恋愛要素ありの死にゲーに転生して鉈を振り回す転生者   作:エヴォルヴ

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お休みは終わりだぞ、気狂い。さ、キビキビ働いて色んな方面で苦しもうね。苦しいね、苦しいね。でも頑張ろうね。じゃないと死んだ甲斐がないもんね。頑張って走れ。苦しくても生きようね。ほら、キビキビ動け。


危機を逃れ、戦え気狂い

 お盆も終わって夏休みも終わってしまったことで、俺達の修行パートも終わりを告げた。結局禍津日様のダンジョン内、一人で戦ってどうにか勝てたのは我らが最強の大関雷電爲右エ門氏のみであった。他はなー……あと一歩、二歩、三歩……まぁとにかく時間もDPSも集中力も足りなかった。

 

 もちろん収穫はあった。大耀さんは禍津日様と疱瘡神様の加護を貰ったし、俺は禍津日様の加護と呪い、疱瘡神様の呪い獲得とゲリュオンとクリュサオルの眷族化に成功。ローズ先輩はリジェネ結界の最終形態一歩手前の結界である『鳳仙花』を修得、瑞騎先輩は疑似ラヴーシュカと雷ファンネルこと『雷従』修得、虎成さんは土属性と水属性の複合魔法『泥濘の歩み』と純物理属性スキル『巨獣薙ぎ』を修得した。強化合宿は大成功と言っていいだろう。いつでも禍津日様のダンジョンに行くことができる絵巻も貰ったし。

 

 パリピイケメンボーイズや万莱君も色々と学ぶところがあったのか、色々試していると聞いているし、俺は満足でございます。……いや満足じゃねぇな。結局蜈蚣姫倒せてねぇじゃねぇかよ。いやな? 最上階までは行ったんだよ? でもさ、開幕で空間掌握からの金槌で即死は酷くないです? 食い縛りで耐えられたの俺だけなのも泣けてくるし。そういえばあんた天目一箇神とかにも一目置かれるくらいの鍛冶師でもあったな、とは思ったけどさ? でももっとこう……あるじゃん。その後? 自前の包丁とかまな板とか色々取り出し始めたのを見て自爆した。喰われてたまるか。俺を喰いたいならそれ相応の対価を用意するんだな!! なお対価を貰っても喰わせるとは言ってない。次に戦う時は確実に殺して素材にしてくれるわ。……どうせ復活するだろうし。禍津日様による怪魔の調伏とか式神化とか全然分からんかった……

 

『ま、あれは陰陽師の連中でも一部しか使ってねぇからなァ。晴明とか道満とかな。俺も生まれた時からできたし』

 

「結局才能ゲーかよ」

 

 そもそもゲリュオンとクリュサオルを調伏していたことも分からなかったし。何をどうすれば調伏したことになるのか……コレガワカラナイ。ゲリュオンとクリュサオルの場合、殺し尽くしたことが調伏として判定された、という話だったようだが……では他の怪魔とかはまた条件が違うのだろうか? 禍津日様の加護や呪いで使う怪魔の力は調伏したものではないようだし……あ、ゲリュオンとクリュサオルは別としてな?

 

 まぁ、考えれば考えるだけドツボに嵌まるような問題な気がするし、気にしないことにしよう。

 

『して、モフ・メグルよ』

 

「なんだよ」

 

『そろそろ現実逃避から帰ってこい』

 

「おれは しょうきに もどった!」

 

『ヒヒッ、戻ってないじゃねぇか』

 

 現実逃避くらい許してくれ。そう思わざるを得ないくらい、俺は今危機を迎えている。こんな危機を迎えるくらいならダンジョン攻略をしたいというのに、この世界は俺をダンジョン攻略に導いてくれない……俺をダンジョンに導いてくれ……

 

 それは、担任の先生が預かっていたという山ほどの手紙。決闘のお誘い、お偉いさんからの感謝状とか、色々ある中で、最も俺が頭を抱えているのは────縁談のご案内の手紙である。担任の先生も苦い顔してたぞこれ。今の今までそんな話が出てこなかったというのに、突然舞い込んできたこの縁談。目視できるだけで十件以上……お断りの手紙を書くにしても、一度も会わずにお断りするというのもいかがなものかと思ってしまう自分の思考に呆れてしまう。

 

 とりあえず、決闘のお誘いには虎成さんにやっていたようにお祈りメールを送るとして……感謝状は返信する必要なし……そもそもいつの話だ、この感謝状は。……あ、お偉いさんじゃなくてあの村のレジスタンス達からのお手紙だったわ。あとでじっくり読むとしよう。んで、縁談の手紙よ。もう届いてなかったということにして紙ゴミ行きでいいのではないだろうか。

 

『あ゛ー……止めとけ。いくつか呪詛が混じってやがる』

 

