恋愛要素ありの死にゲーに転生して鉈を振り回す転生者 作:エヴォルヴ
「そうだ そうだ」と言っています。
一年生の第一試合、その勝者は辰巻さんだった。とはいえ楽勝とはいかず、相性もあったが課題が残る戦いとなったとのこと。やはり弱点属性の敵と戦う時の手段として別の属性も育てておくのは必須項目だよなぁ。あと、情け容赦のない確殺技や小賢しくて卑しくも厭らしい小手先の技とかな。茶菓子同好会のメンバーを見習いなさい。皆金的使うから。さっき行われた大耀さんの試合と虎成さんの試合で金的してたから。ちなみに三年生は明日やるらしい。参加者少ないんだから全部まとめてやっちゃえばいいのに。
誉れある戦の最初のステップとして手っ取り早いのは硫酸。なぁに、顔にぶっかけようとも治療してくれるプロがいるんだ。使わない手はないだろう。一応、この闘技場にも死に戻りができる結界が張られている。誰が張ってるのかは知らんが……多分、この場に来ている神様とかがちょちょいとやってくれたのだろう。パッと見るだけでもインドラ様、テスカトリポカ様などの海外の神様の他に、神気を抑え込んではいるが、いかにも武神ですという佇まいのイケメンやイケオジ、老師……人間とは思えない程に息を吞むような美女、美少女などなど……間違いなく神様だなぁという方々がお見えになられている。とはいえ、百鬼夜行と同じく制限付きの死に戻りだから、禍津日様のところでやっていた死に戻り前提の無限技磨き編はできない。
無限技磨き編と名付けられたそれは、俺の師匠が考案したものであり、茶菓子同好会のメンバーを含めて参加したメンバー全員が思い出しただけで青くなる修行であった。俺? いつも通りちょっとキツイ程度だな、といった感じ。修行で仮死状態になって、蘇生されるまでの時間を潰すために三途の川で奪衣婆とか懸衣翁とかカロン様とか、死者を死後の世界に案内する役目の連中とお茶をしばくのはいつものことだったし。内容としては以下の通りだ。
目隠しと耳栓をした師匠か、目隠しをした俺と一対一で戦います。何でもありです。師匠と俺は貴方達を確実に殺すために全力を尽くしますので、皆さんも何が何でも殺すつもりで戦いましょう。殺しの技を学ぶことで、人体の構造と機能を理解してスキルや魔法による回復の効率を上げることや、どこを攻撃すれば効率的に殺せるかを学びましょう。大丈夫、死ぬ時の痛みは一瞬だよ。相手が誰であっても舐めプせずに確実に殺しに行くのが刹那無心流だからね。お前を殺す。ごく稀に鎌倉武士の皆様に混ざって現れるようになった刹那無心流の源流────羅刹流の兄弟子姉弟子達もそうだそうだと言っています。あなた方とも戦うのもありですね。師匠か、俺か、羅刹流の兄弟子か、羅刹流の姉弟子か。選んでください。……よろしい、ぶっ殺してやるよ。
いやはや、この修行のお蔭で皆の技に磨きがかかり、俺は感覚を鋭くすることができた。でも、感覚のどれかを潰されただけで怯むのは良くないと思う。あと、俺が死戦臨界状態になってから戦うのは不利もいいとこだから逃げ回りなさい? 逃がさないけど。酒吞童子級の怪魔相手にそんなガバ見せたら死よ? それにしても羅刹流の皆様はお強いことお強いこと……金的含めた対人戦禁止技全て効かないの笑っちゃったよね。
『さぁ続いて始まりますのは第四試合!! 東コーナー、今年のダークホース! 東京校2年模歩巡!!』
俺達の修行は置いておいて。始まるのは第四試合……俺がまた戦わなくてはならない。いや、別にいいんだけどさ、よく知らない学園のお偉いさんからちょっと小言を言われたからちょっとだけ面倒くさいと思ってるのが俺なんだよね。お偉いさん達から加護使えとか言われたんだよな……主人公を中途半端に神輿にして、自分達の手柄のように喧伝してるらしいてめぇらに指図される謂れはないと心の底から思うワケ。疱瘡神の呪いを使って呪ってやろうかと思ったが、俺は大人な対応ができる男……精神年齢は前世含めたら30歳に到達するのだから大人だ。加護は使わないが全力で戦いはしましょう。
『対する西コーナーから登場するのは京都校2年、
あらやだ知らない方。誰かしら……って、なんか殺気立ってて笑っちゃうんすよね。誰だろうな……俺の知り合いじゃないとは思うんだけど。
「この時を待っていたぞ刹那無心流……!!」
「? もしかして師匠にボコされました?」
それはご愁傷様。弱いやつは死に方も負け方も選べないからね、仕方ないね。可哀そうに……可哀想にねぇ……
