【完結】デジタルモンスターA&A~紡がれる物語~   作:行方不明

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第十話~一歩を踏み出すための宣言!~

 時は少し戻って、大成がゴブリモンたちに攫われていった頃。スレイヤードラモンとワームモンは街外れで一緒にトレーニングしていた。

 ちなみに、“一緒に”とは言うが、トレーニングしているのはワームモンで、スレイヤードラモンはそれを見ているだけである。

 

「もう、ダメ……」

「まだ始まってから数分も経ってねぇぞ……」

「疲れたよぅ」

「お前の場合、疲れたというよりもやる気がないだけだろ」

 

 ワームモンを鍛えることになったスレイヤードラモンだったが、内心で“ワームモンが強くなるのは難しいだろうな”と思っていた。理由は言わずもがな、である。

 ワームモンという種が戦闘に適さない種であることは仕方ないことだ。だが、だからこそ、強くなるにはそれ以外の何かが必要になる。頭脳であったり、運であったり、仲間であったり。人によってそれはまちまちなわけだが、ワームモンにはその“それ以外”がないのだ。

 そんなタイプの者が強くなるのに一番必要なもの。それはやはりやる気だろう。自分の弱さにめげない反骨精神とでも言うべきものが、必要なのだ。だが、当の本人のワームモンは、その性格が災いしてか、強くなるということに積極的ではない。

 持つもので劣るのに、さらに本人に強くなる気がない時点で、ワームモンが強くなるのは難しいを通り越して不可能の一言である。

 

「ったく。お前はなんで大成と一緒にいるんだよ」

「ぇ?」

「お前、究極体になりたいって訳じゃないだろ?究極体なんてものを目指さなければならない大成とそんなお前がどうして一緒にいるんだって話だ」

「僕は……」

 

 それは、ワームモンにとって意図せぬ質問だった。傍から見れば、ワームモンに大成と共にいなければなならない理由はないように見える。

 もちろん、それは傍から見ていればそう見えるだけの話であって、ワームモンからすればちゃんと理由がある。

 

「えっとそれは――」

 

 大成と一緒にいる理由を口に出させることでそれを再確認させ、ワームモンに発破をかけるのが、この質問をしたスレイヤードラモンの目的だった。

 それは、途中までうまくいったというべきだろう。事実、ワームモンは何かを思い出しかけたのだから。だが、現実とはうまくいかぬもので、そういう時に限って邪魔が入ったりする。いや、これも重要なことではあるし、決して邪魔の一言で片付けていいものではない。

 だが、それでも――。

 

「リュウ!ワームモン!大成が攫われたっ!」

 

 タイミングが悪いと言う他ないだろう。いや、先ほど述べたように、決して攫われた大成を軽視している訳ではないのだが。

 大成誘拐の報を伝えに来た優希とレオルモン。その手には、下手くそな字が書かれた木の板が握られていた。

 木の板には、大成を攫ったことと返して欲しくば指定の場所まで来いという旨のことが書かれている。下手くそな字で。

 

「何があったんだ?」

「それが――」

 

 優希とレオルモンは、この街の長であるデジモンに滞在の許可を取った後、近くの木陰で勉強会をしていた。

 ちなみに、教師役はレオルモンで、生徒役は優希である。意外なことに、レオルモンは頭が良いのだ。優希のために人間世界のことを学んだレオルモン。その頭脳は、今や大学受験クラスの勉強ならば、普通に他人に教えることができるようになっているほどだ。

 “セバスが来てから、すごい助かっている”とは、優希の暮らす孤児院の保護者役の人物の言葉である。

 もっとも、優希からすれば、身近に教師役がいる有り難さとその勉強中の見た目的な面で、かなり複雑な思いを抱いていたりするのだが。

 ともかく、勉強会をしていた優希たちの前にやって来た一匹のテントモンが、この木の板を手渡してきたのである。当初、難解な暗号に見えるほどの下手くそな字を前にイタズラかと思っていた優希たちであるが、解読が進むにつれて事の重大さがわかったのだ。

 ちなみに、一回だけ優希たちが、下手くそな字を前に解読を投げ出しそうになったことは、ほんの余談である。

 

