恋愛要素ありの死にゲーに転生して鉈を振り回す転生者   作:エヴォルヴ

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討魔決戦大嶽丸 その九

 さて、この辺りでスキル化した超新星の性能を紹介させてもらおう。

 模歩巡という馬鹿が自分が倒し切れなかった敵を前にして、無駄死にするよりも次に繋げるようにするために開発した自爆技、超新星。腹の中に爆弾を詰め込み、奥歯に仕込んでおいた信管で大爆発を起こすというものだが、スキル化した超新星は腹の中に爆弾を詰め込む必要はない。起爆のために必要な条件はスキル使用者のHP全損────つまりは巡の命が尽きた瞬間、自動的に発動する。発動した時点で死ぬことが確定するスキル、死戦臨界との相性はすこぶる良いと言っていいだろう。そんな超新星の威力の計算式は次の通り。

 

 自身に付与されているバフ×自身に付与されているデバフ×自身が蓄えているアムリタの量×超新星が発動する直前の攻撃が対象に当たった際に期待されるダメージ量×敵が蓄えているアムリタの量×装備の表示攻撃力の半分×自身のレベル=超新星の威力────である。

 

 はい、勘のいい者であれば気付くだろう。この超新星というスキル、敵の耐性やらカット率やら全部無視してダメージを与えるとんでもないスキルなのだ。蓄えていたアムリタの量や装備の表示攻撃力によっても威力が変動するが、理論上触ることができないような相手であっても殺せるので自爆技にしては間違いなく破格のスキルだ。そんな火力になっている原因として挙げられるのは、今まで使っていた超新星の爆弾には火力増強を行うための魔改造────ルーンによる超強化が施されていた点にある。

 

 何か磨き上げた技がスキルとして昇華される際、ルーン文字を大量に刻まれた爆弾が巡の体内にあったことや、爆発に血肉が混ざっていたこともあって、「あー、自己強化した結果、強化に耐えられずに自壊するけど大ダメージ発生って感じのやつねはいはい。じゃ、爆弾は蓄えてたアムリタで代用ね」という感じにスキルに組み込まれたのだ。それにしては威力がおかしいような気がしないでもないが、ステータスランダムダウンによるレベルダウン、蓄えていたアムリタ全ロスというクソデカデメリットありきのダメージなので許してほしい。

 

 そんな文字通り星の消滅の如き一撃を喰らった大嶽丸はというと────

 

「ハーッ……! ハーッ……!! ガボッ……ゲハッ……!!」

 

 もはや立っているのもやっとな状態で、辛うじて生存していた。いや、生存というには色々限界であった。

 内部に叩き込まれた超新星や仕込まれた毒物によって、内臓はズタズタを通り越してグズグズの焦げて煤になった具材を煮込んでドロドログチャグチャにしたシチューのような状態であり、怪魔としての自身を支えているアムリタ結晶も砕け散っている。ではなぜ生きているのかと言えば、巡の体をベースに複製されたことで手に入れた強制ガッツが発動したからである。なお、発動したというよりも発動してしまったと表現する方がいいくらい、大嶽丸は色々と限界であった。

 

「……見誤ったな」

 

 朦朧とする意識の中で大嶽丸は呟く。本当に、様々なことを見誤っていた。己の体を形作った人間の記憶を全て────前世や原作知識などは除く────追体験したというのに、巡という存在の刀剣の才能の無さとか、どの盤面であっても勝ちの目を拾いに行く執念とか、逆境で輝く人間の底力レベルとか、本当に多くのことを見誤った。特に、逆境で輝く人間の強さを知っていたというのに、大嶽丸はその底力の強さを見誤った。

 

「…………後詰めも欠かさず残している周到さも、何もかも」

 

「貴様はモフ・メグルの中で何を見ていた?」

 

「全くだ。己すら捨て駒にする人間を()は何度も見ていたのにな」

 