「とぼけるなよ貴様!! 私の婚約者を奪ったこと、未だ忘れてないぞ……!!」
「あの、真面目に質問するんですけど、誰のこと言ってます?」
「虎成琥珀! あれは私の婚約者だった! それを貴様が……!!」
「うーん…………ごめん、横恋慕した記憶もなければ虎成さんとそういう関係になったわけでもないんだ」
だからね? あんたがフラれた理由があるとすれば品性と弱さが原因ではなかろうか、とは言わなかった。俺は空気が読める男。空気読み100点満点を叩き出して、ご友人から「「そんな馬鹿な」」という表情をさせたことがある人間。ゲームで虎成さんのプレゼントに武器の手入れ用品渡したら好感度ちょっと下がって、首を傾げた記憶がある男。でも俺の友達を「あれ」扱いしたのは許さないので煽ります……こういうやつ相手に煽るのは義務でしょ。
「菰成……漢字を見るに菰ってあれでしょ? 虎だったのに何か失態犯して文字取られたんでしょ? 俺が思うに……虎成さんに決闘で負けたとか?」
「…………ッッ!!」
「怒らないでくださいね? 努力した人を僻んだりして自分の弱さから目を背けるとか馬鹿みたいじゃないですか」
おっと、人語を失うんじゃないかと思うくらい顔真っ赤で草。ちなみに、この対抗戦で挑発して相手の冷静さを削り取ることはルール上ありとされている。戦いはいかに冷静に物事を見るかだぜ。冷静さを欠いた瞬間待っているのはガバ。大いなる6V個体ガバルドンがいつでもこちらを見ていることを忘れてはならない。
さて、この世界の五家、その苗字は分家も同じ名字なわけだが……名を剥奪されることが稀によくある。お家潰しでは済まされない大失態とかをやらかすと名字を別のものに変えられて、一生後ろ指差されて生活することになる。地下労働? 次はないぞ的なのを越えた人が行くところだ。
「見る限り甲斐性も無ければ紳士的な感じもない。人を物扱いして見下すことしかせず、責任転嫁とか、心が弱いフレンズなんだね! かわいそ……」
『クケケケッ、酷い言われようだな。事実だから仕方ないけど』
「語録の普段使いはルールで禁止スよね」
『
「やっぱ怖いっスね、戦場って……」
あの守護獣、人間の文化謳歌してるタイプだな? 大砲みたいな竹筒から出たり入ったりしているということは……あれは管狐か? 神獣、守護獣、精霊の姿も様々……だが、虎、狐、狸は人に化けて人間社会に紛れ込んでいることがある。白虎なんて食い逃げしたら初代に見つかってジャーマンスープレックス喰らった悲しき過去があるからな……だからあいつ、元々神獣じゃないのでちょっと庶民的な思考があるのだ。戦いの果てに神獣になっただけだし。
「管狐、貴様誰の味方だ!?」
『人間の味方であっててめぇの味方ではねぇなぁ』
クケケケッ、と笑う管狐────なるほど、虎の威を借るフォックスハウンド。しかも人間の味方ではあるが、加護を与えている個人の味方ではないタイプの守護獣か。
「まあいい……! 貴様を倒すことで、あれの言葉が間違いだったことを証明してやる……!!」
「あれって呼び方止めません? 虎成さんは虎成琥珀っていう名前があるんだから。人を物扱いするとか今時流行りませんよ」
もう俺の言葉は届いていないのか、歯軋りするところを隠しもせずに武器を構える菰成さん。時代錯誤の時代遅れ、そして虎成の分家の倫理観ゴミ虫相手であれば、俺も思う存分色々と試運転に興じることができるというもの。
『うーん、あれは口上とかできそうな雰囲気じゃないですねぇ』
『ええ。あそこまで激昂させる手腕も見事と言わざるを得ません。地雷を踏み抜きながらタップダンスするのが得意な彼らしい』
地雷があったら体力調整を兼ねて踏むだろ? 何を当たり前のことを。試運転も兼ねて第一試合では鉄花荒轟を使ったが、今回は別の武器の試運転をさせてもらおう。せっかく色んなものを試せる場を公式に提供されたんだから、試さなければ無作法だろう。
「ゥオアアアアアアアアアアアッッ!!」
銅鑼の音が鳴り響くと同時に、菰成さんが飛び掛かってきた。うーん、単調。暮奈さんが上澄みなのか? ……でも、大耀さんと虎成さんの試合を見る限り、京都校の人達は間違いなく強者なんだけど。万莱君、千磁君に負けてたし。惜しかった……と言うのは万莱君への侮辱になるからバッサリと言うが、万莱君は何もできなかった。詠唱しようとすると高速で飛び込んでくる攻撃の数々に、馬鹿でかい杖を振り回しても身軽な相手には中々当たらない。ならば、と無詠唱の連射が利く魔法に切り替えたのは見事だったが、選んだ魔法が悪かった。
