恋愛要素ありの死にゲーに転生して鉈を振り回す転生者   作:エヴォルヴ

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そろそろどうしてクロスオーバーのタグを付けているのか分からなくなってきた今日この頃。まぁ、語録を使うためなんですけどね。


討魔決戦大嶽丸 その六

 年末、大晦日。

 日本の未来が懸かった戦いが始まる少し前、大嶽丸が作り出した逢魔百鬼城から少し離れたところで、様子を見ている何者かがいた。

 

「んー……何だかよく分からないけど……何がダメだったんだろうなぁ」

 

 そう、ご存じ色々と薄っぺらいクソ野郎こと果心居士である。大嶽丸が復活したところまでは問題なかったが、その後は果心居士の計画通りには進まなかった。本来であれば復活した大嶽丸を己の手中に収めるか、己の好みに染め上げるまでが計画だったのだが、悪逆非道の限りを尽くすように仕込んでおいた術式を大嶽丸は簡単に振り払うどころか、巡の町を滅ぼしてから己の領域を生み出してそこに籠城してしまった。

 

「やっぱりあの町の連中を裏で唆し過ぎたかな? でもなぁ、優しくされて絶望に沈まなければ大嶽丸の魂を埋め込んだ甲斐がなかったし……」

 

 自分がどこでどんな間違いをしてしまったからこうなったのかを考察しつつ、果心居士は城の前に展開された人間達の陣と、城から出てくる怪魔達の睨み合いを眺める。どこをどう引っ掻き回したら楽しいだろうかとか、まだ自分のリカバリーが利くかどうかなどを考えていたその時。

 

「我が炎に慈悲は無く、我が内にある火種は汝を捉えた。巡業の幕は上がり、役者は集った」

 

「…………誰かな、君は」

 

「快楽を通じ悟りへ至る────肉欲とは悪ではなく。だが、快楽を貪り尽くすのみのそれに、悟りはなく」

 

 それは、人ではなかった。

 

「生と死を愚弄する蒙昧な道化(ジェスター)に、舞台はなく。あるのはただ……積み上げた業の清算」

 

 それは、虫のような、西洋人形のような球体関節を持った者であった。

 蒼白い炎を揺らめかせているそれは、一見すれば貧相にも見える無骨な────それでいて、夥しい血と脂が染み込んだ、バスタードソードと呼ばれる一メートル30センチ程度の剣を片手に果心居士の背後に立っていた。

 

「誰かって聞いてるんだけどね」

 

 いつの間にか背後にいたらしい、()()()()を見て、果心居士は言う。

 

「見たところ大きな鬼火だけど……そうじゃないだろう? 鬼火は言葉を発さない」

 

「貴様が積み上げてきた業、その清算を叫ぶ慟哭が。貴様が踏み躙ってきた火の残滓のみが、この場を取り仕切る────」

 

 蒼白い炎が、更に強く燃え上がる。

 

「我らに神は在らず。我らは神魔に刃を向ける者」

 

 カラン、と鐘が鳴る。

 

「我らは人に非ず。我らは人を見定める者」

 

 カラン、と鐘が鳴る。

 

「我らに生と死は在らず。ゆえに我らに過去(いぜん)はなく、未来(いつか)もなく……現在(いま)のみに在り続ける巡業者」

 

 鐘が鳴る。鐘の音と共に、オルガンの音色が鳴り響く。

 本来ならば、この場に訪れることなく果心居士は逃げるべきだった。また雲隠れして周囲を引っ掻き回すことに注力するべきだった。蒼白い炎が現れる前に姿を眩ませるべきだった。だが、できなかった。

 

「懺悔の時は既に過ぎ……積み上げられた業のみがここにある。舞台なき道化に価値などなし」

 

 その未来(いつか)はもう、断ち切られている。

 

「────────────────────────はぇ?」

 

 果心居士の視界が二つに分かれた。斬られたと理解するまでにかかった時間は、およそ5秒。絶命することなく斬られたことに気付いたのは、その者の剣技と、果心居士自身がもはや人間ではなかったから。

 果心居士の体は人間のものではなく、そのほとんどが怪魔のものと入れ替わっている。もうとっくの昔に機能を停止している心臓にはアムリタ結晶が埋め込まれており、流れる血も赤ではなく紫色。こんなものがまともな生命に流れるものか。怪魔であっても、血の色は赤いのだというのに。

 

「ッ!!」

 

 斬られたことを自覚した果心居士の行動は早かった。蒼白い炎が何なのかは分からないが、見えているのだから捕まえられる────そう言わんばかりに、斬られた断面から口と触手の融合体のようなものを放出。夥しい触手の口から相手を拘束するための魔法を発動させる詠唱が紡がれる。

 

「「ふぅ……危ないなぁ。死んだらどうするんだい?」」

 

 ゴキブリどころかプラナリアのような生命力によって分裂しながら再生しつつ、蒼白い炎を様々な魔法で拘束した果心居士は分裂した自分同士でまた融合して一つの個体へと戻ってみせた。生き汚いとはまさにこのことである。

