恋愛要素ありの死にゲーに転生して鉈を振り回す転生者   作:エヴォルヴ

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外堀が埋まる。内堀はない。

 超新星のスキル化はめでたいのだが、レベルダウンが痛すぎる。そんなことを思う今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。俺は町の皆の御供養が終わってちょっと一段落。いやぁ、中々にご立派な慰霊碑作ってもらっちゃいましたな! 大嶽丸の城があったところにドカンと置かれている巨大な慰霊碑は、もはや町の新たなシンボルと言っても過言ではないだろう。慰霊碑がシンボルっていうのもどうなんだと思わんでもないが、慰霊碑が一番分かりやすいんだからいいだろうが。

 

 ちなみに俺は公欠扱いで土地のことで色々やっている。冬休みなのに公欠ってどういうことなんだろうね? 身内の不幸ってことで話が通っているが、俺の地元を知ってる学園の人は少なくないので、皆大体察しているようでグループラインや個人チャットに心配のお声が来たりしていた。ありがとう、前線には出てなかったけどダンジョン鎮圧や補給物資運搬に出ていたと聞くクラスメイトの皆。二年かけて戦闘に目覚めたな……もっと早くに目覚めてくれ。

 

「うーん、にしても昼間っから温泉に浸かるという贅沢……これくらいは許されていいだろ」

 

 スポーツドリンクに霊薬を混ぜた健康なのか不健康なのか分からないドリンクを片手に、なぜか無事だった近所の温泉に浸かる。露天風呂と化しているが、最近練習中の結界術によってマジックミラー状態にしてあるので露出対策も完璧。

 

「書類仕事もほとんど終わったし、あとはここに住む人達の募集だなー……いないけどな!」

 

(それも原作知識というやつか?)

 

(ああ。大嶽丸が殺戮の限りを尽くした場所なんて曰くつきもいいとこだろ? それに、一度は常世の穢れで侵食されたんだ。表面上は浄化されたとはいえ……なぁ?)

 

 討魔2にて大嶽丸の残滓なるものと戦う機会があったのだが、舞台は当然この土地。しかも何にもない荒れ果てた大地のど真ん中にポツンと突き刺さった大太刀に触れると、何の前触れもなく大嶽丸と戦える。そんでもって倒すと手に入る素材の中に、こんなフレーバーテキストを残すアイテムがあるのだ。

 

 強大な怪魔の穢れが土地に染み付いたことで、まともな生命は生きられぬ。ここは現世でありながら迷宮となっている────だったはずだ。うん、まともな生命は生きられないんですってよ、奥さん。試しに寒い環境でも育つとんでも植物を植えてみたら、たちまちダンジョン産植物に早変わり。付き添いや飯の都合をしてくれてる千方さんに報告したら、このことを他言無用にしておけとの指示をいただいた。まぁ、そうだよね。でも俺がいる場所や、アラハバキ様がいた山などはそんなことがないの。あとこの温泉。どういうこったよ。

 

「ま、とにかくここに人が住めるようになるのは当分先の話だよ。向こう10年は無理と見たね」

 

「ふぅん……百鬼夜行による穢れ方とは違うのねぇ」

 

「ええ、そうなんすよねぇ……俺が一々浄化するわけにもいかんのです。浄化とか苦手ですし」

 

 やるんなら大祓なる大規模儀式が必要となってくるだろう。いくら五家の人間に声をかけたとしても、その準備に何年かかるか……なんて思いつつ、先程温泉に入ってきた筋肉(マッスル)と漢女を見る。

 

「百鬼夜行は限定的な、一日で終わる襲撃だが、先の戦いは何日も強い力を宿した怪魔が居座っていた。浄化にかかる時間も、費用も馬鹿にならんな」

 

「これが全部呪いなら話は違ったんですけどねぇ。俺は呪い効かないどころか取り込めるので」

 

 誰に向けた呪いなのか分からないものを取り込んで大丈夫なのか、というところは気になるが、今のところ取り込んでも問題ない。取り込んだ呪い? 神様とかから貰った呪いの強化ポイント的な感じに使えるんでもっと強い呪いをください。

 

「というか俺、五家の分家らしいんですけどどういう枠組みになるんです?」

 

「そうねぇ……分家は分家だけれど、また別の良家って感じになるのかしら……」

 

「五家連名での分家というのが前例がないからな……諸々の調整はしていく形になるが……」

 

 本来であれば連名での分家というのは大耀さんの枠だったんだけど、俺がその枠を取ってしまったらしい。原作崩壊なんて今更知ったことではないのだが……大耀さんのご家族を保護するという観点から見ても、俺よりも先に大耀さんをあれこれするべきだったと思うんだけれども……

 

「まぁ、いいんじゃない? 荒覇岐の巫女に手を出すほど命知らずな人間も中々いないでしょうし」

 

