恋愛要素ありの死にゲーに転生して鉈を振り回す転生者 作:エヴォルヴ
大量の霊薬を中毒ギリギリまで飲みながら、怪魔を待ち受けるための広場で俺は立っている。
海水浴で瑞騎先輩が気絶するというハプニングがあった7月下旬、禍津日様のダンジョンで大合戦を始めて地獄を見ていたわけだが────百鬼夜行が始まる可能性が高いとの伝達があった。
修行も大事ではあるが、戦士としての役目を果たす必要がある。俺達は渋々禍津日様のダンジョンを出て、今回の百鬼夜行が起こるポイントの一つで待機中だ。ゲームではお盆の頃に起こった百鬼夜行だが、この世界では8月3日の今日この日に百鬼夜行が起こるようだ。シナリオが前倒しになっている……というわけでもないだろう。前倒しになっているなら、瑞騎先輩のシナリオボスとかが出てこないのはおかしい。醜怪餓鬼? まぁ、うん……人喰ってなかったお蔭で弱かったっすね。
シナリオが滅茶苦茶になっている可能性は無きにしも非ず。だから、この百鬼夜行が雑魚ラッシュじゃなくてボスラッシュになっていてもおかしくはない。ただ、これは無いと思うんだよな。この百鬼夜行はプレイヤー達の印象が強い初の大規模百鬼夜行だったわけだし。百鬼夜行と大規模百鬼夜行はどう違うのかって? 通常の百鬼夜行は雑魚のウェーブ戦の後ボス戦or強化個体ボス単体。大規模百鬼夜行はウェーブ戦無しの大乱戦となることが多い。振れ幅が大きいのが百鬼夜行ではあるが、今回の大規模百鬼夜行は現れる怪魔が固定。通常百鬼夜行の方がお祈りゲーになる時が多いって不思議。
……で、今回の百鬼夜行は────平安の頃に暴れ回った怪魔────鬼共がやってくる……はず。頼光四天王が倒したという伝承が残っている鬼、酒吞童子率いる怪魔の軍勢だ。こいつらが現れたことで、過去の英雄達が怪魔を撃滅したのではなく、封じたか、撃退したんだ! ……みたいな本当の歴史的な話がお偉いさんからされたような気がしたが、もう記憶にないね。とりあえず殺しゃあいいんだよ。そして素材と経験値と人魔一戴を使わせろ。
「随分と気合が入ってっすね、パイセン」
「んあ? おう、ヒロか」
霊薬をがぶ飲みしてこれから始まる百鬼夜行に備えていると、大耀さんよりも先に準備が整ったらしいパリピイケメンボーイズの一人、ヒロが声をかけてきた。今回は最前線というわけでもないが、最前線の撃ち漏らしを処理する前線拠点が俺達の待機場所だ。最前線(最前線ではなくなる)にはローズ先輩と三野先輩と虎成さん、別のポイントには瑞騎先輩と辰巻さんがいる。なお、大耀さんがいるここが最前線になるんですけどね。ははは。素材と経験値はもらったァ!!
「今回の百鬼夜行、なーんかやべぇって話っすけど、最前線のパイセン達大丈夫っすかね」
「まぁ、大丈夫だとは思うぞ。プロの戦士も最前線にいるし」
瑞騎先輩のところには重錨さん達がいるみたいだし、ローズ先輩と三野先輩のところにも何人もプロがいる。問題は無いはずだ。だって、最前線が最前線じゃなくなるわけだし。
もう何が何でも大耀さんこと主人公をぶち殺したいと言わんばかりに、酒吞童子を筆頭に名の知れた鬼がこちらになだれ込んでくる。大耀さんが何をやったってんだって話だが、大耀さんが原因というよりも宇迦様が原因というか……昔の宇迦様の加護を貰っていた戦士が原因というか……うん、とにかく酒吞童子達は大耀さん目掛けて突っ込んでくるので、結界が修復されるまでの一定時間を生き延びるか、酒吞童子共をぶち殺すのが俺達の今回の勝利条件。分かりやすくていいね。
「メグパイセン的にはDoすか? 今回の百鬼夜行」
「まぁ……いつもとは何か違う気がするのはそうだな」
初見で面食らったのが懐かしい。だってNPCガン無視で怪魔が主人公だけを狙ってくるのだから。それを利用して特大火力を叩き込んで殲滅するのがセオリーだったりするが……それはゲームの話で、特大火力を叩き込める人がこの前線拠点にはいない。万莱君は別のポイントにいるし、そもそも酒吞童子共が魔法に耐性があるから物理で殴った方が倒しやすい。……あ、これワンチャンパリピイケメンボーイズが攻略の鍵なのでは? フルプレートアーマーに身を包んだヒロを含めて、パリピイケメンボーイズは長槍とスナイパーライフルでチクチクするのが基本戦術なのだ。
「ヒロ、スナイパーライフルの弾ってどんなの使ってるんだ?」
「お、聞いちゃいます? うちの秘伝……ってわけじゃねぇんすけどね。俺らのスナイパーライフルはシルバレ使ってます」
