恋愛要素ありの死にゲーに転生して鉈を振り回す転生者   作:エヴォルヴ

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運営その1「自分が知らない強さを見せつけられたことで脳を焼かれて戦いを挑み、屈服させられてから始まる恋は女々か?」

運営その2「名案にごつ」


決闘VS滅殺

 瑞騎家が管理する演習場────普段は儀式や年始めの戦士の演武に使われている外は伝統的なお寺のような外見、中身はコロシアムのような形態を成している不思議な場所に、少年少女が入場する。

 

 東側の入口から入ってきた少年は火縄銃、各種小手先の小道具に獣の革や怪魔の素材を鞣して霊薬に漬け込んで作られた革鎧に身を包んでいる。

 

 対する西側の入口から入ってきた少女はいかにも重装備といった具合の重鎧に、リーチがそこそこある槍を背負っている。

 

「ようやく決闘に応じたと思ったら何だその顔は。夏休みでたるんでいるのではないか? そんな体たらくでは────」

 

「あ? 知り合いでもなんでもねぇ外野がいるし帰りてぇって顔なんだがぶっ飛ばすぞ」

 

「…………それは済まないと思っている。いや、本当に済まない」

 

 少年────我らが気狂い模歩巡の顔は、それはもう気だるそうな表情であった。原因は少し前にこの決闘を受ける条件として出した「観客は俺の戦い方をとやかく言わない連中のみに限定」という言葉を受けた少女、虎成琥珀が立会人として翡翠を選んだことから始まっている。

 

 翡翠を立会人として選んだことまではよかった。だが、遂に巡と決闘を行うことができるという達成感で、青龍の加護を与えられている高等部一年の少女『辰巻玻璃(たつまきはり)』や、カタパルトタートル先輩こと三野治水にそのことを話してしまったのが良くなかった。玻璃は巡と関わったことが一切ないため、琥珀がそこまでして決闘を挑みたがるような戦士なのかと興味を持ち。治水は家から「加護無しと交流している薔薇苑家本家が突然息を吹き返したように活性化した」という話を受けてローズに話が聞けるかと思いこの場にいる。

 

 しかもこの二人、琥珀や翡翠、巡などに何か一言入れるわけでもなくさらっと観客席にいる。巡の師匠である禅明がいたら問答無用で斬られているかもしれない。ここがダンジョンだったら巡が二人を殺すか磔にしてから決闘が始まっているところである。巡側の観客席に座ってビデオカメラ*1を設置しているローズや明日夢が内心ほっとしているのは、きっと、そういう面もあるだろう。そしてもっとホッとしているのはここが禍津日のダンジョンではないということだろうか。

 

 最近はギリシャの征服王軍とペルシャの不死軍隊の同盟軍というクソゲー染みた軍勢と戦ったこともあって、疲弊度がとんでもないことになっている。同盟軍のやる気が凄まじいものだったのは、アキレウスとヘクトールが率いるトロイア戦争同盟軍や、ヘラクレスを始めとした大英雄が乗り込んだアルゴノーツと戦ったゲリュオンとクリュサオルを巡が纏っていたからというものが起因しているかもしれない。

 

 ちなみに最近の戦いを神々は見ていない。盆前のラストスパートをかけるために大連戦が予定されており、そこまでにどれだけ強くなるのかを想像する楽しみがあるのだ。刹那無心流の二人は目を輝かせ、まだまとも側の三人は目が死んだ。そして禍津日は笑った。天照公認の御前大合戦である。

 

「こちとらさっさと戻って大合戦に向けて最終調整したいんだよ……はよやりましょ」

 

「まぁ、それには同意するけど……巡君、決闘の作法知ってる?」

 

「死ぬまで戦って首ば獲る」

 

「島津乗り移ってるわよ」

 

 織田徳川豊臣連合→薩摩長州連合→新選組→越後甲斐同盟軍→ギリシャ&ペルシャ→呂布→雷電→項羽→島津→源氏→藤原秀郷────というローテーションを日替わりで行う毎日。馬鹿じゃねぇのと言いたいレベルの怪物共と戦い続けていた巡率いる『茶菓子同好会』。どうにかこうにか5人で叩いて島津豊久や森長可などにギリギリ勝てるようにはなったが、それでバフがかかるのが過去の英雄達。豊久を初めて倒した瞬間など、薩摩がヤバかった。なんだねこれは地獄か? 地獄はバッドエンドなのでまだ地獄じゃない。海や祭を楽しみに頑張れている辺り、『茶菓子同好会』はもうバグへの道を邁進している。そしてまだ見ぬ水着と浴衣に耐えるため霊薬を量産している巡は、その霊薬がローズによって少しずつ処理されていることに気付かない。