「宇迦様の加護を受けてるのに別の神様の巫女というのはこれ如何に」

 

「宇迦様が許可しているから問題ないんじゃないかしら? それを言ったらスイちゃんとハクちゃんもそうでしょ?」

 

「本家の人が分家に入れ込んでいる由々しき事態である」

 

 分家という枠組みではあるが、俺が現人神であることを鑑みて五家の人達は巫女を宛がうことにしたらしく、放り込まれたのが翡翠先輩と虎成さんである。そしてそこに大耀さんが立候補したことで荒覇岐の巫女が三人揃って、それと同時に土地の管理で羽津さんが会社総出で色々工面してくれるとのことで至れり尽くせりである。

 そして着々と俺の逃げ道が塞がれていく気配がしている。バレンタインが来るよりも早くに外堀を埋められてしまっている……内堀? 俺の身内が師匠以外いなくなってるからね、埋めるものがないのにどう埋めればいいんだろうね。

 

「まあ、この辺りは五家として神様との繋がりを強くしておきたいって狙いもあるのよ」

 

「そんでもって産めよ増やせよって? 呪っていいって合図ですか?」

 

「止めておけ。気持ちは分からないでもないが、まだその時ではない」

 

「薬を勝手に盛るようなクソ狸がいた三野先輩の言葉の重みは違うぜ」

 

「ふっ、だろう?」

 

 ちなみにそういった狸共は全員地下労働施設に飛ばされたらしい。ちなみに地下労働施設に娯楽というものはないそうで、働くか休むかしかできないのだそうだ。甘い汁を啜っていたやつらを罰する施設なのだから、そんなものが与えられるわけないだろという話らしいね。狂いそうな職場環境だが、霊薬の定期的な強制投与によって狂うことは許されない。

 

「ところで模歩、下世話な話になるが……」

 

「なんです?」

 

 三野先輩がそういう話を振るなんて珍しい────いや、そういえば男主人公でストーリーを最後までやるとそういう男子高校生らしい、下世話な話だったりするイベントがあった気がするので、何だかんだで三野先輩も男なのだ。そんなことを考えながらスポーツドリンクを口にした直後。

 

「翡翠に押し倒されたと聞いたが、本当か?」

 

「ンッフッ……! なんでそれを知っておるんで……?」

 

「辰巻から聞いた」

 

「プライバシー……」

 

 いやしかし、あれは押し倒されたというよりも、翡翠先輩が酔っ払って気絶したと言った方がいいような気がする。ゲーム本編でもそうだったのだが、翡翠先輩は酒に弱い。いや、本当に弱いのだ。どれだけ弱いかと言えば、俺が神様へのお供え物として試作していた洋酒染み染みカステラパンを食べただけで酔っ払うレベルでアルコールに弱い。未成年がアルコール入ったものを作るな? 細けえこたあいいんだよ。状態異常耐性は大分高いはずなんだが、それでも酔っ払う翡翠先輩はどういうことなんですか? 初代もそうだが、瑞騎家の当主が酒に弱いというのはもはや呪いの類なのでは……?

 まあ、そういう酒の弱さもあってか、翡翠先輩は俺が用意したカステラパンで酔っ払ってぶっ倒れた。それに巻き込まれたのが俺ってわけ。ただ、色んな意味で死ぬかと思ったね。相変わらずいい匂いするし、柔らかいし、スベスベマンジュウガニだし。

 

「あれは事故です。いや、本当に……どうしてあれを食べてしまったのか……」

 

「……ああ、なるほどな。確かに翡翠は酒に弱いからな」

 

「でも瑞騎の人達ってお酒好きよねぇ」

 

「ああ。直営の酒屋がいくつもあるくらいだからな……」

 

「ん? 水とか穀類ってなると三野とか虎成な感じですけど違うんです?」

 

 水属性の玄武と土属性の白虎だから、お酒とか作ってそうな気がしたんだけど。

 

「もちろん三野家と虎成家もお酒を造ってはいるわ。けど、お酒に関しては瑞騎家が一番ね」

 

「光属性は知っての通り豊穣の女神やそれに連なる者の属性だからな。どれだけ水や大地が綺麗であっても、光が無ければ何も育たない」

 

「なるほど……」

 

 作物には水も大地も大事だが、それ以上に恵みとなる光が大切ということか……まぁ、日光が無ければ植物は発芽しないもんな。あれは温度とかも大事だけど……とにかく光が大事なのは分かった。だけど、やっぱり分からないのは────

 

「瑞騎家の酒好きのわりに酒に弱い人が集まっていることは理解できねぇ……!!」

 

「そういう星の下に生まれてるとしか言えないわねぇ……」

 

「酒の弱さと酒好きは両立する、ということだろう。分別はあるようだしな」

 

 弱っている家とはいえ、直営店の経営が傾いているわけではないのが凄い所だよな。若者の酒離れ、というところもあるが、酒はそのまま飲むだけではない。化粧品にしたり、お菓子にしたりと色々やっているそう。麹を使った化粧水は試供品として翡翠先輩が持ってきてくれたのを使わせてもらったが、うん、いいもの。肌への浸透力が他の化粧水よりも高い気がするのは、俺が乾燥肌なだけ?

