恋愛要素ありの死にゲーに転生して鉈を振り回す転生者 作:エヴォルヴ
テスカトリポカ様の領域に行って、帰ってきたらそこまで時間が経過していなかった件について。
禍津日様の神域もそうだが、神様の領域というのは現世と時間の流れが異なっているものなのかもしれない。
『それで? 何か分かったか?』
「俺が忘れているか封じ込めてる記憶があって、それが何なのか分からないということが分かりました」
『分かってねぇじゃねぇか』
「分からないことが分かったって言ってんでしょうが」
分からないことが分かったという情報は貴重だ。分からないことすら分からない状態で何かを探したり挑戦したりしても、まず返り討ちにあって終わってしまう。知らないというのは怖いことなのだ。未知への理解を深めることで新しい道を開くのが人間という生き物である。
「分からないことは三つ! 一つ、俺はどうして記憶を封じ込めちゃってるのか」
幼少期の記憶は大体あるはずなのに、その違和感を感じないレベル。しかしテスカトリポカ様は俺が記憶を封じ込めていると言っていた。なぜ俺は記憶を封じ込めているのか。そしてそれに気付かないで違和感も感じないのか。
「二つ、俺に憑いてきてる50人くらいの人達は何者なのか」
『あ? …………ああ? 今の今まで気づかなかったが、確かにいやがんな。誰だ?』
『ふむ……テスカトリポカ神が見つけ、焦点を合わせてくれたからこそ見えるな』
どうやら禍津日様とゲリュオンとクリュサオルにも見えていなかったらしい。……というか50人もいたらこの部屋がすし詰めよりも酷い状態なのではないのだろうか。しかし、振り向いても人の影は4人程度しかいない。テスカトリポカ様曰く、俺の魂の根っこ────器よりももっと深い場所に根付いている亡霊らしいけど……誰なんだろうか、この人達。
『見たところ、全員が戦士……騎士……どちらにも適性があるな』
「へー……ま、とりあえずこの人達が何なのかも俺は分からないんだよな」
これが二つ目の分からないこと。そして────
「■■■■。このノイズが走るやつが誰なのか。これが分からない三つ目」
だが知っているはずなのだ。ノイズが走るとはいえ、俺は発音できている。知っているはずなのに、そいつに関しての記憶がない。封じ込めている記憶や、俺に憑いてきている人達にも関係あるはずだ。だって、ノイズが走る名前を言った途端に憑いてきている人達が凄い殺気立ってるし関係ないってことは絶対にないだろう。
「というわけで情報ください禍津日様」
『あ? あの外道だろ? まともに探しても正直見つかる確率はゼロだぞ』
地道に探すしかないってことね……ゼロはゼロでも小数点以下の確率はあるかもしれないから、そこを狙おう。心苦しいが大耀さん含めた幸運値が高い人達を集めて探せば見つかるだろ。
『あー……大耀明日夢含めて巻き込むならワンチャンあるか……因縁あるもんな』
「? もしかして、宇迦様の加護持ちと何かあったり?」
『ああ。正確には、宇迦の加護貰ったやつの旦那の因縁、だが』
本人の因縁ではないのだろうか? だが、禍津日様の表情がパッとしないのはどうしてだろうか。こう……苦虫を噛み潰したような表情を2で割ったような表情。苦い顔じゃないけど、苦い顔してる。
『あー……まぁ、寝てから言え案件というか……衆道案件というか……』
「? …………あー……」
そうかぁ……そういう感じのキャラクターかぁ……いやでも、外道って呼ばれてるってことはそれ相応のことはやらかしてるはず。討魔は死にゲー要素とハクスラ要素がバチクソに強いだけで、ギャルゲー、エロゲーの類であることを思い出させてくれるキャラは結構いるし、■■■■もその系統のキャラなのだろう。
「具体的に何やらかしたんです、■■■■って」
『とりあえず気に入った男を全員拉致って三日くらい楽しんだ後、怪魔にするとかやってたな』
「初っ端から飛ばすの止めません?」
『んでもって人間が怪魔に変異していくのを観察しつつヤッたり、男の恋人とかを目の前で怪異にしたりとかだな』
なるほど、暗黒面のクレイジーサイコホモということだな! さすがだぞ! 尊厳の 破壊方法を バッチリ 理解 しているんだな! 理解するなよ。あれ? ゲームにいたような気がするな、そいつ。いたような気がするだけでいなかったりするのか? いや、いたような気がするぞ? 頑張れ俺の記憶。
『まぁ、他にもやらかしやがったことは多々あるが、一番は宇迦の加護を得たやつの旦那か』
「何されたんです」
『自分のものにならないからって理性のない怪物にされた。んでもって宇迦の加護を得たやつに殺させて、その魂の断片を盗みやがった』