「そんな……大成さんが……」

「さん付けかよ……いや、いいけどさ。一人で来いとは言われてないんだろ?」

「ええ。そのことは書かれてない。こちらを舐めているのか、それとも……」

「……罠か。狙いは優希か、俺か……どちらにせよ、俺のせいだな」

 

 そう、今回の大成誘拐の責任は、少なからずスレイヤードラモンにあるといっていいだろう。

 スレイヤードラモンの身近にいた人間は、ある程度“戦えた”人間だった。つまり、別行動したり、放っておいたりしても構わなかった。だからこそ、その人間の基準で物事を考えてしまっていたのだ。

 ようするに、この世界で戦う力のない大成を一人別行動させる危険性を思いつくことができなかったのである。

 とはいえ、グダグダ言っても意味はない。既に事は起こってしまったのだから。大事なのはここから、どうするかである。

 

「急ぐぞ」

「どうするの?」

「俺がいない間にどっちかを狙われてもまずい。一緒に行って、俺が殿を務める。セバスは優希と大成を守りながら、退避。ワームモンは、セバスの補助だ」

「えぇっ!?僕も!?」

 

 そんなこと思いもしなかったとばかりに、驚くワームモン。だが、スレイヤードラモンからすれば、そっちこそ何を言ってるんだという話だ。自分のパートナーが危機に陥っているというのに、動こうとしないワームモンに優希たちは呆れるしかない。

 だが、ワームモンとしても、内心でかなり葛藤していた。大成を助けに行きたい気持ちは当然のようにある。だが、同じくらいに“怖い”という感情もあるのだ。行きたい。でも、行きたくない。ワームモンは、そんな真逆の気持ちに悩まされていた。

 

「僕は……僕は……」

 

 決断するということは、その先のすべてを決めることと同義だ。だからこそ、決断するということは難しい。

 そうすることで、取り返しのつかないことになってしまうかもしれないから。

 そうすることで、どうしようもない後悔に苛まれていしまうかもしれないから。

 それが大きな決断であればあるほど、失敗した時のダメージは大きくなる。見方を変えれば、決断するということができるのも、一種の“強さ”となるのだろう。

 ワームモンは今、決断を迫られていた。真逆の気持ちに悩まされ、どちらかを選ぶ決断を。すなわち、行くか、行かないか。大成か、自分か、である。

 だが、即断即決できる者など希だ。そんな、人がどうしようもない悩みを抱き、決断できない時、天秤を動かすのはいつだって外部の力である。もっとも、大抵の場合は、“時間”という力によって一方の選択を強制され、そうして人は後悔することになるのだが――。

 

「いいから来い、行くぞ」

「へ?」

 

 幸か不幸か、この場には時間以外の力があった。

 スレイヤードラモンに連れられて、ワームモンは行くことを強制されたのである。スレイヤードラモンの背には、優希とレオルモンが掴まっている。いきなりの現状に、ワームモンは戸惑うばかりだ。

 未来は未確定。どんな選択をしようと、どちらを決断しようと、何かしらの事はある。どちらを選んでも何ともないかもしれないし、どちらを選んでも後悔するかもしれない。

 ~だったら、~であれば。そんなことを言い出してはキリがない。“人生は重要な選択肢の連続”とそんな格言もあるくらいだ。後悔しないように生きることなど、いろいろな意味でできるはずもない。結局、なるようになるしかないのだ。

 

「……うぅ……ごめんなさい……」

「……」

「ごめんなさい。ごめんなさい……」

 

 ワームモンは泣きながら、壊れたように“ごめんなさい”と呟き続ける。それを、優希たちは聞かぬふりをした。

 この状況はワームモン自身で選んだのではない。逃げによって決まったことだ。決断から逃げ出し、人の命がかかっているほどの重要な選択を他者に任せる。それは、他者の命という重責を他人に背負わせる、卑怯者の行いだ。

 そんな、卑怯で臆病な自分自身のことが、ワームモンには死ぬほど情けなかった。

 

「あれ――ッ!」

 

