恋愛要素ありの死にゲーに転生して鉈を振り回す転生者   作:エヴォルヴ

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圧倒的激渋ボイスによって起こる化学反応

 京都校の構造を頭に叩き込むため、春休みでも開校している学園の廊下を歩いてゲームと現実の脳内マッピングを擦り合わせている今日この頃。討魔2のストーリーが本格的に始まる4月までまだ余裕があるので、遥斗と麗良と共にDLCダンジョンに突撃をかますのも悪くないと思いつつアイテム合成を行うための錬金釜がある教室に向かう。京都校の錬金釜も東京校のとほとんど変わらないので、やり方は同じ。素材とアムリタぶち込んで混ぜるだけ。ただ、東京校のやつよりも古いタイプの錬金釜だからなのか、安全面が若干や考慮されていない。考慮しろよ、必要だろ。

 

「そういえば禍津日様」

 

『あん?』

 

「俺って禍津日様の客神って扱いなんですかね? それとも眷属神?」

 

『あー……どうなんだろうな』

 

 外界からやってきた神様を迎えて信仰することで、その土地に元々いた神様────氏神様の力を強めることができるというのは日本の神道における考え方。それが客神というもので、眷属神は神様に仕えている存在で動物の姿をしている。人間だって生物学から見れば動物の一種なわけだから、加護を貰っている俺は禍津日様の眷属神という扱いになる気がしないでもない。

 

「一応少しは神の要素あるわけですし……眷属ってことでいいんですかね?」

 

『そこら辺は天照に確認だわな。神域にいる俺が確認する』

 

「お願いします」

 

 まぁ、呪われてる俺が、眷属とか客神っていうのも違和感がある気がしないでもないけれど。そもそも神様の自覚ないし。大嶽丸ぶち殺した後、数日経った頃には坩堝の諸相も引っ込んでしまったので、神様要素が消えてしまっている。そのうちテスカトリポカ様が坩堝の諸相(仮)の使い方をレクチャーしてくれるとか言っていたが、あんた鱗持ち(ワニ)に脚を持っていかれた神様だよね? 片足が黒曜石と黒い霧か煙で見えなくなってたけど。そもそもレクチャーの仕方絶対バトル形式でしょ騙されんぞ。

 

『それと、スカアハが色々準備してるらしいから備えとけよ』

 

「聞きたくなかった。楽しみだなあ。遥斗と麗良も連れてこ」

 

 そんなことを禍津日様と話しながら、餓鬼の王のアムリタ結晶を用いたアイテム合成をするために辿り着きましたるは討魔学園京都校の錬金部屋。霊薬の合成くらいなら持ってきたものを工面すればできるのだが、それ以外のアイテム合成となると……うん。難しいと言わざるを得ない。

 

『つうか餓鬼の王のアムリタ結晶で何作るつもりだ?』

 

「虜囚の枷ってアイテムです」

 

『………………ほー、悪くねぇ性能してんな』

 

 俺の記憶を覗いたのか、ちょっとだけ頭が痛そうな表情を浮かべながら呟く禍津日様。多分、最近俺の圧迫されていた脳内ストレージが解放されたお蔭なのか、蘇ってきたRTAの記憶やら何やらを突然叩き込まれたことを思い出したのだろう。世界の法則を乱して最終決戦にひとっ飛びなんてこと、バグ&グリッチあり討魔RTAじゃ常識だぜ。この世界でそんなことしたら執行者に殺される気がするのでやらないが、できる気がするんだよな……無を獲得とかできそうな気がするんだ。やらないけど。

 

 まぁ、そんなことは置いておいて。餓鬼の王のアムリタ結晶を錬金することで作れるアクセサリー、虜囚の枷はとんでもなく有用な装備だ。被ダメージが5%上昇する代わりに、持久力と装備重量を10%上昇させてくれるとんでもアイテムである。ちなみに説明には乗っていないが、支配者に対して与えるダメージを3%上昇させるおまけ付き。つまるところボスに与えるダメージ3%上昇の神装備。誰が呼んだか『圧制者探知機』。君は圧制者だね?

