恋愛要素ありの死にゲーに転生して鉈を振り回す転生者 作:エヴォルヴ
討魔学園京都校は、基本的な構造が東京校とほとんど変わらない。案内人として京都校の職員が最初に言ってくれていたように、本当に構造がほとんど変わらないので東京校にいるような感覚に襲われる。京都校なんですけどね。
だが、寮がちょっと────結構違う。まさかの学年別寮である。結界術か何かの応用で敷地を拡張しているとかなんとか言っていたが、もし術が解除されたらどうなるんだろうね。そうならないように対策を何重にもしているようで、金使ってんなぁ……って思ったけど、学年別にしている理由が過去の負の歴史によるものだったはず。なんだっけ、下級生へのいじめとか集団暴行とかが横行したんだっけ? そういう事案があったのなら男女別にせよ。繰り返す、男女別にせよ。え? そうすると遥斗と麗良が人目を気にせずイチャつける場所がなくなる? そもそも男(女)にも穴はあるんだよなぁって言って捕まったやつがいる? ………………今回は許してやる。
「これで案内は終わりましたが……何か質問はありますか?」
「そうですね……俺の武器、結構整備が面倒なので定期的に東京校に戻っても大丈夫です?」
「ああ、でしたら申請を出してくださればこちらで東京校に武器を運搬しますよ」
へぇ、そういうシステムもあるのね。確かに破損したりした武器を修理するのに時間がかかる設定があった気がするし、そういう設定がそういう方面に変わってたりするのか……? いや待てよ? 運搬とかのイベントで武器が盗まれたとか、そういうやつあった気がするぞ。RTAだと全く遭遇しないどころか空気になっていたイベントが。
あのイベントが初めて発生した時、盗んだ輩を抹殺したい衝動に駆られたのはいい思い出。犯人は誰だったか……なんか、金が無くなったから金策探してて、高く売れそうな武器があったから盗んだとかそういう理由だった気がする。殺すぞ。……まぁ、それは置いておいて、お礼は言っておけ。損はない。
「じゃあ、そうなったらお願いしますね」
「はい、もちろん。他に質問はありますか?」
「いや、大丈夫です。出たら……まぁ、陽之輪兄妹にでも聞きます」
「そうですか。では、書類をお預かりしますね。慣れない環境でしょうけど、頑張ってください」
案内人の事務員さんに書類を預けつつ、もう一度頭を下げてから事務室から退出。職員室だけじゃなくて事務室もあるんだから討魔学園は広い学園だぜ……
「終わった?」
「おうよ。寮は後で入るとして……あれ? お前ら二年になるんだよな?」
「そうだよ」
「そうですね」
「ということは寮別か……行き来するの面倒くせぇな」
まぁ、ラインとか使えば連絡はできるし、いいか。ただ、ハッキングでもされてやりとりを覗かれたら原作との擦り合わせ会議とかできなくなるから、やるんだったら人目がないダンジョンとかになってきそうだな。そもそも初代討魔のキャラボスを醜怪餓鬼くらいしか倒してねぇし。
「……まぁ、会ったら殺しゃあいいか」
「お? 何? 人類滅亡ルートの話してる?」
「いやさすがにしねぇよ? って、そうだ。お前ら加護あんの?」
「「もち」」
討魔2の主人公が海外出張に行っていた理由は大きく分けて三つ。
一つ目。虐待だかネグレクトだかから逃げ出して一人で生きようとして、一か八かでダンジョンに突入、戦士としてステータスを解放していない中でダンジョン内を活動していた瘴気耐性や、戦闘技能を偶然ダンジョンに来ていた学園の教員に見込まれ、スカウトされて討魔学園に入った────のだが、明らかなイレギュラーということで色々と面倒事を避けるために海外出張に行かせて実績を積ませていたというもの。
二つ目。一つ目の原因となった親の魔の手から主人公を遠ざけるため。今回は双子ということでちょっと特殊だが、まぁ悲惨。女主人公なら父親に手を出されそうになっているし、男主人公なら母親にヒスられて殺されそうになってる。そういうやつらとの縁を断ち切るために学園側があれこれ手を回すための時間稼ぎ。遥斗と麗良からはそういうことがあったと聞いているので、この世界のクソぶりを感じた。ちなみにクソ親の玉は麗良が潰したそうです。カッコイイね。守ってやれんで本当にすまんかった……