 スレイヤードラモンたちは現在、目的の場所を目指して低空を飛んでいた。

 そんなスレイヤードラモンたちの前に飛んできた一発の火炎弾。火炎弾自体は成熟期相当の威力だ。そんなものをスレイヤードラモンが食らうはずもなく、一瞬で高度を上げてその火炎弾を躱す。

 

「……あれは……セバス」

「了解です。お嬢様!」

「というわけだけど、……リュウ?」

「いいのか?危険だぞ?」

 

 優希たちを襲った火炎弾を放った犯人は、すぐに見つかった。しかも、犯人はデジモンではなく、人間の男だ。それだけでも驚くべきことだが、優希はその男に見覚えがあった。だからこそ、言外に自分が行くという意思表示をしたのだ。

 そして、スレイヤードラモンも優希の言っていることはわかる。だからこそ、聞き返したのだ。いいのか、と。

 この高度まであの男の謎の攻撃は届かないのだろう。先ほどから攻撃をしてこない。だからこそ、この高度のままで行けば、あの謎の男を躱して大成の元まで行けるだろう。というか、見た感じではあの男の力はスレイヤードラモンの敵ではないレベルだ。スレイヤードラモンが瞬殺すればいいだけである。

 わざわざ、危険を冒す必要はない。それを優希もわかっている。だが――。

 

「大丈夫。いざとなれば“奥の手”もあるし……私たちの問題をリュウ任せっきりにしたくない。それに、いざとなったらリュウが助けに来てくれるんでしょ?」

「……ハハッ。任せっきりにしたくないって言うくせに、いざとなれば助けろかよ。そこは言葉にするなよ」

「あはは、善処するわ」

「っは!?この会話……まさか!?スレイヤードラモン殿!お嬢様がほしくば、私を倒していきなされっ!」

「いや、お前は勘違いしてるから。冗談でそこまで本気になるやつ初めてだよ」

 

 ようするに、優希はこのスレイヤードラモン任せの現状が嫌だったのだ。かつてこの世界に訪れた時、幼かった優希は自分のすべてを他人に任せるしかなかった。そうしなければ、生きることすら難しかったから。

 だが、それから五年経っている。優希も成長しているのだ。その事実を、あの頃の自分しか知らないスレイヤードラモンに見せたいのだ。あの頃の、守られていただけの自分とは違うと、他ならぬスレイヤードラモンに証明したいのだ。

 一方で、スレイヤードラモンとしても特に反対する理由はなかったりする。スレイヤードラモンは、現実がいつも突然なものだということを痛いほど知っている。経験値は稼げる時に稼がなければ、いざという時後悔するということも死にたくなるほどに知っている。だからこそ、自分の庇護下にいられる内に経験値を稼がせた方がいいと考えているのだ。

 

「よしっ!いざという時は、大声で呼べよ」

「さあね。案外すぐに片付くかもね」

「行きましょうぞ!」

 

 高度を落としたことで、再び始まる謎の男の攻撃。それを避けながら、優希とレオルモンを地面に下ろし、そしてそのままワームモンを連れて飛んでいく。謎の男は、初めから優希が目的だったのか、それとも無駄だとわかっているのか、スレイヤードラモンに追撃する様子を見せなかった。

 ともあれ、人間の優希を下したことで、スレイヤードラモンはさらにスピードを上げることが可能になった。大成の捕まっている場所まで、残り数秒という所である。

 すでに大成の姿は見えている。これ見よがしに大成は木に吊るされて、数十人のゴブリモンたちに囲まれていた。そんな状況に、大成自身は退屈そうにしている。

 

「あいつ、意外と余裕そうだな」

「うぅ……ごめんなさい……」

「ほら、いつまでごめんなさいマシーンになってるんだ。行くぞ」

「え?」

 

 呆然と呟いたワームモンをスレイヤードラモンはボール投げの要領で構えた。そこまでされると、ワームモンもこの先の展開が読めてきていた。まるで教科書に載っているような、理想的な投擲フォーム。

 強くなっていく嫌な予感を前にワームモンが静止の声を上げるよりも早く。一瞬のうちに、スレイヤードラモンは、ワームモンを投擲した。

 

「行って来いっ!」

「まっ……うそぉおおおおおおおお!」

 

