恋愛要素ありの死にゲーに転生して鉈を振り回す転生者   作:エヴォルヴ

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学生時代、祭の準備のリカバリーに奔走して祭りを楽しんだ記憶がない。それが俺なんだよね。


祭の準備は念入りに行わないとすぐガバる

 茶屋で注文した大量の料理に舌鼓を打った俺達は、休憩と装備のチェックをするために部屋に籠っていた。喰い裂き丸、フックショットと銃が融合した杭穿ち……装飾された短剣に、各種小手先の小道具達と、パリピイケメンボーイズ達に作ってもらっていたけど使っていなかった攻撃用の投擲盾。

 

「あ、模歩君。油取ってもらっていい?」

 

「ほい」

 

「ありがとう」

 

 武器の簡易的な整備は戦士としての必修科目。専門にしている人達には程遠いが、切れ味を取り戻したりすることくらいはできる。特に俺みたいに色々使うやつは一々整備に出していたら金が足りない。だからこそというわけではないが、武器を一つに絞る戦士が多い。もちろん突き詰めていけばそれが究極の一になるのだろうが、そこまで辿り着くには時間が足りないだろう。

 

 あの師匠でもあの領域に到達したのは60歳になった時らしいし、攻撃が飛ぶようになったのは90歳になった頃だという。つまり90年間、他の何かに現を抜かすこともせず、武器を振り続けてようやく至る領域なのだ。刹那無心流に存在する武器の型は刀剣、槍、薙刀、槌、籠手、暗器の六つ。あれもこれもと手を付けている俺が極めるまでには、どれだけ時間がかかるのか分かったものではない。そもそも刀剣についての才能は俺に無いようだし? 大耀さんの方が修めた方が絶対いい気がする。師匠は今のところ兄弟子と俺以外に弟子を取るつもりはないらしいけど。もったいないと思うのは俺が俗物だからだろうか。

 

 とにかく、大耀さんは流石主人公という感じで、どんな武器でも使いこなせる素質がある。俺にはない才能だ。流石主人公。器用貧乏にならずに極められる素質は羨ましく思えるぜ……

 

「……そういえば、こうして二人であれこれするのって久しぶりだね」

 

「あー、そういえば、そうか」

 

 ここ最近は大耀さんと俺のデュオ攻略などをやった記憶がない。基本的には俺の他にローズ先輩や瑞騎先輩と一緒にいたり、パリピイケメンボーイズと一緒にダンジョン攻略をしていた。それに、夏休みに入ってからは俺達『茶菓子同好会』全員と師匠で英雄の方々と殴り合いを繰り広げていた。新選組への勝率はまだ一割にも満たないがなんとか戦えるようになっているのが、俺達の成長を感じる。

 

「本当に最初はびっくりしたよ。宇迦様に出会った時とか」

 

「ん? 生まれつき一緒にいるわけじゃないのか」

 

「うん。この学園に入る少し前に小さな祠を見つけて、そこで出会ったんだ」

 

「へぇ」

 

 加護を得たタイミングは討魔と同じだな。本格的な戦闘チュートリアルは学園に入ってからだが、宇迦様の加護を得た時も怪魔と戦う。その辺にあった木の枝で雑魚怪魔の筆頭である餓鬼を数体倒す感じだ。勝っても負けてもストーリーは進むので、本当に軽いチュートリアルって感じの戦闘があった記憶がある。勝った場合は伏兵がいて、負けた場合は追い詰められたタイミングで祠の中で眠っていた宇迦様が目覚め、その余波で餓鬼が消し飛んで────なんやかんやで学園に放り込まれることになるのだ。

 

「いきなり転校とか言われて混乱したけどさ、今は結構悪くないかなって思ってるよ」

 

「心が強ぇ人なのか……!?」

 

「あははっ、ないない! どっちかって言えば弱い方だよ」

 

