恋愛要素ありの死にゲーに転生して鉈を振り回す転生者   作:エヴォルヴ

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だからもっと最適化して働こうね。苦しいね。キビキビ働け。


現在の気狂いのビルドは中途半端

 血沸き肉躍る戦いというのは、マラソンとハクスラだけではない。ゲリュオンとクリュサオルのような化け物や、禍津日様のダンジョンにいる英雄達との戦いではなくとも、そういった白熱する戦いというものは存在するのだ。

 

「マリーザがァ! 捕まえてェ! マリーザがァ! 画面端ィ!!」

 

「ぐぎぎぎぎぎぎ……!!」

 

「ファー! 甘い甘い!」

 

 茶菓子同好会による定期開催、『来週のお茶請け決定戦』。来週のお茶請け、その決定権を手にすることができる大会であり、その勝負は格ゲー、レースゲー、ロボゲーなどのPvPが可能なゲームで3先することが勝利条件のトーナメント。今回の決勝戦は俺VS虎成さん。虎成さんってば格ゲー適性結構あって草なんよ。ローズ先輩とか翡翠先輩は慣れるまで時間がかかったのに、虎成さんは凄い勢いで伸びている。だがまだまだ子猫よ。

 

「しゃあっアポロウーサ!!」

 

「ぬあああああああああああ!!?」

 

「そなたなど、まだまだ子猫よ……」

 

 必殺技KOによって3先の勝者が決まった。勝ったのは俺だ。ふははは、まだまだ負けるつもりはないぞ! ……正直負けるかと思った場面がいくつかあったけど。サガット適性高いな虎成さん。だがまだまだ雑な動きがあるからなァ……まだまだ負けんよ。

 

「というわけで来週の月曜日は百味ビーンズな」

 

「ゲテモノ……!」

 

「安心しろ、俺特製の百味ビーンズだ」

 

「……何入れたの?」

 

「勇追、狂刃、サバ味噌、梅、ポン酢」

 

「ゲテモノには変わりないじゃん!」

 

 ははは、こやつめ。翡翠先輩のJPに一本も取れずに終わった小娘が抜かしよるわ。冷静に戦えば取れる試合だったと思うんだけどなぁ、あの試合。大耀さんエドの使い方上手いし。行けると思うんだけどなぁ。

 

「はぁ……それで、模歩君」

 

「何用か」

 

「演技とはいえ、イチャつくのは他所でやってくれない?」

 

「それが出来たらチャート組みを苦労しないんですねぇ!!」

 

 いや本当に。こうして翡翠先輩と一緒にいることが重要なのだ。どういう状況なのか? わざわざ霊子化させて持ち込んだ馬鹿みたいにデカい人をダメにするソファに座った翡翠先輩に、俺が背中を預けている。どういうこったよ。

 

 まぁ、これも作戦のうちなんですけどね、初見さん。今週行われる五家の会合で、三野家がやらかすであろう宣言を台無しにするための作戦である。ここには五家の過半数が存在しており、五家の神獣も三体いる。三体の神獣に翡翠先輩と俺が恋人同士(偽装)であることを見せておくことで、三野家の跡取り息子は、瑞騎家の跡取り娘の心を射止めることができないどころか、どこの馬の骨とも知らない男に搔っ攫われてしまったというカバーストーリーを作れるのだ。

 

 しかも誰かが「どこの馬の骨とも知らないやつが」云々と文句を言ったとしても、「俺は現人神だけど、そちらは?」と返せる特典付き。あんまりやりたくないけど。やるとしたら、「師匠に倣って道場破りしに来ました。刹那無心流です」になるかと思う。……うん、後者の方がいいかもしれない。決闘なんてしたくはないが、素敵なご友人のためだ。戦わなければ生き残れない。

 

『これが青龍が言ってたNTRってやつか』

 

『寝てから言え』

 

『それな。てか青龍といい玄武といい、悪趣味だよな……』

 

『やつらなりに人間を愛しているのだろうが……まぁ、少々悪趣味なのは否定できん』

 

 鳳凰様と白虎様の会話に思う存分頷いて同意を示したい気持ちを抑えつつ、ローズ先輩がよくやっているスキル訓練法で指先にエンチャントを施していく。

 