「執行者案件では?」
魂にあれこれというのは、了承を得ていないのであれば神様だろうがご法度。執行者が出張る案件な気がするんだけどな。
『執行者も万能じゃねぇからな……あの時は執行者も別の案件に行ってたし。しかもあいつは記憶の抹消とか、そういった痕跡消しのプロだ』
「あれ? 執行者ってもしかしてワンマン……?」
『だな。そもそも執行者が動くこと自体が天変地異級だからな。一人でも回せるんだよ』
まぁ、あの無法な強さを持ってる人が動かないといけないレベルの事態なんて起こらないに越したことはないし、あの人が一人で対処できないと判断したら各方面からの援軍も来るしで、一人で回せないことはないのか。
執行者が動く案件は、神様が気に入った人間に加護を与えたりすることもせずに私的な依頼を出して振り回した後に破滅させて、魂を自分のものにするとかそういうことをした時とか……加護を持っている人達が頑張ったとしても対処ができないレベルの怪魔が現れる兆候が在った時とかか。八岐大蛇とか、ヴリトラとか、ティフォンとか、ファヴニールとか、アジ・ダハーカとかな!! ドラゴンしかいねぇ!! しかもドラゴンはドラゴンでも化け物しかいねぇ!! でもそんなやべぇやつらを執行者の手を借りながらも倒せるのが我らが主人公である。さすがだぜ。
『話を戻すが、■■■■は掛け値なしの屑だ。見つけたら何かされる前に殺せ』
「俺は会ってるようなんですが」
『でもお前純潔だろ。月読のお墨付きだ、安心しろ』
なんで月読様のお墨付きで安心……って、ああそうかあの神様は夜の神様か。夜だから夜の営みについても司ってるってことなのか? そっち系の神様は他にいたような気がするがどうだったか……色々あやふやだからな、日本の神様って。大体の神様が世界の理そのものみたいな権能を持っていることが多いし……例えば加具土命様なら火を司っているけどその火を生命の火と自己解釈して命を吹き返す火を与えることもできる。日本の神様は全員が自己解釈して自分の権能を弄れちゃうのがずるいよなぁ。
『問題は純潔云々じゃねぇってことなんだが……』
「因縁の話です?」
『ああ。あの野郎、魂の断片をどこにやったんだろうなって思ってよ。魂の断片をどれだけ延命しようが納めとくものがなけりゃ消滅するはずだ』
あー、確かにゲームでそういう描写があったような気がする。魂が欠けた時点で人間は消滅することが決定づけられるとかなんとか。だからこそ、魂食いというとんでもない術が禁術扱いされているわけだし。魂を齧るということはその人自身の存在を齧るということと同義であり、齧られた者は自分が誰なのか分からなくなっていく。それだけなら誰かがその人がその人であるということを教えてあげればいいのだが、場合によってはその人の大事な記憶────例えば家族や友人、恋人の記憶がじわじわと奪われていくのは、恐ろしいことだろう。
いつのセリフかは覚えていないが、「魂は器がなくてはならず、器は魂がなくてはならない」というセリフを誰かが言っていた。難しいことはよく分からないが、魂は器がないと存在を維持できないということだけ分かってれば問題はないだろう。
『これは俺の憶測だが……お前の中に■■■■が盗んだ魂の断片があるかもしれねぇ』
「……なんで俺に?」
『さあな。偶然目に入ったやつがお前だったのか、それともお前みたいなのを探していたのか……それは定かじゃねぇが』
うーむ……この辺りは探して聞き出すしかないのかね。木乃伊取りが木乃伊になるなんてことにならないようにいつも気を付けておかなければ。
「とりあえず一つ一つ片付けていきますかね。まずは……………………待て、今日は何日だ」
『9月16日だな』
「洗剤セットとサンマが特売の日!!」
しまった、戦争の準備を怠っていた!! 大耀さんはこれを知ってるのか? 知らないのであれば伝えてすぐにでも向かわなくては。洗剤セットは一人につき2セット……洗剤3本とスポンジ2つ合わせて598円……こんなお得な洗剤セットを買わないわけにはいかねぇよなぁ!? ちなみに特売はポイントカードを作っている人限定。
「大耀さん捕まえて乗るしかねえよなぁ、こんなビッグウェーブ!! 夕飯はサンマだ!!」
蹴り飛ばす勢いで部屋のドアを開けて寮を飛び出す。この時間であれば大耀さんはそろそろ寮に戻ってきて買い物に出かける頃……ゲームでも学校終わりとか、休日の夕方近くは自由時間だったから買い物に時間を使うことが多かった。行かなくては……大耀さん連れて商店街という名の戦場に向かわなきゃ……■■■■よりも洗剤セットとサンマの特売の方が重い……!!
