恋愛要素ありの死にゲーに転生して鉈を振り回す転生者   作:エヴォルヴ

92 / 101
討魔2
ご友人!?致命の一撃をさせてくれないのですか!?


 冬休みの討魔決戦大嶽丸、一部のリア充が修羅場り、一部のリア充がイチャラブし、一部のリア充(仮)がマラソンに精を出してブチギレられて大乱戦ギルティストリートスマッシュ鉄拳~ぶち壊せ☆らぶらぶはぁと大石像~となり、非リア充が嫉妬と八つ当たりでダンジョン攻略を進めるという地獄のバレンタインを超えて、春休みへと突入した討魔学園生徒達は新学期に向けてあれこれ準備する者もいれば、久しぶりにゆっくりしようとオフタイムに突入する者もいた。

 

 そんな春休みの中で準備を整えて寮を出た巡は、いつも通りの霊薬ガン積みバフマシマシ状態で指定された集合場所にいち早く到着していた。纏う空気はダンジョンに潜る時と同じくらいヒリついており、しかしどこか楽しそうにしている。

 

「血の気が多い集合場所だァ……テンション上がるなぁ」

 

 そう言って笑う巡が立っている場所は、東京校と京都校の両校が共有して使っているアリーナ。対人戦────もとい、交流戦や学内戦は専らこのアリーナを使って行うのだが、その理由として一番大きいのはアリーナの近くに霊脈が通っており、霊脈を利用した移動が可能だからだ。今回の学園祭は新しい試みとして東京校のアリーナを使ったが、本来であればこの共有アリーナを使う。

 

 そんなアリーナに立っている巡の手には鉄華荒轟。腰には度重なる強化を経て、遂にグレネードランチャーとしても利用できるようになってしまったフックバスター六式。最近ウェポンラックとして大活躍中の妖蜂連花に接続されているのは、明らかに投擲するつもりですよね? という感じの槍と手斧。防具は大嶽丸戦で破損してしまった装備を修繕した継ぎ接ぎの黒い革鎧。今から戦いますと言わんばかりの完全武装である。

 

「うーん、しかし早く来すぎたかねぇ……っとと」

 

 巡が蹴り上げた鉄華荒轟が背中からの襲撃を防ぐ。仕掛けてきたのは結晶が生えたグレートなクラブを持った黒髪ロングの深窓の令嬢のような美少女。顔半分をベールで隠した暗殺者のような装備構成と、武器を振り回すようには見えない華奢な容姿からは想像もできない特大武器を巡の骨盤目掛けて叩き付けようとしていた美少女は驚いたように目を開き────

 

「ご友人!? サプライズをさせてくれないのですか!?」

 

 殺すつもりだったと宣言してきた。とんでもない美少女である。

 

「させたらワンパンなんだよなぁ……」

 

「えっ!! *1惜別をお持ちでない!? 勝負を投げたということですか!?」

 

「蛮族な思考だねぇ……お淑やかさを身に付けな!!」

 

「え? 暴力とは究極の淑やかさですよね?」

 

「そう来たか、蛮族め!!」

 

「失礼ですね、インテリですよ?」

 

 なんともバトルジャンキーな発言をしつつ、縦横無尽に叩き込まれ続ける結晶釘バットと化したグレートクラブを難なくいなしていく巡。不死すら殺す英雄的殴打を受けてもなおガードが崩れない巡の受け能力は相当に高い。そして特大武器をまるでドラムスティックを扱うのように片手で振り回している蛮族美少女は攻め力が化け物。

 

「あ、そういえば京都土産ですどうぞ」

 

「お、生八つ橋じゃん。何味?」

 

「ウナギです。中にタレが入ってます」

 

「なんでそこ行った??」

 

「お好きかと。あ、お土産あげたのでクロワッサンください。あんことバター入ってるやつ」

 

「この美少女図太いぞ!?」

 

「女の子に太いは禁句です。ぶっ飛ばしますよ」

 

 そんな日常会話をしつつ、中々に図々しい美少女の英雄的殴打を凌ぎ続ける巡。激しすぎる攻防だが、まだまだ序の口。巡の顔から表情が消えておらず、美少女の顔には暗黒微笑が浮かんでいる。

 

「というか中継でも見てましたけどなんですかそのギター。鉈ブンブン丸じゃないんですか」

 

「これが今の俺の鉈だァ! なお怪魔特効で対人性能はカス」

 

「討魔2って対人戦結構あるのになんでそんなの使ってるんですか???」

 

「ほんとにな!!」

 

