恋愛要素ありの死にゲーに転生して鉈を振り回す転生者   作:エヴォルヴ

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人はそれを呪いと呼ぶのだ。


デバフばら撒く敵嫌い

 銭湯で事なきを得たその翌日。今日こそ禍津日様のダンジョンでがっつり稼ぐぞ、と気合を入れて朝のルーティーンとなっている鍛錬を始めようと準備運動をしていた俺は、天照大御神様が言っていた式神や眷族化という単語について考えていた。

 

 禍津日様のところで学んでこいと言っていたことから、禍津日様が得意とすることなのだろうが……禍津日様の逸話にそんなものあっただろうか? 

 

『穢れを以って穢れを祓う、という力のことだろうな。魔を以って魔を制するという考え方は、ギリシャにもある』

 

「キルケーやメディアみたいな連中ってことか?」

 

『ああ。言っておくが、不用意に口にするなよ。やつらは言霊で呪ったりするからな』

 

「先に言え馬鹿」

 

 死んでいると思われるとはいえ、魔女が冥界から色々呪いを放つなんてことは造作もないことだろう。禍津日様のところに行ったらギリシャに繋がってましたとかだったらどうしよう……化け物しかいないぞギリシャ。

 

『この土地もそうだろう。お前と、お前の師がいい例だ』

 

「俺はまだバグじゃないから……」

 

『十分バグの領域にいると思うがな。加護を持たず、このゲリュオンとクリュサオルを屈服させたのだから』

 

 ……そういえばゲリュオンとクリュサオルって、ゲームでもずっと倒せずにいた怪魔とか何とか言われていたし、普通に考えて偉業だったりするのか? ……いやしかし、我らが主人公大耀さんであればノーデス撃破余裕だろうに。

 

『…………モフ・メグルよ、お前は自分のことを過小評価し過ぎではないか?』

 

「そうか?」

 

『ああ。そして、他者を過大評価し過ぎている』

 

 うーん、そうだろうか。皆のことを過大評価し過ぎって……うーん……そこまでではない気がする。

 

 我らが主人公大耀さんはたくさんの神様、神獣、守護獣の力を借りることができる器があり、精神が擦り切れようとも突き進むことができる胆力がある。まぁ、そうせざるを得なかっただけかもしれないが、それでも自殺を選ばず、戦い続けることを選択できる強さがある。なんかこの世界では俺というイレギュラーによって色々おかしなことになっているような気がしないでもないが、滅茶苦茶頑張ってる。

 

 瑞騎先輩は麒麟の加護を使いこなし、家の武芸とか流派とかに惑わされることなく自分の得意で戦うことができる。そして自分の道は自分で選ぶことができると言わんばかりに、家の存続とか諸々を捨て去るような選択もできる心の強さがある。

 

 ローズ先輩は瑞騎先輩と同じように得意で戦い、自分や薔薇苑家の因縁に誰かを巻き込まないようにと一人だけで因縁を断ち切ろうとする、まさに茨の道と言って過言ではない選択を選び、ゲームでローズ先輩のルートを選択しなかった場合見事に一人で全てを決着させることができる強さがある。

 

「全く過大評価じゃないなヨシッ!!」

 

『全く良くないが?』

 

「何故」

 

『モフ・メグル、お前の評価は────』

 

「あら、メグちゃん。早いのね」

 

 ゲリュオンが何かを言う前に、普段から朝に強いローズ先輩がやってきた。彼の右手をよく見ると、鳳凰の炎だろうと思われる暖かな火が灯っている。

 

「おはようございます、ローズ先輩。その右手の火は?」

 

「ああこれ? こうして普段から火を使い続けるように癖付けてるの」

 

「えーと……鳳凰の炎を使いこなすためにってことです?」

 

「そ。意識せずとも使えるくらいにすれば、いつどんな状況でも力を発揮できるでしょう?」

 