 

 琥珀の目には一瞬、巡の背後に丸に十文字の家紋が刻まれた鎧を着た侍が見えたような気がしたが、気のせいだろう。巡はまだ人魔一戴を極めておらず、人魔戴冠にはまだ遠い。

 

 まぁ、そんなことはさておき。琥珀は巡の背中に鉈がないことに気付く。

 

「模歩巡、武器はどうした」

 

「あ? あー……そろそろ来ると思うんだけどな」

 

「何?」

 

 琥珀が疑問符を浮かべていると、巡が入場してきた入口の方からドタドタと何かが走ってくる音が聞こえてくる。何だと思い、入口を眺めていると────

 

「お待たせしました~! ご注文の品ぁ!」

 

「メグパイセンの武器、ようやくお届け的な?」

 

「いやマジでハチャメチャなオーダーで草だったんよ。まぁでも~?」

 

「「「それが楽しくて鍛冶やってるとこ、あるよね!!」」」

 

 テンションがとんでもなく高い三人組がやってきた。この三人組について顔と名前だけは知っているという人間がこの場には多く存在するため、紹介しよう。

 

「いやぁ、お待たせしやしたメグパイセン!」

 

「いや、こっちこそ悪かった。地元に呼び出して鍛冶仕事させちまってさ」

 

「いやいや、学園の鍛冶場や実家の鍛冶場とも違う場所での鍛冶仕事、いい経験になりましたよ!」

 

 一人は金髪、一人はブロンズ、一人は銀髪という髪色に、ちょっと年上に見える顔立ちのパリピイケメンボーイズ、(たたら)徹也(てつや)多々良(たたら)(ひろ)多田羅(たたら)槌宗(つちむね)────あだ名はゴールドがテツ、ブロンズがヒロ、シルバーがツッチー。苗字が同音異語なため、苗字で呼ぶと全員が反応するタイプの三人組である。

 

「メグパイセンマジパネェって思ったわ。あんなのとずっと戦ってんだもん」

 

「てか『茶菓子同好会』って名前ばかりの戦闘民族の集いじゃね? 瑞騎パイセン、そこんとこDoすか?」

 

「あら、失礼なこと言うじゃない。巡君、言ってやりなさい」

 

「お前らもその仲間に入れてやるってんだよ!!」

 

「そういうことじゃないわよ?」

 

「「「藪蛇踏み抜いちゃったやつー!!」」」

 

 ウェイウェイと騒がしくするパリピイケメンボーイズと、その乗りに普通について行っている巡と翡翠。置いていかれている琥珀は少しだけ苛立ったように口を開く。

 

「おい、模歩巡の武器はどうした」

 

「っとぉ、虎成パイセンお怒りだしさっさと出すもん出して退散しましょい!」

 

「つーわけで、これがメグパイセンの武器☆DA☆ZE☆」

 

 霊子化されていたものが、顕現する。

 姿を現したのは、鉈だ。鉈、なのだが。見た目が重厚な鉈でも、炎刃の鉈でもない、妙な見た目をしている鉈だ。

 

「おー! さすがパリピイケメンボーイズ! 注文通り完璧だ!」

 

「クライアントの注文に沿うのがプロってもんしょ?」

 

「っぱそういうプロ意識? 大事にしてかないと的な?」

 

「まぁ、結構試行錯誤したっすけどねぇ」

 

 鉈────というには少々大きいような気がしないでもないが、戦士であれば片手で振り回せるレベルのサイズの分厚い剣鉈だ。そこまではまだ理解が及ぶのだが、その鉈の刃をよく見ると亀裂? 隙間? のようなものがあるというのが妙な見た目に拍車をかけている。

 

「それは……何だ?」

 

「鉈に決まってんだろ」

 

『そういうことを聞いてんじゃねぇと思うぞ坊主』

 

「改造した鉈としか言えねぇ」

 

 いつの間にかパリピイケメンボーイズはいなくなっており、武器の詳細を聞くことは叶わない。

 