「シルバレ……銀弾か?」
「うっす。しかも由緒正しい神社の巫女さんとか、神主さんとかに祈祷してもらった弾丸っすね」
ほら、と言ってヒロが差し出してきた銀色の弾丸を見てみると、強い力が込められているのがはっきりと分かる程に────ん? これもしかしてだが……
「アムリタか、これ」
「っすがお目が高いっすねメグパイセン! これは俺が考案して図面描きーの~?」
「俺が鍛造しーの~?」
「俺が仕上げた対怪魔専用アムリタ弾っすわ!」
「ははッ、やっぱすげぇわお前ら」
アムリタ結晶を加工して武器にするのではなく、消耗品の弾丸に変えるなんて発想、中々できるもんじゃない。祈祷の力を余すことなく閉じ込めて効果を発揮させるためにアムリタ結晶を弾丸にするとは。そもそも、銃自体が軽視されることが結構あるのが戦士業界というもの。弓で良くね、魔法で良くねとなってしまうことが多いようでな……まぁ、加護を持っている人が使う弓と一般人が使う弓では威力が桁違いだし、銃を使わなくてもいいんじゃねぇかって感じになるのも無理はない……と思う。
「ま、これ撃つために銃も一から作ったんすけどね」
「へぇ? どんなもんよ」
パリピイケメンボーイズ三人が同時に装備していたスナイパーライフルを掲げ、ギランッ、と目を光らせて武器の解説を始める。
「対怪魔13mm狙撃銃
「全長120cm、重量6kg、装弾数30発。俺達みたいな筋力バチクソ上げてるやつしか使えない代物っすわ」
「専用弾はアムリタ結晶で作った弾で……ん? もしやアムリタだけか、これ」
「お陰様で毎日カッツカツ! 鍛冶仕事ばっかりじゃ何もできないんで、ダンジョン探索もちょくちょくやってますよ」
「装備のあれこれの時の報酬、もうちょい色付けるわ」
「「「あ、それはいいっす」」」
おおう、いきなり落ち着いたなお前ら。
「メグパイセンからは適正価格で取引してもらってますし、これ以上色付けてもらっても困るんすわ」
「技術高く買ってくれんのは嬉しいっすけどね? 譲れないライン的な?」
「適正な価格で、適正な取引を。プロ意識あるからこそ、そこはキッチリしねぇっとっしょ?」
「キッチリしてんなぁ、お前ら。貰えるもんは貰っときゃいいのに」
でも、こういう三人だからこそ俺はこいつらに仕事を任せている。賄賂とか絶対拒否なタイプの人間である三人組は、どれだけ圧をかけられても一度受けた仕事を降りることがない。圧かけた側が逆に気圧されるくらいの仕事人でもあり、パリピイケメンでもある。それがテツ、ヒロ、ツッチーという三人組のパリピイケメンボーイズなのだ。
「まぁ、でも……後輩に飯食わせるのも先輩の役目だ。今度飯連れてくよ。茶菓子同好会の食べ歩きになるかもだが」
「「「ゴチになりまーす!」」」
「おう。予定決まったら言ってくれ。そっちに合わせる」
(っぱこういうとこイケメンってやつだわ、メグパイセン)
(顔だけのイケメンじゃねぇのパネェわ)
(俺女だったらメグパイセンに惚れてっかも。……でも惚れたら~?)
(((ワンチャン瑞騎パイセン達に殺されるやつ~!)))
さて……大耀さんの気配も近付いてきたし、そろそろ始まりそうだな。警戒しとこ。パリピイケメンボーイズは何か精神統一でもしてるのか円陣を組んでいるが……周囲への警戒は怠っていないし問題はないだろう。霊薬も何個か服用しているようだったし、そもそも滅茶苦茶硬いからそう簡単に死に戻りをすることはないと思う。
「皆お待たせ」
「まだ始まってないから大丈夫だぞ」
まぁ、そろそろ始まるんだけどな。そう心の中で呟いた瞬間。身震いしてしまいそうになるくらいの強い気配の波が、津波のように溢れ────俺達の見ている世界がまるで夜に包まれたかのように暗黒に包まれた。
「ッ……模歩君、これ……!」
「三人組!!」
「「「我打つは鉄と穢れ!! 【鍛造結界】!!」」」
パリピイケメンボーイズを中心として、火属性の結界が展開される。だが、普段見るような円陣がくっきりと見えるようなものではなく、目を凝らしてどうにか円陣が見えるほどの弱々しく感じる結界だ。まぁ、そうなるよな。そうだと思ってたけど、相手が相手だからしゃあなし。
『明日夢、大丈夫ですか?』
「う、うん……何、今の……」
『常世の穢れだな、こりゃ。しかもこの規模……相当のやり手がいやがんな』
