恋愛要素ありの死にゲーに転生して鉈を振り回す転生者 作:エヴォルヴ
俺プレゼンツ素材マラソン、その標的の一つとなっているのは妖幻魔宵蛾と呼ばれる温厚(当社比)で美しい蛾と、
しかもこのダンジョンで蜈蚣姫に育てられた怪魔である妖幻魔宵蛾と鏖斑紫は通常個体よりも巨大で、美しい。蜈蚣姫が愛でている、というのも頷ける美しさだ。なお強さはそこまで。遠距離から劇毒の鱗粉を飛ばしてきたり、風の斬撃を飛ばしてくることを除けば、そこまで強い怪魔ではない。風属性のダメージを激減させて、リジェネを付与する結界を展開できるローズ先輩がいるし、こちらには遠距離持ちがいる。昔の俺はエンチャントした投擲アイテムや投擲用に大量に作った竹槍(エンチャント付き)などを使ってチクチクやっていたが、今回はそんな面倒なことをしなくても狩れる……なんて素晴らしいのだろう。
「────まぁ、投擲のスキル育てるために投げるけど、なぁッ!!」
穢れたアムリタや、瘴気、妖気などで育つというのに美しさすら感じるほどに赤い彼岸花が咲き誇る屋内庭園のような場所で羽ばたいている巨大な蛾と蝶────妖幻魔宵蛾と鏖斑紫目掛けて竹槍を投擲するが、何度もやっているからなのか躱された。うーむ、やはりというか、成長してるよなぁ、向こうも。倒した後の記憶が引き継がれている……つまり死に戻り(デスぺナ無し)を向こうもしているとなれば、ストーリーで攻略することになるダンジョンのボスも回数を重ねていけば……あんまり考えたくないな。こっちが死にゲーやっているように、向こうも死にゲーやってるっていうのは考えたくもない。せめて俺が引退して隠居するまでは馬鹿みたいな成長をしないでくれ。成長するにしても8周目以降くらいの強化値で勘弁してくれ。
「タブレットで模歩君のステータスとかスキルとか見てた時に投擲系のスキル、やけに高いなぁって思ってたけど……これが原因だったんだ」
『しかも竹槍に穴と螺旋を加えて出血量と貫通力を高めてるという殺意の高さ……見事なものです』
「大耀さんも投げるんだよ!!」
「え、私!?」
他に誰がいるってんだ。
「俺の次に投擲スキルが育ってるんだから投げろ!!」
「あ、そっか。じゃあ失礼して────せいッ!!」
俺が投げる竹槍とはワンテンポ遅れて飛んでいく大耀さんの竹槍。
投擲スキル、と言っても攻撃スキルが存在するわけではない。しかし投擲物を用いた攻撃の距離減衰や射程、状態異常蓄積値などが上昇する等のスキルが存在しており、これが投げ物全てに反映される。俺が事あるごとに投げナイフやら毒爆弾やらを投げていたのは、こういった投擲系スキルを育てるためという側面もあるのだ。
そして投げ物の有用性について幽鬼の将でしっかりと理解したらしい大耀さんは投擲スキルを磨いている。遠距離攻撃と言えば魔法や弓、銃などが挙げられるが、投擲スキルを育てればそういったものに頼らなくても威力に期待できる遠距離攻撃手段が手に入るのだ。だというのに、投擲スキルを育てている人は中々いない。もったいないにも程がある。やはり派手さが欲しいか? パワーボンド使ったサイバー・エンド・ドラゴンでグォレンダァしたい年頃か? ロマンは分かるが、強欲で謙虚な壺みたいなものがあると安定性は段違いだろうに。MPを使うわけでもないし、使用回数制限もないんだぞ? 投げるでしょ、普通。
まぁ、それはそれとして。俺と大耀さんが投げまくっている竹槍を躱し続けていた妖幻魔宵蛾と鏖斑紫だったが、時折放たれる万莱君の魔法や、瑞騎先輩の雷槍などによってルートを制限され始めたことで槍が掠め始めた。痺れを切らして劇毒の鱗粉や風の斬撃を放ってきてはいるが、ことごとくローズ先輩の展開した結界と虎成さんが生成した土壁で防がれている。
「「落ちろ!!」」
これが俺と大耀さんの友情コンボだと言わんばかりにぶん投げまくった竹槍が、ついに妖幻魔宵蛾に直撃。動揺というのが蟲にあるのかは分からないが、動きを止めた鏖斑紫に大耀さんの竹槍と瑞騎先輩の雷槍が連鎖するように直撃する。この程度で死ぬような怪魔ではないあの二匹だが、今回の竹槍にはちょっとした細工が施されているのだ。
バチバチバチバチバチバチッッ!!
