恋愛要素ありの死にゲーに転生して鉈を振り回す転生者   作:エヴォルヴ

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初代薔薇苑当主
「怪魔との戦いだけではなく、病魔に侵される者達が多くいるんだ。人を守る、怪魔を殺す、戦士を治す……全てやるにはどうすれば良いのか、考えたんだ。考えた結果がこの大結界。これで治癒を届けると同時に、怪魔を斬り捨てることができる」
「おい朱雀、余計な気遣いはいらないんだよ……いいから寄越せ、お前の全部」

朱雀→鳳凰
「貴様は馬鹿か? おい聞いてるのか貴様!? 無理矢理俺の本来の姿を引きずり出すなどどれだけ負担がかかると思って……おい!! 死ぬぞ!!?」


大技のからくり

 第一試合が終わったことで少しだけ気が抜けた俺は、プロの医療チームに「なんでこいつあんな無理矢理な再生で綺麗に繋げてるんだ」みたいな目を向けられたことにちょっと遺憾の気持ちを抱きつつ、選手の控室で天井を眺めていた。次の試合は…………一年生の試合がまだ終わってないみたいで、次の試合まで時間があるようだ。辰巻さん頑張れ。最近双剣だけではなく体術方面にも手を伸ばしているらしいが、行きつく先はやはり初代か? だが、別の武器にも手を出していると聞く。

 

 辰巻さんも含めて、ゲームキャラクターの到達点や、初代の極致とは違った、また別の到達点へと至るのか否か……三野先輩もそうだが、積み重ねた研鑽の時間を一度瓦解させて、新しい道に進もうとするところは凄いと言わざるを得ない。

 

「魅せてくれたな、模歩巡」

 

「お……っと!?」

 

 俺が到達点について考えていると、音もなく現れた背高で褐色肌のイケメン。髪は銀、瞳は雷雲のような黒と霹靂のような(あお)。頬にはサンスクリット語、服は……インドっぽい感じにスーツが合体しているシンプルで威厳とお洒落さを感じさせる。

 彼とは初めましてではあるが、討魔プレイヤーとしては初めましてではない存在。光属性と水属性、若干の風属性の複合属性であり、依頼で勝利すれば加護を与えてくれるインド神話、その神々を纏め上げる帝王(シャクラ)

 

「わざわざいらっしゃるとは思いませんでした……インドラ神」

 

「相応の働きをした人間を労わずして何が神の王か。自ら赴いて労ってこその神よ」

 

 カッコいいんだけど、片手に缶ビール(発泡酒)、片手にスパムおにぎりという構成のせいでちょっとシュール。というか手提げ袋に入れてるのは学園祭で売ってるジャンクフードの数々か? あ、匂いからして食堂のホットサンドもあるなこれ。

 

「普通使者とかを向かわせるんじゃないんです? わざわざ赴いてあれこれするのは……その、格を安く見られるのでは?」

 

「たわけ。貴様も神の端くれならば覚えておけ。その程度で安く見られる格など捨て置いて構わん」

 

 え、俺のこと現人神って気付いて────ああ、そういえば天照大御神様含めて神様は神様のコミュニティがあるんだったか。そのコミュニティで俺のことを話していてもおかしくはない。

 

「自ら赴き労うこと、礼を尽くしたもてなしや施しに頭を下げること……それを見てその者の格を低く見る者の評価など、有象無象、塵芥に過ぎん」

 

「なるほど……」

 

 一理どころか百理ある。俺が頷くと、インドラ様は乾季を消し去る慈雨のような笑みを浮かべて言う。

 

「覚えておくがいい、荒覇岐。確固たる格とは偉業を為すだけでは得られん。信用と信頼……それらの積み重ねが、貴様の傍にいる者の信が、貴様に『真なる格』を与えるのだ」

 

「カリスマ? というやつですかね」

 

「それは誰でも持っている。その力を開花させることなく一生を終える者も多くいるがな」

 

