恋愛要素ありの死にゲーに転生して鉈を振り回す転生者   作:エヴォルヴ

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お目目グルグル

「そういえば、刹那無心流って柔術もあるんだよね」

 

 先日多めに購入したサンマをいくつか用意して、火属性の魔法を利用して燻製を作れないかと思案しつつ実験していると、俺と同じくらいに部室に来ていた大耀さんが声を掛けてきた。

 

「あるな。怪魔相手には使えないやつばっかりで受け身がメインだけど」

 

「人相手ならいいの?」

 

「基本的には向けないけどな。ぶっ壊すこと前提の技ばっかりだから」

 

 時代が時代なら殺人剣的な扱いを受けているであろう刹那無心流。実は平安、鎌倉時代くらいにはもう流派が確立されているらしい。禍津日様のダンジョンにいる源氏や平家の人達に流派の話をしたら、「やはり羅刹流か」という顔をしていたし。あの頃の刹那無心流────元々の名前は羅刹流らしい────は文字通り悪鬼羅刹の集まりみたいなもので、身内で殺し合いに発展するなんて日常茶飯事だったそうだ。蠱毒かな?

 

 ただ、仕事はきっちりこなすので、貴族の身辺警護の任に着く人が結構いたらしい。蠱毒の果てに生き残った人ばっかりなのだから強いのは当然だが、貴族の身辺警護ができるくらいの礼儀作法があったのには驚きだ。

 

 そんな流派の技は、基本的に殺すこと前提の技ばかり。柔術も掴んだらそのまま投げて受け身を取らせずに骨を砕く技、関節を確実に外す技……色々あるが、とにかく殺すことが前提の技しかない。人間相手に使うならダンジョンの中でしか使えない。じゃないと確実に殺してしまう。師匠レベルになれば殺さない程度の加減ができるのだろうが、俺では無理だ。

 

「つか、なんでそれを? 興味でもあった?」

 

「交流戦あるでしょ? 対人で何か私でもできそうなのがあればと思って」

 

「あれなぁ……」

 

 討魔学園は関東だけにあるわけではなく、西日本の方にも存在する。俺が通っている討魔学園は東京校。もう一つの学園は京都にある京都校。東京校と京都校の仲は正直いいとは言えず、いがみ合っていると言っても過言ではないだろう。原因は知らんし、興味もない。ゲームで何か語られていたかもしれないが、俺は大人の事情に巻き込まれた結果人類滅亡ルートを踏み抜いたプレイヤーの一人……正直京都校にいい思い出はないのだ。主にクソクエのせいでな。……討魔2の主人公は京都校なのだが、海外に行くくらいの腕利きだったりする。元々フリーで活動していた戦士だったのが、学園の関係者に見つかってスカウトされた────的な話だった気がするが、どうだったか……

 

 まぁ、討魔2の主人公は置いておいて。今近付いてきているイベント、討魔学園交流戦が面倒くさいと感じている俺と大耀さん。全国に生中継される一大イベントではあるが────そんなのに参加するくらいならダンジョン攻略したいのが心情。参加したくないけど、神様と神獣の加護を得ている人は強制参加である。守護獣とか精霊なら自由参加らしいけど……面倒くさいなと思わざるを得ない。禍津日様の加護なんて大衆の目がある中で使っていいのか分からないものの代表だろう。

 

「というか芸術点って何……」

 

「技の派手さとかだろ」

 

「戦いに派手さって必要?」

 

「ではここでクエスチョン。第六天魔王波旬織田信長公の必殺技(通常攻撃)は派手でしたか」

 

「火縄銃と大砲を魔法で操って全方位からの十字砲火のこと? ……どうだろう。結果的に派手になってるだけ?」

 

「それが答えだ」

 

「派手さより威力ってことだね」

 

