恋愛要素ありの死にゲーに転生して鉈を振り回す転生者 作:エヴォルヴ
多分討魔決戦大嶽丸はその10までで締めれると思います(プロットガン見)
凱蟲百足城、その最上階の蜈蚣姫が住まう大部屋にて、集まってはいけないレベルの怪魔が勢ぞろいしていた。
「それで? 果心居士はあの天使────アズラエルだったかしら? あれが殺るの?」
千年以上、百を超える蟲怪魔を統べている百鬼の姫、蝦夷之蜈蚣姫が大部屋に集まった怪魔達────その中で最も人間社会と繋がりを持っている捻赫行者とぬらりひょんに対して問いかける。
「そういう手筈となったようだな。あの少年の中にあった火種を使い、合戦の合図とするようだ」
「病院で突然死の気配が濃くなったゆえ少々肝を冷やしたがね」
伊達に人間社会に来てはフラフラしているわけではない。捻赫行者は病院に医薬品などを運ぶ業者として、ぬらりひょんはいつも通り気配を環境に溶け込むようにして病院に侵入。巡とその一行、そして山の執行者の会話を盗み聞いた。
「あずらえる……みとら、と名乗る者は知っていますが、あずらえるとは?」
「あ? ……あー、あいつ、名前が何度も変わるからな。俺が見た時はエノクとか名乗ってたしな。あとはエリニュスとか」
「今は山の執行者と名乗っている存在────アズラエル、ミトラ、メタトロン、エノク……多くの名を持つ巡業者だ」
「なるほど、同じ者だったのですね」
少し前まで封印という名の爆睡をかましていた八束爬戯の疑問を解消したのは、いつも通り酒を呑んでいる酒吞童子と、見るからに下手に扱うと不味そうな外見をしている本を捲っているインテリヤクザっぽい見た目の怪魔。
「八束爬戯、貴様の世間知らずさは相変わらずだな」
「箱入り、というものでしたので」
「箱入り娘にしてはフットワークが軽すぎる節はあるがな。貴様の眷族が何度私に泣きついてきたか……」
「おや、私は眷族を持った記憶はありませんが」
「貴様くらいの怪魔にもなれば、屈服させた怪魔が勝手に眷族になるだろうが……!」
首をかしげる八束爬戯を見て頭痛に苛まれるような顔の顰め方をするインテリヤクザ怪魔────討魔シリーズDLCボスの一角、悪路王。見た目通り遠距離戦を得意とする怪魔であり、初代三野家当主に超遠距離からハイドラ並みの威力がある投擲物の雨を叩き込まれて封印された怪魔である。ちなみにこのインテリヤクザと初代三野家当主の遠距離合戦の余波で周囲の地形が相当に変わってしまった。巡の予想通りではあるが、やはり封印から解放されていた。
現在は人間社会の変化や、戦士のレベルがどの程度なのかを図っているため大きく動くつもりはない。ちなみに一番得意な魔法は地形を変化させる妨害系の魔法。誉れがある。誉れポイント加点。なお、討魔3で登場した悪路を突破してくるキャタピラのせいで楽しい玩具と化してしまった。人間社会の発展に震える日がやってきたぞ、ほら笑え。ずっと悲しいままだった先輩は初代の戦術をインストールしたことで覚醒したので、割りを喰うのは多分君だ。次は君だって巨悪もヒーローも言ってたぞ。
「へぇ、昔に比べて色々美味しいものが増えたね。羊羹も質が上がってる」
「また領地を増やすのも悪くないねぇ! ケーキなんて異国の菓子も今となっては簡単に手に入るみたいじゃないか!」
「当代の辰巻はどんな子かと思ってたけど……青龍は相変わらず面食いみたいね」
八束爬戯と悪路王がコントを披露している中、現代の様子や当代の五家について話を膨らませているのはこれまたDLC産のボス三体。
羊羹を貪っているのは一見もやしっ子に見えるがそんなことはない身長脅威の190cm、ケモ度大体40%の獣人タイプ怪魔、