 え、カリスマってこう……レアスキル的な感じで誰かが稀に持っているような素質じゃないのか。……思い返してみると、過去の英雄達は大なり小なり惹き付けられる何かを持っていた。英雄になる人達というのはそういうカリスマ性を持っているのか、と思ったけれど……インドラ様が言うことが本当なら、どんな人であれカリスマを開花させてどの方面かはさておいて英雄となれる────らしい。

 

「まぁ、説法はここまでにしてだ」

 

「はい」

 

 あの、缶ビール一気飲みした後に角ハイボールの800mlをがぶ飲みするのは止めた方がいいのではなかろうか。

 

「一割程度とはいえ我が神雷を再現した手腕、見事であった」

 

「ありがとうございます」

 

「して、我が神雷の再現。あれはどのようにして成された?」

 

「インドラ様ならお気付きでは?」

 

「ああ。だが、再現してみせた貴様の口から答えを聞くべきだろう」

 

 この神、俺の回答を酒の肴にするつもりだな? こっちに放り投げてきた角ハイボール800mlを禍津日様が受け取った時点でなんとなく察してはいたが、案外愉快な神様が多いよなぁ、討魔の世界って。

 

「じゃあ僭越ながら解説をさせていただきます」

 

 と言っても、そこまで難しいことはしてないんだ。発動難易度は馬鹿高いけど、場を整えてしまえば誰でも────誰でもは言い過ぎか。翡翠先輩くらいの光属性使いや、おとぎ話で魔法を作れる万莱君みたいな人達なら俺よりも高い出力を叩き出せるだろう。あとは数に物を言わせればワンチャンあるか。

 

「とりあえずあの投擲物の材料ですが、ちゃんとしたところで洗礼を受けた銀や鉄です。それを俺が一番信頼してる鍛冶師三人に預けて作ってもらいました」

 

「ああ。毒に漬け込んではいたが、見事なものだった。時代が時代であれば献上品として用いられてもおかしくはあるまい」

 

「はい。それくらいのものに、純度の高いアムリタ結晶をはめ込んで、インドラ様の雷や金剛を意味するサンスクリット語を刻み込みました」

 

 供物を用意して、何も求めることのない純粋な祈りを込めながらサンスクリット語を一つ一つ自分で刻んだ品々だ。それだけであれだけの出力になることはないが、ここで俺はジョブの占い師がやっているような呪術的な儀式を加えた。呪術と言ってもそこまで御大層なことはしていないし、儀式の大半は禍津日様のところで使える魔改造によるものだけれど。

 

「それだけか?」

 

「いえ、投擲物の全部に『一度使ったら破損する代わりに威力を上昇させる』という改造を施しました」

 

「ふむ。なるほどな。……だが、それでは投擲した時点で破損するはずだが?」

 

「これが面白いところでしてね。何かに縛る、あるいは接続して改造を施した投擲物を使った場合、破損するのは接続していた何かから離れた瞬間になるんです」

 

 これは検証していたら気付いたことだ。投擲したものが壊れたり壊れなかったりしたので、それの原因が何なのかを調べたところ、原因が判明。悪さができるということで活用させてもらったわけである。

 

「俺の武器と投擲物の結び目となっていたのは、アムリタ結晶と、とある金属を使った弦。これらは強力な磁石みたいにくっ付いていて、簡単には離れない」

 

 その仕様を利用して投擲物を投げまくり、弦と投擲物によって帝釈天の印と蓮華の模様を作って陣を形成。暮奈さんの居合や回避がとんでもなく正確だったお蔭でできたことだ。マジで正確無比の居合と回避だったなぁ……ローズ先輩もあのくらいできたら最強のヒーラーなんだけどなぁ。

 

「確かに面白い。それで? 投擲物や弦は理解した。次は?」

 

「場所ですね。会場が大衆の目に触れる場所であった────祭典であったこと。これが再現に繋がりました」

 

 多くの人が見ている、という状況だったからこそ、偽典・神雷(ヴァジュラ)が成功したと言ってもいい。このインスピレーションを得たのは、伊勢参りに行った時のお宿で行われたあの修行があったからこそだ。

 

