恋愛要素ありの死にゲーに転生して鉈を振り回す転生者   作:エヴォルヴ

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気狂いが刀剣を使わない理由

「うーん……無理っすね」

 

 ダンジョンで八束爬戯とエンカウントした翌日。五家の皆さんと大耀さんが学園の上層部に呼ばれた今日この頃。皆様いかがお過ごしでしょうか。呼び出しの原因? 俺が八束爬戯エンカウントと戦闘の話を押し付けた。五家の皆さん、あなた方は押し付けられる側です。なるべく耐えてくださいね。でも戦う時は呼べ。素材をよこせ。ところで大耀さんも呼ぶのは何か違くない? 主人公だから? うーん……それはそうかもだが燃やすぞ? 世界を焼き溶かす黄色い火を呼びつけるぞ? いいのか? フングルイするぞ? いいのか? どうにかしてインドラ様の雷再現して焼くぞ?

 

 まぁ、それはともかくとして。学園の工房で奇怪な見た目の武具を日々開発しているパリピイケメンボーイズの一人、ヒロがそう言った。

 

「とりま修理自体は可能っすよ。けど……」

 

「言っちゃ悪いんすけど、喰い裂き丸自体がもう死んでんすわ」

 

「直しても鈍ら鈍器の出来上がりっすね。死んだ武器に魂は宿らないんすよ」

 

 続いてテツとツッチーがそう言った。粉々に砕け散ってしまって、柄以外に残っているのは刃を繋げるためのアムリタ結晶を用いたワイヤー部分のみ。そんな喰い裂き丸自体が死んでいると。

 

「悪い、そういったことに詳しくないから聞きたいんだが……死んでるってのは?」

 

「文字通りの言葉っすね。武器が限界を超えた時に起こる現象として、魔剣化、妖刀化、聖剣化っていうのがあるのはパイセンもご存じっしょ?」

 

「おう。というか喰い裂き丸がそうなってくれるのを期待してた」

 

 魔剣、妖刀、聖剣。武器の愛用度が最大まで到達した状態で、自分よりも格上と戦うことで至る存在。三種類どれも強力な効果を持った武器だ。

 

 代表的なものなら、ジークフリートのバルムンク、シグルドのグラム、アーサー王のエクスカリバー、クーフーリンのゲイボルク、フェルグスのカラドボルグなど。前世だと師匠に貰っただとか、神様に貰っただとか、湖の乙女に貰ったなどの武具だが、この世界では何らかの死闘を超えた結果至った存在である。クーフーリンの場合は海の怪魔をぶちのめした時に持っていた槍がゲイボルクとなったし、アーサー王の場合は己の命を代償として怪魔を封じたヴォーティガンが逆に怪魔に取り込まれてしまい、それを斬り捨てた時にカリバーンがエクスカリバーとなった。ロンゴミニアトは姉モルガンを怪魔ごと貫いた際に生まれたそう。

 

 この世界のアーサー王伝説曰く、アーサー王の姉、モルガンが凄く強い怪魔を魔術によって自分の中に封印。アーサー王に己の槍を手渡し、アーサー王が慟哭と共に槍を突き立てた時にその槍がロンゴミニアトとして生まれたそうだ。昔の人達、覚悟決まり過ぎじゃない?

 

 とにかく、そんな魔剣、妖刀、聖剣に至る武器は何も名うての鍛冶師が打ったものでないというわけではない。二束三文の武器であっても戦いの果てに進化することは確かにある。必要なのは武器自体が限界を超えることと、持ち主の心意気。それを知っていたからこそ、俺は重厚な鉈と炎刃の鉈を融合して造ってもらった喰い裂き丸がそうなることを期待していたんだけどなぁ。具体的にはあの蜘蛛姫様の大太刀をぶった切って、その勢いで怪魔の核を砕くような進化を。

 

「壊れるか、別の代物に変わるのか────武器が限界を超えた時、そのどちらかが起こるわけなんすけど……こいつは、多分死ぬことを選んだってところっすね」

 

「死ぬなよ」

 

「いや、おっしゃる通りなんすけど……武器が死ぬことを選ぶなんて相当のことで、俺達も困惑してるっていうか……」

 

「喰い裂き丸自体、タワーシールドを6枚は作れるような予算と素材をパイセンにぶち込んでもらったんで、耐久値が無くなるなんてあり得ねぇんすよねぇ」

 

 討魔は武器の耐久値の概念が薄っすらと存在していたが、この世界では顕著に感じる。技量補正が高い武器は耐久値が低く、筋力補正が高い武器は耐久値が高い────とか、そういう説明を中等部の授業でやるくらいだったし……重錨さん達の武器なんて斧の形をしてるだけの耐久値ガン振りの鉄塊だし。あの斧で鯨の一本釣りができる強度があるそうだ。そんなもんを振り回せる海の漢よ。

 