 結晶が生えたグレートクラブと大鉈エレキギターが激突する。このまま鍔迫り合いに縺れるかと思われたが、巡は鍔迫り合いを成立させることはしない。そんなことをすれば、絶対に力負けして押し潰されることが分かり切っているからだ。

 

「うわっとと────ぶっ!?」

 

 突然霞に突っ込んだかと思うほどの感覚の消失から、美少女の体が勢いよく傾き────傾いた先にあった膝に勢いよく激突。鼻血は出ていないが、鼻が赤くなって目には涙が滲んでいる。だが、目を閉じずに次に仕掛けられるであろう攻撃に備えている辺り、中々の猛者であった。

 

「【ダンス・マカブル】」

 

「【巨人の襲撃(タイタンフォール)】ッ!!」

 

 鉄華荒轟を霊子化させて放たれるスタミナの限り縦横無尽に連打を叩き込む純物理スキル【ダンス・マカブル】と、武器が重ければ重いだけ威力を増す純物理スキル【巨人の襲撃(タイタンフォール)】がほぼ同時に放たれる。

 本来のゲームシリーズ『討魔』であれば、低威力多段ヒットのスキルが高威力単発ヒットのスキルに競り勝つことはないのだが、この世界は現実でありファンタジー。巨人が繰り出す一撃に、矮小な人間の数の暴力が襲い掛かる。

 

「オラオラオラオラオラァッ!!」

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!! そんな軽い連打で潰される程熟練度低くねぇんですよねぇ!!」

 

 だが足りない。巨人の一撃に打ち勝つには、人間の数だけでは足りない。いつだって巨人などの脅威に打ち勝ってきたのは、英雄達のような強者と人々が手を合わせてきたから。人々が、英雄が知恵を振り絞った果てに勝利を掴み取ってきた。

 そして、ここにいるのは習わし(ハメ技)状態異常(ぶゆう)ハクスラ効率(ほまれ)を常に考え続けるハクスラ民。

 

「そい」

 

「へ?」

 

 投擲されしはハリボーみたいな外見の、何だか嫌な記憶が蘇りそうな黒く染まったお菓子。出された食べ物はアレルギーじゃない限りしっかりと食べるという、当たり前だが難しい教育を前世から叩き込まれてきた美少女はそれを食べ物であると把握。咄嗟にベールを外して口に投下、嚙み砕いてしまった。

 

「────うげぇぇっ!!? 不味!!? 舌がおかしくなる!!!」

 

「はい隙あり」

 

「あぱっ!!」

 

 憐れ美少女。あまりの不味さで思わず喉を抑えた結果、武器を手放してスキルを強制解除してしまった。その隙を逃すほど我らが気狂いは甘くはなく、容赦なくラリアットをかまして地面に叩き付ける。

 

「俺の勝ち。なんで負けたか明日までと言わず今すぐ50字以内に答えよ」

 

「サルミアッキ」

 

「正解。追加でサルミアッキをあげよう」

 

「いらないんですが?」

 

 濃縮還元どころか濃縮倍化還元されたハリボー型サルミアッキを美少女の口に押し込もうとする巡と、それに対して特化構成と言われそうな程に伸ばした筋力のステータスで抵抗する美少女。明らかに事案である。

 

「出発の確認してたら相方がもう出張っていた件について」

 

 そんな事案をツッコミもせずに歩いてきたのは、討魔学園京都校の制服に身を包んだショートカットスポーツマン。例に漏れずイケメンである。

 

「女の子より準備に時間がかかるのが悪いと思うんですけど」

 

「うーん、否定できない。でも彼女の前でいいカッコしたいのが男心」

 

「分からなくはありませんが、もっと早くしてくれると一緒に過ごせる時間が増えるので努力してください。これは義務です」

 

「それはもちろん全力で努力させてもらいますとも!」

 

 いつの間にか巡のサルミアッキ尋問から抜け出していた美少女が、スポーティーイケメンボーイとイチャついている。周囲にハートが凄い勢いで溢れて海ができそうになっているが、残念ながらこいつらにとってこれは平常運転。公衆の面前ではちゃんと抑えているので安心してほしい。ここにはこいつらの他にも気狂いがいるのだが、美少女とスポーティーイケメンボーイにとって気狂いは公衆には含まれていない。

 

「公衆の面前でイチャつくとは……相変わらずだなンメイケイオス・ハルトォ……」

 

「それを言うなら相変わらず夢女製造機になってるあんたに言わせてもらうぜ!」

 

「あ? 誰が童貞歴=年齢だって? 褒めてもカレーパンしか出ねぇぞ」

 

「褒めてねぇよ!! あ、カレーパンは貰うんでゴチです」

 

「あ、それ天照大御神様にお供えする予定だったやつだわ」

 