 

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 逢魔百鬼城の前に集まる人間達や、それを迎え撃つために城から溢れ出る怪魔を眺めて、果心居士が言う。

 

「やっぱりあの町の連中を裏で唆し過ぎたかな? でもなぁ────?」

 

 違和感に気付く。気付いたところでもう遅い。

 

「言ったはずだ。我らには現在(いま)のみがあると」

 

「…………誰かな、君は」

 

「輪廻より弾かれた道化が辿るのは、永劫。繰り返される輪廻の死」

 

 蒼白い炎が燃えている。気が狂いそうになるような、不吉なパイプオルガンの音色が聞える。

 

「心から愛したものも、大切だと思ったものも、存在しない憐れな道化に我が姿は見えず。資格(チケット)を持たぬ者に舞台を見る権利はない」

 

 その言葉と共に、果心居士の心臓に刃が突き立てられる。神速の一撃────というわけではなかった。だが、動けなかった。

 

 そもそも、果心居士の目には山の執行者の姿が見えていない。見えていたのは山の執行者がここまで連れてきた火。巡から預かった火種がかつて果心居士に踏み躙られた者、果心居士に奪われた者の無念や憎悪の残滓を呼び寄せ、山の執行者はそれらを薪としてかき集めていた。

 

 燃え盛る炎は果心居士の辿る未来(いつか)を焼き尽くす。辿るはずだった未来を失ったことで果心居士は生きることも、完全に死ぬことも許されなくなった。

 

「貴様が愚弄し、踏み躙ってきた者達の数────その倍以上の時間を、清算に使うといい」

 

 蒼白い炎によって焼き尽くされてもなお、死ぬことができない憐れな道化は未来永劫────自分の快楽のために踏み躙ってきた者達が生きるはずだった時間、その倍以上の時間死に続ける。何度も、何度も死ぬのだろう。

 

 これが果心居士という存在の終わり。誰に気付かれるでもなく、誰に看取られるでもなく、彼はその生涯に幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 * * *

 

 

 

 

 果心居士が死に続けている最中。逢魔百鬼城へと集まった戦士達の陣営は、総司令兼日本最後の防壁である男、鵐頼の号令を待っていた。その中にはもちろん大嶽丸と因縁バリバリな男、巡もおり、彼もまた鵐頼の号令を────大人しく待つわけもなく。

 

「とりあえず三野先輩、俺が持ってきた竹槍全部渡しときますね」

 

「ああ。……しかし、これは竹槍なのか?」

 

「竹槍ですよ。あそこで弾薬詰めてるパリピイケメンボーイズが作った炭でできてますけど」

 

 例のごとく霊薬をがぶ飲みしている巡は、黒光りしていて打ち鳴らすと金属音すら聞こえてくる竹炭でできた竹槍を、遠距離手段を手に入れた小回りが利く重戦車こと三野治水に渡している。初っ端から絨毯爆撃しながら突撃するつもり満々である。

 

「城の外に出てきてるやつは雑魚なんで、この竹槍爆撃で散らせると思います。この竹槍、爆弾詰めてるんで」

 

「なるほどな。……とはいえ、五家として俺も前線に出るつもりではある。城への侵入もな」

 

「ええ、存じてます。とはいえ、侵入するには雑魚散らしは必須でしょ」

 

「そうだな。だが、大丈夫なのか? ここは、お前の町だろう」

 

「そっすねぇ……ま、終わってから考えますわ」

 

 だから、気にせずぶん投げてください。そう言って笑う巡から手渡された竹槍を受け取る治水は少し考える素振りを見せて、口を開く。

 

「模歩、俺はお前に敬意を表する」

 

「なんすかいきなり」

 

「ゆえに、お前の……一人の先輩として、お前の道を切り開こう」

 

 受け取った竹槍を霊体化させて仕舞った治水は、自身の得物である大剣【雹瀑玄武】を握る。その構えはまるで、騎士が王に何かを誓う時のような構えにも似ており……巡は思わず苦笑した。

 

「あんまし気負わんでください。ほら、辰巻さん見てくださいよ。殺意の波動が滲んでる」

 

「……何があったんだ、辰巻に」

 

「海外のファッションショーを泣く泣くキャンセルしたそうです」

 

「ああ……確かに前から楽しみにしていると話をしていたしな……哀れな」

 

 ずももももも……と漆黒の殺意を放つ辰巻玻璃を宥めているのは同じ辰巻家であろう人間と、五家の人間。具体的には琥珀や翡翠、暮奈などである。あとは最近玻璃にお洒落について教えてもらっている明日夢も、彼女を宥めている。

 

 ここに集まった戦士は本当に上澄みも上澄みが集まっているため、凄い緊張している人はほとんどいない。なお、ほとんどの戦士が大晦日や正月の予定を決めていたし、それらを泣く泣くキャンセルしているので、さっさと終わらせようという感じで士気は高め。ついでにいつもの百鬼夜行よりも殺意高め。いつもの百鬼夜行がラーメンの並盛なら、現在は野菜マシマシニンニク抜き、チャーシューアブラマシマシ麺硬めに餃子とチャーハン付き。負ける気がしない。

