が契約者は戦士だな。騎士としての素質も感じるが』
「そうかい」
人を見る目はあるだろうし、事実を言っているんだろうが……俺は騎士なんてものになるつもりはない。だって、俺は守る戦いとかやれないタイプの人間だ。盾を持ってみろ、それを使って殴り始めるぞ? それか盾の縁を鋭く削って切るためのアイテムに変えるぞ?
『それはそうとモフ・メグル』
「あん?」
『お前は番を作るつもりがないのか?』
「あ? あるわけねぇだろ何言ってんだお前」
そんな気があるなら戦士になんざなってねぇわ。その気があったら戦士のサポートでもやってワンチャン狙ってんじゃねえの?
『ふむ……なぜだ? お前ほどの男ならば引く手あまただろうに』
「お前、俺の記憶見たんだろ? なら分かってんだろうが」
『…………破滅への道か』
最低でもそれをどうにかしない限り、色恋に現を抜かすことはできないだろう。正直どうすればいいのかさっぱりだが。何せ、大耀さんの行動は大耀さんの意思によるものだ。気付かないうちにそっちに行こうとしてしまうかもしれないし、誰かにその道へと蹴落とされるかもしれない。そんなことしてくるやつらがいるのがこの世界。地獄か? 地獄だったわ。
「そもそもの話、俺のことを恋愛的な意味で好きになるやつはいねぇだろ。俺だぞ?」
『………………鈍い、と言うべきなのか? いや、そうではないか……?』
てめぇは何を話してやがるんで? こんな血みどろ死にゲーハクスラ大好き民を恋愛的な面で好きになる奇特なやつがいるわきゃねぇだろうがよぉ。友人として好きだと言ってくれる人は幾人かいるけどな。瑞騎先輩、大耀さん、ローズ先輩、万莱君とか。あと、鍛冶場に入り浸ってる後輩。遠距離、近距離、隙が無いよね。だから俺膝治療するね。
『ふむ……なら、これはただの戯れ言だが……仮に番にするなら、麒麟の加護を持っているあの乙女はどうだ?』
「瑞騎先輩? 正直全然アリ」
『ほう?』
「こういう男同士の談義って状況なら、過度な妄想じゃない限り許されるだろ」
そりゃあ、俺だって前世専門学生、今世高校生な思春期の男だからな。ちょっとした妄想だけならしても許されんだろ。美男美女が集まってる学園なんだし、美男美女のカップリングの妄想とか楽しんでもいい。誰もいない、誰も傷つかない状況であることが前提条件ではあるが。
『具体的な理由はあるか?』
「あ? まぁ、単純に性根がいい人だってのもそうだが……綺麗だなって思う時が結構あるから。一挙手一投足に色気も感じる。あとジャンクフードが好きっていうギャップもヤバイ」
『随分と抽象的で内面的だな』
「十分具体的だろうがぶっ飛ばすぞ」
『もっと肉体的な面について話を広げてみないか? 肉欲に身を委ねて話してみろ』
「これだからケルトとどっこいどっこいなギリシャはよぉ」
まぁ、何だかんだで猥談というのをやるのは前世ぶりのことだから、ちょっと楽しくなってきたと感じる俺がいる。こういうところを見ると、まだ俺の中に人間性がたっぷり残っていると感じられるというものだ。なので人間性狩りは来ないでもろて。
「まずは目だよな。宝石の翡翠ってあるだろ? あれみたいだと思う。んで髪。なんかいい匂いするし、さらっさらしてる」
『触ったことがあるのか?』
「ダンジョンで事故った。怪魔の突進喰らって一緒にぶっ飛ばされた時にちょっと」
いやぁ、あれはマジで死ぬかと思ったよね。丁度通りかかった万莱君が魔法で怪魔を殲滅してくれなかったら、ホーミング生肉のせいでこの世全ての邪悪になるところだった。あと一歩で混沌の火に身を投げるところだった。それはそれとして瑞騎先輩の髪は滅茶苦茶いい匂いがしたし、さらさらでした。絹を触ってるみたいでしたありがとうございます。でもホーミング生肉は見つけ次第ぶち殺すことにします。
『他には?』