「大衆の目に触れて、しかも神々や神獣なども見ている戦い。これを学園祭としてではなく、神々に捧げる祭典として利用しました」

 

「つまり、神々に祈りを捧げる祭壇で行われる儀式に仕立てたということか」

 

「ええ。しかもインドラ様は雷────つまりは恵みの水や豊穣の神として見てもいい。恵みを求め、豊穣を願うのは祭りの常でしょう?」

 

 そこに暮奈さんの攻撃を躱すための動きで舞が成立した。やっててよかった戦舞。でも逢魔が時から丑三つ時まで踊るのはもうやりたくないです。

 ……俺のトラウマは置いておいて。舞いながらの詠唱が神に捧げる舞踏と祝詞として成立。インドラ様に祈りを捧げる祭、その祭壇で巫女────俺は女じゃないけど────が舞い踊り、祝詞を紡ぐ。最後に帝釈天の印と共に投擲物に光属性のエンチャントを叩き込むことで、アムリタ結晶が反応。起爆することであの技があそこまでの威力となったわけだ。……その雷を受けて真っ黒焦げになりながらも俺の右腕を肩からバッサリ両断してみせた暮奈さんはまさに天晴れ。

 

「でも、もう一度やれと言われても多分できないと思います。あの大技、負担が大きすぎる」

 

「だろうな。一割程度とはいえ、神の一撃だ。あの娘────薔薇苑暮奈の妖刀による右腕の切断がなければ、貴様の右腕は炭化して使い物にならなくなっただろう。代償として、一生な」

 

「マジか。暮奈さんってば俺の恩人じゃん────って妖刀?」

 

「なんだ、気付いていなかったのか。あの雷を裂きながら貴様の腕を切り落としたあの刀、妖刀と化していたぞ」

 

 ええ……いいなぁ、暮奈さん。武器が死ぬことを選ぶんじゃなくて妖刀へと進化したのかよ。しかも一割程度とはいえ、神様の雷を再現したものを切り裂く力を持った妖刀なんて弱いはずがない。

 

「あの娘が目覚めたのならば、褒美をやらねばな。俺の神雷を切り裂いたのだ。偉業として讃えねばなるまい」

 

 本当にカッコいいぜ、暮奈さん。確固たる誉れを感じる。誉れポイント100点を差し上げたいところだ。

 

「さて……答え合わせも済んだところで褒美の時間だ」

 

「待ってました」

 

「これをくれてやる」

 

 バチンッ!! とインドラ様が指を鳴らした瞬間。俺の目の水分が全て蒸発して水蒸気爆発を起こしたのかと思うような痛みが迸った。

 

「オアアアギャアアアアアア!!!??」

 

『へぇ、呪いか。巡、喜んどけ。インドラの呪いを貰ったやつなんて早々いねぇぜ』

 

「ああ! 世に混沌のあらんことを!!」

 

『ダメだな、禍津日神よ。痛みで錯乱している』

 

 ぐおおおおおおおお……!! 禍津日様も疱瘡神様も呪いを刻む時に手加減してくれていたんだなと思うくらいには凄まじい痛みと苦痛……!! 俺の眼球から雷が突き刺さって体を突き抜けていくような電流の流れ……!! これが狂い火……!? これが全てを焼き溶かす黄色い火……! 全てを一つに纏めて混沌の時代へと導く狂いの炎……!! ああ! (バッドエンドを呼び寄せる)世に混沌のあらんことを!! (俺の友達が生きる)世に平穏あらんことを!!

 あ、でもこれ雷か。火じゃないから全てを焼き溶かすのは無理だな。……チッ、闇堕ちエンドに至った時の最終手段として欲しかったんだけどな。まぁ、なんにせよだ。俺が抱えている呪いはこれで三つ!! やれることがまた増えた! 夢が広がるぜ!!




妖刀雷切
薔薇苑暮奈が幼い頃から使い続けてきた刀が進化したもの。
雷を切り裂く強度としなやかさ、雷と同等の速度が抜刀時に付与される。今はまだ追い付けないが、結界術を応用した結界抜刀術で使えるようになれば無類の強さを誇るだろう。
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