 さらにこのアクセサリーの外見はちょっと古風なチョーカーみたいなものなので、どんな装備に合わせてもアクセントになるおしゃれ装備でもある。虜囚もそんな使われ方するとは思ってもみないだろうが、なんかお洒落なのが悪い。おしゃれな外見だとそういう目的に使われてしまうんだ。悔しいだろうが仕方ないんだ。

 

「……ふむ。やっぱりアイテム合成は軽視されがちと見た」

 

 教室の扉を開けると埃を被った錬金釜とご対面。錬金術の授業やテストって難しいからなぁ……しかも二年生になってからは必修科目というわけではないし、やらなくても戦士にはなれる。霊薬やアクセサリーだってアイテムショップという名の購買で購入できるやつでほとんど賄えるし、回復用の傷薬や回復魔法やスキルで大抵の傷は治るので強力な回復霊薬を用意する機会も少ない。そもそもそんな霊薬を用意するくらいのヤバイ怪魔を相手にする時は回復薬なんて使ってる暇がないというオチ。俺も体力調整で回復薬を使う機会はあるが、ほとんどスキルと霊薬で補っちゃうしなぁ……

 

「まぁいいや。とりあえず掃除からだなぁ……」

 

 京谷先生に直接指導してもらった、錬金術に利用する道具達の掃除技能が今花開く時よ。そもそもこんなに汚れていたら、宿っているであろう付喪神様がブチギレてしまってもおかしくないですぜ。まだ建立されてから百年も経っていない東京校の錬金釜もたまに喋るし。何で喋るのか? 俺にもよく分からん。

 

 ちなみに京都校は福沢諭吉大先生を含めた幕末の有志達が尽力して建立した由緒正しい学校です。前身はもっと昔と聞くが、開校したのが仏門の名もなきどなたかが尽力なさったとか。ダリナンダイッタイ。そんな由緒正しい学園だというのに、錬金釜を含めた道具の扱いが雑なのはいかがなものか。私は悲しい……ポロロン。

 

「えーと……確か埃を落とす前に火を焚くんだったな……」

 

 最初に説明を受けた時に、そんなことしたら大炎上するんじゃねぇかと思ったが、錬金に使う火というのは創造の火────とても神聖な火であるとのこと。その火を付けた状態で埃や釜の中にこびりついた汚れという名の穢れを取り除くのが大事なのだとか。だからなのか、未だに錬金釜の火は火打石を用いるか、太陽光を集めて着火させるという原始的な着火方法だ。

 

『穢れを以って穢れを祓う俺とはまた別の祓いだな。汚れを穢れに見立て、火によって祓うことでこの部屋を神聖なものとするって感じか』

 

「結界術みたいっすね」

 

『案外知らず知らずに結界術を使ってるってのはよくあるもんだ』

 

 お寺や神社なんかはちゃんと管理されていれば怪魔が入ることができない領域になっているし、案外知らないだけで、結界術に触れる機会は多いかもしれない。

 

「不思議なことに熱くないんだよなぁ」

 

 特別な火ということが理由なのかもしれないが、錬金釜の火は熱くない。いや、熱いには熱いが、出来立てのラーメンが入っている温かい(どんぶり)を触っている程度の熱さだ。着火した時はただの火だというのに、不思議なものだなぁ……なんて思いつつ、手入れ用の油と柔らかい布で釜の表面を擦っていく。この油も汚れ落としの効果があるらしいが、皮膜を作ってやることで釜に汚れが付きにくくするのが一番の目的。この油も高いんだ……600mlのペットボトル一本分で4万はする。錬金釜には4万以上の価値があるので必要経費として割り切ってはいるが、高いことには変わりない。パリピイケメンボーイズ含めた鍛冶師の皆が手入れで使っている油なんかも、それくらいの価格帯らしいので本当に生産職の皆様には頭が上がらないんだ。ところでパリピイケメンボーイズ、フックバスター六式はパイルバスターの改修版らしいが、どうしてパイルバスター弐式とかにならなかったんだ? パイルバンカーはもう持っているからと言われたら納得してしまうが……

 

 汚れを落として皮膜を作ったら、次は特別な薬剤を塗布していく。油で皮膜を作る前にやると薬剤が全体に浸透しないのが不思議。でも京谷先生は錬金術で嘘を吐かない人だからな。白澤様も間違いないと言っていたし、間違いないのだろう。特別な薬剤は資格がないと作成も購入も所持も許されないとんでもない劇薬。全力で資格を取った俺に隙はない……! 実は茶菓子同好会のメンバーの中で錬金術系のライセンスを最高ランクまで修めたのは俺だけである。頑張れ五家。加護を持っていなかった凡人であっても一ヶ月みっちり勉強すれば取れるから。翡翠先輩、ローズ先輩、三野先輩のお三方は討魔学園系列の大学に進学するご予定だが、入学説明会の時からサークル勧誘だったりが来るなんて思ってもみなかったと愚痴をこぼしていた。先日、大学から色々書類を貰いに行ったそうだが、その時はナンパもあったと聞いた。残念ながら翡翠先輩は今のところ俺がお付き合いさせていただいているので、他を当たってどうぞ。

