吟遊詩人の詩 作:ホメロス
「ねえ、ちょっといい?」
「おや、マスター様。どうかいたしましたか?」
ワタクシがカルデアなる地に召喚され幾日かたったころ、カルデアのマスター……藤丸立香様が話しかけてこられました。
はて、ワタクシは特に問題を起こした覚えはないのですが……
「いや、ホメロスのことほとんど知らないからさ」
ああ、そういうことでしたか。
確かにワタクシが残したものはともかく、ワタクシ自身の記録はあまり残っていませんでしたね。
「それに、イリアスやオデュッセイアの作者というには話している相手の幅が広いし……」
「ワタクシ自身、英雄の方々が好きですから」
「それにしては距離近くない?」
ふむ?そうでしょうか?
確かにアタランテ様と子供の面倒を見たり、メディア様とお茶会したり、オリオン様の相手をしたり、ヘクトール様とお酒を飲んだりしていますが……
「ポルクスと仲良くしたりオジマンディアスと話してたりしてるし……」
「ああ、そういうことでしたか」
確かにワタクシは本来ならば話すのも恐れ多い方々と話させていただくことも多いですからね。
その中には一見、ワタクシと関わりのないように見える方もいらっしゃいますし、マスター様が疑問に思うこともおかしくはありません。
「一応、地中海地域だけですよ?」
「それはそうだけど、どういう経緯でホメロスは仲良くなっているのかなって」
まあ、時代も地域もバラバラですからねぇ……
まさか、あの方々に
「運と巡り合わせ……そしてそれによる縁としかいいようがありませんが……」
ワタクシ……"俺"は古い古い記憶を掘り起こす。
「語ることこそ吟遊詩人の本懐ですし」
瞼の裏には……盲目なので何も浮かんでこないけれど、耳の奥でかつての日々が蘇ってくる。
「ワタクシの生前の話を語るとしましょうか」
「おお!聞かせて聞かせて!」
マスター様の声が弾んでいる。
目は見えないが、マスター様は目を輝かせているのだろう。
「そうですねぇ……一体どこから語りましょうか」
「できれば最初から教えて欲しいな」
ふむ、マスター様はどうやら一生分全てを聞きたいようですね。
しかし、そうすると話が長くなりすぎます、どうしたものか……
「先輩、それにホメロスさん。お疲れ様です」
「あ、マシュ」
おやおや、どうやらマシュ様もいらっしゃったようで。
そういえばマスター様とマシュ様はサーヴァントの方々から直接、自身のことについて教えてもらっていたのでしたね。*1
私の番だと思えばいいのでしょうか?
「先輩たちは何を?」
「えっと、ホメロスに生前のことを教えてもらおうと思って」
マスター様がマシュ様に経緯を説明しているようなので、話し終わるまで少し待ちましょうか。
「なるほど……確かにホメロスさんは名前と作品のみ伝わっているような方ですからね」
「そうなんですよねぇ……なんなら実在も怪しい類ですし……まぁ、こうして居るわけですけども」
「ホメロスってそんな曖昧な存在だったんだ……」
マスター様の言う通りですね。
ワタクシ/俺は曖昧な存在、幻霊の方が近いかもしれないくらい記載が残っていませんから。
「それじゃあ、マスター様とマシュ様にホメロス先生が語ってさしあげましょう」
「はい!よろしくお願いします!」
「よろしく!」
「マシュ様も元気がいいようでなによりです。ではまず最初に……」
ワタクシ/俺について語る上で、最初の言葉はこれがいいでしょう。
「御二人は転生って信じますか?」
スピンオフ漫画『教えてFGO!偉人と神話のぐらんどおーだー』参照
FGOの幕間みたいなものなので時系列は曖昧です。
しかし、ホメロスの初登場はアトランティスのつもりなので、少なくとも二部五章以降ですね。
感想や高評価をいただければ幸いです。
多分続きません。