恋愛要素ありの死にゲーに転生して鉈を振り回す転生者 作:エヴォルヴ
おまえはそこでかわいてゆけ
この時間に投稿できるように時間を設定することで連投しているように見せる(ストックが消えた音)
ゲリュオンとクリュサオル、一体と一頭の人魔一戴によって落下による死亡を逃れた俺は、禍津日様が言う『旧南炎邸』、『旧薔薇苑邸』と呼ばれる大きく伝統的な日本家屋の空を見て唸り声をあげていた。
「おーん……おーん……?」
『結界だな』
『ブル』
「だよね。しかも何重にもなってやがるぜこれ」
人魔一戴を使っている影響もあるのかもしれないが、触れただけでバチッ、と凄まじい痛みを伴う衝撃が手を伝う。自己回復スキルで賄えるレベルのものではあるが、厳重に張られている結界に対して俺は────高度で硬度の高い誉れを感じていた。
もしも封印が解けたとしても、ここに封じた怪魔を絶対に出して堪るかよという覚悟と意志を感じるこの結界を生み出したのが誰なのかは分からないが、その誰かに敬意を示しつつどうにか結界を突破する方法を考える。この結界の中に、禍津日様から依頼された対象がいるはずなのだ。
「うーむ……ゲリュオン、ぶち抜けるかこれ」
『可能だろうが……止めた方がいいだろうな』
「ん? なんで?」
『下で結界を維持している者が何人もいる。何事かと大騒ぎになるぞ』
ああ、そういう問題もあるのか、と納得しつつもこのレベルの結界を維持し続けるってどんな技量だ、と戦慄も隠せない。旧薔薇苑邸ということは、薔薇苑家の皆さんが死力を尽くして結界を維持しているのだろうが……どれだけの人数でこの結界を維持しているのだろう。
うーむ……あとで腕を切り落としてでも謝るからもうぶち抜いていいかな……そう思った矢先。
「何者だ!!」
俺の姿を見つけたらしい人の声が下から響いた。この声、何か聞いたことあるな? と思いながら下を見てみると、見覚えのある顔があった。まぁ、見覚えがあるのは当然。ローズ先輩の家の現当主であり、ローズ先輩のお父様である薔薇苑
「善治さんご無沙汰してまぁすッッ!! 巡です!!」
「うん!? 巡君か!?」
「そっち行きますね!!」
戦車の車輪を回して急降下。善治さんが率いる推定薔薇苑家結界維持組の人達の目の前に降り立つと、凄く驚かれた。まぁ、当然だろう。薔薇苑家の皆さんも俺に良くしてくださっているが、俺には加護がないと知っている人達で構成されている。
ちなみに良くしてくださっているのは本家で、分家は加護無しな俺を見下してる方が多い。というか全員加護を持ってないやつを見下してる気がしないでもない。どうしてそんな人達が繫栄してるんですか? (電話猫並感)でも俺みたいなやつでも良くしてくださるからこそ、ローズ先輩の家が本家になれているとも考えられる。
まぁそんなことよりも。
「ご無沙汰してます善治さん」
「ああ。ローズからは手紙でよく話を聞いていたが、息災で何よりだ」
うーむ、近くで見ると思うが、化粧を落としたローズ先輩そっくりだな。ローズ先輩はお父様似なんだな?
「それで、その姿について聞いてもいいか?」
「あ、はい。禍津日様の力で怪魔の力を自分の力に変えてます」
「禍津日……ローズの手紙にもあったが、聞いたことのない神だな。……しかし、その言い方だと君は遂に加護を?」
「うーん……まだですね。これ、どっちかって言えば呪いですし。本来なら疑似的に怪魔化できたりするみたいですよ?」
「それは……どうなんだ?」
神スキルやろがい。
「まぁ、いい。なぜここに? 今は地元に戻っているのではなかったか?」
「いやぁ、それがですね……」
善治さんを含め、訝し気にしていた結界維持組の皆さんに対し禍津日様の依頼でここに来たことや、いざ来たはいいが結界が邪魔で入ることができず、もうけじめで腕を失くすつもりでぶち抜いてやろうかと考えていたこと、怪魔をぶち殺したいなどの話をする。
「なので、この結界どうにかしてくれませんかね?」
「…………そうしたいのは山々だが……」
「この結界の中で封印されている怪魔は強力です。実力が確かな巡さんであっても────」
そう言いつつも殺意とか憎悪とかが隠し切れてませんよ皆さん。何? この結界の中で封印されてるやつってそんなに下種野郎なの? なおさらぶっ殺さないといけなくないです? 俺もそんな下種野郎がいると知ってぶっ殺さないわけにはいかないんですが。処したい……処したくない……?
