【完結】デジタルモンスターA&A~紡がれる物語~   作:行方不明

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それでは、今回から第二章が始まりますので、よろしくお願いします。


第二章~集い始めたパズルのピース~
第十四話~悪戯好きの妖…精…?~


 学術院という街を目指して歩く大成たち。だが、一行がこんな調子で歩き続けてかれこれ一週間が経過していた。そして、一週間という時間は大成たちの体力と気力を奪うには十分な時間である。スレイヤードラモン以外の全員の顔に、慣れない長旅による疲労の表情が見て取れた。

 

「なぁ…あとどれくらい?」

「ん?ああ……あと二か月くらいか?」

「……」

 

 その時の大成の顔は、まるで終末の訪れた人々の顔だった。いや、大成だけではない。優希さえもその日数に愕然としている。まあ、当然だろう。現代という時代に生きる大成たちにとって、徒歩で長距離を移動することなどないも同然といっていい。しかも、野宿という碌に体力も回復できない現状だ。そんな地獄の苦行以外の何物でもない状況で嬉々としているなど、よほどの大物か、ただの馬鹿のどちらかだろう。

 いかに現代という時代が恵まれているかを再確認した大成たちであった。だが、だからといって現状が変わるということはちっともない。

 

「いやな。俺だけならなんとでもなるけどなぁ……」

 

 そう、スレイヤードラモンだけなら数時間も経たずにその距離を走破することができる。だが、当然ながら、優希や大成を背負ってその速度で移動するということはできない。単純に、優希たち人間組の体がその速度についていけないのである。実際にそれをしようものなら、優希たちの体は数秒も経たずにバラバラになるだろう。

 だからこそ、こうやって歩いているのだが、確かにそれでは時間がかかりすぎる。これからのことを考えて、“仕方ないか”と、そう考えたスレイヤードラモンは嫌々ながらに自分が優希たちを連れて行くことにしたのだった。

 別に最高速でいかなくともいい。速度を落とした状態でも、優希たちが歩くよりはずっと速いペースで移動できる。だが、なぜ今までしなかったというと――。

 

「痛っ!リュウ、もっと優しく!」

「助けてぇ……つぶれるよぅ……」

「セバス!爪を立てないで」

「すみませぬ、お嬢様!しかし、こうでもしないと落ちるもので!」

 

 ようするに、定員オーバーなのである。これが近場だったり、力のある人物なら、背中にしがみつかせておけばいい。だが、長旅で大成たちにそれをやらせると絶対に途中で落ちるだろう。だから、スレイヤードラモンが腕で抱えるしかないのだ。だが、スレイヤードラモンの体は甲冑。そんな状態で抱えられれば、痛いに決まっている。

 優希の持つアナザーの中に入るという手もあるのだが、それはレオルモンが嫌がったのでなしとなった。我儘を言ったくせに、文句ばかり言う大成たちにさすがのスレイヤードラモンもイライラするのが抑えきれていない。

 

「文句言うな!空の上で捨ててくぞ!」

「あ!なら、リュウのソレを使えばいいんじゃね!?」

「ソレ……?」

 

 名案を思い付いたといった表情で、大成はスレイヤードラモンのソレを指差した。イライラしていたこともあって、内容も聞かずにやけくそ気味にその案を承諾したスレイヤードラモン。すぐにそんな自分をぶん殴りたくなることになるのだが、それはまた数秒後の未来の話である。

 

 

 

 

 

 学術院目指して、大成たちは空を飛んでいた。もちろん、大成や優希が空を飛べる訳がない。大成たちは、スレイヤードラモンに抱えられて空を飛んでいるのだ。日本では滅多に味わえない風を感じる空の旅に、大成は興奮している。対して、ワームモンは興奮するどころか、怖くて周りの景色を見ないようにしていた。

 優希の方も、顔には出していないが内心でしっかりと興奮している。以前、大成救出の際は有事だったこともあり、楽しむ余裕もなかった。だからこそ、余裕がある今、こうして内心だけではしゃいでいるのだ。もっとも、それをわかっているのはレオルモンとスレイヤードラモンだけだったりするのだが。

 ちなみに、そんな大成たちだが――。

 

「……リュウ。ごめん」

「いや、すまなさそうに言ってるけど、内心ではしゃいでいる奴に言われたくねぇ」

「な、なんのこと!?あ、あはははは!」

「お前ら絶対に覚えてろよ」

 

 スレイヤードラモンのマント(・・・)にくるまれていたりする。そう、大成が先ほど言った案とはこれだったのだ。スレイヤードラモンが身に纏っている緑色のマントに大成たちはくるまって、それをスレイヤードラモンが持って空を飛ぶ。それこそが、大成の案だったのだ。

 スレイヤードラモンのマントは、当然のことだが一人分だ。もちろん狭い。だが、甲冑に押し付けられて過ごすよりは、ずっと快適だった。徒歩での疲れもある程度回復し、大成たちはルンルン気分だ。