「他ぁ? スラッとしてるスレンダーな体にそこはかとない色気を感じる」
女性経験のない人間を問答無用で即死させる色気あるボディラインだと思います。あと透き通るような白い肌が目に毒なのです。海に行く予定や夏祭りの予定を立てたが、俺は瑞騎先輩の水着と浴衣に耐えることができるだろうか。精神系の霊薬大量に作っておかなきゃ……
「なのになんかめっちゃ柔らかいのは反則極まりないよね。あとひんやりしてるから抱き枕にしたら絶対気持ちいい。何だあの美少女」
『案外と、男らしくあれこれは感じ取っているのだな、お前』
「これでも男だからな。並みの性欲はある方じゃねぇの?」
『性欲については少々疑問が残るが……まぁ、いいさ。宇迦之御魂の乙女についてはどうだ?』
ぶっこんでくるなこのギリシャ。大耀さん……大耀さんかぁ……うーむ……
「なんか色々失礼で節操のない話なんだけどさ、瑞騎先輩並みにアリだと思う」
『良いではないか。猥談なんぞ、節操がなくて丁度いいだろう』
むしろ健全な方だ、とクツクツ笑う頭ギリシャなゲリュオンと、ちょっとどうでも良さそうに器用に魔法を使って体を洗い終えて湯船に浸かるクリュサオル。お前も入るんかい。
『それで? どこにどんな魅力を感じているのだ?』
「瑞騎先輩と同じくらいいい人。誉れ高いのもグッド。折れない心も素晴らしい。でももっと弱音を口に出してもいいんじゃねぇかなぁ」
どうせそういうことを聞いているわけではないんだろうな、というのは察しているので大耀さんの身体的な方での魅力について考えてみる。…………ふむ。
「あれだな。運動部の引き締まってる感じってやつが魅力的には見えるわな」
『ほう』
「学園に来るまでずっと陸上部だったっていうこともあってか、こう、体が結構仕上がってんだよね大耀さん。でも出るとこ出てるのがヤバイと思いますはい」
絶対小中学の時とか男子から色々な目で見られていただろうなと思う。ただ、王子様っぽい感じで女性人気が高いこともあって男子からは表立っては嫉妬、裏では「こいつのこと好きなの俺だけなんだろうな」的なこと考えられてそうという評価。実際そういう人達は一歩踏み出せずに脳破壊されることが多いのなんて美しいの。それでいてイチャイチャしているところを偶然見かけて、僕の方が先に好きだったのにって嫉妬でさらに脳を破壊するのなんて美しいの。
実際、前世のご友人の一人である頭のいい蛮族麗良という少女に片想いしてた連中は、俺と麗良の共通のご友人、遥斗に脳破壊されていた。一歩踏み出せないどころか「女っぽくないし、貧乳に興味ねぇわw」とか言ってたてめぇらが悪い。俺のご友人にセクハラしてんじゃねぇぶっ飛ばすぞ。でも脳破壊されてるところを見せてくれたのでモラルのないことを言ったことは許そう。セクハラ発言は許さん。そしてそんな連中には目もくれず、麗良にアタックし続けた誉れ高いメイケイオス遥斗はまさしく赤く燃えている流派東方不敗キングオブハート。麗良と遥斗、元気にしてるといいが。結局、超早めの結婚祝いで用意してたレシピブックと花の種とか渡せずじまいだな。ご友人、どうにか俺の部屋からそれを発掘してくれ。
「特に下半身に筋肉と肉がバランスよくついてるのが分かるんで、膝枕とか絶対気持ちいいだろと思う」
そしてまた言ってしまうが、瑞騎先輩と同じく大耀さんの水着や浴衣の破壊力に俺は耐えられるだろうか。美少女のベクトルには種類がある……瑞騎先輩は綺麗系の美少女、大耀さんは可愛い系の美少女だ。そんな美少女二人が海やお祭りに行ってみろ、ナンパで海と祭どころじゃなくなって楽しめるものも楽しめない。ナンパ除けとして俺とローズ先輩が頑張らなくてはなるまいて。茶華道部の予定とズレたなら万莱君も合流してくれるそうなので、ナンパ除けは大丈夫そうだと信じたい。
『そう思う割には、そうした目を一瞬でも向けないのだな』
「
