【完結】デジタルモンスターA&A~紡がれる物語~   作:行方不明

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第百二十九話~合流~

 グランクワガーモンたちが見た光景――それは、変幻自在に姿を変えるデジモンと旅人たちのデジモンとの戦いだった。

 

「さっきから下の方でドカンドカンって!」

「知らねぇよ!」

 

 だが、主に戦っているのはスレイヤードラモンとシャイングレイモンだけだ。

 ドルゴラモンはドルグレモンに退化してしまっていて、バンチョーレオモン共々疲労の色が濃い。彼ら二人は後方支援気味に、スレイヤードラモンたちをサポートするように戦っていた。

 

「おりゃぁ~!」

 

 ドルグレモンが巨大な鉄球を放つ。

 だが、謎のデジモンはその瞬間にドルゴラモンへと姿を変え、鉄球を拳で打ち砕く。

 

「っふ!」

「はぁっ!」

 

 その隙にスレイヤードラモンとシャイングレイモンの二体がそれぞれの剣を振るった。

 

「グッグッグ!」

 

 だが、それらの剣が届くよりも早く、謎のデジモンはまた姿を変えた。今度の姿はムゲンドラモンだ。兵器ほどの威力を持つ両手が、それぞれ迫り来る二つの剣を掴み取る。

 ムゲンドラモンへと変化したナニカは嗤った。

 

「シャイングレイモン!」

「おーさ!」

 

 とはいえ、シャイングレイモンもスレイヤードラモンも己の強さに自信を持つ歴戦の強者。それだけでは終わらない。

 二体は頷き合って、自分たちが持っていた獲物から手を離し、動き出す。

 

「グッ!?」

 

 戦闘中に、自身の分身たる剣から手を離して動き出すとは。

 正気の沙汰とは思えない彼らの行動に、ナニカは驚愕の気配を漂わせる。が、即座に思い至った。剣から手を離したのならば、次に来るのは身体を使った攻撃だ、と。

 だからこそ、何かは迎撃のために両手に掴みとった剣を手放す。

 

「今だっ!」

「いくよっ!」

 

 だが、それらこそスレイヤードラモンたちの狙いだった。

 二体は一気に加速し、最も身近にあった剣を掴み取る。結果として、互の武器が入れ替わる形となったものの、その程度は問題ない。

 

「はぁっ!」

「ふっ!」

 

 スレイヤードラモンがジオグレイソードを振るい、シャイングレイモンがフラガラッハを振るう。

 全く別の攻撃が来ると身構えていたナニカだ。この攻撃に完全に対応し切ることはできない。せいぜい、防御姿勢をとることができたくらいだ。

 ナニカは二つの剣を何とか防いだ。

 

「僕たちを忘れるな~!」

「行きますぞ!」

 

 だが、その瞬間のこと。

 今ここぞとばかりに、ドルグレモンとバンチョーレオモンが攻撃する。彼らの攻撃が、ナニカの防御姿勢を崩す。

 

「グッグ……!?」

「これでっ!」

「どうだっ!」

 

 シャイングレイモンとスレイヤードラモンの斬撃が、ナニカを切り裂いた。

 切り裂かれたナニカは倒れ込む。だが、その瞬間にナニカはまたあのスライムのような姿に変わり、そしてシャイングレイモンへと姿を変化させる。

 

「……くそっ、やっぱりか」

「キリがないよ~!」

「むぅ、どうしますかな」

「勇たちを信じよう!きっと良い作戦を考えてくれるさ!」

 

 全員が苦言を吐いてしまう。

 見れば、一連の攻撃でナニカが負った傷は全快していた。やはり、だ。

 先ほどからずっとこうだ。

 確かにナニカは強い。そのコピー能力からして、一対一で戦えば勝つ確率など無いに等しいほどだ。だが、それはあくまで一対一の場合であって、このメンバー全員で戦えば勝てないほど強いわけではない。

 だというのに、戦いが終わらないのは、ナニカにこの異常な回復能力があるからだ。

 何度も致命的なまでのダメージを与えても、何度となく回復する。この回復力のせいで、スレイヤードラモンたちが一方的に疲労することになっている。

 

「ッグッグッグ」

 