 喰い裂き丸は技量よりも筋力補正が高い武器だったので、耐久値は高い方。むしろ下手な筋力補正が高い武器とか防具、盾よりも耐久値が高い。ツッチーが言った通り、喰い裂き丸には盾のカテゴリーで最も耐久値が高いタワーシールドを、ざっと6枚は簡単に作れる予算と素材を注ぎ込んでいる。そんな喰い裂き丸だからこそ、壊れるなんてことはまずあり得ない。現に、新選組からタコ殴りにされようが、薩摩の剣を受け止めようが、酒吞童子の金棒と打ち合おうが折れることがなかった。

 

「パイセンはよく手入れしに来てましたし、扱い方も丁寧だったんで間違いなく愛用度はMAX、んでもって折れたのは格上との戦いの際……」

 

「耐久値も常に最大を維持するようにしてくれたんで、折れるはずもねぇんすけど……」

 

「でもこうして折れてるってことは~?」

 

「「「折れて死ぬような鈍ら作った俺達が悪いってワケ!」」」

 

「いやその理屈はおかしい」

 

 注文通りにやってくれたし、俺にはできない細かい手入れとか、打ち直しなんかもやってくれてたからパリピイケメンボーイズに落ち度は全くない。喰い裂き丸の出来栄えは俺の想像していた通りで、俺の体の一部並みによく馴染んでくれた。そんな武器を作ってくれたこの三人に落ち度があるわけがない。原因があるとすれば俺の方だろう。

 

 八束爬戯と戦った時、出血量が多すぎて朦朧としていた時に一番考えていたことは何かと考えたら……大耀さん達に八束爬戯の動きを見せることや、俺がどこまで通用するのかとかよりも、とにかく目の前で笑ってやがる八束爬戯を絶対にぶっ殺してやるって考えていた。魔剣妖刀聖剣に派生するために必要なのは武器の限界突破と、持ち主の心意気────つまり、格上との戦いの中で一番考えていたことを為すための進化を武器がしてくれるのだ。

 

 武器が持ち主の思いを汲み取って、それを為すための進化をするということは、それ以外に対してはただの武器となってしまうということ。下手をすれば別のものに使った瞬間、ダメージを与えることすらできずに砕け散る可能性すらある。恐らく喰い裂き丸は、そうなることを拒んで死ぬことを選んだのだろう。

 

「俺の扱いが悪かった。んでもって、死ぬって選択をさせた俺が悪い」

 

「「「いやその理屈はおかしい」」」

 

 不味い鼬ごっこが始まる────!

 どちらかが折れない限り、責任の押し付け合いならぬ責任の奪い合いが始まる! だけど俺は折れないよ。直接的にも間接的にも俺が悪い。俺がちゃんと先の先まで見据えて戦わなかったから、喰い裂き丸は死ぬことを選択するしかなかったのだ。俺に責任があると認めると言いなさい。言え。言わないと貴様らもマラソンに連れ出すぞ。

 

 そんなこんなで俺が悪い、いや俺達が悪い、という責任の奪い合いが数分ほど行われ、最終的に。

 

「どっちも悪いってところで妥協するか」

 

「「「うっす」」」

 

 どちらにも責任があるのでこの話は終わり、ということになった。とりあえず死んでしまった喰い裂き丸は修理してもらってから実家の自室か、師匠の家の道場の武器を飾っている場所にでも丁重に飾ってもらうことにしよう。それがダメなら寮の部屋の一角を仏壇か神棚にしてそこに飾ろう。俺が駆け抜けてきた軌跡でもあるわけだし、今まで酷使しまくった分ゆっくり休んでもらおうじゃないか。

 

「とりあえず、喰い裂き丸の代わりを用意してもらうまでは、妖蜂砕花を酷使することになりそうだな」

 

「ここいらで王道な武器使うってのはDoすか?」

 

「今すぐ用意できる武器だと、結構シンプルな武器しかないんすよね」

 

 人があまりいない、というか全くいない学園の工房の一角で毎日のように武具を打っているパリピイケメンボーイズが霊子化を解いて取り出したたくさんの武器。

 うーむ……前々から思っていたことではあるのだが。パリピイケメンボーイズは加護を持っていない鍛冶師トリオだが、俺からしてみれば精霊から加護を貰っている生徒が打った武具とか、五家お抱えの鍛冶師が打った武具よりも出来栄えがいいように感じる。俺が審美眼がないせいなのか、それとも俺の贔屓目が入っているせいなのか。

 

「これなんかDoすか? 片手で振れるフランベルジュをコンセプトにした軽量化大剣」

 

「ファルシオンとかもありじゃねえすか? 斬るってよりも叩き斬るって感じの武器ですし」

 

「ここは敢えて刀とか提案してもいいっすか」

 

 あれもこれもと提案してくるパリピイケメンボーイズの手には、間違いなく初期から使える店で買ったらとんでもない額を持っていかれるであろう武器達。大剣、ファルシオン、刀……全部刀剣である。

 

「あー……悪いんだけどさ、俺、刀剣の才能皆無なんだよ」

 

「マジすか。意外だわ」

 

「師匠は何でも使えるんだけどなー……俺は本当にてんでダメ」

 

 刀剣の技を学んでる時に師匠にざっぱり言われるくらいだし、俺自身も才能が無いと自覚できるくらいには、刀剣の才能が全く無いのだ。

 

「とりあえず何でもやれるパイセンができないとか、逆に気になるわ」

 