 漆黒の鎧に身を包んだ騎士神と、その愛馬がへし折れてしまった三明之剣をぼんやりと眺めている大嶽丸を見つめる。大嶽丸と巡の大技対決は、巡が勝利していた。闇属性攻撃スキル【奈落星】には高い怯み性能と耐性ダウン付与が存在している。この攻撃を受けた大嶽丸と、人間や怪魔を切り続けた結果、何の因果か一種の怪魔にも近い状態になっていた三明之剣に奈落星と鉄花荒轟の効果が適用された。その結果が、大嶽丸最強の武器である三明之剣の破壊に繋がったのだ。

 

「まさか虚空(から)を破ることができる人間が鈴鹿の他にいるとはな」

 

「それだけの女傑がいたとはな。ペンテシレアやヒュッポリテーが知れば手合わせを所望しているところだろう」

 

「ああ、鈴鹿は本当に凄まじい女だった」

 

 大嶽丸の体は崩壊を始めている。強制不死状態が解除されたことで、留まっていた肉体の崩壊が始まったのだ。それでも声を発せているのはラスボス故のとんでも生命力と言ってもいいだろう。

 

「その女傑の話を聞くのも一興だが……貴様の崩壊が終わっても戦いは終わらん。違うか?」

 

「その通りだ。俺が死んだ後、逢魔百鬼城は崩壊を始めるだろう。だが、この城が呼び水となって各地から溢れ出るように現れた怪魔は消えん。あれらは、俺の配下ではないからな」

 

「……そも、貴様に配下はいないのだろう? あの五鬼とやらも含めて」

 

「ああ。あの怪魔達は勝手についてきただけの怪魔だ。俺の支配下にいるわけでもない」

 

 火鬼、水鬼、風鬼、金鬼、隠形鬼────五鬼と呼ばれている怪魔達は、大嶽丸の力に魅せられてついてきた怪魔というだけであって、大嶽丸が配下にした存在ではない。大嶽丸が住んでいた山で勝手に挑んできて、大嶽丸が挑まれたから殴り返したら勝手についてきて、大嶽丸が悪逆を成して人間を支配することを勝手に期待して、鈴鹿の式神となって人となった大嶽丸に勝手に失望してふて寝して、大嶽丸が復活した時にまた勝手に城の大広間をボス部屋にしていただけの怪魔達である。

 

 つまるところ……ベクトルは違うが、果心居士と似たり寄ったりである。名誉果心居士というやつだ。不名誉? それはそう。

 

「俺に配下はいない。……一人の妻と、友は幾人かいたがな」

 

 遠い昔のことを思い出してどこか懐かしそうに笑った大嶽丸は、四肢が崩壊して仰向けに倒れつつも続ける。

 

「やつは今何をしているのやら……俺が理性無き怪になる前、寺子屋を作ると言っていたか」

 

「……」

 

「やつが今の俺を見たら……笑う────いや、泣くか。あいつは殺した相手に念仏を唱える奇特な式神だった」

 

 じわりじわりと崩れていく大嶽丸の肉体。神経が焼き切れている大嶽丸にはもう痛みはない。体が崩れ、消えていく大嶽丸を見ていたゲリュオンとクリュサオルは不意に、城の内部、そのいくつかで膨大な霊気が解放されたことを感じ取った。

 

「終わったな」

 

「ああ、そうだな。……俺も、もう限界らしい」

 

 何か言い残すことはあるか、なんてことは言わずにゲリュオンとクリュサオルは大嶽丸が消えていくところを見届けた。直接戦った巡に言伝を頼まれたとしても、巡が「あ? なんでタスクまみれなのに敵の遺言知らんといかんのです? 素材なら貰うが」と言って言伝をバッサリカットしてしまうのが手に取るように分かる。特に今の余裕のない巡なら、敵の言葉を聞いても意味がないだろう。

 

 身内に対してはチョコラテを通り越してフォンダンショコラキャラメルフラペチーノ並みに甘い男ではあるが、敵対者に対しては「ロックオンできるのが悪い! ロックオンできるのがいけない!」、「もっと殴ろう。仲間(そざい)を呼ぶかもしれない」、「殺したいけど死んでほしいわけじゃなかった」などの胡乱な発言を口にする男である。そんなやつがタスクが積み上がっていることを自覚したのなら、聞いても聞かなくてもいいことに耳を傾けるとは思えなかった。巡の認識は大嶽丸=自分の邪魔しやがった障害物という認識で終わるのである。ラスボスの最後か……これが……? まぁ、理由がどうあれ人を山ほど殺したのならそうなっても仕方がないのかもしれない。