 親指には光属性エンチャント、人差し指には闇属性エンチャント、中指には無属性エンチャント、薬指には───む、途切れた。難しいなぁ、三属性以上の同時エンチャント。渡辺綱氏がどれだけエンチャントに長けていたのかが実感できる訓練だ。あの人は、一本の刀に複数の属性エンチャントを施していたのだが、本来エンチャントは上書きされていくもの。火属性エンチャントを付与した後に、同じ武器に風属性エンチャントを施すと、炎の風を纏うのではなく、風属性を纏うエンチャントとなる。

 

 綱さんの場合、闇属性の出血エンチャに出血エンチャを重ね掛けして出血エンチャの効果を高めたりしていた。わざと回復させて内出血を起こさせたり、毒の回りを早くしたりとかもしていた。なんて誉れ高いのだと目を輝かせていたら、頼光さんも「四天王の中で、綱より付与術に長けた武士(もののふ)はいない」と讃えていたし、凄いぜ綱さん。そんな四天王でも撃退で終わった全盛期酒吞童子の強さよ。もう意思疎通が可能なやつらと共闘してラスボス殺しに行った方が早くない? 面倒な人間関係構築するより戦って絆が深まる怪魔と共闘した方が早いよ絶対。ラスボスはカスだから、皆協力してくれそうだけど。

 

「そういえば巡君、あなた武器また増やしたって明日夢から聞いたのだけれど」

 

「【妖蜂砕花(ようほうさいか)】のことですね? いいですよ、これ」

 

 実用性とロマンを兼ね備えた武器である籠手を取り出して、軽く腕を上げる。うん、軽すぎず、重すぎず、いい感じの重量感だ。さすがだぜ、パリピイケメンボーイズ。ところでお前らがたまに話す師匠ってどんな人なんだ? 話を聞く限り厳しいけどいい人って感じだけど。

 

「そういえばたまに怪魔殴ってたものね、メグちゃんは。刹那無心流にそういう型もあるの?」

 

「刹那無心流拳術にありますね。型と言ってもそこまで大それたものじゃないですけど」

 

 そもそも刹那無心流の技は基本的に勝つことを目的とした技だ。刀剣術、槍術、拳術その他諸々、大体勝つための技で構成されている。

 

 心を鍛える? じゃあ勝て。勝利の先に心の成長がある。もっと力を。

 技を鍛える? じゃあ勝て。勝利の先に技の成長がある。もっと力を。

 体を鍛える? じゃあ勝て。勝利の先に体の成長がある。もっと力を。

 I need more power……力こそ戦士の故よ。

 

 そんな流派なので、目潰し金的などの本来なら邪道、無法とされるものも肯定される。卑怯だなんだと罵られようとも勝ちたい理由があるのなら、使わない手はないのだ。源氏平家を含め、戦国武将、その他大勢の英雄達が俺と師匠の戦い方を見て「それでこそ戦士よ!!」と喝采していたし、やはり戦士は何が何でも勝ちをもぎ取る心意気が必要なのではないだろうか。誉れある戦を忘れてはならない。

 

「特に俺が気に入ってる技はあれだな。獄門」

 

「名前からして絶対人に向けてはダメなやつだな?」

 

「んー……どうなんだろうな? 人に向けて撃ったことねぇから分がんねぇ」

 

 怪魔相手にはよく使ってるんだけどな、あれ。あの技のいいところはどんな武器を使っていたとしても使えるという点にある。

 

「喰らわせたことがある張本人いるし、体験談でも語ってもらうか」

 

「? …………ああ、そう。そうだったわね」

 

 そう、ここには俺の眷族がいるのだ。敵対した時間とか、直接的に害された記憶が少ないせいで敵としての認識が薄れていたようだが、ゲリュオンとクリュサオルは百鬼夜行の度に俺と殺し合いをしていた怪魔だ。俺の技とか、戦い方を知りたいならこいつらが一番詳しいくらいには俺と戦いまくっている。あとは凱蟲百足城にいる鍬牙とか、ボスマラソンで周回している本編ダンジョンのボスとか。ん? あいつは隠しエリアのボス怪魔であってダンジョンの主ではないんだったか? あいつを倒すとダンジョンから弾き出されるから勘違いしがちだけど、そうだったな。