 うん、知ってる。当たり前ではあるけど、誰も助けてくれない環境に放り込まれて心をすり減らして、擦り切れた頃にようやく助けが来て、助けに依存してしまいそうになっている描写もゲームにあったし。……いや待て、擦り切れた心でも戦い続けることができるのは心が強ぇやつの証拠ではなかろうか? きっとそうだそうに違いない。心が強ぇ主人公なんだ。宇迦様のメンタルケアの甲斐もあるかもだが、よく自害せず生きてくれた。ゲーム本編の主人公と会う機会があったらとりあえず飯食いに行くレベルだ。生きてくれてありがとう。俺達(プレイヤー)という気狂い共に付き合ってくれてありがとう。サンキュー主人公、フォーエバー主人公。

 

 でも逃げてくれても良かったんだぞ……逃げ出すエンディングとかあっても良かったんだぞ……なんで世界滅亡ルートと親友ルートと恋人エンドと俺達の戦いはこれからだエンドしかねぇんだ……苦しみから解放されるのが世界滅亡ルートしかないのは哀れじゃないか……頑張って戦い続けた主人公が、あんまりにも哀れじゃあないか……………………やはり焼き溶かすべきでは?? 俺達に必要なのはあの三本の指が与える黄色い火なのではないか? 俺達の導きはメイケイオスだったのではなかろうか。教えてくれメイケイオス遥斗。俺は何を焼き溶かせばいい……教えてくれインテリ蛮族麗良。俺は何を叩き潰せばいい……

 

「だからさ、私は模歩君に感謝してるよ。パーティ組んでくれたこととか、色々さ」

 

「まぁ、俺としても下心あってのことだから気にしなくていいぞ」

 

「その下心について聞いてもいいかな?」

 

「宇迦様の加護でドロップ率上がるじゃん。それが理由」

 

「明け透けだなぁ」

 

 ところでどうして瑞騎先輩は俺のことを紹介したのだろうか。瑞騎先輩ほどの人なら、他の実力者を紹介するとかできただろうに。一緒に探索だってしても……ああ、そういえばあの時は瑞騎先輩が家のゴタゴタがあってなんか忙しいとか言ってた気がするな。なお、何度も会話しないと聞けないレア会話なので、そこまでやる物好きも中々いない。

 

 ……ま、聞かなくてもいいか。どうせもう過ぎたことだし。接触がなかったらこちらから接触することも考えていたから、遅かれ早かれどうせ組むことにはなっていただろうからな。もちろん大耀さんの気持ち次第だけど。天文学的な確率でソロでダンジョンに挑むことを望む戦闘狂だったとしても、ちょっと躊躇いはすれど干渉しに行っていた。

 

「うん……? 模歩君、ちょっと聞いてもいい?」

 

「何か」

 

「宇迦様の加護の効果、どうして知ってたのかな?」

 

「あー……あれじゃあ語弊があったか」

 

 ……っぶねぇ、そうだった。初対面で加護の内容を知ってるのは不自然極まりない。同じゲームをプレイしているプレイヤーじゃないんだから、その時点で知ってて当然な情報と知っていてはおかしい情報があるに決まってる。こういう失言、昔もやらかしてないだろうな、俺。自分が何を言ったのかも覚えてないことが多々あるから怪しいぞ……

 

 だがしかし、これはゲームと同じ世界だからこそリカバリーできるガバ。まだ焦るようなタイミングじゃない……

 

「パーティー申請してくれただろ?」

 

「ああ、うん。したね」

 

「あのタイミングで、申請してくれた人がどんな加護を貰っているのかをある程度把握できるのよ」

 

「そういえば、ローズ先輩からパーティー申請貰った時に鳳凰の加護の概要が出てきたような……」

 

「そう、それ。それで把握してたんだよ。ドロップ率15%とかいう無法をな」

 

 ちなみにドロップ率だけではなくクリティカル率も上げる加護スキルがあるので、マジで宇迦様の加護は最後までチョコたっぷりな加護なのだ。初代討魔において、曲刀、曲剣などの二刀流で素早い攻撃を繰り出し、クリティカルを叩き込むビルドでは宇迦様の採用率脅威の89%である。残りの何割は誰だよという話になるが、残りの割合を占めているのは弁財天様ことサラスヴァティー様。宇迦様と同じ豊穣の女神様ですね。豊穣の女神は基本的にドロップ率とクリティカル系のスキルが豊富だったはずだ。

 