 

 ……そういえば、翡翠先輩ならばあの黒い雷を使っていた女の子のことを知っていたりするだろうか? 霊薬原液がぶ飲み事件のせいなのか、小さい頃の記憶がちょいとばかしあやふやな俺が覚えている、ハンバーガー食べて泣いていた綺麗な髪をボサボサなままにしていた女の子。元気にしているだろうか。遊んでいる時に戦うことが怖いと言っていたし、戦士の家系だったんだろうけど……

 

「逃げてもいい*1、って言ったしなぁ」

 

 いや、本当に。小さな女の子が戦う世界は修羅の国とかではなく、ただの地獄だと思う。どこぞの代行者が言っていただろう、「一人の人間で救えてしまう世界なんて滅べばいい」とかなんとか。人類滅亡ルートのお話してます? してるよね? じゃあ燃やすね……経験値美味しい! 経験値美味しい!

 

「ま、いつかどこかで会う可能性もありましょうや……っと、これでいいかな?」

 

 なんということでしょう。埃にまみれて使い物にならない外見をしていた、古臭い錬金釜が、新品のように────しかし、長年丁寧に使われてきた漆器のような重厚かつ繊細な艶を帯びた錬金釜となったではありませんか。なお、他の道具も手入れしないといけないので……今日はアイテム合成無理だな! だって釜を磨き上げるまでに1時間程度使ってんだぞ。しかも毎日の手入れである磨き上げが終わっただけであって、まだ工程が残っているのだ。どれだけ雑に扱われてきたんだこの教室……となるレベルで汚れが溜まっている。業者を呼べ! そして京谷先生も呼べ! 京都校の杜撰な錬金道具の管理を見直すのです……他の道具も手入れするとなると、一日中道具と向き合うことになるだろう。

 

「というか菰成さんいんのにどうなってやがる……」

 

 あの人も錬金術のライセンスを最上位にしているはずなんだが……あ、会社経営忙しくてそれどころじゃない説あるな? というか何だよこの部屋に蔓延している臭い。薬品の臭いじゃねぇだろこれ。おや? 隙間に何か……………………不純異性交遊の気配を検知。学び舎で何をしておられるか。

 

「確かに錬金術じゃホムンクルスの材料にそれらは挙げられるがな……!」

 

 これから一年間、お世話になるであろう部屋を不純異性交遊の場にして堪るか……! 俺が来たからにはこの教室は錬金術の部屋だ……アイテム合成を行う教室だ……! あ、それはそれとして。

 

「付喪神様、ベイクドモチョチョ食べます?」

 

「────いただこう」

 

(渋い声だよなぁ……)

 

 錬金釜にぱっくりと横一文字の亀裂が走り、どでかい口が開かれる。うーん、とんでもない異形。けど声で分かるぞ、異形界でも屈指のイケメンだろう。イケオジ枠的な、ダンディなお爺様的なイケメンだ。きっとそうだそうに違いない。

 

「あ、自己紹介遅れました。模歩巡です。一応荒覇岐やってます」

 

焚福茶釜(ぶんぶくちゃがま)だ」

 

「狸……!?」

 

「それは仮の姿だ。それと、私は(ムジナ)だ」

 

「穴熊……?」

 

「それは(あずま)の学び舎の焚福茶釜だ」

 

 あれ、ムジナって穴熊だったり狸だったりするやつなのでは……? まぁいいやよろしくなぁ!!

*1
それは呪いの言葉であった




焚福茶釜(ぶんぶくちゃがま)
錬金釜。付喪神。京都校は貉。東京校は穴熊。激渋ボイス。部屋で埃を被っていたし、とんでもない不敬(不純異性交遊)をしていた学生については無関心。気狂いへの評価は東京校の茶釜から聞いていた通りなので高評価。誰だって大切に扱われたいのだ。

荒覇岐
掃除!掃除!手入れ!手入れ!遥斗!麗良!新年度に入る前に大掃除を仕掛けるぞ!!――――ついて来れるか。

狂い火
―――――――――ついて来れるか、じゃねえ。てめぇの方こそ、ついて来やがれ――――!!

ヘラクレス♀
行くぞ、鉈ブンブン丸。掃除用品(ぶき)の貯蔵は十分か。
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