【完結】デジタルモンスターA&A~紡がれる物語~ 作:行方不明
旅人たちにあの場を任せたスレイヤードラモンと大成たち。そんな彼らは、上空にある何かを目指して空を翔けていた。
だが、空を飛ぶのは彼らだけではない。彼らと共に空を飛ぶのは――。
「リ、リュウ!?なんか後ろで木が空を飛んでるんだけど!?」
「あー……ドルのやつ暴れてんなー」
そう。彼らと共に空を飛ぶのは、先ほど大成たちがいた森の木々だ。十数メートルはあろうかという太く巨大な木々が、紙のように空を舞っている。
下手をすれば自分たちの下まで届きそうになっているものもある辺り、大成はその光景に頬を引き攣らせていた。
「す、スレイヤードラモンさん……下の森がすごいことになってるんですが……」
「気にすんな!」
「いや、気にするなと言われましても……」
「うるさいですぞ、スティングモン殿!スレイヤードラモン殿が気にするなと言ったのなら、気にしなければいいだけの話ではないですかな!」
スティングモンが気にしている通り、眼下の森はそれはもうすごいことになっていた。具体的には、森の緑はすっかりと禿げ、土煙が巻き上がり、地形すら変わりかけているほど。
どれだけ暴れているんだという話で、スティングモンがそんなことを思う間にも、木々は倒れ、空を舞う。時々それに混じって、デジモンたちが空を舞っていたりもして――。
「……」
「……」
「……」
「これ……もしかして、ドルのやつ進化したのか?うはっ……ずいぶんと久しぶりだな!」
「……リュウ?」
「ああ、本当に気にすんな。あいつの究極体はパワー馬鹿だからな。気にするだけ無駄だ。それよか、急ぐぞ。巻き込まれたら堪らん」
眼下の森で繰り広げられているだろう阿鼻叫喚の地獄絵図を想像してしまい、微妙な表情となった大成たち。そんな大成たちを気にせず、スレイヤードラモンは上空の何かを睨む。
スレイヤードラモンの視線の先。そこにあるものを、大成たちの目が捉えることはできなかった。大成たちには何も見えていなかったのだ。
いや、もしかしたらスレイヤードラモンにも見えていないのかもしれない。ただそこに何かがある、とそれだけがわかっているのかもしれない。
「そろそろだ。気合入れろよ?」
「……わかった!どのみちここまで来たら引き返せないんだから……絶対に優希を助けて帰ってゲームするぞ!」
「はいっ!」
「了解ですな」
「聞いといて難だけど本当にそれでいいのか……いや、お前らしいか。それじゃ、行くぞ!」
呆れたような顔で大成を見ながらも、スレイヤードラモンは大成とレオルモンをスティングモンに渡した。
これで、彼の両腕は自由になった。両腕が塞がったままではできなかったこともできるようになった。
すぐさま、スレイヤードラモンは自分の剣を上段に構える。別に戦うわけではないのだから、剣技や隙の大きさなど関係ない。ただ、目の前のものを切り裂くだけの威力を出せばいい。
そのことを念頭に置いて、スレイヤードラモンは前に加速する。スティングモンを置き去りにして、加速によって得た運動エネルギーすべてを、剣に集中する。
そして。
「切り裂けぇっ!」
一切の躊躇なく、上段に構えた剣を振り下ろした。
その瞬間、スレイヤードラモンの目の前に、空間の裂け目が生まれる。それは、目の前の何かを隠す透明な壁を切り裂いたからこその光景。だが、まるで剣によって空間が割かれたかのような光景だった。
「あれは……!?」
そして、その空間の裂け目の向こう側の光景を見た瞬間、大成たちは驚くしかなかった。そこには、大成たちには
「驚いてる暇ねぇぞ!スティングモン急げ!」
「はっ、はい!」
呆然としてしまっていたスティングモンだったが、スレイヤードラモンの声によって正気を取り戻した。彼は、急いで裂け目の中へと入っていく。
次いで、スレイヤードラモンもその中に突入。
彼らが入ったその場所は、何らかの街だった。空に浮かぶ街。透明な壁で外部から隠蔽されている、まさに隠された街というのがふさわしい街。ゲーム“デジタルモンスター”の街によく似た街。
「ここは……」
「……?なんだよ。大成たちは来たことがあるのか?」
「ああ。ここは……始まりの街だ。俺たちがこの世界に来て始めにいた街だよ」
そう。ここはこの世界に連れて来られた時に大成たちがいたあの始まりの街だった。すべてが始まったあの街だった。
「……なるほどな。ここに優希がいるかもしれないってことは、優希を連れてった連中は大成たちをこの世界に連れて来た連中と関わりがあるか、それか……」
「連れて来た者たちそのもの、ということですかな?」
「ああ。どっちにせよ面倒なことになりそうだ。大成、スティングモン、セバス。この街にいたことがあるんだろう?優希の居場所に心当たりはないのか?」
