恋愛要素ありの死にゲーに転生して鉈を振り回す転生者 作:エヴォルヴ
討魔学園の学園祭は毎年恒例の一大イベントだ。一般の人達も招待状があれば入ることができて、討魔学園がどういったことをしているのかとか、どんな施設があるのかとか……そういったものを見学することができる。もちろん見学の他にも各学年、各クラスの出し物を楽しむことも可能だ。多分一般人は討魔学園の施設よりも出し物の方を楽しみに来ている。それか討魔学園の学食。学園祭の時だけ、一般人も学園の学食を食べることができるのだ。
ちなみに、討魔学園の卒業生の方にも招待状が届いているので、プロとして活躍している戦士の人達がいたりする。
「えーと、あそこでイカ焼き食ってる人はプロだな。流派までは知らんけど、魔法の腕がいいって万莱君が言ってた」
「へぇ……あ、あの人雑誌で見たことある……」
「ああ、辰巻さんみたく兼業してるプロだな。料理雑誌を読んでたらよく見るよな」
俺と大耀さんしかいない学園の屋上で学園祭の光景を眺めていると、原作には登場しなかったけど、間違いなく実力がある人がちらほら見受けられる。メインが主人公含めた学生ってこともあってプロの戦士と会う機会が限られていたが、百鬼夜行前線常連のプロは結構いる。というか学生のくせに前線にいる俺や大耀さんみたいなのがイレギュラーなだけだ。前線に立っていると顔を覚えてもらえるので、卒業後とか有利だぞ。
「ところで巡君」
「なんだ?」
「さっきから弄ってるその楽器、何?」
「俺の新武器」
留骸の素材ともう一つ、倉庫番になっていた素材を使ってパリピイケメンボーイズが作り上げた俺の新武器に興味があったのか、大耀さんが問いかけてきた。いい目の付け所だ。
「銘は
留骸の荒々しい腕と牙を彷彿とさせるどでかい大鉈と、木目のような模様がある金属の輝きを放つエレキギターが融合したような外見の新武器、鉄花荒轟。俺が今まで使っていた喰い裂き丸よりもさらに大きくなっており、もはや鉈ではなく大曲刀とか、大曲剣の類にカテゴライズしてもいいくらいだが、俺が使ってもぶっ壊れなかったし、視界もモノクロにならなかったのでこれは刀剣ではない。馬鹿みたいにデカくなった剣鉈に、楽器が合体した世にも珍しい楽器鉈である。
「武器とか霊薬とかの説明になるとテンション高くなるよね、君。というか音?」
「そう、音! このギターをかき鳴らすことで発生する音には攻撃判定が発生する! 攻撃に音を乗せて叩くことも可能!!」
『ああ、琵琶法師達や弁財天、サラスヴァティと同じものですね』
「? 弁財天とサラスヴァティって同じじゃないんですか?」
『ええ。大元は一緒なのですが……こう、音楽性の違いで双子になったというか……』
意外! それは音楽性の違いによる分離!! 確か弁財天はゆったりとしたお淑やかさを感じる音楽が好みで、サラスヴァティはロックみたいに感情爆発させたような激しい音楽が好みで……その好み二つが相反した結果双子となったのが我らが豊穣の女神弁財天様とサラスヴァティ様である。この世界の七福神とインドの神様は大体そういう関係性だったりする。それか関係なかったけどくっついちゃった感じのやつ。それか三位一体的な感じで交代制。シヴァ様が大黒天様をやったり、大黒天様がマハーカーラ様をやったりと、色々ややこしいことになっている。ちなみに戦うことができるシヴァ様、大黒天様、マハーカーラ様はご本神。馬鹿みたいに強い。でもちゃんと手加減してくれるのでテスカトリポカ様よりはマシ。
「というかどうやって使うの?」
「んー、まぁ、こんな感じに」
ギャリギャリと音を奏でながら刃を振り回す。気分はライブでギターを振り回すパフォーマンスをしている人達。にしても戦舞の動きで振り回せる辺り、あの舞って本当に戦闘するための舞なんだなって心底思う。
「こんな感じだな。多分もうちょい慣らせば、疑似的な斬撃飛ばしもできると思う」
「……それは、武器の効果で?」
「まだ師匠みたく自由に斬撃飛ばせないけどな」