 アイテム合成に使っても高品質なアイテムが作れるくらいにはいいものなので、定期購入させてもらっている。

 

「とにかく、翡翠先輩に押し倒されたのはマジの事故です。そのまま寝ちゃったけど」

 

「そうか。だが、一人で酔っ払って倒れるよりはよかったな」

 

「ええ、本当にそうっすよ……」

 

 その後翡翠先輩には平謝りされたし、大耀さんと虎成さんにはどつかれました。酷くない?

 

「まぁ、メグちゃんのラッキートラブルのお話はそこまでにして、ちょっとお願いがあるんだけれど聞いてくれる?」

 

「あ、いっすよ」

 

「話を聞いてから了承するか決めなさいな」

 

 ローズ先輩の頼みなんて、問題ないことが多いから聞かなくても了承できるんだけどな……とはいえ、なんか真面目そうなお話っぽいし、話は聞いておくか。

 

「暮奈から────というか、京都校の方からちょっとお話が来てね? 東京校と京都校の交換学生の件で」

 

「成績が中の上程度の俺には縁のない話っすね」

 

「まぁ、普段ならそうなのだけれど……あなたをご指名なのよ」

 

「? 誰が?」

 

「京都校が。なんだか、海外に行っていた生徒からの強い推薦があったみたいね」

 

 ………………討魔2の主人公か? 海外に行ってた、というのがこの時期だと討魔2の主人公くらいしかいない。他にも海外に行ってるキャラはいるが、そのキャラが日本に来るのは夏休みの半ばのはず……だが、俺は討魔2の主人公にお会いしたことはないんだが……

 

「他にも菰成や薔薇苑、千磁からの推薦もあったらしい。千磁はともかく、菰成と薔薇苑は、お前の実力を戦って知っているからな」

 

「他にも思惑はあるかもだけど、とにかくあなたのことをご指名みたいね」

 

「それ、なんで黒田先生から連絡来ないんです?」

 

「黒田先生は黒田先生で色々忙しくしてるみたいよ? 京谷先生もだけれど……あなたが持ってきた戦闘データの解析とかで」

 

「あー……」

 

 プロトタイプはぶっ壊れてしまったのだが、プロトタイプの戦闘データだけは残っていたのだ。アイテムの整理をしている時に【戦闘記録:α】というものがあって、取り出してみたら暗号化されたプロトタイプの戦闘データだったという話。もちろんプロトタイプ自体がちょっと特殊なものだし、俺が大耀さん達をスケープゴートにして手柄を押し付けたこともあって、大嶽丸との戦闘データを流出させるわけにはいかない。結構話もしたし、それが音声データとして残っていたのでバレると面倒────ということで、スケープゴートにしたことを存じてる人達だけでデータの解析をしてもらっているのだ。そのうち壊れないプロトタイプも生まれるかもしれんので、今のうちに拡張パーツハクスラマラソンにも行かなくては……!!

 

 あ、ちなみにスケープゴートにしたのを知っているのは逢魔百鬼城に突入したメンバーと、鵐頼首相とその腹心及び黒田先生と京谷先生、そして察している万莱君とパリピイケメンボーイズ。……結構いるじゃねぇか。突入メンバーには揃ってお叱りを受けたが、貴様らが倒したという情報と俺が倒したという情報、一般人が見た時にどっちが信じられる? と聞いたらお黙りになったので俺の勝ち。計画通り……!!

 

「土地の管理は……まぁ、一段落したし、春には問題なく学校通うつもりでしたけど……京都かぁ」

 

 討魔2で走り込んでくるバッドエンドを回避する率を高めるのなら、願ってもない提案なのだが、推薦されたやつがどんなやつか、みたいな感じで絡んでくるやつらがいそう……というか絶対いるのであんまり気が向かないのもまた事実……どうしたもんかなぁ……

 

「ああ、もしメグちゃんが渋るようだったら、この伝言を伝えてほしいとも言われてるわ」

 

「伝言?」

 

 伝言程度で俺を京都校に行かせられると思ったら大間違い────

 

「ええと、『また夢女を作るとは……相変わらずだなンハンドラー・メグルゥ……』、『何勝手に死んでんですかぶっ飛ばしますよ。ぶっ飛ばすんで来い』……だそうだけれど、よく分からない伝言よ────どうしたのメグちゃん」

 

「凄い顔をしているぞ、どうした? のぼせたか?」

 

 まぁ、それもあるかもしれないが……うん、うん。

 

「……………………そうかぁ……」

 

 なら、行くしかないわな。色々と、聞きたいこともあるし。

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