恋愛要素ありの死にゲーに転生して鉈を振り回す転生者   作:エヴォルヴ

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色々滅茶苦茶だが、こういうのはノリと勢いが大事なんだ。気にしないでくれ


討魔決戦大嶽丸 その八

 大嶽丸を一言で表すと、ギミックがあるがギミック解除をしなくても勝つことができるタイプの馬鹿みたいに強いラスボスである。まぁ、ドラゴンというのはそういうものだから当たり前なのだが、限度はあるが再生するし、切り替えモーションがあるけど全属性を使いこなすし、防御力が低い代わりに火力は馬鹿だし、まともに相手をするもんではない。

 

 じゃあ、どうやってそんな化物をぶち殺せという話になってくるのだが────本来であれば、我らが主人公明日夢の力が必要であった。豊穣の女神の加護を得ている彼女の攻撃が、太極図で表すと陽、邪悪を極光にて消し去る太陽である主人公の攻撃こそが、憂う龍こと大嶽丸にとって最も有効打になる攻撃なのだ。しかし、ここにいるのは太極図の陰にして暗黒、混沌という名の極光を以って目に映るもの全てを焼き溶かす黒。戦いとマラソンとミームの中でだけ存在を許されている存在。メカメカしくて刺々しい装甲に包まれて、大嶽丸と鍔迫り合いを成立させている化け物一匹。こいつの攻撃が有効打になるかならないかで言えば、なる。

 

 現在黒い追い風を纏って大嶽丸の初動にほぼ完璧に反応して打ち合いを成立させている巡が纏っているそれは、遥か昔、アムリタによる身体強化なども存在していなかった古代の戦士達がダンジョンから溢れ出てくる怪魔と戦うために作り出した古代の神秘。神、神獣、守護獣、精霊の加護、死に戻りなんてものが存在しなかった遥か昔、神の如き力を再現して怪魔を殺し尽くそうとした戦士達の遺物だ。

 

(む……骨に罅入ったな? リジェネでカバーできるレベルではあるけど)

 

 無論、その力に代償は付き物。神の如き力、百の怪魔を統べる怪魔に匹敵する力に体が耐えきれずに自壊してしまう。ゆえにこの装甲を纏っていた戦士は纏った時点で死が確定する。しかも誰かが使ったら他の人間が使えなくなるので、纏っていた人間が死んだ後に別の誰かが使うという流用もできない。さらには纏った人間は死ぬし、装甲も壊れてしまう。

 

 コストが高すぎるし、アムリタを用いたステータス強化や加護、スキルなどが台頭したことで装甲────人機(じんき)と呼ばれるそれの開発は止まった。討魔3でまた再登場することになるのだが、アムリタでステータスを強化できるようになった戦士はほとんどノーリスクで人機を使えるようになっているので安心してほしい。まぁ、巡が使っているそれがそうだとは言っていないのだが。

 

(素材か? 素材がダメだったのか? 流石にテスカトリポカ様の黒曜石ナイフ使ったのがまずかったか? でもこれが最適解だったし)

 

「考え事か」

 

「色々考えることがあるって言っただろうが!」

 

 大嶽丸が放つ、文字通り神速の斬撃が巡に襲い掛かる。その斬撃に対して巡は回避を選ぶことも、防御を選ぶこともせずそのまま前進。勇気の前ロリとか、そういうものではなく攻撃を喰らってもいいから前進すると言わんばかりの踏み込みに、流石の大嶽丸も疑問符を浮かべるが、回避や防御を選択しなかった理由を瞬時に理解する。

 

「異国の神の力か」

 

 切り裂かれるはずだった巡の体がまるで煙のように揺らいで、斬撃を通過したのだ。それだけではなく、放った斬撃が鏡に反射した光のように大嶽丸に飛んでいく。返された斬撃は即座に同じ威力の攻撃で防いだが、その後ろからやってきた巡の一撃は防ぎきれずに腕に傷が付いた。

 

「カスダメだけどダメージは通るな。再生されるけど」

 

 鉄花荒轟の弦を適宜鳴らすことで音を刀身に纏わせる。霊力を込めた音を纏わせることで、いわゆる高周波ブレードのようなものとなっている刃で斬りつければ、怪魔特効と竜特攻を備えている武器である鉄花荒轟は大嶽丸に手傷を与えることが可能である。