寮母さんに買い物に行ってくると伝えた後、外に出た俺は商店街に向けて走り出すと共に帰ってきていると思われる大耀さんを探す。あまり褒められたことではないと思うが、俺は四六時中索敵スキルの類を色々と起動した状態で生活しているので、個人を見つけるくらいのことはできる。索敵スキルは便利だぞ……特に、禍津日様のところで魔改造────ほとんどガチャ────で時折付与される付帯効果『敵性感知』から零れる反応をキャッチしたりすることができるからな。味方だろうが敵対者だろうが反応をキャッチするのが索敵スキルである。
そんなスキル用いて大耀さんの反応を探していると……あ、いた。他の人も数名いるな。友達とかだろうか? ……あー、いや、何か違うな。大耀さんの表情がちょっと嫌そう。つまり、知らない人に絡まれたという感じか? しかも結構な時間絡まれていると見たね。索敵スキルと強化された聴力で聞えてくる会話から察するに……パーティー組んだら大耀さんは思ってたんと違ったけど、他の人達はいつもより上手く立ち回れたから継続してパーティーを組もうって感じか。
んー……自慢じゃないが、茶菓子同好会は学園内でも上位────団体戦ならトップを狙えるくらいの戦力が揃っている。五家の過半数に大耀さん、そしてたまに混じるパリピイケメンボーイズとか万莱君がいるのだから当然だ。そんなメンバーがいる中で揉まれてきた大耀さんが他のパーティーと組んでダンジョンに行ったら思っていたのと違ったり、やりにくさを感じてもおかしくはない。しかし、大耀さんをパーティーに勧誘したい人の気持ちは分かる。だがな────
「大耀さん、洗剤セットとサンマ特売だから買いに行こうや」
俺はそんなこと関係ないので拉致っていくぜ!! 勧誘なら自活の時間にするんだな!! こっからはプライベートの時間……イベント回収に行くか、残業ダンジョン攻略に行くか、買い物で時間を潰すかを選べる自由時間である。俺はイベントを持ってくる側の気狂い……ちなみに神様が持ってくるような強制イベントの類なので大耀さんはイベントに参加せざるを得ません。一応現人神なので神様が持ってくる強制イベント発生装置となっても問題はないだろう。
「あ、巡君。というか洗剤セットとサンマの特売って、どこで?」
「いつもの商店街」
「見落としてた……行かなきゃダメだね、これは!」
サンマを食べる機会は今年が初なので、初物だ。食べなくては……あと神様にも奉納しなくては……秋は色んな食べ物が増えていいなぁ。学園祭とか、交流戦とかいう面倒なイベントも迫っているし、美味しいものを食べて英気を養わなくては。
「ごめん、そういうわけで私も買い物行くから。また機会があったら」
「あ、ちょっと────」
「行こ、巡君」
悪いな少年少女。下手に勧誘し続けるとイライラ度を高めてしまうから、気が向いたらとか、そういう言葉を使って囲むことをお勧めする。……もっと言えば、最初っから手を差し伸べれば完璧だったぞ。茶菓子同好会が掻っ攫ってしまったが、最初に大耀さんをパーティーに勧誘していれば君達が大耀さんの攻略対象になり得たし、五家との縁もゲットしていたかもしれない。まぁ、たられば論にはなってしまうが……君達が世界を救う存在となっていたかもしれない。世界滅亡ルートの引き金を引いていたかもしれないけどな! 俺もそうなる可能性がある! この世界本当にクソだな。
明日夢
誰だろうが状態異常にするDPSの怪物と、魔法と物理どっちもいける近接DPSの乙女二人と回復の漢女のパーティーによって普通のパーティーでは満足できなくなってしまった。
なんかいつの間にか茶菓子同好会を含めて結構交流が多い人達は全員下の名前で呼ぶようになっている。
ヴリトラ
死体の一部が日本に飛来している。肉、骨、臓腑、魂と四つに腑分けされた。魂はインドラ様が確保して完全復活しないように見張っている。
それはそれとしてそろそろ気狂いと翡翠先輩とかとの初エンカもお出ししておきたい気持ちがある。