恋愛要素ありの死にゲーに転生して鉈を振り回す転生者 作:エヴォルヴ
出さぬなら、出すまで殺そう素材ガチャ。
落ちぬなら、出るまでシバこう素材ガチャ。
死にゲー大好きハクスラ気狂いゲーマーの朝は早い。数日前にゲットした耐性スキルがどれほどのものかを確認するため、まだ誰も起きていない朝3時に昨日潜ったダンジョンとは別のダンジョン『幽鬼の砦』というダンジョンに突撃し、肉が腐り落ちてほぼスケルトンな姿の怪魔、幽鬼を何体か反応させて自分に攻撃させるのだ。自分でも狂ってると思うが、これでスキルの熟練度が上がったり、別の耐性スキルが獲得できるかもしれないと考えたらやるしかないよね。
「熟練度が全く上がってないのに耐性結構上がるなぁ」
検証の結果、少なくとも雑魚エネミーの幽鬼による攻撃であれば、急所にクリーンヒットしない限りは重症、もしくは致命傷にならない程度には斬撃への耐性が上がっていた。
攻撃系のスキルばっかり取ってたけど、これからは耐性スキルも獲得の視野に入れた方がいいかもしれない。今の俺は大型武器の一撃が掠っただけで死ぬ可能性がある。ゲームではなく現実なのだから物理攻撃への耐性、魔法攻撃への耐性など、ダメージカット系スキルはいくらあってもいい。重装甲ダブルタワーシールドビルドという頭の悪いビルドで学んだことだ。
現在の俺はステータスに全然振っていない。パッシブスキルをたくさん盛ってステータスを底上げしている感じだ。一度だけステータスを上げたことがあったが、驚くくらい身体能力が向上して感覚がズレにズレて雑魚にタコ殴りにされた苦い記憶があるためだ。そのうちステータスを上げていくことにはなるだろうが、まだその時ではない……と思う。
「やっぱり10%ダメージカットはデカいよなぁ……とりあえず検証終了、ってことで還っていいよ」
「「「オ゛────!?」」」
重厚な鉈で幽鬼の顔面を叩き割って絶命させる。スケルトンのくせに顔面粉砕されただけで復活しなくなるとは、スケルトンの風上にも置けねぇやつだぜ。まぁ、『幽鬼の砦』は『亜人の洞穴』のボスを撃破したら入ることができるダンジョンだから、復活祭されても萎えるだけか。
「やはり鉈……! 鉈が全てを解決する……!!」
少し奮発して購入したこの重い鉈、やはり強い。何が強いって、雑に振り回しただけで敵が死ぬし、技術を磨けば膝治療から脳天かち割りへの行動が凄くスムーズになる。取り回しがいい武器ってやはり最高だ。アムリタが貯まったらもう一本鉈を購入するつもりである。鉈二刀流スタイルは討魔において最強(当社比)。
もちろんサブ武器も装備スロットに入れているし、懐に隠して所持している。装飾された短剣って言うんですけど。何のタクティカルアドバンテージもないと思ったら大間違い。装飾されたことで脆くなっており、傷口に深く突き立てればあら不思議。ポッキリ折れて相手の体に刃が残り、スリップダメージが入る素敵仕様だ。深く刺さっていることもあって抜いたら抜いたで、出血するようになっている辺り作った人の性格が出ている。一晩飲み明かせそう。
ちなみに初見プレイの時にお世話になった。というか全部のルートで鉈を振り回した。とある鉈にな? 劇毒と出血のエンチャントして敵をミンチにしたんじゃ。人類滅亡ルートですね。経験値稼ぎにお世話になりましたありがとうございます。
「時間は……お、まだ5時じゃん。アムリタとスキル熟練度上げしよ」
