恋愛要素ありの死にゲーに転生して鉈を振り回す転生者   作:エヴォルヴ

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スキルはちゃんと育てよう!


敵のHP全然減ってねぇぞ!?

 雨にも負けず、風にも負けず。夏の暑さにも冬の寒さにも負けない丈夫な体を持ち、物欲センサーが反応しない程度の欲を持ち、右手の鉈で膝を治療し、左手の鉈で頭を治療する。そんな戦士に、俺はなりたい。

 

「というわけでやってきました幽鬼の砦。仙骨集めて三千里。参加者二名のぶらりダンジョン旅」

 

「ぶらりで来ていいような場所じゃないけどね」

 

 第二のダンジョン、『幽鬼の砦』。光属性のスキルがあれば簡単ッ! 簡単ッ! なダンジョンである。スケルトンの恥晒したる幽鬼は光属性が付与された攻撃に弱い。見た目通り貧弱である。ちなみに骨なので打撃弱点。幽鬼って名前だからゴツイ鬼が出てくるのかと思いきや骨が現れた時の落胆は今でも忘れていない。

 

「今日の目的は何と言っても大耀さんの手に入れたスキルの使い心地の確認と」

 

「模歩君が新しく買った武器の検証……だったかな?」

 

「その通りでございます」

 

 雑魚相手に検証もクソも無いだろ、と言われそうだが、俺が持っている魔法スキルは大体エンチャントかバフかであり、攻撃系の魔法スキルは育てていないから牽制程度の効果しかないのだ。なので、攻撃系の魔法スキルを育てるのと同時に、装備の確認と検証を行う。ついでに仙骨集めも兼ねている。仙骨大事。

 

「どんな武器を買ったんだい?」

 

「鉈と火縄銃とフックショット」

 

「あ、その左手に付けてるのがそうなんだ」

 

 現在の俺は戦闘スタイルのこともあって防具は布や皮を使った軽装だが、その分武器を過剰なレベルで装備している。装備スロットとして霊体化……アムリタ化……まあ、持っていなくても念じれば具現化できるようにはできるのだが、俺は実体化している方が取り回しを考えやすい。本命のメインウェポンである鉈はちょっとしたウェポンラックのようなもので固定して背負っているし、火縄銃は腰に佩くように装備していつでも撃てるようにしている。見えないというのも大きなアドバンテージになるが、見えていることがプレッシャーになることもあるのだ。この辺は本当に本人の好みだと思う。

 

「使い方は……まぁ、こうだよ……なッ!」

 

「オ゛ォ゛ッ!?」

 

 ダンジョンに入った直後に見つけた幽鬼に狙いを定めてフックショットを射出、アンカーが幽鬼の肋骨に引っ掛かったので思い切り引っ張ってやれば、ゲーム特有の小型なのに超強力な巻き取り機構が起動して幽鬼を俺の間合いに引きずり込んだ。前から思っていたが、思ってる以上に軽いよな、幽鬼。骨密度足りてねぇんじゃねぇの? 

 

「んでもって、こうッ!!」

 

「オ゛ッ゛────」

 

「おお、一撃」

 

「多分大耀さんも棍棒での頭狙いなら余裕でワンパン圏内だと思う」

 

 重厚な鉈を抜刀、姿勢を崩した幽鬼の頭をかち割り撃破。アムリタは……うん、当たり前だが少ない量だし、仙骨は落ちていない。クソがよ。つくづく俺はドロップ運に恵まれない。宇迦様の加護が欲しいぜ……それか招き猫。この世界、人間に害を成さないタイプの怪魔────妖怪? もいるのだ。それが招き猫。すねこすりという妖怪もいるらしいのだが、俺は見たことがない。

 

 招き猫だが、名前通りの加護を与えてくれる怪魔だ。この怪魔、詳細は知らないが弁財天だか大黒天だかの加護を与えられたことで怪魔から神獣……よりも下のランクの守護獣みたいな感じになった存在だという。ドロップアイテムの獲得率やアムリタの獲得量などが上昇する加護をくれる。戦闘に役立つ加護は全くないので稼ぎ用の加護である。この世界ではお会いしたことがないが。チュールか? チュールが必要なのか? 鯖の水煮しか作れねぇよ俺。

 

