恋愛要素ありの死にゲーに転生して鉈を振り回す転生者   作:エヴォルヴ

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兄貴が好きなケジメです

「えー……マジですみませんでしたァアアアアアアアアア!!」

 

「待って? 帰ってきてすぐにスライディング土下座は流石に脳が理解を拒むわよ?」

 

 醜怪餓鬼のアムリタ結晶を善治さんに渡した後、すぐに禍津日様のダンジョンへと戻された俺は、禍津日様の部屋に呼び出されていたらしいローズ先輩にスライディング土下座を敢行していた。

 

 いや、マジで申し訳ございませんじゃ済まされない案件ですぜ。神様からのクエストとはいえ、人の復讐を勝手に代行したというのは殺されても文句は言えないやらかしってやつですよ。思い出せなかったのはあったが、それでも旧薔薇苑邸と言われた時にローズ先輩を連れていくという提案をできなかった俺は、ローズ先輩にケジメを付けなくてはならないだろう。

 

「禍津日様、まな板とドスを貸していただきたく」

 

「おう、ちょっと待ってろ」

 

「いや本当に待ちなさい!?」

 

 ケジメを付けようとする俺と禍津日様を慌てて止めるローズ先輩。くっ、何故俺のケジメを見届けてくれないのか。ケジメは大事だぞ。

 

「ここに呼ばれた理由も、あなたが土下座してる理由も見てたから分かるわよ」

 

「あ、そうなんですか? でもそれはそれとしてケジメが必要では?」

 

「あなたのそのケジメへの信頼感は何なの……後輩にそんなことさせないわよ。……ちなみにどの指斬るつもりだったの?」

 

「とりあえず小指と薬指行っとこうかなと」

 

「お馬鹿」

 

「ブッ」

 

 結構な力でぶちましたねローズ先輩。150分の1スケール雷電張り手と言ったところか。流石ですローズ先輩。

 

「それをやらせたらあたしが各方面に殺されるわよ」

 

「その時は俺が肉盾になります」

 

「鉄砲玉じゃないんだから落ち着きなさい?」

 

 ともかくローズ先輩は俺にケジメをさせるつもりはないらしい。復讐の対象を横取りされたというのに、よく冷静でいられるな。俺だったら「何してくれてんの?」ってなっているところだ。これがローズ先輩の器の広さというやつか……

 

「そりゃあ、あの怪魔をあたしの手で殺せなかったことはちょっとだけ心残りだけど」

 

 まぁ、それはそうだろう。器がデカいとはいえローズ先輩だって人の子なのだ。復讐の対象は他の誰かに殺されてもういないと言われたら納得いかないところがあるはず。でも、それを飲み込めるだけの器があるのがローズ先輩。凄いよね。もっと癇癪起こしてもいいのよ? 

 

「禍津日様が声をかけず、鳳凰も何も言わなかったのなら、それはあたしが挑める域に達していなかったというだけ。そうでしょう?」

 

「ん? まぁな。殺せはしただろうが、相討ちがせいぜいだっただろうよ」

 

 仮にも迷宮の主レベルの実力持ちだったしな、と真面目な顔で分析してみせる禍津日様は重ねるように続ける。

 

「因縁ってのは中々面倒でな。いざ相対した時、ローズ、てめぇは恐らく怒りに飲まれてただろうよ」

 

「ええ、自分でも理解しています。やつを見た瞬間、絶対に冷静になれなかったと」

 

『映像越しでも若干取り乱していたしな』

 

 ローズ先輩の言葉に続いた鳳凰がそう言う。今思えば、ゲームのローズ先輩ルートでは最初、ローズ先輩が重症で病院に運び込まれたという話からプレイヤー達は醜怪餓鬼の存在を知るのだ。旧薔薇苑邸の結界が破れかけているという報を聞いたローズ先輩が慌てて向かった時、結界が破られ、醜怪餓鬼が出てきて────という話だったような気がする。女しか喰わない────わけではないが、極力女しか喰いたくない醜怪餓鬼は苦肉の策で薔薇苑家本家の人々の血肉を喰らって力を付けていたのでルート最終ボスの格にふさわしい強さを誇っていた。性格はクソだし、耐性もクソだが。

 

「実力は間違いなくある。俺が保証してやる。だが足りてなかった。てめぇが持ってる手札を全部行使するための覚悟ってやつが」

 

 そうかな……そうかも……どうだろう……? ローズ先輩は醜怪餓鬼戦に挑むために様々な準備をしていたような気がするが……本当に色んなものを用意して、必ず殺すという感じの覚悟があった。……それはもう何も失うものがないからこその強さだったりしたのだろうか? 