「だからって話じゃないけどさ、大耀さん気を付けろよ。むやみやたらにパーティー申請とかして、変な奴に付け狙われる可能性だってあるんだから」

 

「具体的には?」

 

「加護至上主義のカルト共」

 

「あー……」

 

 最近は大人しくしているようだが、それが逆にきな臭いと言うかなんというか、という感じだ。今まで眠っていて、久しく現れていなかった豊穣の女神の加護を持っている大耀さんなんて、奴らにとっては垂涎もののはずだが……今のところ、直接的な被害とか間接的な被害は俺にしか来ていない。一般家庭出身で、生まれつき加護と縁がなかったのは俺も大耀さんも同じはずだが…………まぁ、被害が出てないならいいのか。

 

「何に気を付ければいいかはちょっと分からないけど、気を付けるよ」

 

「そうしてくれ。大耀さんは強いから大丈夫だとは思うけど、用心するに越したことはないし」

 

「うん」

 

 会話が途切れ、装備の整備の音だけが部屋に響く。香がどこまで影響してくるのかとか、どこに目があるのか分からないので、カーテンを閉めてローズ先輩謹製の結界が込められた符を四方に貼ってあるため、この部屋の音が外に漏れることはない……はずだ。ここに来るまでにもエンカウント率を下げるアイテムを使ったりして人目を極限まで避けているので、どこにいるのかを知られてはいないだろう。

 

 この村の人間が大耀さんのことを見ていた、ということは、大耀さんを怪魔の生け贄にするために攫うタイミングを探っていたか、どこに宿泊しているのかを探る目的があったはず。夜も更けた頃に祭を開催するのは、寝込みを襲って連れ去って怪魔に捧げるという意味合いもあるのだろう。戦士の膂力を発揮すれば問題ないことではあるが、人を傷付けることに対して苦手意識を持っているきらいがある────当たり前ではあるが────大耀さんに抵抗ができるかどうか……あと、悪意を直に感じると嫌悪感で力が発揮できなかったりするので、対策は必須。この辺りは大耀さんが男であったら何も問題は無かったんだけどな、と思うのは大耀さんという女性への名誉毀損というやつだろう。

 

 ……にしても、流石はパリピイケメンボーイズが作った装備達だ。久しぶりに防具の更新をしたが、素晴らしい。防御力は今まで使っていた革鎧とほとんど変わらないが、あの蟲共の素材を使った防具は軽くて丈夫で動きやすい。ただ、何故こんな子供がギャン泣きしそうなレベルの、デュラハンチックな装備になったんだ。真っ黒い鎧のせいでゲリュオンの鎧みたいじゃねぇか。ゲリュオンの鎧よりも軽装だし、布の部分が多いけど。

 

 それに比べて────

 

「……? どうかした?」

 

 大耀さんの装備は布部分が多いだけではなく、こう……なんか隠されているからこその色気みたいなのを感じるようなデザインになっている。黒い踊り子っぽい装備というのが何だかちょっと癖を刺激されるものがある。

 パリピイケメンボーイズのことだから、何か不純な考えではなく、その人の戦闘スタイルと「この人はこのデザインの方が似合うだろ」という考えの下作ったのだろうが……うん、目に毒! 同じように装備を更新した瑞騎先輩や虎成さんの装備とかもそうだが、目に毒過ぎる。目に使う解毒剤持ってこい。

 

「いや、霊薬足りてるかなって」

 

「あ、そうだった。勇追の霊薬がもう無いんだよね」

 

 まぁ、不埒な視線を向けるほど腐ってはいないんですけどね、初見さん。楽しみだなぁ、裏ボス攻略。素材はどれだけ手に入るかなぁ……




夢の中で気狂いに出くわしたメイケイオス遥斗のありがたい助言
「とりあえず目に映るもの全てを焼き溶かしてから考えるのは女々か?」
「てか勝手に死んでんじゃねぇよぶっ飛ばすぞ」

夢の中で気狂いに出くわしたインテリ蛮族麗良のありがたい助言
「とりあえず目に映るもの全てを引き潰してから考えるのは女々か?」
「なんで勝手に死んでるんですかぶっ飛ばしますよ」
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