 

『獄門か……ああ、あれは恐ろしい技だ』

 

 苦い記憶を呼び起こされたような声音で、ゲリュオンが呟く。

 

『あの技を一度喰らえば、次にその一撃が来るのかを警戒せねばならん。その思考の揺らぎが生まれた直後、別の方向から一撃を叩き込まれるのだ』

 

「どんな技なんだ、その獄門というのは」

 

『いわゆる内部破壊の技だ。日ノ本の技で例えるなら……鎧通しか?』

 

「……奥義ではないか!?」

 

 鎧通しくらいできないと兄弟子にダメージを与えることすらできません。そもそも兄弟子は打撃が通じないし、刺突を放てばヌルリと避けられるし、斬撃を放てばそれと同じ威力の突きを放ってくるし。なんだあの蛸。

 

『どのような姿勢、体勢であっても打ち込んでくるあの打撃に私も、クリュサオルも何度苦しめられたことか……』

 

『ブル……』

 

「ちなみに師匠の獄門は一撃で臓器を最低でも3つは粉砕する一撃よ……」

 

 地獄の門を守る鬼の一撃のような打撃────それが獄門である。獄門を習得するには、まず体の構造を学ぶことが必須。どこを殴れば効率よく壊せるのかを学ぶと同時に、どうすれば体の治りが早くなるのかを学ぶことにも繋がる。これが他の刀剣術や槍術などを学ぶ時にも使えるのだ。どこをどう斬れば綺麗に斬れるだとか、どこをどう突けば骨に阻まれることなく貫けるのかとか……うん、本当に。

 

「……言われてみれば、武術は学ぶのに、体の構造については学んだことがないわね」

 

「回復魔法やポーションがそれに拍車をかけてるかもしれないわね」

 

「確かに、戦士はそういったものがあるからと、軽視している部分がありますね。五家の人間であってもその認識の人間は多い」

 

 俺の話を聞いた五家の三人があーだこーだと話し合いを始めた。こうして話し合いをしているところを見ると、この人達は人を引っ張る立場の人間としての素質があるんだなぁと心から思う。ゲーム本編でも五家の跡取り全員で話し合いをしている一枚絵があったが、絵になるんだよな、本当に。

 

 あ、拘束緩んだ。よし離脱。うーん、解放感。

 

「あ、模歩君。ちょっとダンジョン攻略付き合ってほしいんだけど」

 

「いいよ。どこよ」

 

「蛮蜘の晶洞宮(しょうどうぐう)

 

「お、そこまで行ってたのか。よしよし、全部蹂躙してやろうな……」

 

 そこにいる怪魔の素材も少なくなってきたところだ。広くて比較的明るいお蔭で戦いやすいし、俺は好きだよ、あのダンジョン。いやはや、本編ダンジョンの中盤もそろそろ終盤に差し掛かってきたか……中盤を超えた後は、終盤のダンジョンどれか一つでも攻略すると最終章へと向かうシナリオが出現する。よく考えなくても一年間で体験していいもんじゃねぇよな、この地獄みたいなスケジュール。




周回されてるボス怪魔と気狂いの会話

「ほう…向かってくるのか………」
「逃げずにこの竜に近づいてくるのか………」
「近づかなきゃ てめーをブチのめせないんでな…………」
「ほほお~~~っ、では十分に近づくといい」

なおこのボス怪魔は人語を話しません。ただ、戦い過ぎて気狂いはそのボスの言わんとしてることを唸り声からニュアンスで汲み取ってるだけです。こいつを殺しまくった結果、パッシブスキルの中に竜特攻が追加されています。人魔一戴の練度もゲリュオンとクリュサオルを含めた怪魔を差し置いてこいつがトップです。次点で幽鬼。じゃあなぜ使わないのかって?

『脱がないと使えないから』

以上です。

次回は亀と竜が気狂いと豊穣神に引きずられてダンジョンに向かいます。
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