そこんとこお分かりになっていただかないと困るね。人様に迷惑かけてるようじゃ誉れ高い戦士とは言えないんだぜ。迷惑をかけていいのは、怪魔と吐き気を催す邪悪のようなクズと化け物と
『お前はいい男だな』
「俺よりもいい男はたくさんいるぞ」
『冗談にしては面白くないな』
「いや本当に。経済力とか面の良さとか、甲斐性とか色々含めてさ、これはマジで」
これは本気でそう。ずっと悲しいままな三野先輩は跡継ぎで発言力が高いので付き合い始めるとちゃんと甲斐性見せてくれるので言わずもがな、我らが魔法バーサーカー万莱君は昔から茶華道で凄く有名な家で、彼の家に招待されて顔を出した時は俺みたいなやつを滅茶苦茶歓迎してくれた程に全員いい人。回復最強色男ローズ先輩などなど、学園には俺以上にいい男ってやつがいらっしゃるのだ。
対する俺はと言うと。何だかよく分からんが零落した神様の名前を襲名させられたものの、いつも通りでよく分からん状態、素材マラソン、アムリタ稼ぎに忙しなくしており、経済力もなければ立場もない。大耀さん? 大耀さんはまた色々別だろ。我らが最高最善最強の主人公ちゃんやぞ。
「まぁ何にせよ、自分がいい男だって自惚れるのは良くないって俺思うワケ。……てか話は変わるんだけどさ、現人神って死ぬもんなの?」
『そうさな……ヘラクレスのように神の血が混ざっているのであれば少々勝手が違うが……人間のままでいるのなら、老いて死ぬだろうさ』
「じゃあ俺は普通に死ぬってわけね」
『だろうな』
それならいいや。知り合いが全員死んだ後もずっと生き続けるってなったら、俺は邪神になる自信があった。その場合は天照大御神様に焼き消してもらうことになるが。邪神が太陽の炎によって浄化されるなんてよくあるパターンである。
『それはそれとしてだ。話は戻って記憶にあった白虎の乙女はどうだ?』
「いやぁ、きついでしょ」
『バッサリ行ったな』
「いや、別に嫌いってわけでもないぞ? ただ、決闘決闘やかましいのがちょっとなぁ」
決闘を受けてやれば落ち着いてくれるだろうか? もう色々面倒だし八百長してやろうか。でもそれはそれで後が面倒だしなぁ。というか虎成さんの言っている決闘というのはどういうものなのだろうか。残虐ファイトOKな戦いなのか、吐き気がするレベルの正々堂々な戦いの方なのか。後者なら決闘というよりも試合じゃねぇかな……
「うーん……………………あれ、そういえば今何時だ?」
『もう8時30分だが────どうした、凄く不味いものを食ったような顔をしているが』
「不味いってもんじゃなく不味いからこんな顔だよ!」
この銭湯、白濁温泉の利用時間が男女で違うことも特殊なのだが、8時以降は一部の区画が混浴に切り替わるのだ。そして、この白濁温泉は混浴になる区画の一つである。しかも今日の利用者は俺達『茶菓子同好会』のメンバーのみ……忘れていたがこれは不味い。瑞騎先輩と大耀さんに鉢合わせる可能性が無きにしも非ず……!! そして俺があの二人に鉢合わせてみろ、ゲームであったイベントのように魔法をぶち込まれる。もしくは大耀さんのブロソと瑞騎先輩の槍が俺を貫く。そうなる前に撤退だ。
『ふむ、そういうものか』
「その未来しかねぇよ!」
『案外穏便に終わるかもしれんぞ?』
「そんな未来はないわ。だから逃げの一手よ!」
『……………………そうとは思えんが、な』
何かゲリュオンが言ったような気がしたが、馬鹿野郎俺は逃げるぞ!!
巡
「風呂上りのアイス最高」(危機からの脱却による解放感)
ゲリュオン
「案外許されそうだがなぁ。――――ふむ…サウナに行くか」(物陰を眺めながら)
クリュサオル
(契約者、さっさとあの雌二匹を抱けばいいのに。…三匹だっけ?)
ローズ先輩
「案外男の子よね、あの子」(脱衣所から聴覚強化して聞き耳立ててた)
鳳凰
「少々安心したぞ俺は」
女性陣(物陰にいた)