 なるほど。だからあの時の鳳凰の炎を使った幻影も気付かれることなく使うことができたのか。普段から炎に触れ続けることで様々な応用や、状況に応じての対応を即座に思い付く……勉強になるな。その考え方はエンチャントを使っている時にも通ずるかもしれない。例えば血の呪刃。あれは血を精神力とか霊気とかアムリタとかを使って霧散させることなく武器に纏わせることで、出血を強いる呪いの刃を生み出しているわけだが、原理的には呼び水だ。同じ血を呼び水にすることで、強力な磁石の様に敵の血を噴出させている。出血量を増やすことで刃の形状を変化させる原理はよく分からんが、想像力でどうにか形を変えられるから、発想力大事とだけ。分からない……俺は雰囲気でエンチャントを使っている……

 

「メグちゃんは朝練?」

 

「ええ、まぁ。走り込みからやろうかなと。素材マラソンでアムリタ稼ぎができない分、基礎を固めたいと思いまして」

 

「あなた結構真面目よねぇ。大盾と槍を持ってたらもうガッチガチの騎士様みたいなレベルで」

 

「防いで殺すって戦い方苦手なんですよねぇ」

 

 ゲームで盾二刀流の反射ビルドもやったことあったけど、やっぱり殴って殺す方が性に合っていた。俺は受け身な戦いというのが苦手なのだ。もちろん苦手ではあるが嫌いじゃない。味方にいれば心強いしな。鍛冶場に籠っている後輩はガチガチのタンク系で心強い。なおあんまり戦闘に出るタイプじゃないのであまり戦いぶりを見ることはない。

 

「そんなこと言いながらあなた、盾の依頼出してなかった?」

 

「ああ、鈍器用に使えるかと思って。結局鉈に行きついてますが」

 

『小僧の鉈への信頼は何なのだ』

 

 導きを信頼して何が悪い。斬る、殴るどちらもできる優れものだぞ。やろうと思えば防御もできるし、パリィもできる。

 

「というかローズ先輩はそろそろ装備更新とかしなくていいんです?」

 

「そうねぇ……そうしたいのは山々だけど、うちのお抱え鍛冶師の人達ちょっと頭が固いのよね。薔薇苑家が代々刀を使ってきた戦士の家っていうこともあるけど」

 

「あー……じゃあ瑞騎先輩のとこに行ったらどうです? 結構いい人達でしたよ」

 

「それはそれで角が立っちゃうでしょ?」

 

 いいとこのあれこれって面倒くせぇなおい。これはもう鍛冶場に籠っているパリピ後輩強化計画を実施した方が早いのではなかろうか。あいつらは凄いぞ。何せ、俺の装備はほぼ全てその後輩達製だ。正確には整備強化をお願いしているというべきか? とにかく、もう『茶菓子同好会』はあいつらに装備を任せちゃっていいんじゃないかな……

 

「まぁ、それはそれとして。メグちゃん、ちょっと小言聞いてくれる?」

 

「え? ああ、はい」

 

「ありがと♡それで、小言だけれど……自分に好意持ってくれてる子はちゃんと認識しなくちゃダメよ?」

 

「? してますけど」

 

「できてないから言ってるのよ。あなた、恋愛と親愛をごっちゃごちゃにしてない?」

 

 なわけあるかい。恋愛はあれよ……好感度上げてルートを構築するやつで、親愛は信頼度を上げてルート構築するやつ。恋愛と友情を建物に例えると、友情の二階に恋愛がある建物ではなく、友情は友情の建物があって恋愛は恋愛の建物がある感じ。親愛友情は縁があるが! 恋愛には縁がねぇってのが俺である。悲しいねばなぁじ。

 

「今、絶対恋愛なんて縁がないとか考えたでしょ」

 

「鋭いっすねローズ先輩。誉れポイント10点」

 

「ふざけるポイントじゃないからね?」

 

「ふざけてねぇっすよ?」

 

 誉れに関しては全くふざける要素がないのだ。

 

「スイちゃんとか、あなたのことちゃんと見てるわよ」

 

「ええ、それはマジでありがたいことで……なーんか入学当初から面倒見てくれてるんすよね、瑞騎先輩」

 

 初対面の俺にも優しくしてくれるなんてマジで聖人だぜこの人、って思ったしな。

 

「そういうのじゃなくて────スイちゃんのこと、どう思ってる?」

 

「はい? 尊敬してますけど」

 

「お馬鹿」

 