 

「そんな状態で挑めば十中八九巡の足引っ張って遺恨が残っただろうよ」

 

「全く気にしませんが?」

 

 初見ボスにトロールかますなんてあるあるだから。その失敗を次に活かしていただければ全く気にしないのが死にゲーマーというもの。

 

「てめぇじゃなくてローズの方だ」

 

「そうね。あたしがあたし自身を許せなかったと思う」

 

「はー、真面目っすね。勝ちゃいいんすよ勝ちゃ」

 

 自分がトロールかますことで餌となり、ヘイトを買ってボスを殺すなんて戦法が成立するくらい、何周も周回を重ねた討魔の敵AIは優秀だったりするのだ。釣り野伏って知ってる? 

 

『小僧は源氏平家の兵子と薩摩の兵子と気が合うだろうな』

 

「豊久さんとはお話しましたよ。めっちゃインテリですねあの人」

 

 方言で何言ってんのか分からねぇと若干思っていたら、それを察してか標準語に切り替えて話してくれるという気遣いもできる男だった。他の薩摩弁? 鹿児島弁? の翻訳もしてくれたりしたし。頭バーサーカーなイメージがある薩摩衆だったが、他の人達も結構温厚な人達ばっかりでイメージが180度回転したと言っても過言ではない。戦い方はイメージ通りヤバい人達ばっかりだったけど。なんだよあの一撃必殺。避けてもその人の後ろからもう一発一撃必殺飛んでくるし。

 

「とにかくだ。そんな状態で戦わせるほど、俺は落ちぶれちゃいねぇ」

 

「ちなみに心の強さランキングはどんな感じで?」

 

「お前と禅明が同率一位、次に明日夢、またもや同率で翡翠とローズだ」

 

 いやそれはおかしい。師匠と俺の心の強さがランキングで同率一位はおかしい。師匠が一位で大耀さんが二位、そこから最終的に俺が最下位になるはず……!? いや、でもあれか。それは最終的な心の強さだろうし、ここから皆が俺を追い越していくのだろう。コーナーで差を付けろ。

 

「まぁ、なんにせよ醜怪餓鬼は完全消滅した。もし復活したとしても、人間を襲わない畜生以下の怪魔だろうさ」

 

「復活の原理が分からねぇ……!」

 

「迷宮が勝手に復活させることもあれば、怪魔の魂が負けを認めずに復活することもある。ま、怪魔も生き物なんだし、色々あるわな」

 

 色々で済ませていいようなことではない気がしないでもないが、突っ込まないでおく。難しい話をされても宇宙が空にあるということしか分からないだろうし。

 

「んでもって無傷撃破してみせた巡にはしっかり報酬を渡す……と、行きたいところだが、巡、お前なんか持ち帰ってきたな」

 

「え? ああ、これですか?」

 

 俺が懐から取り出したのは、醜怪餓鬼のアムリタ結晶と一緒に落ちてきたリボン付きの聖印。性能はそこまで高いものではなさそうだが、特別な何かを感じたので持ち帰ってきたのだ。別の何かに変えようとかそんなことは考えていない。流石に考えてない。

 

「おう、それだそれだ。なんで持ち帰ってきた?」

 

「うーん……いや、善治さん達に渡すのは何か違う気がして」

 

 別の人に渡すものな気がしてならなかったので、大の大人が全員で情けなくない滂沱の涙を流している最中、アムリタ結晶は渡したが、聖印は渡さなかったのだ。なんで持って帰ってきたのかは俺にも分からん。ただ、なーんかぼんやりと赤い糸みたいなのが見えるような、そうでもないような。これがアラハバキの力だったりする? 蜘蛛だし、縁結び的なサムシング……

 

「それ……姉さんの」

 

『姫艶の聖印だな。そのリボンも、ローズが手ずから作ったものだ』

 

「あ、そういう。……ならローズ先輩が持ってどうぞ」

 

「…………いいの?」

 

「形見は肉親が持つもんでしょ? あとは……まぁ、あれですよ、あれ」

 

「『あれ?』」

 

 一呼吸挟んで、俺は堂々と笑う。

 