そして三つ目。あわよくば加護を海外で手に入れて来い、というもの。学園側的には精霊とかそういうあんまり強くないようなやつでも加護があれば、あんまり舐められずに済むという気遣いだったのだろう。なお、さすが主人公。海外でとんでもない加護を手に入れて帰国しやがった。
「こちら、我々に加護をくれた女神イドゥンです」
『あなたが遥斗と麗良が言っていたお友達なのね。私はイドゥン。アースガルズで林檎配りをしている女神です』
「うーん、とんでもないビッグネームで草ですわよ」
さすが主人公、豊穣の女神の加護を得て帰ってきやがった。これにはアースガルズの神様もにっこり。にっこりしてんじゃねぇぶっ飛ばすぞ。
『うふふっ! 宇迦からも話は聞いてるわ。宇迦の子の王子様だって』
「どういう紹介をしたのか気になるところだが、若干合ってるのが悔しい」
『ヒヒッ、二股どころか三股してるしなぁ、現在進行形でよ』
「不本意だよ本当に!!」
うん、本当にね。どういう取り決めがあったのかは知らないのだが、答えを出すためにバレンタインマラソンしていたら襲われましてね。ええ、まぁ、まだ童貞なんですけどね? 数の暴力に屈してからあれよあれよと俺が翡翠先輩、明日夢さん、琥珀さんの共有財産ということになりまして……殺しにくる勢いだったから思わず三回くらい殺したはずなんだが、即刻死に戻り戦線復帰とはやりおる。え? 相手方のご両親への許可? 土下座してケジメエンコするつもりで向かったらなんか同情されました。特に明日夢さんのご両親に。どういうことなの……
「やっぱり夢女製造機じゃないか……てか禍津日!? マジで!? DLC!?」
「脳筋特化だとあんまりお世話にならないですけど、面白い加護ですよね」
『あん? ああ、お前らもそういうやつらだもんな。てか、明日夢と同じ器かお前ら』
見て分かるとはさすが俺の記憶を全部覗いている禍津日様。そうです、俺の素敵なご友人は主人公ポジに収まっているので、主人公と同じように際限なく加護ゲットタイプです。とんでもねぇ……ロマンなんだ……
「ということはだ……英雄バトルもできる……ってコト!?」
「ワッ、ワァッ……(溢れ出る闘気)」
『ああ、こいつらも巡と同じ感じな。いいじゃねぇか』
遥斗と麗良が主人公ポジにいるからちょっとあれなんだが、討魔2の主人公がストーリー開始時にキャラクターと初対面ですって感じで始まる理由は、学園に来た理由が理由なので、一種の人間不信に陥っていたことが挙げられる。頼れるはずだった親に殺されそうになったり、犯されそうになったりした過去があって人と関われるかって話。世の中本当にクソ。
「まぁ、そういう話はそれくらいにしておいてだ。初期ダン行こうぜ初期ダン」
「いいですね。どうせ潜らないといけないですし」
「東京校でやってきた実績がここではゼロとなる……これが諸行無常ってやつか……」
春休みということで誰もいない京都校の廊下を歩きつつ、学園から支給されているタブレットでダンジョンアタックの許可を取る。パーティーは俺、遥斗、麗良。もちろん申請は受理されて、ダンジョンまでの道のりまでタブレットに表示してくれる親切設計。初期バージョンではそんな設計はなかった。最初からそうして♡
* * *
「はい、よーいスタート。初期ダンジョンタイムアタックはーじまーるよー」
そんなことを言いつつやってきたのは討魔2最初のダンジョン、【惨刑の迷宮】。なんだか隠しエリアが潜んでいそうな名前ではあるが、残念なことに隠しエリアもDLCエリアへの入口もない、由緒正しい初期ダンジョンである。
「ダンジョンの名前や出現する怪魔から分かるように、ここは元々罪人を処刑するために使われたダンジョンだそうで、人の血肉の味を覚えた怪魔が出てきますね」
なんで人間を放り込んで人の味を覚えさせると同時に怪魔を強くしちゃうんですか? という質問を当時の人間にしたいところだが、残念ながら当時はまだまだダンジョンや怪魔について勉強などされておらず、罪人を確実に殺せる都合のいい処刑場だったのだろう。
なお、研究が進んで処刑場としては使われなくなったことである程度怪魔も弱体化、初心者が入っても問題ない程度に収まっているとのこと。昔はどの程度のレベル帯だったのか気になるところである。