スイーツ雑誌を片手にホールケーキを豪快に食べているのは、見た目のベースがオオサンショウウオをモデルにしているせいなのか肌がヌメっとしている女性型の怪魔、
最後にファッション雑誌を読んで現代のファッションやコスメの情報を集めているのが初代辰巻当主が封印した怪魔で、討魔プレイヤーからの人気が高いオカマ怪魔。モデルとなったのはこれまた中国の大妖怪窮奇。風を刃として操るためなのか、日本に来た時に鎌鼬と混同されたせいで鎌鼬みたいな力を手に入れてしまった来歴持ちであり、珍しく風VS風の台風合戦となった。ちなみに、こいつと戦った初代辰巻家当主は平将門公と殴り合いが成立するフィジカルモンスターであった。そして我らがレッツゴー陰陽師、安倍晴明と蘆屋道満もエンチャントしたグレートクラブで殴りかかりに来るフィジカルモンスターである。現世に残された記録は基本的に行儀の良い振りをしているところだけ。華やかな記録を残すことで、歴史を学んで対策をしようとする小賢しい怪魔を相手にするための常套戦術である。これのせいで人間社会が戦士に華やかさを求めるようになってしまったところがあることに関してはツッコんではいけない。力こそが王の故よ。
そんなボス級怪魔達が集まっている中、不意に蜈蚣姫が外へと目を向けた。凱蟲百足城は人間が住んでいる現世と同じように昼夜の概念が存在している。そんな城の時間帯は夜。まだまだ真っ暗な夜の中、違和感があるのだ。
「……………………?」
いる。何かが、遠くから急速に接近している。それも、一人二人ではなく、複数────大群で。
「進めェッッ!! 新撰組ィイイイイッ!!!」
下手な大砲の轟音よりも凄まじい叫び声が響き渡るのと同時に、
「お日柄ァ!!」
空気の壁を貫いて、黒騎士が紫色の雷を纏ったバイク(戦車)で突っ込んできた。これが話題のエアライダーですか。
「うわ学園祭以上にクソみたいな組み合わせで吐き気すら覚える」
開口一番に発せられる罵声。甲冑の下から声を発しているせいか少々くぐもってはいるが、間違いなく凱蟲百足城の常連の人間の声だ。
「ドーモ、蜈蚣姫=サン。新撰組特別突撃隊(構成員一名)模歩巡です」
「……天守に直接来るなんて、少々荒っぽいわね。どういうつもり?」
「招待状届けに来た」
「へぇ、お祭りでもやるのかしら?」
「大嶽丸殺す戦いに参加させてやるから手ェ貸せ」
珍しく気が立っているらしい巡の言葉に、この場に集まった怪魔達がピクリと反応する。その中で楽しそうにしているのは、ある程度気狂いのことを理解している酒吞童子と八束爬戯、そして蜈蚣姫。
「随分と上から目線じゃないか。まるでアタシらがあんたら人間の────なんだいその呪いの量は!? 生き急ぎすぎじゃあないかい!?」
初対面の雲呑煙羅の敵愾心が消し飛ぶくらいに、現在の巡の姿は悍ましいものとなっていた。黒騎士の姿から人間の姿に戻った巡の顔や首、肌が露出している部分から見える夥しい量の刻印。その全てが呪いだ。
「君、どれだけの呪いを背負ってるんだい?」
「えーと、禍津日様、疱瘡神様……インドラ様に、病み上がり一発目でテスカトリポカ様に……あとは五家の神獣からも呪い貰ったから俺が裏五家ってことでよろしい?」