「見せようか? 俺の醜態」

 

「いや、醜態にはなんねぇでしょ」

 

 いや、マジで醜態晒すぞ。刀剣を持った俺がどれだけ情けないのか見せてやるわ。これを見たら、お前らも刀剣の類を俺に使わせようとはしねぇだろう。

 そんなことを考えつつ、ヒロが貸してくれた刀を握って巻き藁の前に立つと────俺の視界がモノクロに変化する。

 

「……」

 

 これがなー……俺の刀剣の才能がない理由なんだよなー……他の武器を使っている時とか、ゲリュオンとクリュサオルの人魔一戴を使ってる時はこうならないんだけど、音が消えるわ匂いを感じられなくなるわ、刀の感触以外感じなくなるわ、色が消えるわで。しかも斬る対象しか見えなくなる。視野狭窄レベル100みたいな状態なのだ。

 

(パイセンの気配やっべぇ……!)

 

(っべぇわ。これで才能皆無って何?)

 

(ん? でもこれあれじゃね? 巻き藁しか見えてなくね?)

 

 才能皆無とはいえ、師匠に刀剣の流派技を教えてもらっていないわけではない。刀剣の技を別の武器で使えるようにすればいいということで、技は全て叩き込まれている。なお免許皆伝とかはありません。俺がまだまだ未熟ということもあるが、気付いた時に師匠が新しい技を追加しているせいでどれだけ流派を身に着けても終わりが見えない。終わりがあるとすれば、師匠が死んだ時くらいだろうか。……いや、どうせ師匠のことだし、部屋に流派の追加技とか記録した本とかあるんだろうし終わらねぇじゃねぇか。

 まぁ、いいや。集中せんかい俺。呼吸はいつも通り、何も考えることなく散歩をしている時のように体の力は抜いて、自然体で構える。刀を握る手はほとんど添えるだけ……無駄な力は入れずに、あとは────

 

「────」

 

 抜刀、振り抜く。残心後、納刀。……うん、凄くいい刀だった。間違いなく、店で買ったらとんでもない値段が付くが……

 

「………………だあああああああっはぁ……! 疲れた……!」

 

「うわパイセンの汗ドッバドッバじゃん」

 

「あの集中力と圧だし、仕方なくね?」

 

「やっぱマジパネェわ、パイセン」

 

 俺のことを称賛しつつ、厚手のタオルとスポーツドリンクを手渡してくれるパリピイケメンボーイズ。気遣いの達人か?

 

「まあ、一応巻き藁切れるけど。気付いただろ?」

 

「パイセン、巻き藁しか見えてなかったっすね」

 

「そ。剣道とか、抜刀術の大会とかなら別にいいんだけど、怪魔を相手取るのにこれじゃダメだろ?」

 

 それに、と言って俺は鞘に納めた刀をもう一度抜く。現れたのは、さっきの綺麗な刀身ではなく、砕け散る寸前の刀身だった。

 

「俺が刀剣の類を使うと全部こうなるんだよなぁ……理由は分からん」

 

 師匠も涙が出るくらいゲラゲラ笑うだけで何も言ってくれないし。笑ってないで教えてくれ、こうなる理由を。こうならないようにする方法を教えてくれよ。

 戦舞で使う曲刀はそんなことにならないのだが……この差はあれだろうか? 斬るという意識ではなく、舞うという意識で使っているからなのだろうか。

 

「「「……」」」

 

「だから刀剣の類は────っと、悪いな。弁償す────」

 

「「「パイセン、それ買わせてください!!」」」

 

「待てぇ? これ、お前らの作品。壊したの、俺。弁償するのは俺の方。お分かり?」

 

 刀身全体に満遍なく罅が入って、砕ける寸前にしてしまったのだから弁償するのが筋だというのに、こいつら気は確かか?




重厚な鉈(進化前)
「いやぁ、(このまま使われることなく捨てられるのは)キツイでしょ」
「え、何か買われたんだけど。正気? しかもなんか買った人の記憶おかしくて笑う」

巡「うおおおお!何も考えず振り回すだけで怪魔が死ぬ!重厚な鉈、これは一体!?」
鉈「え、何これ知らん…こわ…」

炎刃の鉈(進化前)
「いやぁ、(とんでもない敵と戦うことが決まってて)キツイでしょ」

巡「うおおおお!出血!出血!凄い出血する!炎刃の鉈、これは一体!?」
鉈「え、何これ知らん…こわ…」

喰い裂き丸(八束爬戯戦の姿)
「いやぁ、(この先、主人が出くわすであろう強敵がいるのに進化するとか)キツイでしょ」
「いやぁ、(進化したら最後、二束三文、在庫処分で格安販売されていた鈍らをこんなところまで連れてきてくれた主人の役に立てなくなるのは)きついでしょ」
「だったら死んだ方がマシ!!」
「あばよ主人!!楽しかったぜェ!!あんたとの全力疾走!!」
「たくさんの夢をありがとう!!」

喰い裂き丸(天国休暇の姿)
「見なよ…オレ達の主人を…」
「こんなありがたい事ないからちゃんと見た方がいいよ」
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