 まぁ、ないものねだりしてもただひたすらに虚しいだけなので考えないことにしよう。無いなら無いで試行回数を増やすだけだ。出るまで回せば100%理論だ。俺がそんなことを考えている横で現れた幽鬼の顔面を棍棒で殴って倒した大耀さんは仙骨をドロップしてた。これが現実。これが物欲センサー。おのれ乱数の女神。

 

「そういえば、このダンジョンのボスはどんなやつなんだい?」

 

「んー……なんて言うんだろうなぁ……どでかい剣を持った骨の集合体?」

 

「分かりづらいね」

 

 実際、そういう表現しかできない姿をしているのがこの『幽鬼の砦』のボス、幽鬼の将なのだ。人間の骨、動物の骨、とにかく色んな生物の骨が集まってギリギリ人型と言える姿を保っているような見た目である。どでかい剣をぶっ壊すとたまに朽ちた武器がドロップすることがあるので、余裕があるなら狙いたいところだ。亜人の狂戦士よりは賢いが、そこまで賢いというわけでもない、絶妙なラインを攻めているボスでもある。

 

「喰らわないとは思うけど、たまにいる肉がある幽鬼の吐瀉物を喰らうと毒状態になるから気を付けてな」

 

「へぇ……でも学園の怪魔図鑑には毒が効くって書いてたような……?」

 

「骨のくせに毒が効く時点でスケルトンの恥晒しよな……」

 

 実際問題、なぜ毒が効くのだろうか? 考えれば考えるほどドツボに嵌まるような謎である。……まぁ、血が出るわけないだろって見た目の超ガリガリの怪魔に出血のデバフが通ったりするし、考えたら負けというやつだ。深く考えないのが精神衛生上健全なやつである。

 

「まぁ、それはそれとして。ちょっと魔法撃つからスキル発動よろしく」

 

「ああ、うん。任せて」

 

「んじゃ……」

 

 精神力を左手に装備した火縄銃に込め、魔法スキルを起動する。久しく使っていなかったこともあって、少々手間取りはするが────火縄銃の銃口から小さな火が漏れる。

 

「穿て、『ファイアーアロー』!」

 

 引き金を引き、撃鉄が下りて銃弾が放たれる────ことはなく、銃弾の代わりに放たれたのは小さな炎の矢。火属性魔法スキル『ファイアーアロー』。矢というよりも釘レベルのそれは、火属性の攻撃系魔法スキルの初期魔法である。

 こちらに向かって武器を振り回しながら走ってくる幽鬼の頭に直撃したそれは、俺のスキル熟練度が低いということもあって幽鬼を倒し切れる威力ではない。使い込まないとスキルは育たないので、今のところ普通に火縄銃で銃弾をぶっ放した方がいいわけだが。

 

「ここだ! 『幻影の再演』!」

 

「ォ゛オ゛ッ!?」

 

「んー……マジで四属性攻撃系の魔法スキル育てんとヤバいわこれ」

 

 幻影の再演使って倒せないのは致命的すぎるだろう。いや、火、水、風、土の属性をほとんど使わないのが悪いとは分かっているが、言い訳をさせてほしい。インファイトメインの俺にとって、光、闇、無の三属性が強くて使い勝手いいのが悪い。

 

 最近はソロ活が多いが、瑞騎先輩と一緒にダンジョンに潜ったり、百鬼夜行で文字通り死ぬまで殺し合いをしたりする時に光、闇、無の三属性を使っていれば敵が勝手に死ぬのだ。他の属性を使う必要性を感じなかった……パッシブ系を取ってからずっと放置だったものな……そりゃ弱いわ。

 

「とりあえず後詰めの頭蓋粉砕ッ!」

 

 峰打ち(殺意マシマシ)による打撃で幽鬼の頭蓋骨を粉砕する。分厚い刀身を持つ鉈は、斬撃と打撃、その両方の性質を併せ持つ♣

 

 斬撃打撃、これ一本。エンチャントすれば大体の敵は死ぬ。死ななくても何度も殴れば敵が死ぬ。皆も使おう導きの鉈。こんなことしてっから攻撃魔法が育たねぇんだよなぁ……

 

「大耀さんは俺みたいにならないように気を付けてな」

 

「脈絡がなくて何を言ってるのか分からないよ模歩君」

 

「頭のいい脳筋になれってこと」

 

「????」

 

 ビルド次第では特大武器ブンブンバッタしているのも悪くはない。ステータスを体力、筋力、持久にガン振りしておけば大抵の敵を何の抵抗も許さず擂り潰せる。超脳筋スタイル、懐かしいなぁ……何度も復活してくる敵に対して復活→粉砕→復活→粉砕の無限ループで擂り潰したっけ……これがヘラクレスの戦い方かぁと感慨に浸って戦った記憶がある。