(まぁ、いい。戦いの中でどんな武器なのかは理解できるだろう。やっとだ……やっと、この時が来たんだ)

 

 そんな意気込みをしている琥珀は背負っていた槍を構えて口上を述べる。

 

「虎成流槍術、虎成琥珀が我が身に加護を与えし神獣、白虎に誓う」

 

「?」

 

「流派、名前、加護を貰っている誰かの名前を言うところから決闘が始まるのよ」

 

 いきなり何言ってんだこいつ、と言わんばかりに疑問符が溢れている表情を浮かべる巡に少しだけ困った笑みを浮かべた翡翠が補足する。名乗りはすれど、流派や加護なんて言ったことがない実戦ばかりやってきたからこそ、この辺りの知識に疎い巡は納得しつつ、琥珀が言っていた通りに言葉を続ける。

 

「……刹那無心流、模歩巡が加護と呪いを与えし荒神、禍津日神に誓う」

 

『ヒヒッ、呪いは余計じゃねぇか? え?』

 

「(呪い?)…………正々堂々、誉れある決闘を行うことを誓う」

 

「セイセイドウドウ、誉れある決闘を行うことを誓う」

 

(正々堂々って言葉にアレルギーでもあるのかしらこの子)

 

 琥珀は気付いていなかったが、巡の正々堂々が片言だったことに気付いた翡翠は「まぁ、巡君だものね」と納得しつつもちゃんと正々堂々戦うのかちょっと心配になっていた。少しだけ考えた後に、まぁ、命があればローズがいるし大丈夫だろうという思考に至る翡翠はもう後戻りできない領域にいる。

 翡翠の精神面が巡がいる領域に片足を突っ込んでいることに誰もツッコまない。それをツッコんだが最後、「お前もその仲間に入れてやるってんだよ!!」と気狂いが頭のおかしい吸い込み性能の掴みで引きずり込みにくるからだ。誰が好き好んでODボルシチダイナマイトの構えをしているザンギに近付くのか。

 

「瑞騎翡翠がここに、決闘の開始を宣言する。────始めッ!!」

 

 銅鑼の代わりに翡翠が光属性の魔法、『雷槍』を発動。轟く雷鳴によって決闘が始まった。

 

 最初に動いたのは琥珀────なのだが。

 

「■■■■■■■■■■■■■ッッ!!!!」

 

「~~~~~~ッッッ!!?」

 

 人間とは思えない怪物の如き殺意が込められた咆哮と共に鬼の形相で突っ込んできた巡に面食らって、出鼻をくじかれる。あの日、後ろで見ていた時とは全く違う────ゲリュオンとクリュサオルの如き殺意の咆哮と共に放たれる一撃を、琥珀は受け止める。

 

「お、防ぐか」

 

「当然、だッ!!」

 

 巡の戦いを咎め、羅刹の類の目を見たあの日、最後に現れた怪魔────ゲリュオンとクリュサオルに立ち向かったのは巡だけだった。神獣の加護を与えられ、民草の希望となるべき自分達は動けず、加護を持たず、文字通り持ちうる全てを使って戦うしかできなかった、内心で「加護を持たず、戦士が務まるのか?」と見下していた少年が、手足が千切れようとも、内臓が零れても、現世での死に戻りの上限────何かが欠落するギリギリまで死に戻り、ゲリュオンとクリュサオルを殺し切った。

 

 そのショッキングな姿を見て、その場にいた戦士達────その多くが名家と呼ばれる家の戦士だ────は一部を除いてほぼ全員が記憶を消す霊薬を飲んだ。記憶を消していないのは琥珀の他に、重錨率いる漁業船の戦士達と『茶菓子同好会』の面々。ああ、確かに忘れたかったのだろう。あのような戦い方をする戦士がいて、文字通りの捨て奸を見たというその記憶を。何より、加護を与えられている戦士が動けずにいて、加護を持っていない戦士だけが戦い抜いたという、加護持ちのプライドがズタズタにされるような記憶を。

 

 琥珀自身も、それをほんの少しだけ考えた。ゲリュオンとクリュサオルの殺気だけではなく、あの修羅、羅刹の類のような目を……全てを使って勝ちの目を拾っていく狂気に満ちた双眸を忘れたいと、一瞬だけ考えた。だが、忘れたくない、忘れてなるものかと甘い誘惑を振り払った。