ゲーム本編には存在しなかったが、神や神獣、その全てが呪いを付与することができる。禍津日や疱瘡神などのデメリット有りの加護のように、神や神獣の呪いは基本的にデメリットが存在する代わりに強力なものが多い。これだけの呪いを刻まれてしまえば、普通ならば人間じゃないよく分からない何かに変貌してもおかしくはないのだが、巡は大嶽丸を復活させるための器として十二分に機能する天然物の突然変異個体であり、イレギュラーにイレギュラーが重なった呪いの器。光が生まれれば闇が生まれるように、人の世を照らす極光が誕生したことで生まれた巡という存在がいなければ果心居士が大嶽丸復活などという馬鹿げた計画を実行することもなかった。
ご存じの通り、果心居士は基本的に己が気持ちよくなりたいがために行動しているため、ほとんどライブ感覚で色々やらかしている。そしてゲーム本編では、大嶽丸を復活させた直後に斬られて瀕死となり、苦肉の策で大嶽丸を封印。自分の治療を施して封印した大嶽丸にあれこれ調整をしてなどと、色々やっていた。他にも色々とやらかしているのだが、そこは今回省略。
「まぁ、冗談はともかくとして。手が足りねぇ。常世の穢れ対策の結界は広範囲に広げられねえし、常世の穢れが漏れ出してるせいで怪魔が結界破りかねないくらい活性化するしでマンパワー不足だ」
「ふぅん……それで? 協力することで私達が得られる利は?」
「んー……まぁ、そこはトップと交渉してくれ。総理は融通利く人だし。何なら交渉の席に俺が捻じ込まれるまであるけど」
学生に何をやらせるつもりだと言いたい話ではあるが、この話が通じる怪魔と一番交流がある人間は巡であるため、適材適所だったりする。
「俺達がもし断ったらどうする?」
「まぁ、とりあえず邪魔されないように殺すしかねぇな」
どこまでもフラットな声音で言う巡から漂う柑橘類やベリー系やハーブの香りで蜈蚣姫は察する。こいつ、霊薬を中毒ギリギリまで飲んで交渉決裂時の戦闘まで視野に入れていると。先程聞えた砲声にも似た叫び声と共に城攻めの準備をしている何者かは、この少年が連れてきた存在であることも察していた。
「そもそもお前らは断らねぇだろ」
「なぜそう思う?」
「だって、お前らにとって邪魔だろ? 大嶽丸も、果心居士も」
星の光すら飲み込むような黒い瞳が、この場にいる怪魔達に向けられる。
お前達のことを知っているぞと言わんばかりの、全てを見透かしているような、己の内側を暴かれるような視線。天照や月詠、伊邪那岐と伊邪那美などの高位の神が時折見せるような、何もかもを見通しているような目だ。
「よく知らねぇけど、怪魔ってのは人間に恐怖されたりしないといけないんだろ? お前らクラスにもなればまた別の芯みたいなのがあるんだろうが……」
巡の言う通り、怪魔は人間の負の感情を糧とする生き物だ。ゆえに人間がいなければ、人間に負の感情を向けてもらえなければ、種として存続が難しい難儀な存在。蜈蚣姫を含めた一部は負の感情よりも、牙を剥いてくる存在から向けられる闘争心などが糧となってはいるが、ほとんどの怪魔は負の感情がなければ存続できないのだ。だからこそ定期的に百鬼夜行によって負の感情や、戦うことができない人間の血肉を貪るためにダンジョンから出てくるのだ。
なお、ゲリュオンとクリュサオルのように騎士神、戦神として信仰を受けることで種として存在を維持している例外もいる。なお、信仰を得られなくなったとしても神ではなく怪魔に戻るだけなので、滅ぶことはない。非常に遺憾ではあるが、因習村に根を張っていたぬっぺふほふもその類である。復活したところで素材マラソンの対象になるだけなので気にしなくても良い。
「今の日本は怪魔怖いではなく、大嶽丸怖いで埋め尽くされてるって聞くしな。怪魔的にはあんまりよろしくないんじゃないか?」
「まるで怪魔博士のようだな、少年」
「こちとらてめぇら相手に周回してるんだ。周回対象の生態は調べるだろ、普通」
(((周回……?)))