一本だたらは火属性の神様であり、生半可な水属性魔法は彼女の炎────隻眼一本足の美女の姿だった────で蒸発させられてしまう。賭けになってしまうが、足技が使えない距離まで近付いて自爆覚悟の魔法を撃てばワンチャンあったかもしれない。とはいえ、万莱君は落ち込むどころかノックアウトから復帰後すぐに千磁君に会いに行き、彼の強さを称賛していたし、さらに研鑽を積むと息巻いていたのでメンタル的には悪くないコンディションのようだった。
だからこそ、俺はとても悲しい……(ポロロン)。俺の相手が力任せに槍を振り回し、ステータスに振り回されている人間であるということに。武器はいいものを使っているし、曲がりなりにも守護獣の加護を貰えているのだし、虎成さんに負けても卑屈にならず、研鑽を重ねる方向に思考を回せていたのなら……と思わざるを得ない。ちょっとナルシストっぽい外見だけれども、筋肉はしっかりあるし、虎成さんと同じパワータイプ。ちゃんと鍛えていたら絶対に強いのに。
「退屈だよ……菰成さん」
「な、にぃ……!?」
『模歩巡君、第一試合とはまた違った武器を取り出した!!』
『確かあれは……
『資料によると、元々使っていた妖蜂砕花という武器をよりコンパクトに改良した武器のようですね! 作成者によると、変形機構は背中のバックパックみたいなのに変更しました、だそうです。……変形機構!! ロマンですね!!』
『彼の持っている武器を作っている彼らは創意工夫が素晴らしい。時折よく分からないものも作ってはいますがね』
妖蜂砕花改め、妖蜂連花は取り付ける部位を増やすことで本当にコンパクトになった。肘まであることは変わりないが、重厚な見た目から軽鎧のガントレットみたいな外見に。指先が尖っているから、貫き手で刺突武器にもなるし、手首から肘、脛から膝まで伸びる装甲にはよく研磨されて切れ味を与えた三本のブレードがノコギリの刃のように取り付けられている。ロマンを感じる変形機構はウェポンラックにも使えて、アムリタ結晶や俺の霊気(精神力とも言う)を燃料にしてスラスターとしても使えるロマン仕様。軽く触った感じはACのクイックブーストに近い挙動ができた。あれおかしい……こういうことができるようになるのって討魔3からのはず……まぁ、便利だからいいや、よろしくなぁ!!
「セイヤッ!」
「そんな大振り────ッ!?」
「フンッ!!」
「グゥ!?」
フハハハッ! 怯えろ! 竦めェ!! ジャストパリィを出すこともできぬまま、死んでゆけ!!
『クソ技止めてくださいね?』
『パリィしましょう』
『あの速度は無理ですよ!?』
うーむ、QB併用格ゲーコンボというのは間違いなくロマンがあるが……戦士の体であり、色んな耐性をカンストか、カンスト近くまで積んでいたから耐えられたが、戦士なりたてのやつが使ったら殺人的な加速で気絶するか、四肢が捥げて某ゴーストファイターみたいに爆散する未来が見える。まさかこんなところで、重錨さん達から貰った水中呼吸ができるようになる頭装備が活躍することになるとは思わなんだ。見た目がちょっと潜水士みたいなので改造はさせてもらったが。
ちなみにロマンの塊だったパイルバンカーだが、ちょっと変わった。いや、ほとんどの仕様は妖蜂砕花と変わらないし、パイルバンカーに変化することは変わりないんだが……パイルバンカー以外の姿にも変形するようになったのだ。パリピイケメンボーイズ達と検証した結果、参照されるのはウェポンラックに取り付けていた武器のどれかランダム。ま、この場で使うことはなさそうだけどなぁ。
「舐めるなよ!!」
「おお?」
振り回していた槍を急停止させて、スナップを利かせることで槍を回転させた突き。しかも槍がしなることで螺旋を描いている────ということはこれ、あれか。師匠が「間違いなく強者よ」って言ってた槍使いのお爺さんが使ってる……
「尾張貫流槍術……だっけ? でも管なくね?」
『俺が何か忘れたかよぉ?』
「あ、なるほどって危な!?」
凄まじい威力を孕んだ螺旋の槍が俺の肩を掠める。激昂している割には攻撃が正確無比……虎成さんは筋力高めの上質戦士だが、菰成さんは技量高めの上質戦士────ん? 技? 激昂しているように見えるのに、技??