「えっと……いや。悪い」
スレイヤードラモンの言葉に、大成たちはバツの悪そうな顔をして黙るしかなかった。
この街にいた頃、大成とスティングモンは一日を無駄に過ごしていて、この街のことなどよく知らない。レオルモンは優希といろいろ調べてはいたが、この街の表面的な構造しか調べられていない。
ようするに、大成たちもレオルモンも優希がいそうな場所に心当たりはなかった。
「手当たり次第に探すしかない、か?」
「……それしかねぇな」
「仕方ないですな」
建物の中込みでの街の中から、人一人を探し出す。それほど大きな街ではないとはいえ、かなりの数がある建物を含めれば、気が遠くなりそうな作業であることは間違いなかった。
それでも、やらなければならない。そんな思いで、全員が優希を探すために動き出そうとして――そんな時のことだった。
「それじゃまず……っ!?」
初めに気づいたのは、やはりスレイヤードラモンだった。
次いで、大成たちもそれに気づく。大成たちがいる場所よりもさらに奥。この街の中心の方にあるそれに。
「あれは……進化の……!」
「ってことは、あそこに優希が……!?」
この街の奥に見えたもの。それは光だった。大成たちが幾度となく目にしたことのある、進化の光。
あの光が優希の強制進化の力によってもたらされたものであるという証拠はない。が、優希の強制進化によって引き起こされたものではないという証拠もない。
少なくとも、ノーヒントの現状では、これ以上ない手がかりではある。
「お嬢様!」
「っ!おい、待てセバス!」
やっと得られた手がかりを逃がしてたまるか、と。そんなばかりに、レオルモンは駆け出した。
同時に、嫌な予感しかしないスレイヤードラモンは、慌ててそんなレオルモンを追う。
一連の行動を見ているしかなかった大成たちは、その時の光景をこう言った。まるで、“あの時”のようだったと。
瞬間、轟音と衝撃が大成たちを襲う。
「えっ!?」
「んなっ……リュウ!セバス!」
桁外れに強力な力が、スレイヤードラモンとレオルモンを吹き飛ばした。
かろうじて、それだけが大成たちに理解できたことだった。それ以外のことを理解しようと、大成たちは辺りを見渡して――そして気づいた。
上空にいる一体の黄金の鳥デジモンに。
「グァウアアアア!」
「……!まさか、だよな?」
「まさかですね」
笑うしかなかった。大成たちには、その黄金の鳥デジモンの強さがわかってしまったから。
気づくべきだったのだ。先ほどの進化の光が、優希の強制進化の力に端を発するものならば、単体で進化できる限界を超えて進化したデジモンが近くにいても不思議ではないことに。
それに気づかずに走ったレオルモンは、それに気づきかけたスレイヤードラモンと共に吹き飛ばされてしまった。
「はは……イモ、わかる?」
「たぶん……
「笑うしかねぇなー……はははは……はぁ」
ホウオウモン。究極体のそのデジモンは、間違っても大成たちが敵う相手ではない。
混濁した瞳に、その黄金の羽はどこか黒ずみ毛色が悪い。おそらく、究極体とはいえ、先ほどまでの者たちと同様操られているのだろう。いや、先ほどの進化の光を含めれば、進化前から操られていたのかもしれない。
究極体を操れるとは、どれほどの力の持ち主なのだろうか。大成たちは、操っている者に対する驚愕を畏怖を感じられずにはいられなかった。
「た、大成さん……!」
「どうすっかね。セット『エクスブイモン・ジョグレス』!」
「ジョグレス進化――!」
すぐさま、大成はデジメモリを使って、スティングモンをディノビーモンへと進化させる。それは、スティングモンのままでは勝率が限りなく低いことを悟ったからの判断だった。とはいえ、まあ、ディノビーモンに進化してもたいして変わらないのだが。
進化したディノビーモンは、ホウオウモンに向かい合う。が、その後をどうすればいいかわからなかった。力の差は歴然で、ディノビーモンにも大成にも、わかってしまったのだ。戦うことはおろか、逃げることすら不可能であると。
「……グァアアアアアア!」
「くっ……ぬぉおおおおおおお!」
「うわっ……ぁあああああああ!」
だが、大成たちをホウオウモンが待ってくれるはずはない。
ホウオウモンがその翼を羽ばたかせる。たったそれだけで発生した風は、もはや暴風に等しかった。街を吹き飛ばし、大成たちすらも吹き飛ばす。それは、完全体のディノビーモンでさえ例外ではなかった。
なすすべなく吹き飛ばされていく大成とディノビーモン。どこかに掴まろうとも、そのどこかさえ吹き飛ばされていっていた。
「……ったく。世話焼ける、なっ!」
だが、その直後、大成たちはそんな声を聞いた気がして。