 

 討魔のステータスはHPを伸ばす生命、スタミナを伸ばす持久、MPを伸ばす精神力、力を伸ばす筋力、技を伸ばす技量、素早さを伸ばす敏捷、魔法攻撃の威力を伸ばす呪術、状態異常の蓄積量や効果、エンチャントの付与時間を延ばす神秘の8つ。俺はあまりステータスを振っていないが、今のところ筋力、持久、技量、敏捷、神秘の項目に多く振り分けている。今後はもっとステ振りをしていかなければいけないので、ズレの調整なんかにもテコ入れしていきたい。

 

「ところで大耀さん、今日この後時間ある?」

 

「え? ああ、うん。あるけど」

 

「たまには学生らしいことしようと思っててさ、カラオケ行くつもりなんだけど一緒に行かない?」

 

 何も考えずに歌えばストレスも晴れるというものだ。ストレス解消法は人それぞれだが、俺の場合カラオケに一人で行くこととかがストレス解消法の一つである。

 ちなみにカラオケに行く理由はもう一つあってだな……ゲームと同じなら、歌の上手さは隠しステータスとして神秘の項目に混ざって存在していて、歌系スキルが神秘の値と歌唱力を参照していたはずなのでスキルのための訓練でもあるのだ。何が役立つか分からないのだから、色々やっておいて損はないだろう。

 

「カラオケかぁ……そういえば最近行ってないかも」

 

「無理強いはしないけど、どうする?」

 

「そうだなぁ………………うん、行くよ。参加者って模歩君だけ?」

 

「多分ローズ先輩と瑞騎先輩は呼べば来てくれると思うぞ。……よし、今回のカラオケを大耀さんの歓迎会とする!!」

 

「そんな仰々しくしなくても」

 

「新入部員の歓迎会みたいなものだから気にしないでもろて」

 

「何の部員?」

 

 おお、それを聞くとはお目が高い。

 

「誉れある(いくさ)部」

 

「誉れって何だっけ」

 

「誉れ」

 

「答えになってないよ模歩君」

 

 誉れは誉れだよ。習わし、武勇、誉れの誉れだよ。毒を盛り、出血を強いて、部位破壊を行って叩き潰す。もしくは相手に何もさせずに擂り潰すのが誉れ。膝治療で動けなくした後に死ぬまで脳天を鉈で叩くのも誉れ。誉れとは、勝利することである。戦いとはいかに自分の得意を押し付けるかなのだ。戦いの場に卑怯なんて言葉は存在しない。どちらかが勝ち、どちらかが負ける。OD掴み連打でPKOを出そうが、どすこい掴みヒップドロップでPKO出そうが勝ちは勝ち。戦場だってそういうものだ。正々堂々なんてものはな、御前試合とか授業でやるような打ち稽古だけで十分なのだ。

 

「ちなみに部員は俺、ローズ先輩、瑞騎先輩、大耀さん」

 

「いつの間に私は入部したことに……」

 

「昨日」

 

「昨日!? アイテム合成で四苦八苦してた昨日!?」

 

 まあ、誉れある戦部なんて部活は存在しないが、何かあった時に作戦会議室として空き教室や各備品及び施設を使えるように同好会として『茶菓子同好会』を設立しているのは事実。活動内容? 茶菓子を摘むだけ。他の文芸部や同好会と違うとすれば、たまに今日の茶菓子や明日の茶菓子、お茶などの好みで戦争が勃発してダンジョンに突撃するか、ゲームセンターに突撃かますために不在の時があることか。

 

 ローズ先輩は紅茶派、瑞騎先輩は抹茶派、俺は茶菓子に合えば何でも飲みまする派。でもおはぎにだけは緑茶かほうじ茶を合わせたい派。たけのこきのこ論争に切株片手に乗り込むような無粋さは持ち合わせていないが、どっちも好き。きりかぶ復刻まだですか。




まだ状態異常をしっかり使っていませんが、我らが気狂いは現状だと状態異常鉈ブンブンスタイルです。上質よりの状態異常付与戦士です。しかしそのうち手札がさらに増える。怪魔化(妖怪化)と無限ガッツバーサーカースタイルと一人ロックバンド音ゲー祭って言うんですけど。
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