本当はDLCとして配信された超高難度ダンジョンに飛び込んで、パワーレベリングと膝治療がどこまで通用するのか確認したいところではあるのだが、流石にこれからそのダンジョンに行くのは時間が足りない。いくら怪魔撃滅を掲げている学園であったとしても、授業はある。そしてその授業に参加すると少量の経験値をもらうことができたり、スキル獲得条件を満たしたりすることがあるのだ。そんな美味しいものをゲーマーとして逃すわけにはいかない。
「あ、幽鬼の仙骨じゃん。ラッキー、取っとこ」
ドロップアイテムは大事。しかも幽鬼の仙骨は妙な所で必要になって周回することになるから、手に入る時に全力でかき集めておかないと。特に状態異常付与ができる武器の強化とかに。容赦なく100個要求された時は発狂しそうになったね。主人公に初めて加護を与えてくれる神様である
ちなみに主人公は一人一つの加護であるはずの加護をたくさんもらうことができる。例えば友達になった加護持ちがいたとして、その友達に加護を与えている神様か神獣か、その眷族に気に入られて加護を貰う、なんてことができるのだ。分霊システムとゲームでは説明されていた気がする。そんな素質があるからこそ、主人公は学園から優遇されている……って設定だった気がする。周回してるとな、設定とか忘れるんだ……俺なんて終盤デメリット加味してもメリットしかない加護をくれる荒神様達の加護しか使ってなかったし。『セルフ状態異常超強化逆恨みビルド』とか、『超技巧一人ロックバンド音ゲー連打祭ビルド』とか、『疑似怪魔化超再生ゴリ押しバーサーカービルド』とか。怪魔化というよりも妖怪化って言う方が正しい気がしなくもないが。大妖怪モチーフ形態ばっかりで百鬼夜行状態だったし。
それはそれとして。
「幽鬼だ!! 幽鬼だろう!? なあ幽鬼だろうお前ら!! 仙骨置いてけ!! なあ!!」
幽鬼の仙骨は大量に欲しいのだ。始業のチャイムが鳴るまで残り3時間。社会人のマナーとして汗をシャワーで流すことを加味すると、滞在できるのは1時間半というところ。ドロップ率上昇の加護を持っていない俺がどこまで仙骨を集めることができるのか……いざタイムアタックと乱数の女神へのお祈りタイムだ。お祈りしてもドロップ率が上昇しないのはお家芸よな。落ちぬなら、出るまで回そう素材ガチャ。それでも出ぬなら一度休んでもう一度。出さぬなら、出すまで殺そう素材ガチャ。それでも出ぬなら以下省略。周回は終わらぬ。ゴール武器への憧れある限り……!!
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さて、時は進んで授業終わりの自由時間。
案の定と言うべきなのか、乱数の女神は微笑むことをせず、幽鬼の仙骨が数個しか落ちなかったことで魂が冥界送りにされかかっていた俺を大耀さんがダンジョンに誘って、『亜人の洞穴』に訪れていた。
「それで、アコレードっていうスキルを取ったから試し切りしてみたいんだけど……って、どうしたの?」
「いや……まぁ、うん。使いこなせれば強いよ。雑に使っても強いし。でも、何故それ?」
「攻撃こそ最大の防御とか言うじゃないか」
「なるほど、道理だ」
実際ソロで攻略するなら正解である。今の大耀さんは俺以外とダンジョン攻略をしたことがない。だから、俺の都合がつかない場合、ソロで突撃する可能性すらあるのだ。もちろん耐性スキルを爆盛りして鉄壁にしてダンジョンアタックするのも正解。ソロ活ならではの攻略方法もあるのが『討魔』というゲームのいいところである。
ところで主人公ちゃんである大耀さん、一般家庭出身の女の子のくせに覚悟ガンギマリというか、バーサーカーソウルを身に宿している節がある。やはり主人公とはこうであるべきなのだろうか?