 見た目は派手だけど威力はそこまで、というスキルが無いわけでもない。ただ、そういう派手さが戦えない人達の心に勇気を与えているという側面もあるので一長一短を簡単には論じられないが……俺は派手で連発できないものよりも、地味だが連射が効くものの方が好き。空刃、空針系列とか特に素晴らしい。

 

「派手さに威力が伴ってりゃ問題ないんだよ。大耀さんの必殺技とかな」

 

「でもあれ使ったら一定時間ショートしちゃうからなぁ」

 

「だからこそ加護をたくさん貰える器があるんだろ」

 

「あれ使う前提の器ってことかぁ」

 

 器に関してはよく知らん。俺の場合は呪いを際限なく溜め込むことができる呪詛の器、大耀さんの場合は加護を際限なく集めることができる稀有な器。器の強度を上げることもできるらしいが、やり方は知らん。知っていそうなのは……安倍晴明様とか蘆屋道満様とかだろうか? 平将門公も知っているかもしれないけど。

 

「あ、そういえば大耀さん」

 

「何?」

 

「茶菓子同好会で冬休みにまた旅行したいと思ってるんだけど、行く?」

 

「行く。行先は?」

 

「そこはまだ未定。話し合って決めるつもりだし」

 

 お、冷燻なら案外いけるもんだな。……これをオイル漬けにしたら美味しいのだろうか? 試してみる価値はある……美味しかったら次も作るし、微妙だったらそれはそれで教訓を得たことには変わりない。

 

「…………あ、そういえば巡君」

 

「おん?」

 

「■■■■って誰か知ってる?」

 

「全く存じ上げないっすね……聞こえねぇし」

 

 大耀さんもその名前を知っていたとは思わな────いや、宇迦様の加護を貰っていた誰かの旦那さんと因縁があるんだから、大耀さんが宇迦様から何か聞かされていたとしてもおかしくはないか。俺の耳にはノイズでしか聞こえてこないが、大耀さんにははっきりと言葉で聞えているのだろう。

 

「聞えないって……巡君って耳悪かったっけ?」

 

「いや、声は聞こえてる。ただ、■■■■って単語だけノイズが入って聞えない」

 

「ああ、そういう……うーん、巡君が知ってれば手っ取り早かったんだけど」

 

「そりゃまた何で?」

 

「前に出くわした……八束爬戯、だっけ。あの人が言ってたんだ。探せって」

 

 ふぅむ……あの蜘蛛姫様がねぇ……どうにも■■■■ってやつは各方面から恨みを買っているようだ。八束爬戯を含めてDLCに登場する怪魔は、基本的に人類とガッツリ敵対しているというわけでもない。蜈蚣姫もそうだが、向かってくるなら容赦はしないし、敵対するなら徹底的に殺す。手を出してこないのであれば────自分の縄張りに戦意を向けて踏み込んでこないのなら、敵対することもない。もちろん戯れに強者に対して戦いを挑むこともあるが、基本的には積極的に戦うような怪魔ではない。

 

 これに関しては、一定の格を持っている怪魔が弱者から感情やアムリタ、血肉を奪うよりも強者から何かを得た方がいいと考えることが関係しているのだろう。怪魔は基本的に負の感情や、人間の血肉、生き物が少なからず持っているアムリタを餌とする。ぬっぺふほふが家畜怪魔とされていたのは、生まれつき大量のアムリタを抱えて生まれ、膨大な量のアムリタを蓄える性質が関係しているのだ。お陰様でゲームのイベントクエストがいつでも盛況だった。もっと寄こせ。

 

「で、何か知ってそうな巡君に何か聞けたらいいなって思ったんだけど……」

 

「俺も探してはいるけど、どこにいるのか分からんからな……というか、何で俺が何か知ってると思ったんだよ」

 

「八束爬戯さん? が君と歩くなら探せ、って言ってたからかなぁ」

 

「うーん……?」

 

 俺自身が厄ネタという可能性が浮上しておられる。厄ネタはさっさと火消ししておくのが定石だが……その原因となっているやつがどこにいるのかが分からない。分からないから探せない。……だが、探すこともないと思っているのが俺である。