 

 さらに、人機プロトタイプの殺人的な身体強化と妖蜂連花の殺人的な加速を合わせることで大嶽丸の攻撃を掻い潜りながらの攻防、大嶽丸の攻撃の起点潰しを成功させている。さらに巡はゲームで記憶していた大嶽丸と、現在見ている大嶽丸、そして己が体に馴染ませた技についての認識、そのすり合わせを完了させていた。

 

(戦舞の動き、大嶽丸の攻撃とそっくりなんだよな。武器が違うけど)

 

「────猛渦(もうか)

 

「土ィ!!」

 

 激流、渦潮を纏った大嶽丸に対して巡が選択したのは、大嶽丸の属性エンチャントを土属性エンチャントアイテムを叩き付けることによって書き換えるという力業。何度も通用するようなものではない、小賢しい小手先の技ではあるが、大嶽丸の武器に付与された水属性が土属性となったことで大嶽丸と三明之剣が反発し合って属性纏いが解除される。

 

 ただし、それでも大嶽丸の攻撃は止まらない。流れる水のような流々とした剣技が巡に襲い掛かるが、巡はタイミングを見計らい────攻撃の最後に放たれる刺突を踏みつけた。

 

(この刃は諸刃だが────具足に傷はない……腕のいい職人はいつの時代もいるものだな)

 

 思い切り踏みつけられたことで、花畑になっている床に刀が突き刺さってしまう。引き抜くことは造作もないが、その隙を見逃してくれるほど、大嶽丸と対峙している巡はチョコラテではない。

 

「しゃあっ!!」

 

 放たれる加速を十分に乗せた右ストレート。顔面に直撃するが、大嶽丸は怯んだ様子はない。

 

(加速しきる前に頭突きで止められたなこれ! 武器と鎧越しなのに手の骨砕けたぞどうなってんだ!?)

 

『ボケっとすんな! 次来てんぞ!』

 

 刀での攻撃ではなく、拳が巡の眼前に迫っていた。しかも鋭い爪と逆立った鱗による一本の槍と化した貫手が巡の眉間目掛けて放たれ、間一髪でそれを回避。だが、大嶽丸の一撃は装甲を掠めていたようで、頭部の装甲の一部が砕けて消えた。

 

「マジかよ」

 

「……なるほど。煙と化すには時間を要するようだな」

 

「まぁ気付くよな」

 

 巡はテスカトリポカの呪いによって煙と化していたわけでも、鏡の反射を使えていたわけでもない。プロトタイプ仕様に使われたアイテムが、テスカトリポカから渡された黒曜石のナイフだったからだ。

 人機は使用したアイテムによって外見は変わらないものの、固有スキルのようなものを変化させる。巡が使用したのはテスカトリポカの黒曜石ナイフ。リキャストタイムは長いし、使用後の負担も大きいが、煙る鏡と呼ばれる南米の神、その力の一端を再現させることに成功させていた。

 

(まぁ、バレたからどうだって話だけどな)

 

(看破したところで、という話ではあるが)

 

 巡と大嶽丸、両者が似たようなことを考える。

 そもそも人機を突破されたところで、巡は人魔戴冠というゲーム環境にいつでも食らい付いてきた最高の力がある。大嶽丸も式神時代に巡よりも恐ろしい怪魔と戦って捻じ伏せた経歴がある。お互い勝率は五分五分────いや、大嶽丸が八の、巡が二くらいの勝率で現在の戦いは進んでいる。

 

(だが……この身体の倦怠感は毒……しかもこの感じは酒吞童子の酒毒か? 他にも呪いのようなものが混ざっているな……あの攻防の中で盛られたか。見事な手腕だ)

 

 自分が死んだとしても、大嶽丸を殺せるように毒を盛っていたらしい巡に心の中で称賛する大嶽丸。ならば毒が回り切る前に巡を殺せばどうにかなる────わけもない。酒吞童子の酒と、呪いの坩堝たる巡の血液、そして疱瘡神の呪いによる毒がブレンドされた毒だ。巡を倒したとしても、毒は大嶽丸を蝕むだろう。