 

 忘れてしまえば楽だったのだろう。だが、それをすればどうなる。あの時、巡が言った言葉を────全てを使って勝ちに行くという言葉だけではなく、人々に勇気を与えることを凄いことだ、誰にでもできることじゃないと言っていた────間違いなく本音のはずの言葉も忘れてしまう。ゲリュオンとクリュサオルと戦い、勝利した戦士の、恐ろしく、しかし誰もが心が高揚させ、鼓動が高鳴るような英雄譚の一幕のようなあの背中を忘れてしまう。

 

 白虎の加護を代々与えられてきた虎成家の当主、その娘であり次期当主として研鑽を続けてきた琥珀にとって、英雄と呼ばれる者達は全員尊敬に値する者であり、憧れでもあった。最も心躍るのは父親や母親が読み聞かせてくれた英雄譚の数々だった。その英雄譚の一幕のような背中を忘れるなど、英雄に憧れた少女として絶対に許されない。

 

 特注の、重く、鋭い槍と妙な見た目をしている鉈がかち合い、火花を散らせる。

 

「岩砕螺旋ッ!!」

 

「アコレード────空刃」

 

 武器単体でのかち合いだけではなく、スキルの撃ち合いもあって、属性を纏ったアムリタや霊気の波が二人を中心に発生する。土属性のスキル『岩砕螺旋(がんさいらせん)』によってドリルの様に回転する土石流を槍に纏わせた琥珀の一撃を、発動後、一度だけ1.8倍の攻撃力を付与するアコレードを使用して空刃で相殺。

 

 並みの戦士相手であればそこまでする必要性はないが、槍を装備した状態で土属性のスキルを発動すると威力や効果量を増加させる白虎の力によって超火力を得ている琥珀に対して舐めプをするほど、巡は驕っていない。そして、何度も撃ち合ったことで感じた違和感に納得して巡は一歩引く。

 

「その槍、なーんか変だなって思ってたけど……あれか。見えてないだけで槍じゃなくて斧槍か」

 

「……さすがに気付くか」

 

 琥珀が呟いて土属性のスキルでカモフラージュを施していた部分を解除すると、琥珀の持っていた槍が斧槍に姿を変える。刃が槍と斧で独立しているものではなく、斧にも、槍にもなる────グレイブといった形態の斧槍だ。

 

「虎成家は槍の流派だ。だから私も槍を使っていた。だが……通常の槍だけが槍ではない」

 

「お、そうだな?」

 

「柔よく剛を制す、という言葉がある。私の流派もそういった技が多い。だが……正直な話、私の性に合わんということに今更気付いた」

 

「だからグレイブに転向したと?」

 

「ああ。恥ずかしながら私はどちらかと言えば剛を以って剛と柔を叩き潰す方が性にあっているらしい」

 

「脳筋思考だな。いいじゃん、ヘラクレスもそんな戦い方だし」

 

「彼は彼で武の極致だろうに」

 

 違いない、と笑う巡は内心、「そういえば英雄譚とか好きな女の子だったなあ」とゲームの知識と現実の噛み合いを噛み締めていた。噛み締めた上で────虎成琥珀を全力で叩き潰すことを決めた。

 

「んじゃ、今からゴリ押すんで叩き潰せるなら叩き潰してもろて」

 

「……ああ、行くぞ模歩巡!!」

 

「人魔一戴────【呪装:醜怪餓鬼】」

 

 巡の右目から右腕にかけてまで刻まれた禍津日の加護兼呪いが妖しく光を放ち、巡の顔をスチームパンク染みたガスマスクが覆い隠し、右手に歪な形状の刀が握られた。

 

『へぇ……マジであの神に加護貰ったんだな、坊主』

 

「それが、禍津日神の加護か」

 

「加護っつうか呪いだな。呪いと加護で若干使えるスキルが違うんだわ」

 

 シュコー、シュコー、と呼吸音が漏れるガスマスク越しに巡が答え、構える。それを見た琥珀が身構えた瞬間、彼女の後方から衝撃が加えられた。

 

「──────!?」

 

「呆けてる場合か」

 

「グッ……!?」

 

 前、後ろ、前、前、後ろ。

 攻撃が前後にやってくる。前かと思えば後ろから攻撃が飛んでくる。後ろにも目があれば対応できるかもしれないが、混乱する琥珀に見切る術はない。

 