 

「■■■■が何を考えてるのかはともかく。時が来たら向こうから来ると思うんだよな」

 

「どうして?」

 

「俺、そいつに何かされてるらしいから」

 

 何をされたのかが分からないから、詳しく話そうにも話せないものの、■■■■が俺を使って何かをしようとしているなら、確実に接触しに来るはずだ。禍津日様の憶測になってしまうものの、俺の中に魂の断片があるのなら、それを回収しに来るはず。足跡を消すことに長けているのなら、痕跡を追っているやつがいると知ればそいつを消しに動く。動けば尻尾を掴める。なので、そこまで血眼になって探す必要もない……俺はそう思っている。思っているんだが……

 

「巡君、何かされてるって、大丈夫なの?」

 

 おっと、大耀さんの目がグルグルしている。まるで螺旋の力に目覚めた連中か、ゲッターかジェットジャガーみたいな目をしていらっしゃる。

 

「知らね。月読様曰く、肉体的に何かされてるってのはないらしいけど」

 

 それもどうか疑わしいが、俺が性的に何かされたわけではないらしいし……それがトラウマで記憶を封じ込めているわけではないらしい。となれば、俺に憑いてきている50人くらいの人達が何者かを探るのが優先。とはいえ、ダンジョン攻略をメインに進めたいところだ。未だ話に少しも出てこないラスボスを撃破しないことには一段落もないし。

 ちなみにラスボスの名前は大嶽丸。そう、あの大嶽丸である。討魔のラスボスは全員有名な鬼の名前を冠している。初代討魔のラスボスは大嶽丸、討魔2のラスボスは両面宿儺、討魔3のラスボスは例外でオリジナルの天眼(てんがん)夜叉。全員が全員、一度動けば国が一つ滅ぶとされる力を持っている強力な怪魔である。共通しているのは全員真正面からやり合った方が安全であるということと、卑しいディレイが存在しない神ボスであること、今の俺が挑んだら間違いなく即死ということ。一応会話もできるので、会うのが楽しみな連中ではある。なお会ったら殺す。これは決定事項。あいつらは殺したら復活できない。やろうと思えば復活できるのだろうが、完全に復活するためには数千年の時間を必要とする。俺が悠々と隠居するためにもあいつらには是非とも死んでいただかなければならない。

 

「ま、向こうが来るまでは受け身でいいと思うわ。分からないことに神経使うよりも、分かってることに集中した方がいい」

 

 だからそのグルグルしている目を何とかしてくれ。そんな目をしても俺がビビるだけで、何か変わるわけでもないぞ。ほら、さっきできたばかりのサンマの燻製をあげよう。

 

『あとは……■■■■について何か調べるなら人間側の資料よりも生きてる情報の方がいいかもな』

 

「生きてる情報?」

 

「そんなのあるんですか?」

 

『いるだろ。大江山の鬼神がよ』

 

「「……あ」」

 

 酒吞童子か。確かにあいつ、■■■■についてなんか色々知ってるみたいだったし、ちょっと攻略するついでに聞きに行くのはありだな。メインシナリオで攻略しないといけないダンジョンの一つでもあるし。【巨猛の大迷宮】の第一層攻略ついでに行くか。ゲームと同じなら、あそこから酒吞童子一派がいるダンジョンに行ける道もあったはずだし。

 

「明日行くか」

 

「だね」

 

 茶菓子同好会フルメンバーでダンジョン攻略、久しぶりにやりますか。考えてみると、フルメンバーでダンジョン行くのは夏休み以来では?




織田信長
通常攻撃が必殺技になってるバグみたいな戦国大名代表。
「敵を確実に倒したいなら銃と大砲を魔法で操って全方位から全弾叩き込めばいいじゃない」
敵に容赦はせず、魔王と呼ばれた男。ただしいつでもどこでもどんな状況でも濃姫だけには勝てなかった。
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