「俺は聖印を使えねぇ……! 使えないんですよローズ先輩……!! DPSが落ちるから!!」

 

「ふっ……ふふ……! もう、湿っぽい空気を一瞬で蹴散らしてくのねあなた」

 

『はははっ……! もはや才能だな。…………今思ったが、姫艶と小僧は似ているところがあるな』

 

 主に性格が、と付け足して笑う鳳凰と、笑いながら涙を滲ませるローズ先輩。実際俺は聖印を使えない。いや、使えないこともないが、DPSキャラとして自分を確立させているのに、DPS落としてしまったらダメでしょ、色々と。なので宝の持ち腐れになってしまうよりは聖印を使わせたら回復量トップのローズ先輩に渡した方がいい。その方がお互いのためだし、姫艶さんも肉親に形見の聖印を使ってもらった方が嬉しいでしょ。嬉しいって言え。(豹変)

 

「じゃあ、お言葉に甘えて、この聖印はあたしが貰うわね。……本当にいいの?」

 

「聖印を改造してシャイニングフィンガーするための触媒にしていいなら貰いますが。それかギガドリルブレイク」

 

「あたしが貰うわ」

 

(姫艶なら嬉々としてやろうとしただろうな……いや、さすがにしないか……?)

 

 シャイニングフィンガーとはこういうものか、ってやってみたい気持ちはあったが、ローズ先輩のご意向でこの聖印はローズ先輩のものとなった。これからはローズ先輩の成長を近くで見ていくのだ。姫艶さんも少しは無念が晴れるというものだろう。弟の成長を近くで見れなかったのは絶対心残りだっただろうし。

 

「ではどうぞ」

 

「ええ、確かに受け取ったわ。………………メグちゃん」

 

「あいさい」

 

「ありがとうね」

 

「どういたしまして」

 

 こういう時お礼を受け取っておかないと色々面倒だって俺は知っている。主に虎成さんから。決闘決闘うるさいあの子の対応で俺は成長を遂げているのだ。え? 決闘を受けるのかって? ………………うーん、まぁ、報酬によりけり。もしくはギャラリーがいないことが条件で。いたとしても俺の戦い方を知っている、卑怯だなんだとうるさくない人達のみでお願いします。

 

「うし、醜怪餓鬼の話はここで終わり。んじゃ、お楽しみの報酬授与と行くか」

 

「待ってましたこの時を」

 

「おう、だろうと思ってたぜ」

 

 ニィ、と笑った禍津日様は、俺に指を向け────バチンッ、と指を鳴らした。

 

 

 

 

 

穢れを以って穢れを祓う。それが俺という神の役目なわけだが……まぁ、それ以外は適当でな。

 

過去に英雄と呼ばれた人間の魂に声かけて、俺と戦ってもらったり、過去の英雄同士で戦わせてみたり。まぁ、やりすぎだってことで他の神々とかから苦情が来て、今は俺の領域内だけでやらしてんだが。

 

まぁ、俺の話はともかくだ。俺はお前のことが気に入ったんで、加護をくれてやる。実は初めてなんだよな、これ。

 

お前のことを見てる神々への説明は……まぁ、天照がやってくれんだろうよ。やってくれなかったんなら……まぁ、手伝ってやるからお前が説明しろ。

 

災禍転じて福となるか、災禍転ぜず厄となるか……てめぇの旅路、退屈させるんじゃねぇぞ? 

 

 

 

 

 

 

「……てなわけだ。これからよろしく頼むぜ、模歩巡」

 

 俺の背中をバシバシと叩きながら笑う禍津日様は、初めて加護を与えたのが面白いのか、それとも俺の記憶を見て何か面白いものでもあったのか……何とも楽しそうだ。

 ゲームでも加護を貰う時にその神様、神獣、守護獣の心の声や、加護を貰っている人達の声が脳内に直接聞こえてきたり、経歴が一気に頭の中に映像として流れ込んでくるシーンがあった。さっき俺が見聞きしたのは、禍津日様が今まで見てきたことや、思っていたことなのだろう。

 

「ところでこの目、どうにかなりません?」

 

「多方面への牽制で使えんだろ。上手く使え。あ、温泉に入る時とかは消してやるよ。資格がねぇやつが見えるとは思えんが、一応な?」

 

「なーる」

 