 呪い版の人魔一戴によって構築される装具、【呪装】。怪魔の力をそのまま使うのではなく、怪魔の力を抽出して武器や防具として再現するこのスキルにより顕現したのは醜怪餓鬼の力。

 

 ステルス系の技を使いたいのであれば加護版の人魔一戴を使うが、呪い版の人魔一戴で醜怪餓鬼を使用すると、歪な形状の刀を用いた攻撃が敵の正面ではなく後方に発生する。姿を消し、背後から攻撃するという醜怪餓鬼の性質を再現しているのだろう。しかもこの醜怪餓鬼の刃、ゲーム的な説明をすれば『女性特攻』と『部位破壊ボーナス』を持っている。虱以下の怪魔だというのに、武器性能は本物である。

 

 疑似的な2対1を作り出せる武器と、重厚で波打つ刃と刃同士の隙間がノコギリのように機能することで、琥珀が身に着けた鎧の耐久値を削ぎ落していく。巡は装甲の隙間を狙うなどという面倒なことをやるのが苦手だ。なので、装甲が厚い相手は装甲が剥げるまで殴り続けて殺す。

 

 琥珀が防戦一方になる程のラッシュにより、彼女の鎧が遂に砕け、防御に使っていた槍の柄もへし折れるが────琥珀は鎧が砕けることも構わずに一歩前に踏んで前転、巡の背後を取る。

 

「折れようが────!!」

 

「うわマジで? いっだだだだだだッ!!?」

 

「棒術だって、心得ている!!」

 

「いやそれ棒術っていうかヌンチャクとか三節棍で使うようなやつじゃね!?」

 

 土属性のエンチャントを鎖のように使うことで斧槍を連結、ヌンチャクの様に振り回す琥珀による反撃を腕や武器で凌ぐ巡。いつの間にか演習場の壁際までやってきていたせいで退路が無くなっている。まさか琥珀が槍だけではなくヌンチャクも使えるとは思っていなかった巡は人魔一戴を解いたり発動したりを繰り返しながら攻撃を凌ぐ。

 

「ハァッ!!」

 

「おっとそれは聞いてグえぇっ!?」

 

 唐突なタックル────というよりも鉄山靠────によって文字通り壁に押し付けられる形となった巡。壁に打ち付けられたことで防御の体勢が崩れる。それを見逃すような琥珀ではない。

 

(行ける……! 行けるぞ……! 勝つ! この男に、私は────!!)

 

 千載一遇の好機。あの戦いを否定するという目的だけではなく、しがらみが一切ない、我が道を行く姿を見せつけられて、ほんの少しだけ憧れた少年から、一本取れる────そんなチャンスに琥珀は折れた槍の腹を使ってがら空きの脇腹を狙う。

 

「飛びついたな?」

 

「は────」

 

 バキンッ、と巡の左手に握られていた鉈から音が鳴り、波打つ重厚な鉈がまるで鞭のようにしなり、まるで意志を持っているかのように琥珀の持つ槍と彼女自身の腕を絡め取った。

 

「格ゲーにおける画面端の誘い受けとか絶対油断ならねぇでしょ」

 

「カハッ────!?」

 

 そして絡め取った勢いで琥珀を引き寄せ、ラリアットを叩き込んで位置替えを完了させ右手に力を込める。

 

「これが俺の────アポロウーサだ!!」

 

 そんな叫びと共に容赦なく琥珀の顔面に渾身の拳を叩き込んだ巡。そんな拳を受けても鎧兜と白虎の加護で耐久力が上がっている琥珀の可愛らしい顔が変形することはなく────恐らく若干の痣は残るが────とにかく綺麗なままである。

 

「つ、ぎは……私が、勝つ────」

 

 そんなことを呟いて琥珀は立ったまま気絶した。

 

「……もう勘弁してくれ。いやマジで」

 

 マジで疲れた。

 そんな呟きと共に座り込む巡。ゲームで言うところの夏休みキャライベント、『虎成琥珀との決闘』クリアの瞬間である。

*1
薔薇苑家と瑞騎家のやつ




虎成琥珀
恋愛ルートを進む場合、虎成琥珀と戦い、勝利する必要がある。英雄に憧れた少女は自分より強い男にこそ心惹かれるのだ。親友ルートの場合は敗北か引き分けで可。

設定資料より一部抜粋
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