 しかも崖っぷちどころか、奈落に落ちている状態まで追い込まれた逆境で輝く人間がいるのだと、大嶽丸は知っている。そういう人間がいるのだと、忌黄龍は知っている。目の前で殺意が溢れ返っているこの男は、そういうやつだと確信している。

 

(砕けた身体は治ったな。毒が効いてるのか、大嶽丸の動きが鈍い)

 

 対する巡は現在の大嶽丸について分析を油断なく行っていた。少しずつではあるが、大嶽丸に気付かれないように仕込んだ毒がジワジワと大嶽丸に蓄積されている。人機や人魔戴冠など、己の力全てをぶつけて倒せなかったとしても、スキルとして昇華されたことで文字通り星の爆発と錯覚するような威力を獲得した超新星と、呪毒によって大嶽丸は致命傷を負うことになるだろう。そこに明日夢や翡翠などの主力メンバーが追撃を叩き込めば勝利は確定したも同然。

 

(けどギミックというか、特殊勝利ができるイベント戦があるんだよなこいつ)

 

 大嶽丸を何度も何度も周回した巡は知っている。とある条件を満たした状態でのみ発生する大嶽丸のイベント戦があるということを。その条件はDLCを購入しているかどうかのみ。購入していればそのイベント戦が開催される。

 

 もちろんそれをさせないためのアイテムも存在しているので、いわゆるQTE系のイベント戦をやりたくないならそれを使えばいい。だが、巡はそのアイテムを持っていない。本来なら果心居士を撃破すると手に入る報酬の中にあったアイテムであり、主人公専用装備枠なのだから持っていないのも当然である。

 

(まぁ、どうにかする。長期戦だろうが短期戦だろうが不利は変わらねぇのはいつもの話だわさ)

 

(長期戦となれば毒が回る。短期戦であっても粘られてしまえばこちらがジリ貧……)

 

 互いに剣戟の応酬を続けながら思考を回し続ける。繰り返される打ち合いが花畑の花を散らしていく中で、巡と大嶽丸は目の前にいる怪物(にんげん)を殺すための算段を組み立てていく。

 

(手札の逐次投下は悪手。全部出し切って────)

 

(鈴鹿……いや、ヤマトに近い。そんな人間を相手に出し惜しみは悪手。ならば全てを使い────)

 

((確実に殺す))

 

 巡と大嶽丸、双方が纏う空気がぶつかり合う。赤を通り越して黒く染まった、対人戦、対怪魔戦のどちらでも誰も向けられたことのないほどの殺意が双方から放たれ、勝負を付けるために動き出す。

 

「猛渦」

 

「土ッ!!」

 

 激流を纏った大嶽丸に土属性のエンチャントアイテムを投げつける。物理属性のみとなった剣の濁流が巡を襲う。先程放ったものよりも、鋭く、激しい、夕立の後やってくる洪水のような剣技を巡は時に殴って逸らし、回避し、鉄花荒轟を盾にして防ぎ、最後の突きをジャンプ台にして大鉈を叩き付ける。

 だが、それが決定打にはならず、大嶽丸はその一撃を片腕で防いでいた。その腕には、一振りしかないはずなのに、二振りの三明之剣が握られている。

 

砕嵐(さいらん)

 

「──―火!」

 

 二振りの三明之剣から放たれる猛吹雪のような斬撃の嵐。右、左、上、下────様々な方向から叩き込まれる攻撃の数々は、掠めただけで巡が纏う人機の装甲を少しずつ、しかし確実に削っていた。

 

「な、めんなクソが! QTEは得意分野だっての!!」

 

 ジョブとして獲得している占い師の専用スキルである未来予知や、スキルとして獲得している見切りスキル、耐性スキル、攻撃スキル全て総動員して斬撃の嵐を掻い潜っていく。

 

剛岩(ごうがん)

 

「だぁああああ馬鹿がよぉ!!」

 

崩炎(ほうえん)────熔金(ようがね)

 

「知らねぇやつだけど掴みだなそれはさぁ!!?」

 

 溶け落ちた金属のように変化した三明之剣がまるで獣の顎のように開かれたのを目撃した巡が、瞬時に大嶽丸の肘を蹴り飛ばして掴み攻撃を回避。だが、まだ次がやってくる。

 

「淵天」

 