一瞬の衝撃。ハッと気がついた時には、大成とディノビーモンはホウオウモンから少し離れた場所にいた。助かったという事実と不可解な移動の事実に一瞬だけ、大成たちは呆然としてしまう。
「呆然としてんじゃねぇ!俺がどうにかしてやるから、お前らセバスを連れて先に行け」
だが、そんな大成たちを正気に戻したのは、先ほども聞こえた声だった。
声が聞こえた方を大成たちが見れば、そこにいたのはスレイヤードラモンで。そう。大成たちを助けたのは、スレイヤードラモンだったのである。
大成たちの横には、ぐったりと気絶しているレオルモンもいる。どうやら、二人とも無事だったようだった。
「無事だったのか!」
「いいから、さっさと行け。ほら、そろそろホウオウモンが気づくぞ」
「……わかった!頼む!」
ホウオウモンの相手をスレイヤードラモンに任せて、大成はレオルモンを抱えて走り出した。その後を、ディノビーモンが追っていく。
走っていく中、大成たちの頭には絶えず警鐘が鳴っていた。
先ほどの森の中での完全体軍団。そしてここに来ての究極体。大成たちには、それらすべてが頭の中で繋がった気がしていた。
一方で、走り去った大成たちを見送ったスレイヤードラモンは、ホウオウモンに向かい合っていた。ホウオウモンも、スレイヤードラモン相手では一筋縄に行かないことを理解したのか、先ほどよりも慎重そうだった。
「さて……それじゃ、本気で行くか!覚悟しろよ。俺は強いぞ……!」
「グァアアアアア!」
そうして――白い竜騎士が、堕ちた聖なる鳥を迎え撃つ。
時は少し遡って、大成たちがあの街へと突入した頃のことだった。
「あの森だな!」
「おーほんとだ!おっきい森だね!」
ひたすらに飛ぶシャイングレイモンの手のひらに乗って、勇はとある森を目指していた。
海沿いの辺りいた勇たちがなぜ森を目指しているのか。それは、今日の昼頃まで遡る。
スカルグレイモンがシャイングレイモンに進化した段階で、勇の目的は達した。となれば、あとの目的はピヨモンの安住の地だけとなる。
これからのことを考えた時、勇は思ったのだ。ピヨモンを学術院の街へと連れていけばいいんじゃね、と。もちろん、住むかどうかはピヨモンが決めることであるが、シャイングレイモンの顔見せと進化報告もある。
そう考えて、シャイングレイモンに乗った勇たちは、急いで懐かしき学術院の街へと戻った――のだが。
「さっきは驚いたよな」
「街がボロボロになってたからね……」
勇たちを迎えた学術院の街は、襲撃犯によってボロボロになったものだった。
まあ、他の街とは違って壊滅状態ではないのが救いだったろうか。
とにかく、街へとたどり着いた勇たちは、大成たちを探している道中でウィザーモンに会い、そしてすべての事情を聞いたのだ。
街が襲われたこと、優希がさらわれたこと、先ほど大成たちが優希救出に出かけたこと。
それを聞いて、勇たちはいてもたってもいられなかった。勇たちも、友達の助けになりたかったのだ。
だからこそ、ピヨモンを預け、ウィザーモンからおおまかな場所を聞いて、勇たちは飛び出した。
「見えた!……けど、もう始まってる?森がすごいことになってる!」
「うわ……こりゃ……シャイングレイモンちょっと本気で頑張る必要があるかもだ!」
「友達のためだもん!ボク、頑張るよ!」
シャイングレイモンはスピードに特化したデジモンではないが、腐っても究極体。そのスピードは、完全体デジモンとは比べるまでもない。
それは、あの遠く離れた海沿いの場所から学術院の街まで一日で行けたことからも明らかだ。
スピードに耐えられない勇を手のひらで包むなりなんなりで気をつけさえすれば、相当早く目的地までたどり着く。
現に、大成たちのように転移魔術で一瞬とはいかないが、数時間で大成たちの下へとたどり着いている。
「着いた……!あれは……旅人!?」
「ってことは、あれって……!」
滅茶苦茶に破壊された森へとたどり着いた勇たち。
そんな勇たちが見たのは――死屍累々に倒れている人間とデジモンたち、そして、暴れに暴れるドルゴラモンの姿だった。
えー……重大報告があります。
現在、このA&Aの小説ですが……絶賛スランプ中です。
ついでに、年末年始の忙しさでしばらく執筆時間もロクに取れない状況で、ストックもあまりない状況です。
物語的には良いところなのですが、適当なものを書くのも嫌ですし、さらに凍結するのも個人的に嫌だと思ってます。
ですので、しばらく……ストックが溜まる、もしくはスランプを抜けるまでの間、こちらの小説は土曜日の週一投稿にしようと思います。
至極個人的な事情ばかりで申し訳ございません。
これからも、どうか見捨てないでいただけると幸いです。