『ふむ……これと、これと……ああ、あとこれもだな。巧妙に隠しているようで、乱雑極まる』

 

「よっしゃ開封の儀だ」

 

『怖いもの知らずか……なーんて、お前じゃなきゃ言ってんだがなぁ……ヒヒッ、どうなることやら』

 

 禍津日様とゲリュオンが示した手紙を一気に開封すると、黒い靄が可視化されて、俺の腕に巻き付いてくる。だが────残念ながら、俺に呪いは効かないのだ。

 

「恨むなら先代アラハバキ様を恨むんだな」

 

 人生の半分以上を神の呪いがかかった状態で過ごし、現在も器が変容して呪いならば際限なく取り込めると天照大御神様からお墨付きをいただいている俺に、下手な呪いの類は通用せず、俺よりも格が下のやつの呪いはむしろ呪った本人に跳ね返る。呪いに対するマホカンタ的な……そんな感じ。これは茶菓子同好会のメンバーで検証済みだ。

 

 俺に対してどんな呪いをかけようとしたのかは知らないが、巻き付いてきた呪いは全て俺の存在を嫌がるように弾け、呪いをかけた本人へと飛んで行ってしまった。……呪いも逆探知みたいなのができればいいんだけどなぁ。

 

『それは将門とかの領分だなぁ』

 

「会いに行くか、平将門公に」

 

 いや、本当に。あの人の知見は俺のマラソンQOLを高めてくれる気がしてならないのだ。

 ……本格的に平将門公とか、菅原道真公に会いに行く計画を立てるべきかもしれないと思いつつ、残りの縁談のお手紙へお断りのお手紙を書こうと思った矢先────

 

「巡君、いる?」

 

 ノックの音と共に瑞騎先輩の声が聞えた。夏休み明けの数日間は午前授業だとはいえ、男子寮に来るとは何とも剛毅なお方だ。

 

「いるんでどうぞ」

 

「ごめんなさいね、ゆっくりしてたところに」

 

「いや大丈夫ですよ。正直誰かに相談しに行こうかと思ってましたし」

 

 特にローズ先輩とか、万莱君みたいな大きい家の人達に相談しつつ手紙を書こうかと思っていたところだ。瑞騎先輩も五家の娘さんだし、縁談の手紙について色々と詳しいに違いない。

 

「相談? 私で良ければ聞くけど……」

 

「ありがとうございます。んで、お断りする時のことなんですけど……」

 

「ふぅん? あなたが断るなんて決闘くらい────」

 

「縁談のお断りってどうすればいいんですかね?」

 

「………………………………………………………………縁談?」

 

 おっと、瑞騎先輩の纏う空気が凄く暗くなってきたぞ? こう、ゲリラ豪雨並みの雷雨が来てる時の暗雲みたいな感じの。

 

「縁談って?」

 

「ああ!」

 

「ふざけないの」

 

「はい」

 

 くっ、俺の内なるハネクリボーが勝手に……鎮まれ内なる完全体ロンゴミアント……揃ってくれエクゾディア……

 

「誰に縁談が来たの?」

 

「俺に縁談が来ました……」

 

 目が怖いです瑞騎先輩。待って? 麒麟様もなんかちょっと目付き鋭くなってません? え? 気のせい? 瑞騎先輩の目はいつも通り綺麗で可愛い? ……そうかな……そうかも……どうだろう……美人にも種類がある……瑞騎先輩は綺麗系の美人……大耀さんと虎成さんは可愛い系の美人……遥斗はスポーツマン系イケメンで、麗良は綺麗系美人……スポーツマンの目から飛び出る黄色い火と深窓の令嬢みたいなビジュアルから放たれる蛮族的思考に恐れおののけ。

 

「受けるの?」

 

「受けたくないです……」

 

 いや、本当に。彼女欲しいとか、結婚したいとかそういう考えは今のところないのだ。そりゃあ、可愛い彼女がいたら心が豊かになるかもだが、今でも普通に充実してるし。縁談とか、乗り気じゃない人間がいるだけで破滅するだけのイベントだし……バッドエンドのスメルがするし……討魔において縁談イベントは鬱シナリオクエストの合図だったりする。RTAでは人類滅亡ルートを踏み抜くための最短ルートとして使われたりもするが……あれ? 大耀さんに来てないよな? 大丈夫か? ……大丈夫だろ、多分。大耀さんの縁談イベントの上昇負荷が俺に差し向けられているに違いない。俺はカートリッジだった……? 憧れは止められねぇし、ゲス野郎の血を見るのもやめられねぇんだレグ。動けなくなった怪魔を殴り殺した時の感触が忘れられねぇんだよリコ。

 

