恋愛要素ありの死にゲーに転生して鉈を振り回す転生者 作:エヴォルヴ
今回短いです。
「お願い事、ですか」
「そう。君達に頼みたいことがある」
夏休みももう終わりが近付いている中、禍津日様のダンジョンでの大合戦と素材マラソンを繰り返している俺達のところに天照大御神様がやってきた。白いワンピースに、真っ黒なサングラスを装着した太陽フレアのような痣がある少女(神様)は、わざわざ購入したクリームパンを片手に俺達への依頼があると言ってきた。
「現人神アラハバキと、宇迦の子。二人への依頼」
「他の人達には依頼しないんですか?」
「しない、というかしちゃダメ。宇迦の子と、現人神にしか依頼が出せない」
うーん……? ゲームでも確かに主人公にしか依頼を出していなかったが、その理由は語られなかった。クエストはクエストだろってことで気にしていなかったが、なぜ主人公にしか依頼が出されなかったのだろう。神、神獣、守護獣達からの依頼は全部ソロだったはずだし。てめぇらも付いてこいやぶっ殺すぞと何度思ったことか。そういうフラストレーションが人類滅亡ルートを選択させたと言われたら「そうだが?」と言いそうなのが不思議。
「もちろん依頼を受ける受けないは君達次第。正直、荷が重いような軽いような、そんな依頼だから」
凄く気になる発言止めてください依頼を受けたくなってしまうから。でもそういう説明をしてくる時は大体面倒な依頼なんだよなぁ……アイテムマラソン必須だったり、アイテム合成とかを活用するものだったりとか、そういうやつ。
ただ、そういう依頼は大抵報酬が美味しい。なお神獣と守護獣の依頼。神様の依頼は基本的に美味しいのだが、神獣と守護獣は頑張ったのにこの程度かよと思うような報酬しか用意されていないことが多い。聞いてんのか玄武。てめぇのことだぞ青龍。ハリーの杖にすんぞ朱雀。三味線にすんぞ白虎。馬刺しにすんぞ麒麟。四象の神獣が揃いも揃って報酬が経験値以外クソ雑魚ナメクジってのはどういうことだァ……? やはりあれか? 貴様らに最も通じる言語で語るべきか? 暴力っていう言語なんだけどよ。
まぁ、とにかくだ。ワンチャン大耀さんのレベルを上げるチャンスでもある。どんな依頼かによっては俺が貯め込んでいる素材を吐き出して依頼を熟すのも吝かではない。大耀さんには今以上に強くなってもらわないといけないからな……目下俺が手も足も出ずに蹂躙されるくらい。小賢しい手を使う俺くらい蹂躙できないとこの先やっていけない理不尽な世界。正確には女は大人しく引っ込んで孕み袋になってろみたいな思考の屑が一定数いるので、そいつらを怖がらせましょう! 怯えろ、竦め。もう何でもいいから死んでいけ。もう後ろ盾に師匠を用意した方がいいんじゃないかな……師匠、各方面からビビられてるみたいだし。
「それで、どうする? 受ける?」
「受けなかった場合って、その依頼はどうなるんですか?」
「依頼が入るご意見箱にまた戻って再抽選がかけられる。優先度が高かったら選出される」
そうじゃないと、私的な依頼ばっかりする神や神獣、守護獣もいるから、と言って本日10個目のクリームパンを口にする天照大御神様。半分は俺がお供え物として捧げたものだが、残り半分は自分で購入している。そのお金はどこから……という疑問が浮かぶが、この女神様のことだから、誰にも気付かれることなくバイトとかやって稼いでいるのだろう。そういう信頼がある。
「私的な依頼ばっかりして、人を困らせた結果執行者に斬られたやつは結構いる」
「あの、その山の執行者? ってどんな方なんですか?」
「そのうち会えるだろうから、その時のお楽しみ」
凄い気になるようなことしてくるじゃんか天照大御神様。実際山の執行者とは必ず出会うことになるし、その時のお楽しみというのは悪くないだろう。力を示せばしっかり報酬をくれるし、話は分かるし、人を見下していないし、誰であれ平等に接してくれる方だ。聖人君子よりも聖人君子していると思う。なお外道や道理にそぐわないやつには容赦がない。
「それで、受ける? 受けない?」
「俺は受けます。大耀さんは……まぁ、受けるかどうかよく考えてからでもいいんじゃね?」
俺が受けるから自分も、なんてことはあんまりしてほしくない。モチベーションに関わってくるし────え? 素材マラソンへの強制参加という名の赤紙について? ちょっと記憶にないですね。赤紙なんて渡してないですよ? ただレアな素材とか霊薬とか融通しただけで。ええ、その素材が素材マラソン会場で手に入るとしか言ってないですとも。
「ううん…………よし、決めた。私も受けます」
しばらく考えた後、大耀さんも天照大御神様の依頼を受けることを決めたようだ。心なしか天照大御神様も嬉しそうな空気を纏っている。
「ぐっど。依頼を受けてくれて助かる」
「それで、依頼の内容は?」
「ある村で神として祀られているやつの討伐をお願いしたい」
何を考えているのかよく分からない表情を見せることが多い天照大御神様の顔には、珍しく苛立ちや怒り、不快感などが滲んでいる。この感じだと人間相手ではなさそうだが……ここの山にいたような面倒な相手じゃないだろうな?