 ナニカは嘲笑う。なすすべないスレイヤードラモンたちを。

 

「かれこれ十回以上は続けてるぞ。回数制限とかないのかよ」

「もしかしたら、百回以上続ければいいかもしれないね!」

「……俺たちはともかくとして、セバスやドルは――」

「僕はまだまだ大丈夫だよ~。それに、そろそろ時間も経ったしね~」

「まだまだいけますぞ!……と、言いたいところですが……いやっ、このセバス!気合で保たせてみせますぞ!」

 

 スレイヤードラモンやシャイングレイモンは元より、ドルグレモンはまだいい。

 だが、問題はバンチョーレオモンだ。

 優希の力で進化している彼は、今や退化するのを気合だけで保たせている。退化してしまえば、強制進化のデメリットである筋肉痛で動けなくなってしまうからだ。そうなれば、お荷物へ直行である。

 とはいえ、だ。悪いことばかりが続くものではない。

 

「キタっ!よっし、ドル!」

「よっしゃ~待ってたよ~!」

「set『進化』ァ!」

 

 そう、時間の経過によって旅人のカードが再使用可能となったのだ。

 これにより、ドルグレモンは再びドルゴラモンへと進化する。

 

「これで戦力は五分五分……って、なるといいな」

「リュウが弱気なんて珍しいね~」

「うっせぇ。弱気になんかなってねぇよ」

「あの一体いろいろ変化液体デジモンね~……ウィザーモンが喜びそうだよね~」

 

 ドルゴラモンとスレイヤードラモンが軽口を叩き、そして気づく。

 あのナニカが急に大人しくなっていること。見れば、ナニカはドルゴラモンたちを見ずに明後日の方向を見ていた。

 

「……?何だ?」

 

 誰もが自然と黙り込み、不自然なまでの静けさが辺りを包む。

 この戦闘中において、それは明らかに不気味であった。

 そして、次の瞬間のことだ。それは唐突に、静寂が破られる。

 

「あれはっ!」

 

 眩いばかりの閃光が世界を突き進んだ。

 その閃光の正体にいち早く感づいたスレイヤードラモンが苦い顔をする。その閃光にやられた遠い日のことを思い出したからだ。

 

「ムゲンキャノンって、ことは……!」

 

 誰かが呟いた。期待からか、それとも嫌気からか。

 

「グ……ググ!」

 

 一方で、シャイングレイモンの姿をしているナニカはその背の翼を広げた。同時、その手に強大なまでの光のエネルギーが集っていく。

 集ったエネルギーは、まるでこの夜という時間に第二の太陽が生まれたかのよう。眩い光が辺りを照らしていった。

 そして、そのエネルギーが放たれる。“グロリアスバースト”と呼ばれるシャイングレイモンの必殺技が、ナニカの能力によって再現され、閃光――ムゲンキャノンを迎え撃つ。

 だが、その瞬間にナニカは気づいた。

 

「ググ……?」

 

 夜空に黒がいることに。

 それは闇夜に紛れるようにして落ちてくる。それは上空からの奇襲だった。先ほどのシャイングレイモンの一撃と似ているようで違う。

 

「はぁあああああああああああ!」

「グググ……!」

 

 暗殺もかくやという、グランクワガーモンの鋭い一撃だ。

 出し惜しみ無しの必殺技。“ディメンションシザー”がシャイングレイモンの姿となっているナニカを引き裂く。

 胴体を半分に引き裂かれながら、ナニカは迎撃できなくなったムゲンキャノンに呑まれた。

 そのまま胴体が真っ二つになったまま地面に倒れ込み、動かなくなる。

 

「っし、なんとかなったか……!?」

――大成さん、大丈夫ですか?――

「いや、キツイ。なんでこう……連戦なんだよ!確かに、今時のラスボス戦は一戦も二戦もあるけどさ!ラスボスの後に隠しボスなんて当たり前だけどさ!」

 

 疲労で疲れているグランクワガーモンは、理不尽な現実に叫んだ。

 優希を助けに来たはずなのに、なんでこんなことになっているんだろうか。そんなことを思う。

 

「……誰だ、お前?」

 