というわけで、ちょっと挑発してみようか。
「悔しくないんです?」
「…………何?」
「恥ずかしくないんです? この結界を作った人に対して」
ブワァッ────と、俺の全身に凄まじい殺意が突き立てられた。だが足りない。このくらいじゃ全く足りない。ゲリュオンとクリュサオルの殺意の100分の1にしか満たない程度の殺意で俺をビビらせられると思うなよ。
「そんだけの殺意を出せるのに、この結界の中にいる怪魔を殺しには行かないんですね」
「いくらご子息のご友人である巡殿と言えど、これ以上は許されませんぞ!!」
「ハッ、頭下げて謝りたくてこんなこと言ってるわけじゃねぇことくらい分かってんでしょう?」
「……巡君、何が言いたい?」
今にも掴みかかってきそうな圧を放つ善治さんが震える体を抑えつけつつ、俺に問いかけてきた。
「このでかい結界を作った人は喰われながらも怪魔を封印したと禍津日様から聞いています」
「……ッ」
「喰われながらです。血が出たでしょう。肉を食い千切られ、臓物を啜られたでしょう」
俺が言葉を重ねる度に、善治さん含めた薔薇苑家の皆さんの殺意や悔しさ、無念などが強くなっていく。奥歯を噛み砕いているんじゃないかと思う程に歯を食いしばっている人もいれば、握りこぶしが白くなり、皮膚が裂けて血を流す人もいる。
「痛かっただろうに。苦しかっただろうに。それでもその人は成し遂げた。善治さん、そんな偉大な人の名前は言えますか?」
「……
…………ああ、何となくだけど、思い出したぞ。この結界の中にいる怪魔や、ローズ先輩がどうして名前や苗字で呼ばれたくないのか、その理由も。なおさら俺はこの結界の中で封印されている怪魔を殺さねばならない。
「その憎悪、喰われただけではない……そう見受けます」
「ああ、そうだ。その通りだ。……その怪魔は姫艶を襲い喰らっただけでは飽き足らず……!! あの子の尊厳全てを奪った!!」
ああ、そうだろう。忘れるわけがないだろう。血涙を流さんばかりに叫ぶ善治さんや、結界維持組の皆さんを見ればそんなことは分かる。姫艶さん────ローズ先輩のお姉さんは、ローズ先輩や薔薇苑家の皆さんを守るために自分の身を挺し、喰われ、犯されながらも恥辱や苦しみに耐え、その怪魔を封印し、結界を作り出した。
ローズ先輩が自分を苗字や名前で呼ばれたくないのは、姉を守れなかった自分が薔薇苑の名前を名乗っていいわけがない、あとは分家の連中みたいな姫艶さんを馬鹿にするようなことを陰で言ってる連中と同じ名を名乗りたくないと考えているからだ。やはり滅ぼすべきでは?
「なら、だからこそ怪魔を殺すべきでしょうが。姫艶さんの無念、恥辱、苦しみを終わらせるためにも」
「だが、それを成し遂げることができるほどの実力を、我々は持ち合わせていない……悔しいが、結界を維持するだけで精一杯だ」
まぁ、確かにクソ雑魚ですしねあんたらゲームでも。ローズ先輩が上澄み過ぎるだけで、薔薇苑家はそこまで武芸に富んだ家ではなく、どちらかと言えばこういった回復や結界などに長けている人が多い家の設定だったような気がしないでもない。初代が刀ぶんぶん振り回して戦いながら回復もするバーサクヒーラーだったから刀得意設定があるだけで。だからこそ一人で因縁終わらせて、分家も粛清したローズ先輩やべぇって話になってくるわけだが。
この人達を戦場に連れ出してもろくなことにならないのは目に見えている。なのにどうしてここまで殺意や憎悪を増幅させるような挑発をしたのかって? んなもん決まってんだろ。復讐代行するなら、本気の殺意や憎悪を背負わないとダメだろうが。
「もう一度聞きます。悔しくないですか。恥ずかしくないですか。憎いと思わないんですか」
「……悔しい」
「聞えませんね!! もっと叫んで!!」
「悔しい……!!」
「腹から声出して叫べ!! 悔しくないのかあんたら!!」
「「「悔しいに決まっている!!!!」」」
揃いも揃って最高の殺意と憎悪を込めた叫び────どっちかって言うと慟哭が空気を震わせた。
「お嬢様の命を奪ったあいつが憎い!!」
「お嬢様が生きるはずだった時間を奪い去ったやつを殺せないことが悔しい!!」