「それは分かるけどなんか違うよなぁ!?」

 

 光と闇が混ざり最強に見えると言わんばかりの光と闇を纏った一撃を、エンチャントアイテムで物理オンリーに。光属性が残ったが、巡の光属性耐性は翡翠の雷と、インドラの呪いによってカンストを限界突破している。人機の内側で呪いを疱瘡神からインドラへと変化させつつ、無数に迫ってくる極厚の飛ぶ斬撃と、大嶽丸本人の斬撃を迅雷千撃で叩き落してその勢いを乗せた妖蜂連花を変形。大斧の姿となった妖蜂連花が大嶽丸の胸に浅いが────しかしはっきりと出血する傷を与えてみせた。人機と妖蜂連花、両方の加速装置あってのことではあるが、人間の手で造られた神から与えられた素材で作ったわけでもない武器が、鋼鉄よりも硬い竜の鱗を突破してみせたのだ。

 

「────猛渦」

 

「連続発動してんじゃねぇ殺すぞてめぇ!?」

 

 意外!! それは大技の連続発動!! これはQTEイベントではなく、ムービーでのみ使われていた連続発動なので、初見以外はムービーをほとんどスキップしていた巡が覚えてなくても無理はない。巡はムービーを見返したくなったらギャラリーで観賞するタイプなのだ。

 

 さて、この連続技を主人公がどう対応したのかと言えば、加護スキルがショートして使えなくなるあの技の連続使用で対応していた。火には玄武、風には朱雀、土には青龍など───対応する属性の大技の応酬である。ちなみにこの大技大合戦を体験できる代わりに敵AIが賢くなってダンジョンに現れる怪魔がランダム化することで死ぬほど難しくなるMODを公式が配信しており、このMODを適用したRTAが認可されている。十数人いた走者も討魔公式もRTA公式も病気。前世の巡も一応走って、相応の記録を保持しているのでこいつも病気。

 

 じゃあどうしてその記憶がないかと言えば、死ぬほど難しくて死ぬほど再走を繰り返した結果、思い出しただけで某ダークなソウル3に登場する赤ん坊を抱えた元人間のドラゴンらしきやつみたいな発狂の仕方をしてしまうので記憶を閉じ込めているのである。前世も今世も精神に異常をきたしているのでやっぱりこいつは病気。

 

 まぁ、そんな病気な巡は置いておいて。何度も放たれる大技に同じやり方でどうにか凌ぎつつも反撃をしている中、大嶽丸の動きが止まる。

 

(あ、これ絶対やば────)

 

虚空(から)

 

 瞬間、世界が二つに分かれる。

 そう錯覚するほどの一撃。空間も、時間も何もかもをひっくるめて斬り捨てるかのような斬撃に飲み込まれた巡はというと。

 

「死ぬかと思った!?」

 

 リキャストが終わった煙化で何とか難を逃れていた。なお、大嶽丸の一撃は人機に届いており、人機はもう一度加速できるかできないかの瀬戸際までボロボロになっていた。

 

「……全てを切り伏せるつもりで振るったはずだが……」

 

(ああ、俺がベースになってるせいで助かった感じね……でも、これ次来たら耐えられない────けど多分これって)

 

「肉体は限界に近いが……お前を斬り捨てるまで何度でも放つとしよう」

 

「だよなぁ、そういう感じだよなぁ!! クソゲーもいいとこだぞてめぇ!!」

 

 攻略の糸口は残っているが、それでも理不尽な大技連打が再度始まる。理不尽極まりない攻撃の数々に対してギャーギャー騒いではいるものの、巡の心は存外に澄み渡っていた。前世の記憶、その一端を思い出して攻略方法を脳内にしっかりと焼き付けておけるくらいには、案外落ち着いている。戦闘中の方が頭がいいのではなかろうか。

 

(あの次元斬擬き中の大嶽丸、間違いなく防御力が消えてる。鱗が消えて肌が見えてた。……まぁ、鱗消えたところで肌の色は人間の色してねぇけど)

 

 大嶽丸最大の一撃は文字通り己の全てを賭けた一撃。ゆえに全身を覆う龍の鱗は消え去り、攻撃のみに力が向けられる。その一撃を防ぐことは不可能。回避も人機ほどのスペックが無ければ難しい。だが、その大技にこそ巡が大嶽丸に勝つ一番の勝ち筋が存在している。