「ブッ」

 

 何故俺は打たれたのか。結構強めに行きましたね、ローズ先輩。心なしか鳳凰も呆れているように見える。……何故? 瑞騎先輩のことを尊敬しているのが良くないということか? リスペクトは大事だろうに。何しろ推しだ。推し活とはリスペクトありき……同担拒否とか以ての外だと俺は思います。

 

「あたしが聞きたいのは、先輩としてじゃなくて、よ」

 

「瑞騎先輩は瑞騎先輩でしょうが。それ以上に何を求めるんで?」

 

「あの子のこと、好き?」

 

「? 好きですけど」

 

 好きじゃなきゃ関わり続けてるわけがないのだから当然だろうが。今更何言ってんだこの人。嫌いだったら、入学当初に色々面倒見てくれた時に余計なお世話だと跳ね除けている。

 

「あたしやムーちゃんは?」

 

「好きですが」

 

 誰が好き好んで嫌いな人と同好会を開いたりするものか。

 

「分かった、言い方変えるわね。スイちゃんのこと、女の子として好き?」

 

「…………………………あ、そういう方面で。うーん……うーん……」

 

 ゲリュオンといいローズ先輩といい、こういう話好きねぇ。……瑞騎先輩のことを好きだって心の底から思えるが、そっち方面での『好き』という言葉。その意味。その『好き』という言葉の意味。

 

 何だろうなぁ……なーんか、あれなんだよなぁ。こう……心のどっかでこれ以上先に進んだら何か大切なものが壊れて、今までの関係ではいられなくなるぞともう一人の俺が言っている気がしてならん。なんというか、こう……先輩後輩、戦友、友達の関係ではいられなくなると言われているような……口にしたら全部、今まで積み上げてきたものが壊れてしまうような気がする。それは何か嫌だ。

 

「あら、早いのね二人共」

 

「「!」」

 

 振り向けばそこに、話題の人がいらしゃった。

 さっきまで走り込みをしていたのか、火照ってほんのり赤くなっている顔の瑞騎先輩。自転車競技で使うようなピチッとしたランニングウェアを着ているせいもあって、体のラインがはっきり見えるし、ほっそりとした手足やポニーテールに纏めている髪から覗く首筋などが死ぬほど目に毒である。いけませんお客様、俺の目が焼き溶けてしまいまする。

 

「二人で何を話してたの?」

 

「朝練のことでちょっと、ね?」

 

「そうっすね」

 

 正直瑞騎先輩が来てくれて助かったと思う自分がいる。あのまま考えを巡らせて、あれ以上の問答が続いていたらと思うと…………なぜこうも俺が言葉にできないナニカと変化を嫌悪しているのかは分からないが、有耶無耶になってくれて助かった。ずっと悲しいままかどうかの質問への返答ではないが、忘れてしまえばいいさ俺。それできっかり元通り……とならないのが人間の悲しいところ。変化は悪いことではないはずなのになぜ、こうも俺はそれを嫌悪するのか……俺はそれを考えなくてはならない気がする。

 

「巡君、どうかした?」

 

「ああいや……禍津日様のとこで何回死ぬかなぁと思っただけです」

 

「どうなるかしらね?」

 

 まぁ、それらを考える前に禍津日様のところでの修行について考えなくては。ゲームと条件が同じなら、一面突破で加護を与えてくれたはずだ。クリア報酬じゃないところに運営の温情を感じるぜ。

 

 

 

 

 

(メグちゃんへの働きかけはこれくらいでいいかしらね?)

 

(恐らくな。だが、あの小僧のことだ。当人がしっかりと攻めねば芽生えた可能性は潰えると見ていい)

 

(ほんと、スイちゃんってば難儀な男の子を好きになっちゃったわねぇ。……ハクちゃんもだったかしら)

 

(あれは……どうだろうな。落ち着いた先でそうなる可能性はあるが)




パリピ後輩トリオ
ポブさんぽしてそうな後輩三人組。いいやつ。三人全員長槍&スナイパーライフル&大盾という死ぬほど面倒な存在。放っておくとひたすらチクチクされる。






人は変化を嫌う生き物――――あると思います。
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