「「なんで口付けた瞬間に言ったんですか?」」

 

 手渡されたカレーパンを仲睦まじく半分こして食べ始めたカップルに爆弾を投下する巡。思わず電話猫と化したカップルに対して、思わずゲラゲラと笑いだす巡。普通に最低である。

 

「ふははっははは!! まぁ、予備もあるんですけどね、初見さん」

 

「焦らせるんじゃねぇ、殺すぞ」

 

「つか勝手に死にやがったの許してねえんで一回殺しますよ」

 

「俺を殺したいのなら超新星を超えていけ」

 

「「白霊の必需品草」」

 

「は!? リマスターじゃ白霊皆超新星持ってんの!? ロマンじゃねぇか」

 

 打てば響くとはまさにこのこと。波長が合っているのか、一つの話題から複数の話題に発展していく様はまるでカースト上位にいそうなギャルの集団のごとし。

 

「つかなんでお前らこっちにいんの? 何? 後追い自殺?」

 

「するわけないんだよなぁ……」

 

「私達はちゃんと寿命まで生きましたよ。老衰です」

 

「大往生じゃんか。孫とかに囲まれて死んだやつ?」

 

「いえ、先輩が死んだ次の年に私が卵巣全摘したので子供はいませんでしたよ」

 

「いきなり重い話するのやめない?」

 

「まぁ、子供であっても遥斗から渡される愛情とか全部渡すつもりなかったのでいいんですけど」

 

「いきなり(愛が)重い話するのやめない?」

 

 突然のドロドロとした底なし沼の如き愛情が顔を出しても巡は平常運転。対するスポーティーイケメンボーイことメイケイオス遥斗は唐突な愛情に対して身悶えしている。どこぞの六連男装みたいな身悶えの仕方だが、イケメンボーイなせいで気持ち悪く────いや、動きが結構気持ち悪い。イケメンだからこそ気持ち悪いという状況だってあるのだ。

 

「で、老衰ってのはどっちが先に?」

 

「同時だったはず。ボケてはなかったし、葬式は地域の見回りしてくれてた人がうちに泊まってくれてたから、地域の人達が恙なくやってくれたんじゃね?」

 

「ですね。同時に眠るように逝きました。で、気付いたらこの世界にいたわけです」

 

「へー……」

 

 同時に老衰とは中々例を見ない状況な気がしないでもないが、巡はそれを気にしたような素振りも見せずに、次の質問へ。

 

「最終決戦に来てくれたらとても楽だったんだが……なんで来れなかったん?」

 

「海外で色々やってまして。こっちの予定は終わらせたんですけど、京都校側が色々と手続きが遅れてたらしく……」

 

「まぁ、歴史の修正力ってやつなのでは? いや、本当に申し訳ない……マジで参加しなかったのを悔やむ……」

 

「その悔やんでる理由教えていただいても?」

 

「「素材欲しかった……!!」」

 

 ご安心ください、こいつらも気狂いの同類です。類は友を呼ぶならぬ、ハクスラ民はハクスラ民を呼んでさらにマラソンを加速させる、である。

 

「まぁ、何にせよ……元気そうで良かったよ。見る感じ主人公ポジなの笑うけど。キャラメイクとそっくりで草ですよ」

 

「人のこと言えない……言えなくない……?」

 

「正直双子主人公なの笑いますけどね。初代は主人公お一人ですよね?」

 

「そうだよ。………………………………………………………………おん?」

 

 ふと、転生して主人公ポジに収まった親友二人の顔を見て、巡は疑問が湧く。

 

「どうしました?」

 

「お前ら名前は?」

 

「遥斗」

 

「麗良」

 

「いやそうじゃなくて苗字」

 

「「陽之輪(ひのわ)」」

 

「……御兄妹か何かで?」

 

「「双子」」

 

「………………お付き合いしている方とかは……」

 

「「隣の人」」

 

 沈黙。転入などの手続きについて説明してくれる職員が来るまでにまだ時間がある、朝日が昇り始めた頃、アリーナで巡は大きく息を吸って────

 

「そう来たか、インモラル兄妹め!!!」

 

「「失礼だな、純愛だよ」」

 

「知ってるよ畜生!! あークソが! 嬉しいのにちゃんと祝福していいのか困る倫理……!!」

 

 インモラル兄妹を迎え、討魔2これより開幕である!!

*1
(愕然)




陽之輪遥斗
主人公ポジインモラル兄。メイケイオス。そこ、ただの蛮族とか言わない。

陽之輪麗良
主人公ポジインモラル妹。インテリ蛮族。そこ、ただの蛮族とか言わない。

気狂い
模歩巡。荒覇岐。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。