「ご子息に、お嬢様に顔向けできずにいる我々が恥ずかしくて仕方がない!!」
これだ。これが欲しかった。この殺意、憎悪、戦意。戦えなくとも滾らせるこの空気。ローズ先輩編最終章で見た、本家生き残り全員で見せてくれたその美しいスチルそっくりだ。
ローズ先輩のキャラストーリー最終章で戦うことになるその怪魔は、封印から解き放たれた瞬間結界維持組の皆さんを殺し尽くした後、女子供を手当たり次第に襲い、犯し、喰らう。その結果なんか滅茶苦茶強い状態になるわけだが、今、封印が緩みかけているだけの今の状況が一番弱い。そんでもってこいつの素材使った武器も中々強いので素材全て奪い尽くしたい。散々人からたくさんのものを奪ったんだし、奪われても文句言わんじゃろ。
「善治さんはどうです────って、聞くまでもないですよね」
「ああ。姫艶が死んでから妻は床に伏し続けている。怪魔を殺せるのなら……この命を悪魔に捧げてもいい!!」
「よく言ってくれました。……んじゃ、その殺意も、憎悪も、全部俺が背負って行きます。んでもって必ずぶっ殺します」
ニンジャ死すべし慈悲はないならぬ、怪魔死すべし慈悲はない。逃げれば一つ、進めば二つ、奪えば全部。奪われたんなら何もかもを奪い返せ。奪われてなかったやつも含めて奪い取れ。この考えもまた誉れ。奪われ尽くされた畜生が人間へと戻るための戦争である。彼らを畜生に貶めた怪魔の全てを奪い尽くした時、ようやく彼らは人間へと戻ることができるだろう。
「なぁに、禍津日様から無傷撃破もできるってお墨付き貰ってんです。何もかも奪い取ってぶっ殺してやりますよ」
ニィッ、と俺が笑うと薔薇苑家本家の皆さんが泣き笑いのような顔を見せてきた。泣くのはまだ先でお願いします。
「巡君」
「はい」
「君に言うことではないのだろう。本当なら、我々が解決することだ。……それでも、言わせてくれ。頼む……あいつを、娘の仇を、殺してくれ……!!」
「もちろんです。そのために来ましたからね」
確実に殺しますとも。死に戻りができないであろう状況ではあるが、禍津日様から無傷撃破も夢じゃないからぶっ殺してこいやって言われてるし。多分無傷撃破しないともう半分の報酬貰えないでしょ。いや、貰えるかもだが、ゲーマーたるもの一度は憧れるノーダメクリア……!! 狙うしかないでしょ、その誉れ。
あとね、俺はちょっと────いや、結構キレてんの。生かしちゃいけねぇやつがここにいるってことがもう我慢ならねぇの。つまりは性犯罪者でカニバリズム狂人な化け物が封印されているとはいえ、現代にいるというこの現状に対して我慢できねぇ。こいつを野放しにして解き放ってしまったら……下手すりゃ大耀さんや瑞騎先輩もその被害に遭うかもしれないと考えたらもう……ネ……?
「もう殺すしかなくなっちゃったよ」
『ククッ……この結界の中にいる怪魔が不憫で仕方ないな、私は』
『ブルルルッ……』
そう言いながらもゲリュオンとクリュサオルの殺意も膨れ上がっている。うん、まぁ、そうだろうな。女子供を好んで襲って犯して喰らうやつなんてこいつらが嬉々としてぶっ殺す対象だろうし。
* * *
結界の中心に、その怪魔────薔薇苑遠志ルートのラスボスを務める邪悪なる怪魔、『醜怪餓鬼』は封印されている。
十年前、薔薇苑家本家長女である薔薇苑姫艶が命と尊厳を代償に封印してみせた怪魔側の思考としては、そのうち封印を解いて女の魂を絶望させるためにわざと封印されてやった程度の考えであるが、普通に抵抗できずに封印されてしまった馬鹿である。潜伏、襲撃を繰り返している格上と戦ったことがないようなやつが、覚悟を決めた誉れ高い女傑に敵うものかという話だ。
だが、腐っても迷宮であれば主になれる実力を持つ怪魔。一応全力で抵抗すれば封印から解放されるくらいの力はある。それでも十年くらい抵抗しないと封印から抜け出すことができないあたり、姫艶の覚悟と封印と結界がどれだけ強かったのかが窺える。
「…………くひっ、出てやった。出てやったぞ」
そんな女傑の封印から解き放たれた醜怪餓鬼の頭の中はもう、女を犯し、喰らいたい────ただそれだけであった。