 

(バフの効果時間も考えるとこれがラストチャンスって感じだし……やるしかねぇわな)

 

 再び押し寄せる大嶽丸の攻撃の数々を凌ぎながら、巡は自身が勝つための道筋を組み立てていく。災害のような暴力に晒されつつ、どうにか加速装置を起動できそうな人機、変形機構を起動したせいで少々性能が落ちている妖蜂連花、全く刃こぼれもしていないメイン火力の鉄花荒轟、そして自身に与えられた加護と呪い。

 

 それらを組み合わせ、大嶽丸を殺す算段を立てることに成功した巡は、三度目の大技連打への防御を止めて真正面から殴り合うことを選択した。

 

「何……!?」

 

 自棄になったわけでもない。自分が負けても仲間がいるから大丈夫だと思っているわけでもない。こいつが被弾を恐れることなく殴り合いを決行したのは、大嶽丸の大技に自分の最大限を合わせるためである。

 

「これが最後だ! 上げてけよ大嶽丸!! じゃねぇとてめぇの首が飛んでいくぞ!!」

 

 そう言いながら人機の加速装置以外が壊れてもいいと言わんばかりに攻撃し続ける巡。思わず目を見開いて動きが鈍った大嶽丸に非はないだろう。非があったとすれば、巡の狂気度を見誤ったことくらいだろうか。

 

 大嶽丸の攻撃が、巡の体を傷付ける。明らかな致命傷……だが、巡は倒れない。全身から大量の血が噴き出ているというのに、肉が裂けて骨が見えている部位もあるというのに、巡は斃れることなく大嶽丸を真正面から攻撃し続けている。

 

 巡の体から迸る夥しい死の気配は、【死戦臨界】の発動による三十秒間の不死状態付与が施された証拠。死なないだけの、発動したとしても死は確定しているスキル。だが、その三十秒という時間が、大嶽丸の命に一撃を届かせる一手となる。

 

(三回やったら発動しなきゃいけねぇんだよなぁ、虚空(それ)を……!!)

 

 前世の記憶の通り────ではないものの、今までの経験と前世の記憶によって行われた擦り合わせによって、初見ではあるが、大嶽丸の必殺技である【虚空(から)】の条件を看破することに巡は成功していた。

 

 猛渦から始まる、属性を纏った攻撃の数々。その全てが虚空へと至る一連の儀式のようなもの。舞のようになっていたのは、儀式的な側面があったから。本来であれば鈴鹿御前が舞うことで条件を満たし、次元斬を連打するというバグみたいな挙動を見せるはずだが、ここには鈴鹿御前はいない。大嶽丸自身が舞い、儀式を完成させなくてはならなかった。

 

 そして、儀式というものは何であれ途中で終わらせることはできない。どれだけ拒んだとしても、儀式が始まったのならどのような形であったとしても儀式を締めなくては、次の動きに至れない。……ゆえに、大嶽丸はそれを打つしかなかった。

 

「そろそろ終わりにしようか大嶽丸!! 【奈落星】!!」

 

「──────────────────虚空(から)!」

 

 巡が所持している攻撃スキルの中で最も強い闇属性攻撃スキル【奈落星】と、大嶽丸最大最強の一撃、【虚空】が激突する。だが、巡の本命は残っていた加速装置を利用した最大の一撃────ではなく。

 

「星の破滅を見たことはあるかよ、大嶽丸……!」

 

 大技すらも、そこに至るための布石。鱗が消えた胴体に、まるで生き物ではないような外見と化している腕を突き立てた巡は、突き立てた腕に溜め込んでいる全てを集約させる。

 

「知らねぇなら喜べ! スキル化したこれを喰らうのはお前が初めてだよ!!」

 

「っ……!?」

 

 虚空(から)は残心までがセットの技であり、残心が終わるまで大嶽丸は無防備となる。振り払いたくても、残心が終わっていない状態では次の行動に移ることはできない。そして、【死戦臨界】の効果時間が消えるその瞬間────

 

「【超新星】ッ!!」

 

 大嶽丸は星の終わりを見た。




次回で締めれたらいいな
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