禍津日様が姿を現し、現在の状態について口を開く。常世の穢れ────穢れ纏いなどが発生させる結界のようなもので、レベルの高いダンジョンに現れる中ボスクラスになると普通に展開してくる面倒くさいものだ。HPの上限が減ったり、スタミナ消費量が増加したりと色々。だが、この常世の穢れの展開にはまぁまぁ体力がいるらしく、使うなら確実に決める時か、もう後が無い時かの二択レベルでの切り札的な立ち位置でもある。戦闘が始まっていないのに常世の穢れが展開されるって……まぁ、ゲームでもそうだったが、本当に殺しに来てやがんな。
「大耀さん、行けるか?」
「……うん」
「無理はしなくていいからな、マジで」
「大丈夫。私だって、戦えるさ」
禍津日様のところで経験を積み続けたからなのか、少し前とは全く違う強い目を見せてくれた大耀さん。……こうして強くなることは、彼女にとって本当に正しいことなのか────なーんてことを考えないと言えば嘘になるが、ここまで戦い続けたのは大耀さんの意志によるものだ。ならばそれを尊重しない理由はないわな。
「…………ならよし。パリピイケメンボーイズ!!」
「「「ウェイッス!!」」」
「ここで結界を維持してくれ。俺と大耀さんでこれから来るだろう連中を相手する。もちろん────」
「ちょっかい出しても構わない……ですよね?」
「頼んだ。大耀さん、行くぞ」
「…………ああ!」
よぉし、大合戦のお蔭で中々の猛者に成長している大耀さんがいるなら問題ねぇな!! 酒吞童子は強いが、勝てない相手ではない。取り巻きが結構強いが、それでも問題ねぇ。ぶち殺して素材と人魔一戴を手に入れてやるさ。
「ゲリュオン、クリュサオル」
『ああ、常世の穢れの内部は怪魔には絶好の環境だ。人魔一戴を上手く使え』
『ブルッ』
『明日夢、私の力を武器に纏わせておくのがいいでしょう。少しは楽になるかと』
「分かった」
大耀さんが宇迦様の力を武器に纏わせたのと同時に、俺も人魔一戴を発動する。ゲームでは酒吞童子と何体かの鬼との同時戦闘だったが……目を凝らすと見えるくらいの距離にまで来ている怪魔共を見る限り、確実にそれだけでは済まないだろうなという確信がある────ので。
「【呪装:ゲリュオン・クリュサオル】」
呪い版の人魔一戴を発動。加護版の人魔一戴ではケンタウロス形態固定だが、呪い版の人魔一戴はちょっと融通が利く。とはいえ、凄く融通が利くというわけではなく、ちょっとだけなのだが。髑髏の仮面が俺の顔を覆うのと同時に両足に黒い鎧と戦車の車輪が展開される。……哪吒ってこんな感じで車輪があったような無かったような。
「ちょっと失礼」
「うわっ!?」
俺が大耀さんを抱えて爪先で地面を叩くと、ギャリギャリギャリ! と車輪が青い炎を灯しながら高速で回転し始める。
「突っ込むぞ大耀さん!」
「う、うん、それはいいんだけどさ、どうしてこんな抱えられ方なのかな!?」
「運びやすいからだが?」
いわゆるお姫様抱っこの形にはなってしまったが、これが一番手っ取り早く運べる。気絶した瑞騎先輩を運ぶ時も結局この持ち方が楽だったし……やはり楽できるは正義。
そんなことを考えながらも、高速で回転する車輪によって俺達は迫りくる怪魔共との距離を縮めていく。激突まで残り3、2、1────ッ!!?
「ハハハハハ!! やっぱりいたなァ!! 鈴鹿ァアアアア!!!!」
稲妻のように飛び出した影が、鬼と言えば金棒! みたいな感じの棘だらけの金棒を俺達に振り下ろしてきたので、急停止からの急旋回で回避。まぁ、とりあえず大耀さんが言いたいことがあるらしいので心して聞け、無作法野郎。
「鈴鹿って誰!!?」
「あ゛あ゛? てめぇだよ! てめぇは鈴鹿だ! そうだろう!? なぁ、鈴鹿だ!! 鈴鹿なんだろうてめぇ!!」
「私は大耀明日夢!! 鈴鹿なんて名前じゃない!!」
「知るか! てめぇは鈴鹿だ!! 何度だって言ってやる!! 俺の女になれ!!」
大胆な告白だぁ……ゲームで印象に残ってるぜ、お前の大胆な告白。普通にフラれるけど。
「人のことを間違えるやつの女になんて、誰がなるか!! だったら模歩君の方がよっぽどいいよ!!」
どういう意図で言いました??? あと何で首に回した腕の力強めるの?
「じゃあそいつを殺せばてめぇは俺の女ってことだな!!」
わぁ、話通じねぇし俺にロックオンしやがったわこの鬼の首魁。意思疎通ができない感じ、殺しても心が痛まないのは大正義だぁ……というわけで。てめぇらの素材を寄こせや酒吞童子とその他愉快な鬼共!!!
鈴鹿
酒吞童子を思いっきり振った戦士。だって好きな人が他にいたし…