醜怪餓鬼、という名前ではあるが、見た目は案外整っている。比較的イケメンの部類だろう。だが、なぜそんな不名誉極まりない名前なのかと言えば、性格がクソだからだろう。醜怪餓鬼という名前は自ら名乗ったものではなく、会話ができるくらいの思考能力を持っていたり、武人気質、または一国の姫や主のような格を持つ怪魔や、神、神獣、守護獣などから侮蔑の意を込めて呼ばれたもの。なお、醜怪餓鬼自身は周囲の嫉妬だろうと考えている。何を言っているのか分からないかもしれないが、醜怪餓鬼はそういう怪魔である。
さて、そんな醜怪餓鬼。女を犯し、喰らいたいと考えているゴミムシ以下の怪魔は、自分を封印したと思っている愚かな女*1────を犯した時のことを思い出して下卑た笑みを浮かべていた。
純潔を奪い、凌辱の限りを尽くしながらも気丈に振舞っていた女。女と言うには少々幼かったような気がしなくもないが、醜怪餓鬼にとってそれは些細な話。恥辱に震え、肉を貪られる痛みに悶えながらも全く折れることが無かった女を思い出すだけで股座がいきり立つ。湧き上がる下卑た性欲と食欲を満たすために、この何重にも重なっている結界を破壊して外に出よう。きっと、美味そうな女子供がたくさんいるはずだ。
そんなことを考えていると、怪魔の優れた耳が足音を聞いた。走ってくる足音だ。聞いたことがない、金属が地面を擦るような音も聞こえる。なんだか混ざっているような気がしないでもないが、人間の匂いだ。男────だが、その男から何人もの女の匂いがする。
「……ハハァ……」
いいことを思い付いた。
今、迷うことなくこちらに走ってきている人間の男を半殺しにして、男についている女のところに連れてってやろう。そして、動けない男の目の前でその女達を犯して喰らってやろう。きっと、最高の気分になれるに違いない。うん、そうしよう。そうしてやろう。
どんどん近付いてくる足音を前に、人間を悉く下に見ている醜怪餓鬼はそんなことを考えながら己の得物であり、女の肉を雑に切り裂いて苦悶の声を上げさせるためにわざわざ刃こぼれさせた二振りの刀を手にし、その足音の主を待ち構え────────
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ッッ!!」
「ゲアアああああああああああああああッッ!!!??」
人間とは思えない叫び声────咆哮を放ちながら叩き込まれた右ストレート×コークスクリューというどうやってんのか分からないし頭のおかしい拳で顔面を崩壊させた。
醜怪餓鬼の顔面をぶん殴った男────我らが気狂いにして、ゲリュオンとクリュサオルを纏うことで黒い鎧と仮面を装着した凄まじき戦士もどきと化している巡は、ぶっ飛ばされた醜怪餓鬼に中指を突き立て、言った。
「一発目……! 顔の骨と歯がちょいとぶっ壊れたようだが……今の一撃は姫艶さんがてめぇの顔面を砕いたと思え」
強敵を前にした時、霊薬の効果もあってよく笑っている巡だが────今の巡は全く笑っていない。激怒している。憎悪している。本人は気付いていないが、受け継いだ神としての名、『アラハバキ』は人間を愛し、守ろうとしたが守れなかった精霊達だ。そんな彼らの名を受け継いだ影響もあってか、そもそもの本人の気質か。とにかく巡はブチギレていた。この戦いを観戦している禍津日を含めた多くの者が、いつもとは違うギャップに悶えている。これを見て『茶菓子同好会』のメンバーを扱きまくっていた鬼島津率いる薩摩衆がこぞって秘蔵の酒を各方面に振舞うのもどうかと思うが、神々の性癖はもうどうしようもないかもしれない。
「おらさっさと来いよ雑魚が。てめぇの首はいらねぇ。素材と尊厳と命だけ置いて死ね」
「雑魚のくせに……!! 殺されるだけの雑魚のくせに!! 俺を……殴ったな!!? 殺す……殺してやる……!!」
「ハッ、殺してみろよ。てめぇみてぇなやつが俺を殺せるなんて思わねぇが」
薔薇苑家の人々が見せた憎悪や殺意には程遠い、腐った卵にも劣る殺意を膨れ上がらせる醜怪餓鬼を前に、巡は黒い片刃の剣と鉈を構えた。
あはっあはっ
(殺意と憎悪が)こんなになっちゃった………
たはは
(相手がクズで、こちらは殺意の波動に目覚めてしまった状態で)なっちゃたからにはもう、ネ…?
もう殺すしかなくなっちゃったよ