 もっとも、反対にスレイヤードラモンの機嫌は急降下しているのだが。

 

「いやぁ……空を飛べるっていいなー!」

「そうか。んじゃ、スカイダイビングやってみるか?」

「すみませぬ……スレイヤードラモン殿。もうしばらく我慢してくださらぬか」

「俺のマントを風呂敷扱いか……」

「本当にすみませぬ!」

 

 こんな状況で、唯一申し訳なさそうな顔をしているレオルモン。そんなレオルモンの心遣いが癒しとなっているスレイヤードラモンだった。

 そんなこんなで、かれこれ数時間。そろそろ夜になろうかという時間帯だ。さすがに、ずっと飛びっぱなしでは、大成たちもキツイだろう。だから、一度休憩がてらに地面に降りることにスレイヤードラモンはしたのだ。

 

「いやぁ……空もいいけど、やっぱり地面が一番だな!」

「俺のマントが……」

 

 伸びをして体を伸ばす大成たちとは違って、スレイヤードラモンは今日半日ですっかり伸びてしまった自分のマントを何とも言えない気分で見ていた。

 もっとも、そのマントはスレイヤードラモンの体の一部でもあるので、眠れば直るのだが。とはいっても、さすがにびろびろに伸びた己の一部を目の前にしては、スレイヤードラモンもその背中に哀愁が漂わせてしまう。

 そんなスレイヤードラモンはさておき、大成たちは食事にしていた。今日の晩御飯は、テントモンたちの街で貰ってきた果実である。ちなみに、一人二つまでだ。それだけで腹が膨らむのだから、不思議なものである。

 

「うぅ……」

「……イモ、どうかしたのか?」

「……いや……でも……」

「いいから言えって!まどろっこしいなぁ!」

「ひっ!僕の……僕の御飯がぁ……なくなったよぅ」

 

 涙目で、いかにも何かありましたという顔でありながら、何も言おうとしないワームモンに、イラッときた大成は思わず怒鳴った。そんな大成にビビりながらも、ワームモンはようやく話し始める。自分の分の果実が、いつの間にか消えたのだと。

 それを聞いて、大成は怒鳴ったことを後悔する。よほどのことがあると思って聞いたら、思った以上にくだらないことだったのだ。どうせ食べきったのだろう、と大成はその言葉を黙殺する。

 だが――。

 

「あれ?ない……優希?」

「知らないわよ。自分で食べたんでしょ」

 

 ワームモンにかまけていたその間に、大成が残していた残り一つもなくなっていた。だが、大成には犯人がわからない。優希とレオルモンはそんなことをしないであろうし、ワームモンはまだ落ち込んでいる。となれば、残るはスレイヤードラモンなのだが、そもそも彼なら堂々と盗れるだろう。

 そんなスレイヤードラモンだが、溜息を吐いていた。よく見ると戦闘中でもないのに剣を持っている。それを見て、大成は嫌な予感がした。剣は、自分の方に向けられていたのだ。

 大成が静止の声を上げようとしたその瞬間。剣が振るわれる。スレイヤードラモンの伸縮自在のその剣は、伸びに伸びて大成の真横に突き刺さった。あと数ミリずれていたら大成は死んでいただろう。思わず冷や汗が出る大成。

 文句を言おうとした大成だったが、その時に気付いた。剣は何者かを攻撃していたということに。剣に驚いて固まっているそのデジモンは、一言でいえば小さかった。

 

「顔だけの妖精?」

「ピッコロモンだな。お前らの晩飯食ったのもこいつだろ」

 

 ピンク色の毛が生えた丸い顔に手足と翼がくっついている小さなそのデジモン。ピッコロモンと呼ばれる完全体のデジモンである。

 

「完全体!?」

「だな。さまざまな魔術が使えて、時空間係の魔術さえも使えるって話だ。出力ついでに悪戯大好きな性格の持ち主が多いともな。俺の相棒がピッコロモンに飯を食われたことがあるって前に言ってたしな」

「っぴ!?待つっぴ!君たちとは初対面っぴよ!」

「いや、わかってるよ」

 

 時空間系の魔術さえも行使できる万能型のピッコロモンでさえ完全体であるということに大成は驚きを隠せない。

 ちなみに言うと、ピッコロモンの弱点はその魔術の出力の弱さである。とはいっても、それは究極体と比べてのことであるのだが。並みの成熟期ならば、戦いにもならずに瞬殺だろう。

 そんなピッコロモンだが、逃げようとしなかった。ピッコロモンはわかったのだ。スレイヤードラモンと自分との力の差が。だからこそ、無駄なことをしないのである。

 

「お前かぁ!俺の飯をよくもぉ!責任とって俺のパートナーになれよっ!」

「えぇっ!?いやっぴ!」

「あいつはすぐに自分の都合のいい方向に持ってこうとすんな」

「馬鹿だからね」

「馬鹿ですからな」

「よかったぁ……」

 