「「!?!?!?!?!?」」
「っしゃあ成功!!」
『へぇ、やるじゃねぇか。青竹で作った投げ槍に螺旋と穴だけじゃなく、アムリタ結晶も仕込んでるとはな』
麒麟様が言っていた瑞騎先輩のダンジョン攻略、そこからインスピレーションを得て細工した投げ槍は上手く機能してくれたようで、鏖斑紫に直撃した雷が妖幻魔宵蛾に突き刺さっている竹槍に伝播して感電を引き起こした。うーむ、しかしこんな感じで加工した竹槍よりも普段から使ってる竹槍を投擲しまくった方が効率が良さそうなんだよな……これのためだけにアムリタ結晶を使うというのもいかがなものか。仙骨マラソンをしているお蔭で小さいアムリタ結晶は大量にあるのだが、その大量のアムリタ結晶を砕いて自分のステータス強化に使った方がよさげな気がしてならない。エンチャントして投擲した方が効率的な気がするなぁ……手札が増えると思ったが、そうでもなさそうなのちょっと悲しい。
『まぁ、何にせよだ。お嬢!!』
「ああ! 『砂塵螺旋』!!」
斧槍をグルグル振り回して小さな砂嵐を巻き起こしながら突っ込んでいく虎成さん。さすがは東国無双の槍使いから「厄介な剛の者」と言われて優先的にぶち殺されるだけあるぜ。徳川も豊臣も織田もだが、武将の厚みが異常なのは何なのだ。赤備えと鬼柴田と東国無双の最悪コンボはしばらく拝みたくないです……
『ヒヒッ、安心しろよ。今度は海外だけだからよ』
「おい何と戦わせるつもりだあんた」
『いやな? ルーのやつから珍しく
「ビッグネームじゃねぇか!!?」
夏休み期間ずったり禍津日様のダンジョンにいるつもりだが、夏休み明け、俺達の心は生きているだろうか。討魔3でDLCとして登場した禍津日様のダンジョンは初代、2よりも進化しており、冥界やら黄泉やら影の国やらへ行ったりもできるようになっていた。システムのあれこれとかがまだまだ完成してなかったから初代、2では語られるだけに留まっていたが、この世界ではそんなことはない。普通に人間が入っちゃいけない領域に行ける。奈落とか。
『ヒヒヒヒッ、楽しみだなァ……お前、スカアハのやつにも気に入られてっから、ワンチャン槍とか貰えんじゃねぇかぁ?』
「気に入られるようなことした覚えねぇんですが???」
『ああ、俺が見せた』
「こんの荒神が……!!」
俺は穏やかな老後を迎えることができるのだろうか。でもスカアハ様って、討魔3のDLCで登場して条件を満たすとぶっ壊れ性能にすることができるルーンを武器に刻んでくれるんだよな。その条件というのがDLCボスである鯨(絶対鯨じゃない)をぶっ殺してこいというもの。なおその鯨、スカアハ様がルーンで再現したコピーであり、本物はクーフーリンによってぶち殺されているそうだ。アルスターって化け物しかいねぇな。
「話をしながらも攻撃してるのちょっと怖いわね」
「瑞騎先輩も雑談しながらご飯食べるでしょ? それと同じっすよ」
「絶対同じものじゃないわよ、それ」
瑞騎先輩の言う通り、禍津日様と話をしつつも攻撃の手は緩めていない。鎧蟲武者と違ってただの蟲型怪魔ではあるが、しぶといことには変わりない。攻撃の手を緩めた瞬間ダウンから復帰して、また遠距離攻撃合戦が始まったら堪ったものではないのだ。それでマラソンのリズムを崩されて何度か泣きを見たことがあるので、油断せず死ぬまで殴る。今回は一体ずつしかいないが、三体ずついたりする時もあるのだ。ヒイヒイ言いながら素材マラソンやる趣味はない。素材マラソンは俺の心の栄養なのだ。
(水着姿も心の栄養になってるけどなぁ?)
(うるせぇ俺だって男ぞ)
(ヒヒッ。もう抱いちまえよ。爛れた関係に発展してズルズルと行っちまえよ)
(はっはっは、んなことしたらどうなると思う? バッドエンドまっしぐらだ。そしてその責任を誰が取ると思う? 万丈だ)
(誰だよ万丈)
まぁ、
「────お、終わったか」
妖幻魔宵蛾と鏖斑紫が大きく痙攣した後、素材とアムリタ結晶を残して消滅した。さてさて、ドロップアイテムは────おお。
「どっちも羽と触角落としていきやがった! 幸先最高じゃんか!!」
さすがは宇迦様の加護を貰ってる大耀さん! ドロップ率15%増加は伊達じゃない!! 素材美味しい! 素材美味しい!! というわけでこの羽と触角は皆の強化に使うことにします。武器の更新ばっかりに気を取られていたが、やはり防具の更新もしていきたいところだ。ここの怪魔の素材を使った装備は軽くて頑丈なものばかりなので、素材マラソンで素材を集めたらパリピイケメンボーイズ達に渡して装備更新をしたいところだ。でもなぁ……虎成さんの斧槍を強化するのもいいな……いや、ここは瑞騎先輩の槍の強化か? はたまた大耀さんの狂戦士の曲剣をここの素材で強化? ローズ先輩の刀を強化するのもいいな。万莱君は……ここのダンジョンの素材と相性が悪いので保留。
「夢が広がるぜ……」
「不機嫌になったり楽しそうにしたり忙しいわねメグちゃん」
「一喜一憂するのが素材マラソンです。ドロップアイテムなんてなんぼあってもいいですからね!!」
「女の子の水着姿より喜んでないかしらこの子」
それはそれ、これはこれでございます。素材マラソンは俺の心の栄養であり、精神統一の場であり……とにかく、俺には必要なものなのだ。出るまで回そう素材マラソン。出たらもっとたくさん求める素材マラソン。俺達のマラソンはこれからだ!!