「もしかして菰成さん、最初から演技してる?」
「────────────クケッ、バレた?」
にんまりと笑うホスト系イケメンフェイス。でも笑い方が管狐と同じというね。見たまえ、観客も実況解説も唖然としてるぜ。虎成さんは……あ、平然としてるしさてはこの人の本性知ってたな? 京都校の人達は……千磁君くらいしか知らなかったのか、全員あんぐりと口を開けて驚いている。
「俺ァ結婚とかどうでもいいんだよなぁ。家とかどうでもいいし、潰れても別にいいしよ。俺は俺で稼いでるし」
「さっきまでの会話とは違って不良チックなのに理知的な気配があって笑うんだよね」
「クケケケッ、名演技だっただろぉ?」
「うん、マジで騙された。って危ねぇ!?」
油断も隙もあったもんじゃねぇなこの人!? 槍を地面に突き刺してるのは見えていたが、管狐の加護スキルか何かで俺の脚をぶち抜こうとしてきやがった!? しかもいつの間にか槍が十文字槍だし、左手にメリケンサック持ってるし!? 管槍使えねぇ────って、そうだった、さっきも管狐を使って管槍にしていた! 回転は管狐が、制御は片手でできるくらいの技量か!! この人、確実に上澄み中の上澄みだ!!
「虎成流槍術って表と裏があるんだけどよぉ。俺ァ、表よりも裏の方が適性があんだよ。闇討ち万歳な暗殺術チックな裏流派がな」
「どうしよう、むっちゃ興味ある」
五家は正々堂々を謳う家系だと思っていたが、まさか裏流派なんてものが存在しているとは。門外不出な流派なのだろうが、裏流派、私、気になります!! 忍び込んで信仰無き物漁りよろしいか。怪異よりも怪異しているバック君に色々詰め込む信仰無き物漁りよろしいか。
「虎成家に婿入りしたらどうだァ? 俺が手取り足取り教えてやるぜ?琥珀ちゃんにも気に入られてるみたいだしよ?」
「うーん、魅力的だけど……俺はまだ色々向き合わないといかんことが多くてね……」
「へえ、若いのに苦労してんのな」
「同い年でしょ」
「ああ、俺は起業に躍起になってたら留年してたからお前より二つくらい年上なんだな、これが」
「えっ」
「しかも二年連続で留年しちまってよぉ。それと併せて
留年、留年かぁ……二年連続で留年と、管轄下での不祥事祭りで苗字変更か。……俺より苦労してないか、この人。でも起業して稼いでるっぽいんだよなこの人。
「ちなみに不祥事って何だったのか聞いても?」
「ん? ああ、減るもんじゃねぇしな。ほら、ニュース見てねぇか? 繁華街の違法風俗及び違法薬物所持一斉検挙のニュース」
「………………ああ、あれか!」
「それそれ。あの繫華街って俺ら菰成家の管轄でよぉ。下の連中が誰に唆されたのか、色々やってたんだよ」
ニュースや新聞で大きく取り上げられていたやつだな。そこまで言われて思い出した。この人、その不祥事の謝罪会見に出席して大人よりもしっかり応答してたわ。そんな中で起業なんて大変だっただろうに……稼いでるってことは儲かってんだろうな。
「まぁ、楽しいおしゃべりはこれくらいにしとこうや。やろうぜ」
マジの戦いってやつをよ。
にんまりと笑いながらそう言った彼は、メリケンサックと十文字槍を独特の姿勢で構える。全く、猛者ばっかりで楽しくなってくるなぁ!!
「刹那無心流、模歩巡」
「虎成流裏槍術、菰成羽津」
いざ尋常に────
「「オラァッ!!」」
引いたら負けの殴り合いが始まった。
菰成羽津
身長:176cm
体重:68kg
加護:管狐(守護獣)
武器:メリケンサック・十文字槍
流派:虎成流裏槍術
ホスト系イケメンフェイスのイケメンボーイ。狐に化かされた、なんて言葉があるように、名演技で人を騙す。気狂いとの相性は良好と言ってもいい。
一応琥珀の婚約者だったが、祝いだ何だと言って同じ部屋に放り込まれた琥珀に対して「俺結婚願望とかないんだよね。あと、琥珀ちゃん可愛いけどタイプじゃねぇんだわァ」と言い放ち、白虎と管狐に立ち合いをしてもらうことで婚約破棄。こいつデリカシーを奈落に捨てている。
家はそれを知らず、公にするために少し前の決闘で八百長敗北。琥珀は眉をしかめたものの、大役者な宇津に言いくるめられた。コハクチャンカオトメノヒミツヲツカレテユカヲwatch。カワイイ、カワイイネ。
起業に躍起になっていたせいで二年連続で留年。さらにそこに不祥事祭りが重なって苗字を変えられる。本人曰く、「踏んだり蹴ったりで草」だそう。起業後はほとんど家には帰っておらず、学園か、寮か、会社で過ごしている。ちなみに会社は少々小さな建物だが、結構稼いで成長している戦士が利用する市場で卸売業を営む企業。