 ふと、そんなグランクワガーモンに声がかけられる。

 声をかけてきたのはスレイヤードラモンだが、その声色は固い。明らかに警戒を露わにしていた。

 

「えっ、ひどくね?リュウ、俺だって大成!」

「……俺の知る大成はデジモンじゃないんだけどな」

「そういえばそうだったー!」

 

 デジモンになったからか、この姿が自分であるという意識があるせいか、彼自身も大成という人間とグランクワガーモンというデジモンをイコールで結びつけていた。

 それが現実には起こりえない異常である、と彼は今更ながらに気づいた。

 

「……ってか、何でそんなことになってるんだよ」

「え、信じてくれるのか……?」

「そりゃ、僕やリュウは似たようなことに経験あるしね~」

 

 ドルゴラモンとスレイヤードラモンは頷き合う。

 見れば、その他の面々も状況に唖然としてはいても、疑ってはいない。自分の言葉を信じてくれたことに、グランクワガーモンは少しだけ嬉しくなった。

 

「へぇ、随分と格好良いじゃないか!」

 

 遠くで小さく勇が呟いた。

 その僅かな呟きを――グランクワガーモンは拾う。

 

「うわっ、勇さんに褒められた!? やべ、ちょっと嬉しいかもしれない!よかったな、イモ!」

――どちらかといえば大成さんに褒めてもらいたいんですが……――

「俺が言ったら自画自賛みたいじゃねぇか!」

――それはそうですけど……!――

 

 随分と遠くにいる勇の声が聞こえたのは、さすがは究極体の聴力ということだろう。彼自身、未だ底知れぬスペックを誇っている自身の体に感嘆していた。

 

「で、どうしてそんなことになってるんだ?」

「あ、それはだな。さっき――」

「いや、後でいい。聞いてる暇はないからな。っち、倒れ込んだから終わったと思えば、まだ動くのかよ」

「え?」

「みたいだね。まったく……ボク、もうそろそろ疲れてきちゃったんだけど。でもでも、頑張れば頑張っただけその後の晩御飯のスパイスになるって勇は言ってたよ!」

「あ、それは楽しみだ。キノコ以外なら喜んで食べるよ!」

「晩御飯、にしては些か時間が経ち過ぎているような気もしますぞ。お嬢様に間食を指せるわけにも行きません。夜食は健康の大敵ですぞ!」

 

 状況が掴めずに戸惑うしかないグランクワガーモンの一方で、その他のデジモン組が疲れたように身体の調子を確かめていく。

 

「っ。おい、大成!」

「え……?」

 

 そして、スレイヤードラモンの警告の声にすら戸惑うしかなかったグランクワガーモンは、唐突に殴り飛ばされた。

 無論、誰に殴られたかなど言うまでもない。ドルゴラモンの姿となったナニカに、だ。

 吹っ飛んでいくグランクワガーモンを尻目に見ながら、全員が再び戦闘を開始する。

 

「っち。あの女はいないのか」

「ピピ。シカシ、近クニ反応ガアリマス」

「ならいい。さっさと片付けるぞ。どっちもな」

 

 そのタイミングで、キメラモンとムゲンドラモンがこの場に乱入して来た。

 この場にいるほぼ全員が、警戒と嫌気で彼らを見る。とはいえ、彼らの前科からして、そういった目で見てしまうのも無理からぬこと。

 まあ、先ほどから共闘状態にあるグランクワガーモンを始めとして、彼らをそういった目で見ない例外もいるのだが。

 

「ふん、俺“たち”は復讐をしに来ただけだ。邪魔するなら、共々殺す。邪魔しないのなら、好きにしろ」

 

 端的にそれだけをスレイヤードラモンたちに告げて、キメラモンも戦線に加わる。その際、自然と自らを複数形で表していたことに、彼は気づいていなかった。

 

「ピピ。零……」

「……なんだ?」

「イエ」

 

 何はともあれ、戦いは再開される。

 そんな中で、先ほど吹っ飛ばされたグランクワガーモンは――。

 

「ちょっと、大丈夫?」

「おい、大丈夫かー!?」

「大丈夫か……大丈夫そうだな。うん、この程度なら大丈夫だろ」

 