 なすすべもなく、ワームモンは超高速で大成目掛けて飛んでいく。その時間は実際には一瞬にも満たなかっただろう。だが、ワームモンにはその一瞬が永遠にも感じられていた。

 高速に過ぎ行く風景の中に、見える走馬灯。ワームモンが先ほどまで感じていた罪悪感など、そんな臨死体験に匹敵する恐怖を味わっている中で、はるかかなたに吹っ飛んでいた。

 ちなみに、この一連の行為で驚愕すべきは、スレイヤードラモンのその行為ではなくその技量である。ワームモンの体がバラバラにならない限界速度を見極め、しかも着弾による衝撃を計算した上での投擲。無駄に高い技量だが、そんなことは投げられた当人には関係ない。“この事件の中で一番死ぬかと思った瞬間だった”と後にワームモンは語っていたりする。

 

「ぉおおおおお!ぶべらっ!」

「……っ!なんだぁっ?おい、何があった!?」

「わからん!何者か……が……?」

「えっと……は、はろー……?」

「……」

 

 そんなワームモンは、大成とゴブリモン軍団のど真ん中に着弾した。

 突然の事態にゴブリモンも大成も唖然としている。いきなりの攻撃とも取れる事態もそうだが、現れたのがワームモンというまさかのデジモンだったことに驚いているのだ。

 もっとも、反対に突然敵地のど真ん中に落とされたワームモンも、恐怖でどうにかなりそうだったりするのだが。

 敵味方全員が唖然としているという、せっかくのチャンス。だというのにワームモンは動けない。そんなワームモンに空から見ているスレイヤードラモンは呆れていたりする。

 

「っち、ビビらせやがって……おい、コイツもヤッちまえ」

「ひっ……」

「お前何しに来たんだよ!」

 

 そう大成がツッコミを入れてしまうほどに、ワームモンはここへ来てから何も出来ていなかった。

 ゴブリモンたちは、ワームモンごときなど敵ではないと認識しているのだろう。薄ら嗤いを浮かべながら、ワームモンをどう料理しようかと相談している。当然だ。恐怖で動けなくなっているだろう、いかにも弱そうな者を警戒しろという方が無理な話だ。

 そんなゴブリモンたちの嗤いを目にしたワームモンは、震えに震えていた。震えている場合ではないというのに。こんな時こそ、震えは止めなくては、何事も成すことはできないというのに。

 助けたい。そう思っていなかったわけではない。だが、そんな思いとは裏腹に、今すぐここから逃げ出したい、とそんな気持ちがワームモンを支配していた。

 

「ヒィッ……腰が抜けて……」

「おいっ!本当に何しに来たんだ!いいから逃げろっ!」

「でも……」

 

 動かないワームモンなど、恰好の的でしかない。嬲り殺すつもりなのだろう。ゴブリモンは嗤いながら、ゆっくりとワームモンへと近づいていく。

 ゆっくりと近づいてくる死。だが、そんな中でワームモンが思い起こしていたのは、走馬灯でもなんでもなく、少し前にスレイヤードラモンが言った言葉だった。

 

――言いたいことがあるなら、ハッキリと、デカイ声で言え。結局な、世の中で上手いこと行くのはそれが出来る奴だ――

――いつも周りにビビって縮こまってると、本当に叶えたい思いができても、結局いつも通りに縮こまることしかできなくなるぞ――

――お前はなんで大成と一緒にいるんだよ――

「……だ」

 

 その言葉と共に、思い起こされるかつての記憶。

 かつて、生まれて初めて意識が芽生えた時、ワームモンはすでにそこにいた。卵から這い出し、たった一人で、閉じれた場所で生きていたのだ。そんな一人で生きていたワームモンが初めて出会ったのが、大成だった。きっと、それにはワームモン以外の意思の介在があったのだろう。

 だが、そんなことは関係なかった。ワームモンにとって、大成とは生まれて初めて出会った者なのだ。その関係が、“友達”、“相棒”、“主人”、どのような言葉で表した者なのか、ワームモンにはわからない。もしかしたら、刷り込みに近いものなのかもしれない。だが、それでも、ワームモンにとって大成は唯一の存在なのだ。だからこそ、邪険に扱われても大成と一緒にいるし、攫われた時も見捨てずに助けたいと思ったのである。