禍津日様やゲリュオン曰く、勝利した過去の英雄達や、ゲリュオンとクリュサオルの力を使いまくった結果、彼らの記憶が俺の体に馴染み始めたために、アムリタを用いたステータスの成長ではなく、技術的な方面での成長曲線がおかしなことになっているそうだ。それもあってバフを積んだ状態限定ではあるものの、師匠のように斬撃を飛ばすことができるようになった。なお、師匠は相手の移動先に斬撃を
「俺の話はいいんだよ。大耀さん、そろそろ時間じゃね?」
「あ、本当だ。私も不参加にすれば良かったなぁ」
「まぁ、付き合いもあるから参加しとくのが吉だろ」
俺? 俺は別に付き合いとかどうでもいいから。あれこれ片付いたら隠居して、誰にも会わないつもりだからどうでもいいんだ。そもそも学生時代の知り合いなんて卒業した後は数人と交流があれば御の字レベルだと思ってるから。
「じゃあ巡君、またあとでね」
「ん、楽しんで────ああ?」
「…………これは」
いつでも索敵スキルを全部起動している俺と同じように────というわけではないが、主人公補正なのか、宇迦様の加護を持っているせいなのか、とにかく怪魔の気配に結構敏感な大耀さんも気付いたようだ。この討魔学園の中に怪魔の気配が紛れ込んでいる。俺の索敵スキルにも引っ掛かっているが、反応が普通の怪魔じゃない。気配とかを人間に近付けて巧く隠しているが、10……いや、もっと反応がある。しかもそのいくつかは酒吞童子クラスか、それ以上の……
百鬼夜行はまだだったはずだが……見落としたイベントフラグがあるか、それとも俺というイレギュラーによるイベントの前倒し、それか■■■■の策略によるものか。だが、そういう策略ならさっさと仕掛ければいいのに、そういう感じでもない。
「大耀さん、一応何が起きてもいいように準備しといてくれ。五家の人達と……パリピイケメンボーイズ、万莱君とか、実力者にも警戒するようにって」
「巡君は?」
「向こうの狙いが全く分からんから偵察。知ってる反応もあるし……何のつもりかくらいは聞いておかないとな」
学園祭のイベントは恋人、またはそういう関係になるまでもう少しってキャラの好感度を増やすことができるイベントであって、怪魔が現れたなんてことはなかったはずだ。章ボスを担当する怪魔だってダンジョンでエンカウントするやつだし、RTA的には休憩ポイントになっていた学園祭に怪魔……原作知識なんて怪魔の情報ぐらいしか使えないものだとは思っていたが、もう色々嫌になってくるぜ。
「まさか一人で行くつもり?」
「反応が出た途端にさりげなく動いたプロが何人かいる。接触しないところを見るに、向こうの出方を伺ってるとこだろ」
ただ、どう動くのかがさっぱり分からないから動けずにいると見た。重錨さん達の反応もあるし、何かあった時に動けるようにはしている。分からない状態で動いた場合、事態がどう転がるか分かったものじゃないからな。
「学園の防衛機構が反応してないから今のところ何かするって感じではなさそうだし、気が変わる前に接触しておきたい」
「……分かった。でも、無茶だけはしないでよ」
「いや、それはしない。無茶するのは死に戻りできるタイミングだけだから」
一般人に気付かれることがないようにスキルや魔法を駆使して屋上から飛び降り、デカい反応が固まっている場所までスルスルと地を這う蛇のように人波を縫って歩く。人に気付かれず、ぶつかることなく進む技はまだ走りながらは使えない。少しだけもどかしさを感じつつも、最短距離を歩いて反応のある場所に向かった俺の目に映ったのは────
「クソみたいな構成してんな」
「開口一番がそれ?」
「訂正する。カスみたいな構成してんじゃねぇ。ぶち殺すぞ」
「相も変わらず怖いもの知らず、ですね」
それはもう吐き気を催す邪悪並みにクソみたいでカスみたいな構成の連中の姿だった。
今風の服を完璧に着こなしてやがる怪魔のお姫様二人と、さりげなくこちらに圧を飛ばしている護衛の実力派クワガタムシや寡黙な蜘蛛系美女含めた幹部級。そして気を抜くと気配や姿を掴むのを忘れそうになるイケオジと、某愛したいから愛した角んちゅの角が消えたらこんな見た目なんだろうなって姿に着流しを着た偉丈夫。ボスラッシュオールスターズかな? クソがよ。
「善い善い。いつでも得物を抜けるよう構え────」