 

「残るは残党狩り、と言ったところだな。クリュサオル、どう見る?」

 

「………………そんなことより主の下半身の心配した方がいいと思うんですよ」

 

「……そういえばお前もクサントスと同系だったな」

 

 ここぞというタイミングでどうでもいいこと、もしくはクソみたいなタイミングで最悪なことを口走るタイプ。それがクサントスと同系のクリュサオルという存在であった。今までどうして馬みたいなことしかしていなかったのかと言えば、話す気分ではなかったということと、喋ろうと喋らなかろうと状況がどこにも転がらなかったからである。それと、こういう時にどうでもいいことを話すと空気が一転するのが愉しいので、今言葉を発した。ここ数百年は喋っていなかったのに、今このタイミングで口を開く辺り中々愉快な性格をしている。

 

「ところで主はグラディエントをブーメランか何かと勘違いしているんですかね」

 

「まぁ、応用次第では戻ってくる投擲物としても使えるからな」

 

 ゲリュオンとクリュサオルが代償を捧げたことで手に入れた暗殺剣グラディエント。名を残すことなく死んだ戦士が死ぬ間際まで振い続けたことで魔剣と化したそれは、指定した何手先かの攻撃を持ってくるという効果を持つ。ゲリュオンからグラディエントを借りている巡は、刀剣の才能が皆無だが投擲は正確無比。ゆえにシミターのような形状のそれをブーメランのようにして残党狩りに参加していた。THE ENDと表記されそうなくらい派手な爆発で死に戻りしたばかりだというのに元気な事である。

 

 

 

 

 

 * * *

 

 

 

 

 

「もっと殺そう。素材(なかま)を呼ぶかもしれない」

 

 ブーメラン(魔剣)を投げながら呟く。何度か検証していたけど、やっぱりグラディエントをぶん投げてから能力を使うと、バグみたいな挙動でこっちに戻ってくる。投げたという結果と、振るったという未来がぶつかり合ってバグを引き起こしているのかもしれない。このバグを解明すれば多次元から斬撃を持ってくるなんてことも可能なのではなかろうか。

 

 おっ、今殺した怪魔はあんまり見ないやつじゃないか。素材美味しい! 素材美味しい!

 なかなかみかけない かいま なので。そざいはひとつでは たりないので。なんどでも。なんどでも。たりないことが ないように。ころしつづけて たいせつに あつめます。

 

「逃げれば一つ、進めば二つ! 奪えば全部ゥ!! ハッハァ!! 素材マラソンがこんなところでも息吹を!!」

 

 大嶽丸殺した確信があったし、さっきゲリュオンとクリュサオルから報告貰ったから確実に殺したのを理解した俺の心は結構清らかだ。大体9%くらい清らかだ。残り91%は葬式やら何やらを済ませれば清らかになるかもしれないし、そのまま黒く濁って新たな俺のモチベーションになるのかもしれない。どう転がるかは俺の心持ち次第よ。

 

「兄上、こいつなんで怪魔(こっち)側じゃないのか俺ぁ分からねぇんだが」

 

「分からんでもないがこの祭りの主催者だ。粗相はないようにしろ、弟よ」

 

「お祭りにルールは無用だろ」

 

 俺の近くで火属性と水属性を纏ったモーニングスターで怪魔を蹴散らしている背の高い、修行僧めいた格好の二匹。人間に化けているが、俺の日課DLCダンジョンの主、黒焔羅刹と白澪羅刹本人である二匹が失礼なことを抜かしているような気がするが、倒しても倒しても尽きない素材の山に比べたら些事も同然。

 

「というか大将首取りに行ったんじゃなかったのかお前」

 

「確かに俺は大嶽丸を殺すと決めた……だがな、こういう戦いのフィニッシャーは俺じゃなくていい」

 