「では走者の意気込みを聞きたいと思います。自信のほどは」
「目に映る怪魔を素材に変える」
「はい、とても理性のある人間とは思えない意気込みありがとうございました!」
初心者向けダンジョンとはいえ、油断は禁物。比較的分かりやすい構造とはいえ、罪人を放り込んで出てこれないようにするための段差、ぬかるみなどもあるし、戦士の視力がなければ暗闇で周囲の状況把握が難しい程度には薄暗い。しかも初心者に対して「このゲームのダンジョンはこういうことをしてきますので気を付けてくださいね」と言わんばかりの奇襲もあるので、クリアリングも大事。
「では参りましょう、正直蹂躙する感じだろうけど」
慢心とかではなく、このダンジョンがマジの初心者向けダンジョンなので。正直【亜人の洞穴】の方が難しいと言われるくらいには、惨刑の迷宮は初心者向けのダンジョンなのだ。初心者向けのくせに暗くするな? それはそう。
そんなことを思いつつダンジョンを進撃していると、早速現れたのは同人誌界のエースことゴブリンの日本版たる餓鬼。サイズは大体70cm~80cmくらいのまずまず大きいサイズ感。片手にはボロボロなこん棒だったり、ボロボロな短剣が握られている。……そういえば。
「こいつらってダンジョンからボコボコ出てくるけどさ」
「おう」
「御立派様あるじゃん」
「ですね」
見た目からは分からないくらい御立派ァ! なものがついていることがバッドエンドルートや、公式からお出しされた設定資料集などで確認できるように、怪魔は御立派様を持っている。ぬっぺふほふもそうだが……
「………………ダンジョンで勝手に生まれるから増える必要ないのに、なぜ?」
「「ダンジョンから出た後に巣をつくる時に必要だから?」」
「あー、そういうことね」
日本よりも広いということもあってなのか、海外では百鬼夜行の討ち漏らしによって現世に残ったゴブリンやらオークやらに若い女性が拉致られて、処理道具及び孕み袋にされていることがある。しかも繁殖力が強いのなんので、役所が戦士を派遣した頃にはミニダンジョンレベルに大繁殖していることもあるという。ゴブリンスレイヤー=サン、出番ですよ。
まぁ、そんなゴブリンだが……うん、性欲に脳みそを支配されているせいか、女性キャラをよく狙う習性がある。匂いでも感じ取って性欲のままに襲ってくるのかね。とにかくそういう習性があるので、ステルスしないといけない状況では臭い消しなんかがあると便利。そんなの使うよりも全てぶち殺した方が早いってのは言ってはいけない。
ちなみに討魔2の主人公を孕み袋だったり性処理道具にしようとしてくる人間相手なら、状況によってはステルスした方が得。殺すと面倒だからね、仕方ないね。遥斗と麗良に手を出そうとしたら「シテ……殺シテ……」って言うまで俺が痛めつけるから安心してほしい。なお殺さない。治してもう1ループ行ってみようねくらいはする。俺はお兄ちゃんだぞ。いや、実際前世だと関わりが強すぎて色んな人達に兄妹だと勘違いされるくらいには距離が近かったからね、俺はお兄ちゃんだ。兄は弟と妹を守るためにいるのだ。
「では……刹那無心流免許皆伝一歩手前、模歩巡参ります」
「「皆伝じゃないんだ……」」
刀剣の類が使えないからどう足掻いても免許皆伝とはならないのだ。もちろん退院した師匠からの流派の鍛え直しもしてもらっているので、俺の武は更なる高みへと至ったと言ったら過言。だって俺の武は暴だもの。
「デイヤ」
「ゲェッ!?」
「フンッ!!」
やはり迅雷脚は最高や……飛び掛かってきた餓鬼をぶっ飛ばしてすぐさまかかと落としに派生することで、後ろに待機していた餓鬼もまとめて屠れる。うーむ、俺の装備がオーバー過ぎるってこともあるが、一番は餓鬼が麗良のことしか見てないってことがある。何見てんだ麗良を好きにできる権利は麗良自身と遥斗だけが持ってるんだ、てめぇらは見ることも許されん。さっさと死ね。
「よし、いい感じ」
「安定のワンパン」
「いいですね、じゃんじゃん行きましょう」
ボスまで直行でもいいが、ゲームと違ってボス部屋に入っても雑魚が乱入してくる場合があるからな……特にゴブリンとかそういう群れを成して襲ってくる怪魔は。
イドゥン
豊穣の女神。ギリシャ旅行中に陽之輪兄妹と仲良くなって、そのまま加護を与えた。