「あと、売店で武器を購入したよ」
「選ばれたのは棍棒だったか」
「実は昨日ソロで潜った時に打撃武器は欲しいって気付いて、宇迦様と話し合ったんだ」
あ、もうソロで突撃かましてましたか。ソロだろうと関係ねぇ! 我が道を往く!! って感じ嫌いじゃないしむしろ好きよ。
それにしても、学園は大耀さんを優遇しているって話だったが、そこまで優遇されているような感じがしないんだよなぁ。神輿に担いでいる感じはあるが、それも中途半端というか……一般家庭出身だからって舐め腐ってるんじゃねぇだろうな? そんなことしてるから人類滅亡ルートを一周目で踏み抜かれるんだぞ分かってんのか? 下手すると二周目でも経験値稼ぎで踏み抜かれるんだぞ? DLCが来るぞってことでカンスト世界でビルド組んで遊ぶために八周目まで滅亡ルート踏み抜かれることもあったが。
ちなみにDLCは第3弾まであったので、その分だけ人類滅亡ルートを踏み抜かれたこともあったという。運営が「人の心無さ過ぎて笑うしかないですよね」って爆笑してたぞ。その配信でその話が出た時コメント欄が「ロックオンできるのが悪い」で埋め尽くされたのは笑った。
「弓とかは選択肢に入らなかったのか? 遠距離手段は大事だろ」
「クロスボウは惹かれたんだけどね……正直まだ色々手一杯だから後回しかなぁ、って」
「ああ、なるほど。色々考えた結果ならとやかく言ってもあれだわな」
「あと、模歩君が持ってたスキルの中で欲しいスキルがあったから貯金かなって」
「お、いいね。そういうのはモチベに関わるし。で、何が欲しいんだ?」
「幻影の再演」
「君とは親友になれそうだ」
精神力を消費することはないが回数制限があるタイプのスキル、『幻影の再演』。直近で発生したダメージや状態異常蓄積などの出来事を再現する、というスキルである。三回膝治療しないと膝を粉砕できないやつが一回膝治療してこのスキルを使えば一回で膝治療完了、すぐさま脳天かち割りに移行できる優れものだ。さらに、自分に使うこともできるので、色々悪いことし放題なスキルである。
「とはいえ幻影の再演は闇属性のスキルだからなぁ……まずは適当な闇属性のスキルを────って、そうか」
「うん。アコレードは闇属性のスキルだよ」
下地は整っているということだな? 騎士の誓いって意味のアコレードが闇属性のスキルというのが少々よく分からないが、ガンガン使って適性を上げつつアムリタを稼がないといけないだろう。……属性と言えば。
「大耀さん、俺以外の戦士のとこにパーティーの相談とかは?」
「もちろん行ったよ。四象の神獣? の加護を貰ってる人達とか、神様の眷族に加護貰ってる人とかにも声かけたけど、結果はお察し」
「ですよねー」
「あ、でも麒麟の加護を貰ってる先輩は私の相談に乗ってくれたよ。実力的にパーティーはまだ組めないけど、模歩君のこと教えてくれたし。先輩とパーティー組めるくらい強くなるのも目標かな」
麒麟の加護────ああ、瑞騎先輩ね。
瑞騎翡翠。器量良し、実力良し、加護の性能良し、性格良しのキャラクターだ。確かにあの人はゲームでも超が付くレベルでの聖人だったし、現実でもマジでいい人だった。人類滅亡ルートでは最終的に恋人や親友になっているキャラと心中するのだが、最も選ばれた恋人親友枠が瑞騎先輩である。俺もお世話になりました。というか今も現在進行形でお世話になっている。たまーにパーティー組んだり、ご飯連れて行ってもらったりしてる。いいとこのお嬢様のはずだが、ジャンクフード大好き女子だったりするのでそのギャップに殺されたプレイヤーは数知れず。
さて、今の大耀明日夢が瑞騎先輩のレベルまで駆け上がるとなれば……3つ目のダンジョン攻略できるくらいか。多分このダンジョンを攻略できたら瑞騎先輩はパーティーを組んでくれると思うが、目標があるのと無いのとじゃモチベーションの維持が全く違ってくる。心の擦り減り具合とかな。俺? 戦いに楽しみを見出している時点でお察しではなかろうか。
「じゃあ今日は幻影の再演獲得のために適性上げつつ……」
「ついでにレベルも上げていきたいかな」
「行けるならこのダンジョンの親玉とも戦いたいって顔してんぞ」
「ダメかな?」
「一向に構わんが?」
「やったね」
やる気があるならそのやる気を尊重したいのが真のゲーマーというもの。失敗したら失敗したで反省会開いて立ち回りを見直して突撃して、ボスを殺せるようになるまで挑戦するのが死にゲーの楽しみである。当たるなら、殺してやろうぞ、ボスエネミー。カタルシスに目覚めたのであればようこそこちら側へ。歓迎しよう。マラソンはお好きかな?