「お前あれか。押し付けるつもりか。えぐい事しやがる」

 

「俺が首取ったって言うのと、五家やその関係者が首取ったって言うのじゃ華やかさが違うぜ。俺は所詮素材周回餓鬼よ。功名餓鬼にはなれん」

 

 申し訳ないがスケープゴートにさせてもらった。先陣切ったのだって一番槍を興じることで呼び水になることが目的。あと薩摩のやべーやつらを呼び出すのにも一番槍が最適解だった。新撰組でも良かったんだけど、新撰組はなんかよく分からないけど気合いで来ているらしい連中ばっかりなせいで仙妖ゲージが薩摩連中よりも持っていかれるんだ。鴨さんとか、近藤さんとか。ところで明らかに新撰組じゃないですよねって感じのあの武芸者らしきご老人は一体誰だったんだ……

 

「そもそもの話、俺の夢は安定した隠居生活。名声名誉はいらないんだなこれが」

 

「そういうものか」

 

「ちなみにゲリュオンとクリュサオルに後詰めと討伐の証拠を五家の誰かに渡すように言ってるので、俺の活躍は先陣切っただけということになるのだ」

 

「あの爆発は?」

 

「さっきの属性の奔流があっただろ。あれと混同してるみたいだし問題なし」

 

 そもそも自爆して大嶽丸倒しましたなんて報告しても、誰も信じないだろ。

 

「ところでお前ら以外の怪魔どこ行った?」

 

「帰ると言って帰ったぞ」

 

「そう……二次会参加しないタイプなのね。気持ちは分かる」

 

 俺も二次会は参加しないタイプの男……前世も今世も二次会は参加しないタイプ。だから大嶽丸ぶっ殺し祭りのメインである大嶽丸討伐が終わったのなら帰るのも分からんでもない。だけどね、残りの残党狩りまでが祭だったと思うんですよ。除夜の鐘で消し飛ばせるくらいにまで怪魔を減らさなければならないのだから、残党狩りまで参加してほしかった。

 

「……まぁ、除夜の鐘喰らって無事な怪魔の方が少ないか。てめぇらはなんで効かないんだよ」

 

「「一応仏門なんで」」

 

「そうだったわ」

 

 こいつらもゲリュオンとクリュサオルみたいな枠だったわ。仏門だけど。強すぎて存在を抹消された二匹だが、こいつらの源流は化け物の巣窟インド。なんで日本に流れてきたのかと言えば、クベーラこと毘沙門天と共に日本にちょっと観光しに来た時に、どういうわけか日本を気に入って帰化したのである。怪魔が帰化するんじゃないとか、なんで怪魔が仏門なんだよとか色々ツッコミたい話ではあるが、気にしたら負けだよ。

 

 それはそれとして、この世界の除夜の鐘は百鬼夜行にて現れる怪魔を弱体化、もしくは消滅させることが可能。ダンジョンは余波で入口が浄化されることがあったりなかったり。なお素材もアムリタ結晶も落ちないので、除夜の鐘が鳴り響く前にどれだけ怪魔を狩り尽くせるかがこの残党狩りの肝よ……!!

 

「レベルも落ちたしなぁ……超新星のデメリットデカすぎる」

 

 レベル10分のランダムダウンなので、下手をするとガン振りしていたステータスをレベル10分マイナスされることすらあるのだ。今回は俺があんまり育てていなかったステータスがマイナスされたので良かったが、これで技量とか筋力がマイナスされたら発狂していた自信がある。我、発狂に活路ありってのは遥斗くらいなんだ。

 

「ところでお前ら報酬どうすんの?」

 

「そうさな……まぁ、日本のカレーでも頼んでみるか? 兄上、どうするよ」

 

「ふむ……ならば久しく口にしていない酒を頼んでみるか」

 

 意外と俗っぽいんだよなこいつら。本当に怪魔か? ……羅刹天だったわ。怪魔だけど毘沙門天の門下で仏門だったわ。もしかして怪魔の皮を被っているだけで、人間を鍛えるために色々やってくれる仏様なのではないか?




では、今年もよろしくお願いします。
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