 とはいえ、それでは大成の気が収まらない。その後しばらくの間、完全体のデジモンが、たかだか人間にフルボッコにされるという珍しい光景が繰り広げられた。とはいっても、腐っても完全体のデジモンだ。インドア派である大成のへなちょこパンチではダメージなどないに等しいのだが。

 数分後。疲れ切った大成とぴんぴんしているピッコロモンという、どちらが加害者だったのかわからない光景が広がることとなった。

 

「ぜーはー……ぜーはー……」

「そういえば、アンタは何でこんな所にいるの?この辺りになんかあるの?」

「ぜーはー……ぜっはー……」

「そういえば、そうですな」

「ぜっひゅーげほっごほっ……ぜーぜー」

「べ、別に……た、たいした用では……な、ないっぴよよ?」

「ぜーはー」

「いや、怪しすぎるだろ……っていうか大成うるせぇ!」

 

 全力で殴り続けるという無酸素運動を数分も続けていた大成は、すでに虫の息だった。その荒れた息は、うるさくて仕方ない。その場の全員に冷たい顔を向けられる大成だが、それだけで動じる大成ではない。

 ちなみに、その後数分間は、そんな大成のうるささにイライラを募らせながら会話することとなるのだが、それはほんの余談である。

 

 

 

 

 

 時は少し戻って、大成たちが去った後のテントモンたちの街ではいつも通りの日常が広がっていた。暇な一日を、呑気に楽しみながらテントモンたちは過ごす。時々、ゴブリモンたちがやってくるが、それも慣れたもので、御愛嬌というやつだ。

 だが、そんないつまでも続くだろう日々に、終わりの時が近づいているなど、誰も気づいていなかった。

 

「やっと来たか」

「……」

「スレイヤードラモンには逃げられてしまったが……まぁ、いい。どうせ行き先は同じだ。すぐに追いつく」

「……」

「先にこちらを片付ける。殺れ。ムゲンドラモン」

 

 街の外で話をしているのは、零と全身が機械でできたデジモンだ。

 デジモンというのは生き物である。だというのに、ムゲンドラモンと呼ばれたそのデジモンは、一言で言えば異様だった。まるで、機械。まるで、兵器。恐ろしいまでの雰囲気を放っているムゲンドラモンだが、意思というものが感じられない。正真正銘の機械のようだ。

 そんなムゲンドラモンは、零の命令に従って攻撃態勢に移る。狙うは、テントモンたちの街。何も知らず、テントモンたちが平和に暮らしているその街に、だ。

 

「ファイア」

 

 ムゲンドラモンの背中に取り付けられた砲身から放たれた砲弾が、テントモンたちの街を蹂躙する。突然の事態に、テントモンたちも偶然居合わせたゴブリモンたちも対処できていない。

 そんなテントモンたちではあるが、迫り来る死という絶望的な未来から逃げ惑う者もいれば、一縷の望みをかけてムゲンドラモンに挑む者もいた。だが、結果は同じだ。逃げ惑う者は放たれた砲弾によって粉砕され、挑んできたものはその強靭な体でもって玉砕される。

 あまりに圧倒的。テントモンたちがそうして死んでいく一方で、力の差を感じ取ったゴブリモンたちは既に自分たちの巣へと逃げている。それは、敵わないから安全な場所に逃げようという至極当然の行動ではあるし、ある意味で最善の行動だろう。

 だが――。

 

「無駄なことを。殺れ。一匹残さず抹殺しろ」

「ファイア」

 

 それは、そこが安全な場所であることが前提なのだが。

 ムゲンドラモンの砲身から放たれた砲弾はまっすぐに飛んでいき、ゴブリモンたちの巣に直撃する。彼らの巣は、洞窟だ。洞窟は、強固な要塞となりうることもあれば、自身を閉じ込める牢獄になることもある。残念ながら、今回は後者だった。

 ムゲンドラモンの砲弾は巣へと直撃。巣へと逃げ込んでいたゴブリモンたちは、洞窟の崩落に巻き込まれて全滅することとなった。

 こうして、僅か数分と経たずに、テントモンたちの街周辺のデジモンたちは全滅したのだ。

 

「行くぞ。スレイヤードラモンを殺す」

「……」

 

 大成たちが去った方角へと、零はムゲンドラモンを引き連れて歩き出す。

 少しづつ、だが着実に、彼らは迫っていた。

 




書いているうちに長くなったので、分割することにした第十四話です。
ちなみに、後編扱いの次回は、ピッコロモンのせいで……?というお話です。

そういえば、デジモンウェブのデジモン図鑑にセイバーハックモンとジエスモン更新されていましたが……バオハックモンの更新はないんでしょうかね?地味に気になるんですけどね。

それでは、また次回もよろしくお願いします。
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