 ゲームのキャラスキンみたいなもんか。オンオフを切り替えることができるのであれば俺は文句ありませんとも。とりあえず……これで大きな目標、その一つが完了した。やったぜ。あとは禍津日様のダンジョンを何回も周回するか、一度クリアするかで解放されるコンテンツを解放すればここでの目標はある程度達成したと言っても過言ではない。

 

「んじゃ、俺の力も使ってあいつらと戦いまくりな。盆の時期には帰るんだろ?」

 

「はい」

 

「そういう計画でしたからね」

 

「なら戦って戦って戦いまくって強くなれ。俺はちょいと天照んとこに行ってくるからよ」

 

 やらかした分、色々しがらみがあってな~と笑いながらいなくなった禍津日様。このダンジョンは禍津日様の領域なわけだが、禍津日様がいなくても維持できるくらいの神域でもある。そもそも神無月は神様達が出雲大社に行って近況報告とかするらしいし、いなくても神域が維持できるのが普通なのだ。

 

 まぁそれはそれとして。ゲリュオンとクリュサオルの完全な人魔一戴も試したいし、今までぶっ殺してきた怪魔の人魔一戴も使ってみたい……!! 

 

「(せっかく加護を貰ったんだから)試さなければ無作法というもの……」

 

『おう、試せ試せ』

 

「おわっびっくりした!?」

 

『ヒヒッ、加護を渡したからな。こうして分霊をてめぇに預けることもできるわけだ』

 

 なるほど? 本霊じゃなくて分霊か、肩を組んできているこの禍津日様は。どこにでもいてどこにもいない、そんなものなのだろうか、神様っていうのは。

 

『まぁ、分身みてぇなもんだ。本体の俺とさほど変わんねえが』

 

「へー、便利っすね」

 

『だろ? んじゃ、さっそく戦ってもらおうか?』

 

 空間が歪み、世界が切り替わった瞬間感じ取るのはとんでもない殺気。遠くに見えるのは、丸に十文字の家紋の旗。先陣切って走ってくるのは凄く動きやすそうな鎧に身を包んだ────

 

「島津じゃねぇか!!?」

 

「あら、しかもスイちゃんとムーちゃん死に戻りしてるわね」

 

「二人でやれって!? やれってことなんだろうなぁそうだろうなぁ!!?」

 

 もう何言ってんのか分かんねぇ────首置いてけって言ってんのは分かる────言葉を発しながら首を狙いに来ている島津の一番槍を務める島津豊久氏を真正面から見て、覚悟を決める。よろしい、大耀さんと瑞騎先輩が帰ってくるまで全力で抗ってぶち殺したらぁ!! 

 

「ゲリュオン、クリュサオル!! 力寄こせ!!」

 

『ハハハッ!! いいだろう! 音に聞こえし薩摩の兵、相手にとって不足なし!!』

 

『ブルルルッ!!』

 

 呪いの人魔一戴ではなく、加護として手にした人魔一戴を発動。俺の体がゲリュオンとクリュサオルと同化し、形を変える。ゲリュオンの体にクリュサオルの脚────ギリシャ神話に登場するケンタウロスのような状態となった。肉襦袢とか動きやすい着ぐるみを着ている感じだ。慣れるまで結構時間がかかるぞこれは。

 

「状況に応じての使い分けって感じになりそう────だなぁッ!!!」

 

 ゲリュオンが使っていた黒銀の大剣を両手で構え、駆ける。大きな馬に乗っているくらい目線が高くなっているため、恐らく俺の体はゲリュオンがクリュサオルに乗っている時と同じくらいの高さまで大きくなっている。なのにさすが薩摩。全く怯んだ様子がない。怯むどころかむしろ喜んですらいそうなんだが。

 

「首置いてけ!!なあ!!首置いていけ!!」

 

「こっちのセリフだヴァカめ!!」

 

「さて、あたしも頑張らなくちゃね。鳳凰、やるわよ」

 

『ああ。命を燃やし、己が空を飛べ!!』

 

 さぁて、どれくらい殺せるかねぇ。ところで豊久氏が島津家でも弱い方ってマジですか? めっちゃ一撃が重いんですけど。




この後全力でチェストされた。やっぱり戦国武将全員おかしいよ




ちなみに姫艶さんですが、巡と関わったらサラッと告白ぶちかまして掻っ攫っていくタイプの人です。瑞騎先輩のこと見たら?「いいんじゃない?ほら、内縁の妻とかそういうの」みたいな感じで取り込む。
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