オソラクサル目ガイケンカラシテヒト科イデンシテキニハヒト属の模歩巡という、サル目ヒト科ヒト属の生き物と酷似しているだけの生き物の生態を知らない怪魔達が首をかしげる中、巡は言う。
「俺達人間は今一番の脅威である大嶽丸を殺したい。ついでにその元凶の果心居士も殺したい。そしてお前ら怪魔は負の感情を独占しかけている大嶽丸を殺したい。利害は一致してんじゃないか?」
利害の一致は確かにある。怪魔と人間が呉越同舟した記録は消えてはいるが、あることはあった。今は海に封じられている、動くだけで大地震や大津波を引き起こす超巨大怪魔を封印する時や、西洋の天使達が封印している空、海、地の怪物の封印を締め直す時など、本当の非常事態でのことではあるが。
とはいえ、大嶽丸が邪魔なことに関しては否定できない。蜈蚣姫や酒吞童子、八束爬戯などはこの話を受けてもいい────そう考えた矢先。雲呑煙羅が口を開いた。
「協力してやってもいいが、一つ条件がある」
「条件」
「今の
「……………………………………ああ、白虎ね。あいつそんな名前になるのか……」
鳳凰みたいな簡単な名前にしろよとぶつくさ言いつつ、巡は少し考える素振りをした後に口を開く。
「虎成さんが了承しないなら無理だけどな」
「言ったね? 約束を破ったらどうなるか分かってるんだろうね?」
「んじゃ、了承したってことでこの書類に判子くれるか?」
「血判でもいいのかい?」
「その場合名前も書いてくれ」
なお、例え琥珀が了承したとしても、交渉役となるであろう巡か鵐頼が了承しない限り琥珀との戦闘が許可されることはない。やるとしても雲吞煙羅の得意とする広いフィールドが存在するダンジョンではなく、閉所が多いダンジョンで行うことになるだろう。それに薄々気付いている悪路王や、蜈蚣姫、捻赫行者、酒吞童子などの城主や職を持つ怪魔などは何も言わない。契約内容がちゃんと書かれている書類をしっかりと見ることをせずにサインをした雲吞煙羅が悪いのだ。
「────模歩巡、てめぇ、面構えが違うな」
「あ? 誰が貧乏くさいって?」
「んなこたぁ言ってねぇよ。……捨てたか?」
その言葉だけで、酒吞童子が何を言いたいのかを察する。
「いや、捨てねぇよ。捨てられねぇよ。あれこれと考えてないだけ。考えるのは後にしてくれって頼まれたからな」
「へぇ、そうかい。ま、いいんじゃねぇか? 難しいことは考えても仕方ねぇ。今のてめえがやりてぇことをやりゃあいいんだよ」
難しいことを考えるのはその後でいい────酒吞童子が酒を呑みながら言った言葉に頷く巡。なお、通常運転に見えてまだまだメンタル的には不安定なので、落ち着くまでは一人にさせるなと病院側から通達されているため、巡が行動する時は誰かがついてきている。今回は気合で勝手にやってきた新撰組と、そのバフを受けたことで人間をバイクごとぶん投げる筋力と技を一時的に獲得した三野治水と菰成家の医師がついてきている。茶菓子同好会メンバー達は討魔決戦に参加するプロ達の装備更新のための素材集めや、活性化してダンジョンから出て来ようとしている怪魔の殲滅作戦に参加中。巡も怪魔達へ祭りの招待状を叩き付けたら参加する予定だ。こいつ、本当に病み上がりどころか通院中の患者なのだろうか。
そしてこれは余談になるが、巡はあれこれと思考を回さないために、大量の霊薬を原液でがぶ飲みすることで精神をカバーしていた。霊薬の多用は止めておけと明日夢に言っておきながら、言った本人は霊薬中毒者となっている。そろそろドクターストップが入りそうなものだが、ドクターストップが入っても霊薬を服用するのがオソラクサル目ガイケンカラシテヒト科イデンシテキニハヒト属の特徴である。
「じゃ、招待状は送ったからそろそろ始めようじゃねぇか恒例のマラソン大会を」
「ああ、やっぱりそのつもりだったのね」
「この城に来る理由は茶の湯かマラソン大会かのどっちかだ。そして今回はマラソンだ」
今までマラソンに連れ回されていなかった三野治水は知るだろう。模歩巡というマラソンキチのマラソンキチによるマラソンキチのための素材マラソンの恐ろしきを。一度感染してしまえば朱き腐敗よりも厄介なマラソン中毒の恐怖を。なお、治水も何だかんだで順応できる素質があるので問題ないとも言える。
まぁ、何はともあれ常世対策のピースゲットである。
なお、黒焔羅刹と白澪羅刹にも声をかけている。
オソラクサル目ガイケンカラシテヒト科イデンシテキニハヒト属
サル目ヒト科ヒト属に酷似した遺伝子と外見を持つ生き物。他にもイッケンスルトサル目ミテクレハテキニヒト科クブクリンヒト属、ミタカンジサル目トオメカラミルトヒト科ナンダカヨクワカランガヒト属がいる。