「その村では、毎年────訂正。毎年じゃなくて、数年に一度、神に対して供物を捧げる儀式が行われてる」
「初っ端から胡散臭くて除草剤撒きたい」
「どういう心境? 気持ちは分からなくはないけど」
「続けるよ」
「「はい」」
天照大御神様はクリームパンを持っていない左手に持ったカンペを見ながら続ける。神様としての威厳というものが全く無くて草でございますわよ。でも親しみって大事。
「供物というのは作物ではなく、人間」
「……生け贄ってこと、ですか」
「そう。でも、供物になった人間を神に食わせるために捧げるわけじゃない。神を名乗る何者かの慰み者にするため」
胡散臭いどころかもう闇深いし不快で腐海なお話が出てきやがったよ。ってかこのクエストかぁ……! プレイヤー達から「エログロの神髄ここにあり」とか「SAN値直葬とシコリティの反復横跳び」とか「運営の中に人外NTR好きとBSS好きがいることは分かった」とか「このゲームがR18指定になっている由縁の一つ」とか色々言われてたシーンがあるクエストじゃねぇかよぉ!!
ゲームと現実が同じじゃないってことは分かってるけどさぁ! 順序がさぁ! 全然違うじゃんかよぉ!! 見て! 大耀さんが顔を顰めているよ! 可愛いと思ったやつ出てこいその股座にロケットパンチ叩き込んでやるよ。
「数年に一度、若い女を捧げ、村に繁栄と豊穣を齎す……そんな何者かの討伐。それが今回の依頼」
繁栄と豊穣ねぇ……未来ある子供を数年に一度、捧げて手に入れる繫栄と豊穣に何の価値があるのか────なんて上位存在的な考えはしないが、とりあえず女を要求してくるようなやつと、その要求を呑んで繫栄と豊穣を求めるようなやつらと生理的に相容れないのが俺なんだよね。スパン短いが過ぎんだろ。せめて数億年に一度にしろよぶっ殺すぞ。ぶっ殺しに行くから待ってろよ。そして俺達に経験値と素材という名の繫栄と豊穣を寄こしやがれ。
『……なるほど、私としても許しておけませんね。繁栄と豊穣を生け贄によって与えるなど、神として三流以下です』
宇迦様の殺る気スイッチが入っておられる。このスイッチが切れる前に殺しに行かなきゃ……俺の中のアラハバキもまた俺の体に殺意の波動を宿している気がしないでもない。俺自身がアラハバキらしいからそんなことは無いと思うんだけどね。ということは、これはきっと俺自身が殺意の波動に目覚めているということ……! スキルに無いかしら、殺意の波動。使いこなせば絶対強いと思うんだけどなぁ、殺意の波動。俺あれやりたい。豪昇竜。ザンギの技は再現できたけど、弾持ちのキャラの技再現は中々できないんだよなぁ……禍津日様が用意した強化プランによって瑞騎先輩がJPみたいな戦い方を身に着けた時、俺は思わず吐き気を催したね。だってJP強いんだもの……
未だにJPへの勝率1~2割、それが私です。クソ雑魚ザンギと笑いなさい。