 もう、時間はないだろう。ゴブリモンはすぐそこまで迫っている。だからこそ、ワームモンはそれを望む。たった一歩でいい。一歩を踏み出す、そんな勇気を。

 スレイヤードラモンは言った。言いたいことがあるのなら――。

 

「僕はもう……逃げ出すのは嫌だっ!少しくらい立ち向かってやるっ!」

 

 ハッキリと、デカい声で。

 大成が、出会ってから聞いたことのないようなワームモンの叫び声。全身が震えながらの叫びだ。ハッキリ言って、まったく格好ついてない。

 だが、それでも、大成には信じられない思いだった。気弱で臆病なあのワームモンが、立ち向かう姿勢を見せたのだから。しかも、震えながら、逃げ出したい気持ちを抑えて。

 だが、いくら叫んでも、意味はない。というか、それだけで現実が変わるようなら、とっくの昔に現実はすでに滅びている。

 

「そうか、立ち向かうかぁ!なら、ここで死になぁっ!」

「ひぃいいいいい!」

「おい、やめろっ!」

 

 ゴブリモンの棍棒がワームモン目掛けて振り下ろされる。

 先ほどの勢いはどこへやら。ワームモンはすっかりと萎縮してしまって、動く気配もない。もう間に合わない。木に吊るされている大成は何もできない。

 普通ならば、ここで終わりだろう。この場にいるのが、ワームモンと大成だけだったのならば。だが、この場にいたのは、この二人だけではないのだ。

 

「よかったぜ!よく言った!」

「っ!リュウ!」

 

 先ほどまで、上空で観戦していたスレイヤードラモンが、超高速でこの場に降り立つ。スレイヤードラモンとしては、ワームモンにもう少し粘ってほしかった。もっとも、これでも十分な成果があったとは思っているのだが。

 一瞬のうちにワームモンと大成を救出したスレイヤードラモンは、二人を地面に下しながら、ゴブリモンたちと向かい合う。

 

「大成、ワームモン。お前ら先に優希のところに行け。なに、すぐに追いつく」

「でもっ!」

「いいから、いけっ!あっちだ!」

「ッ!すまねぇっ!」

 

 スレイヤードラモンの気迫に押されてか、ワームモンをその手に抱いて(・・・)、大成は走り出す。

 人数的な戦力差は数十倍。そのすべてを、スレイヤードラモンに任せることしかできない自分自身にイラつきながらも、大成は走るのをやめない。自分ではどうしようもできないことだと、わかっているから。だからこそ、スレイヤードラモンの言った、“すぐに追いつく”という言葉を信じるしかなくて。そんな、彼を見捨てて置いてくるしかなかった無力な自分が、大成は情けなかった。

 だからこそ――。

 

「くそっ……すまん……」

「いや、謝る必要はないぜ?もう終わったから」

「……」

 

 こうして、自分の後ろをついてくる(・・・・・)スレイヤードラモンに、ド肝を抜かれたのだが。

 全力疾走しながらも口を開けて呆然としているその大成の姿は、いっそのこと笑いを誘うものだった。

 

「おーい?」

「ってはやっ!」

「いや、すぐに追いつくって言ったじゃねぇか」

 

 いや、それにしても早すぎるだろう、と。

 別れてから数秒も経っていない。だというのに、数秒もかからずに戦闘を終わらせて、全力疾走を続ける自分に追いついたという事実に、大成は驚愕を隠せなかった。

 スレイヤードラモンが強いことは知っていた。だが、あの数十倍の人数を瞬殺できるほどまでとは、大成には予測つかなかったのだ。そんな大成は、恐る恐る尋ねる。自分の中の常識と戦いながら。

 

「……リュウってもしかして……完全体だったりする?」

「いや?俺は究極体だけど……」

 

 直後、再びの驚愕の絶叫が辺りに響き渡った。

 




というわけで、表はワームモン主人公回。裏はスレイヤードラモン無双回の第十話でした。
ここから、少しづつ大成とワームモンも変化していきます。

さて、次回は優希とレオルモン。優希の奥の手とレオルモンの〇〇回です。

それでは、次回もよろしくお願いします。
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