 いつかやりたいと思ってるんだ……ライジングタイタンの滅多切り……まぁ、俺に剣の才能は全くないので喰い裂き丸でやることになるのだが。

 

「で、どうすればいいのでしょうかね……俺、こういうの初めてなんですよね」

 

 前世ではバイト中に常連のお客さんから「うちの孫娘、嫁にどうだい」とか冗談交じりに言われたことはあったが、前世今世含めて彼女いない歴=年齢であり、自由恋愛の人間だぞ。前世今世の両親どちらも自由恋愛の果てに結婚してるし、遥斗と麗良だってそうだ。俺は誰かに決められた結婚相手はあまり好まない男……その人達が幸せならいいんだけどね。

 

「そう」

 

 む、なんか機嫌が少し回復したような気配。

 

「で、何か名案をください。俺に知恵をください。そしてマラソンの時間をください」

 

「あなたまだ仙骨集めてるの?」

 

「先日1900個到達しました」

 

「もう十分でしょう」

 

 甘いぜ瑞騎先輩! 全く足りない! 全く足りないぞ!! 3000個は在庫に抱えておかないと俺は心配になる! 妖幻魔宵蛾の素材もそうだが、死ぬほど使うのだ! アムリタは気付いた時に増えてるから問題ないが、素材は意識して集めないと枯渇する。大耀さんはローズ先輩と万莱君と虎成さんとでダンジョン攻略に行っているらしいし、俺もそろそろ別のダンジョンのマラソンも増やそうかしら。DLCダンジョンに突撃もいいが、通常ダンジョンでボス狩りしまくるのもアリだな。何だかんだでボス素材も使うことが多々あるし。

 

 俺が心の中で新しいマラソンのことを考えていると、ほっそりとした指を唇に当てて考え事をしていた瑞騎先輩が口を開いた。

 

「一つ、案があるけど、乗る?」

 

「乗ります」

 

「即答ね」

 

「面倒から解放されたい……俺はそういう男なのです」

 

 僕はね……何も考えずにマラソンをする戦士になりたかったんだ。

 

「そう。じゃあ、私の恋人になって」

 

「…………………………ふぉ?」

 

「もちろん、本物ではなくて、ね?」

 

 あ、そう。そういう感じ?

 

「私としても、ちょっと困っていてね? 今週、五家の会合があって」

 

「その面倒事を回避するためにデコイが欲しいと」

 

「言い方」

 

「すみません」

 

 ぺち、と頭を優しく叩かれた後、瑞騎先輩が言う面倒事について思考を回す。

 五家の会合……ということは、ローズ先輩、虎成さん、辰巻さん、三野先輩とかも来るわけだ。三野家的には三野先輩と瑞騎先輩の婚約を五家全体に────特に、五家の神獣に示す思惑があるのだろう。詳しいことはよく知らないが、神、神獣、守護獣、精霊の前での宣誓というのは強い効力を発揮するという。瑞騎先輩がのらりくらりと会合や会食を躱していたからこそ、詰めに来たのだろうが……瑞騎先輩は三野先輩との結婚は断固拒否の構えである。だが、会合で宣言されてしまえば、婚約が強固なものになってしまう可能性が高い。というわけで、それを回避するためのデコイとして抜擢されたのが俺というわけだ。本来なら主人公の役割なんだけどな、これ。男性主人公なら普通に恋人役、女性主人公なら、男装するか、そっちの気があると示す感じで。

 

 そしてこのデコイ役は俺にもメリットが存在する。俺に舞い込んできた縁談に対して、「お付き合いしている人がいるので無理です」と返せるのだ。さすが瑞騎先輩! 俺には考えつかないことを平然とやってのける!! …………まぁ、いざとなったら菊理姫様に泣きつくつもりだったが。供物用意して、土下座でも何でもやって縁談から縁を断ってもらうつもりだったが、良かった。その労力が別の方向に使える。マラソンに使える……ハクスラに使える……! 喰い裂き丸や、そろそろ魔剣妖刀聖剣のどれかになってくれてもええんやで?

 

「それで、乗る?」

 

「乗ります。よろしくお願いします、瑞騎先ぱ────あ、翡翠先輩の方がいいですかね?」

 

「……好きな方でいいわよ」

 

「じゃあ翡翠先輩で」

 

 恋人らしいこと、というのは何をすればいいのか分からないが、とりあえず翡翠先輩のデコイの任、任されました。今週を耐え抜けば俺は晴れて自由なマラソンとハクスラを謳歌できる戦士に生まれ変われる……! 楽しみだな……




気狂い:縁談回避!縁談回避!マラソンとハクスラの時間が確保できる!!
瑞騎先輩:頑張った(情報共有済み)
麒麟:押し倒せや(過激派)
喰い裂き丸:(魔剣妖刀聖剣化は)いやぁ、きついでしょ
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