俺がスキルを使って背後に放った劇毒を塗りたくった短剣を、刃に触れることなく全て掴み取った偉丈夫は満足そうに頷いて言葉を紡ぐ。
「すでに放っているとはな。背骨の隙間に突き刺さるよう計算された背後投擲、見事なものよな」
敵には何をしてもいい。古事記にもそう書かれている。そして怪魔相手にアンブッシュは何度も放っていい。忍者も極道もそう言っている。全部防がれてしまったが、言わせてほしい。
「キッショ。なんで不意討ち全部止めてんだよ」
「ほっほっほ、いやはや見事な暗殺術よ。影を刃と化す技……華やかさとはかけ離れた確実な殺しの技よな」
敵の影を刃に変えて攻撃する闇属性スキル、『影からの裏切り』。正々堂々を好むキャラの前で使うと好感度がちょっとだけ減少するため、好感度調整技としても使われていたスキルを短剣投擲と同時に発動したが、防がれてしまった。なんで反応してんだよ。
「百鬼夜行も始まってないのに現世に来てんじゃねぇよ怪魔共がよぉ」
「若い者は知らぬかもしれないが、こうして現世に来る怪魔は少なくない。一つ学びを得るといい」
んなことは知ってるわ。俺の攻撃を全て防いだ偉丈夫────捻赫行者みたいに、人間社会に紛れ込んで馴染んでいるやつは少なくない。のらりくらりと気配を消そうとしてくるイケオジことぬらりひょんとか、いい例だ。ダンジョンに出てきたり、現世に現れたりするのはそういう理由がある。そんでもって、そういうやつらは条件を満たすと人間の味方として最終決戦で協力してくれたりするのだ。さらに言えば、この世界ではどうだか知らないが捻赫行者は討魔学園にあれこれ物資を入荷してくれる配達員の仕事をしたりしているため、こいつをどのタイミングで倒すかでショップの品揃えが変化する。まぁ、若干変化する程度なので消えてもさして支障はないんだけどな。
「さて、挨拶も終わったところで要件だが……まぁ、観光だ」
「敵の本拠地に来る観光があってたまるか」
「それ、あなたが言うことかしら。毎日のようにダンジョンに通って素材を集めているようだけれど」
「あれはマラソンであって観光ではない……」
マラソンを観光と一緒にすんじゃねぇ殺すぞ。多分あの角生えた状態で暴れたら一匹くらいは殺せるだろ。……殺せるよな? 暫定ラスボスの力っぽい何かで殺せないならもう終わりだよこのボス怪魔共。
「事実、私達は物見遊山で来ています。……そうではなさそうな者もいましたが、それは斬りました」
そう言って八束爬戯が取り出したのは、深緑のアムリタ結晶。……あれ、このアムリタ結晶まさか……
「薬漬けにした人間を傀儡にする
ああ、蜈蚣姫とか八束爬戯が現世に行くなら確実に勝てると踏んであれこれ計画を口にして斬られたってところか。下種野郎にはとことん厳しいからな、ある程度格が高い怪魔達って。■■■■が酒吞童子とかから嫌われてた理由もそこにありそうだ。
「……ところで、御仁。お名前をお伺いしても?」
「あ? 前ゲリュオンが言ったはずだが」
「本人からの名乗りではありませんでしたので」
なんだその駄々。これを断った場合何が起こるのか分からないので名乗るしかねぇ……名乗った結果名前を呪われたら俺はもうぶっ殺す方向にシフトするぞ。一般人が近くにいようが絶対に殺す方向にシフトするぞ俺は。
「模歩巡」
「模歩巡……なるほど。よい名前です」
「そりゃどうも」
「では模歩巡、こちらのアムリタ結晶をお譲りする代わりに、ここを案内していただけませんか?」
「………………………………………………こっちが手を出さない限り絶対に人間に危害を加えないのであれば」
一部のプロ以外にこいつらが気付かれていない時点で、戦うつもりはないのだろうが、念には念を。こっちが手を出さない限り何かしでかすことは……ない、はず。
「ええ、その程度であれば。……武装解除はよろしいのですか?」
「んなもんしてもてめぇらは身体能力が武器だろ」
学園祭という名の地獄が始まる予感というか、確信があるんだけど俺は呪われてんのか? おいこっちの様子を見てくれてるプロの皆様、フォロー頼むぞ? マジで頼むからな? 俺が死んだら次相手するの多分プロの皆さんだからな!?