 

「さっさと終わらせて後始末とかもしたいんでね……まあ、やるんなら本気でやろうか! ってやつですよ、俺も」

 

「ああ。そうだな」

 

「というわけで……協力者達もさっさとしやがれ的な視線を飛ばしてきてるし……そろそろか?」

 

 巡が目を向けた方向には、ファンタジー現代にありがちなホログラムに映し出された鵐頼首相の姿があった。

 テレビや新聞などで見る姿以上にパンプアップしており、申し訳程度の鎧で身を包んだ行儀のいい振りしていそうな筋肉モリモリマッチョマンのイケメンが、この場に集まった戦士達を見据えている。

 

『討魔決戦、その最前線に来てくれた戦士の諸君。この日に至るまで、何度も言ってきたから今回はあれこれとは言わない』

 

『君達の背中には日本に住む全ての者達の明日がある! ……まぁ、いつもの百鬼夜行も同じだがね』

 

 クス、と誰かが笑う。張り詰めた戦意は消えてはいない。だが、必要以上に研ぎ澄まされた集中力が緩み、視界が広がって心に余裕ができた戦士が多くいる。

 

『だが、今回の戦いは少々違う。我々という未来(いま)が、価値あるものであると示す戦いだ!!』

 

『最前線にいない私が何を言っていると言わざるを得ないが、それでも言わせてもらおう』

 

 あまり解像度が高くないホログラムであっても分かるくらい、鵐頼の胸が空気によって膨らむ。

 

『これより始まるのは討魔決戦!!』

 

『敵は大嶽丸!! そしてそれに与する怪魔達!!』

 

『戦士よ、守りたいものが────君達にはあるのだろう!!』

 

 士気が、上がる。

 

『戦士よ、戦う理由が君達にはあるのだろう!!』

 

 それはまるで巡の目に見えている、蒼白い炎のように強く燃え盛っている。

 

『ならば、戦え!! 君達という未来(いま)は────間違いなく価値があるものだと示すために!!』

 

 戦士達の鬨の声が爆発する。城から現れ続けている怪魔達が怯んで一瞬動きが止まるほどの、戦意の暴流の中で、巡は一足先に前線へと走り出し────とある人物から渡されていた旗を立てた。この決戦のために、巡はその深奥へと至っている。

 

「────【人魔戴冠】」

 

 突き立てられたのは、赤い旗。丸に十文字の────島津の旗。

 

「────くはっ! よか戦に呼び出してくれたのぉ、巡!!」

 

 その旗に集うようにぞろぞろと現れるは、赤と黒の鎧に身を包んだ過去の武士(もののふ)。その時代、暴れ回っていた怪魔達だけではなく、味方のはずである人間からも「あいつら頭おかしいよ」と言われていた戦闘集団。

 

「しかも一番槍に(わい)らを呼ぶときた!!」

 

「よか!! しからば薩摩兵子らの戦いば見せちゃろ!!」

 

 犬歯剥き出しにした、刀やら野太刀やら槍やら鉄砲やら担いだ戦国時代の中でも中々ぶっ飛んだ集団────島津の戦士が、現代の戦場に出揃った。

 

「ここは日ノ本の最後の壁よ! 未来(こども)守る時に、逃げる理由なんぞ無か!!」

 

(わい)らは過去の功名餓鬼の集まり、死なんぞ黄泉路の魁、誉れの一つよ!!」

 

 溢れる怪魔を見て笑う薩摩兵子共は、飢えた狼のように敵陣へと迷わず突っ込んでいく。

 

「ええか巡!! 俺ら島津の戦いは────!!」

 

側面(よこ)に構わん!! 前に進む!!」

 

「死ぬ気で走ってついて来い!!」

 

 真っ先に怪魔の首を複数刎ね飛ばしたのは島津義弘。かつて鬼島津と怪魔よりも恐れられた────「悪い事すると鬼島津がやってくるよ」と子供のしつけにすら使われるほど恐れられた、島津家の中でも化け物染みた存在。現代の人間に花を持たせることを考えず、とにもかくにも一番槍を務めてしまうのはどうしてだろう。巡がそいつらの旗を立てて呼び出したのが悪い? それはそう。でも待ってほしい。巡が呼び出したのだから、この一番槍は現代人が務めたといっても過言ではないのではなかろうか。

 

 まぁ何にせよ────

 

「大嶽丸、てめぇの首寄越せやオラァアアアアアアアッッ!!!!」

 

 ちょっと大きい────オークみたいな怪魔の顔面を鉄花荒轟で叩き潰した巡が叫んで突撃かましたところで、討魔決戦大嶽丸、華々しく開戦である!!




一番槍:妖怪首寄越せ集団
二番槍:妖怪素材寄こせ
三番槍:竹槍絨毯爆撃玄武
四番槍:出遅れたけど一番槍共のせいで士気がとんでもないことになってる戦士
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