 幸か不幸か、人間組の近くに落下していた。

 心配した優希たちが声をかけるが、グランクワガーモンは痛みに唸るだけだった。

 

「すっげぇ痛い……何あれ、筋力全振りかよっ!」

「そりゃ、ドルゴラモンだからな」

 

 痛みに叫ぶグランクワガーモンに、旅人は呆れたように返す。旅人としても、ドルゴラモンのパワーバカぶりは経験からよく知っていた。

 まあ、その経験のせいで、いくらグランクワガーモンが痛がっていても、大丈夫だろうと思えてしまうのだが。

 

「大丈夫なの?」

「……ああ、何とか」

「っていうか、何でそんなことになってるんだ?」

「あー……緊急事態故の手段というか、何と言うか……」

 

 勇の言葉に、グランクワガーモンは濁すように返す。この状況で細かいことまで説明していられなかった。

 勇も優希も、たったそれだけで“彼ら”の身に何か大変なことがあったことだけはわかった。だからこそ、もう一度問う。大丈夫か、と。

 

「さぁ?」

 

 肩を竦めるようにして、グランクワガーモンは答えた。

 自棄糞気味だった。だが、それでも悪い意味での諦めの感情はそこには入っていなかった。

 

「で、あのビックリデジモンに打つ手あるのか……?」

 

 逆に問い返す。

 この戦いを初めから見ていただろう彼らに。

 今この瞬間でさえ、ナニカは致命的な攻撃を受けて地に沈み、そして別の身体をコピーして回復し、立ち上がった。

 ここまでくれば、勝ち目があるかどうかさえ怪しい。

 

「とりあえずオラたちにわかってることはアイツにコピー能力があること、あとコピーするたびに傷が治るってことくらいか」

「名前さえわからないのよね。あれ、本当にデジモン?」

「一応、個体の能力的には勝てないほどじゃない。けど、いくら倒しても回復してくる。それがまた面倒だ。こういう時、ウィザーモンがいればな」

「ここにいない人に言ったってしょうがないでしょ。それにいくらウィザーモンでも……」

「いや、アイツはやるぞ?前に能力が強すぎる相手と戦った時……そのすごい能力を封じたことあったし」

「うそっ!?」

「そんなにチート能力持ちなのか!?」

 

 旅人の言葉にこの場の全員が思わず驚く。だが、デジメンタルの例もあるのだ。

 よくよく考えれば、そういうこともありえるのか、と思わず納得してしまった。納得してしまった時点でアレなのだが。

 

「って、違う!話がズレてるってぇさ!」

「……確かに」

 

 勇の叫びによって、話の軌道が修正される。

 

「あ、そういえば俺……アナザーをもらった時にこういう時に使えそうなデジメモリをもらってたんだった」

「……そういえば、オレもカードでそういうのがあったな」

「そういうのは先に言いなさい!」

「そういうのは先に言えってぇさ!」

 

 思わず、勇と優希は怒鳴った。

 こういう時こそ使えそうなものを持っていたことを思い出し、グランクワガーモンと旅人は笑って誤魔化す。

 だが、笑い事で済む話ではない。生死を賭けなければならないほどの戦いで、勝利に直結するかもしれないものを忘れていたのだから。

 

「で、でもこの姿になっちゃったし、たぶん使えないぞ?」

「まぁ、百歩譲って大成は仕方ない。けど、旅人は!」

「ははは……まぁ、ここ最近は使ってなかったからなー……特に、“あれ”は滅多に使わないってか、オレだと使う必要がほとんどないし」

「少しは反省しなさい!」

 

 優希に怒られながら、旅人はそのカードを取り出す。

 今の今まで忘れていたそのカードを使うのは、彼にとっても数年ぶりだった。と言うのも、滅多に使うようなものではないのだ。

 研究者ならともかく、彼のような旅する者にはあまり縁のないもの。それは普段から使うような利便性に富むものと比べて、気が向けば使う程度のものなのだ。

 

「set『解析』!」

 

 そして、旅人はそのカードを使う。

 これが勝利へと続く道に繋がるか、それとも。

 




というわけで、第百二十九話。

久しぶりの面々の登場、そして合流ですね。
次回からガンガン行きます。
それでは次回もよろしくお願いします。
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