【完結】デジタルモンスターA&A~紡がれる物語~   作:行方不明

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第十五話~猪突猛進!厄介事!~

「調査?」

 

 晩御飯を食べ終わった面々は、ピッコロモンと話をしていた。

 ちなみに、晩御飯を盗られたことで激怒していた大成ではあるが、ピッコロモンがどこからか調達してきた木の実でひとまずの解決と相成った。

 もっとも、その主犯はほかならぬピッコロモン自身ではあるのだが。

 

「そうっぴ!知ってるっぴ?最近、近隣の街々が次々と消滅しているっぴ」

「消滅?穏やかじゃねぇな」

「原因は不明っぴ……だから、学術院から調査として私が来たっぴ」

「って!お前学術院から来たのかよ!」

 

 最近続く、原因不明の街の消滅事件。しかも、学術院の街を目指すかのように、その道中にある街々が消えていっている。偶然かもしれない。だが、偶然で片づけていいことでもない。だからこそ、学術院の街でもトップクラスの実力を持つピッコロモンが調査に乗り出したのだ。

 ピッコロモンが見たところ、消えた街はその痕跡から見ても何者かに襲撃されたかのようであった。いや、実際に襲撃されたのだろう。それがピッコロモンの出した結論だった。 

 

「襲撃……ね……。俺たちも学術院を目指してるんだが……行ったらまずい状況か?」

「そうなのっぴか?まあ、学術院の街は五年前の天災以降警備が強化されてるっぴ。安心してくれていいと思うっぴよ」

「あれ、リュウどうかしたのか?」

「いや、なんでもないぜ?ははは……」

 

 危険地帯になるかもしれない場所に行かなければならない。ともあれ大成たちはともかく、スレイヤードラモンは学術院に用がある。行かない、という考えはない。まあ、大抵の相手なら何とかなる、という考えもスレイヤードラモンにはないわけではないのだが。それは、慢心ではなく、純粋たる自信だ。スレイヤードラモンは、伝説クラスの者たちとすらも戦ったこともある。だからこそ、並大抵のことでは動じない。

 スレイヤードラモンがその気ならば、大成たちには行かないという考えはない。大成たちはスレイヤードラモンに守ってもらっている身だ。あまり我儘は言えないのである。

 もっとも、大成たちはその話に現実味を感じられていないということもあるのだが。

 

「それで、ピッコロモンはどうして俺の晩御飯を盗ったんだ?」

「……いや、ちょっと……っぴ?」

「ちょっと、なんだよ?」

「ぴぴぴ……そこに美味そうなものと面白そうなバカがいたからっぴ!」

「ふざけんなぁっ!」

 

 再びピッコロモンに殴りかかる大成だったが、そう何度も攻撃を受けるほどピッコロモンも暇人ではない。持っていた杖を一回振るうと、大成はその場ですっ転んだ。

 突然の事態に、大成は目を白黒させている。それこそが、ピッコロモンの力の一端だった。

 

「うぐぐ……」

「あれ?大成どうかしたの?」

「頭打った……いてぇ……」

 

 頭を打って悶絶しているそんな大成に話しかけるのは、どこかへと行っていた優希である。

 幾分かすっきりとした表情の優希であるが、晩御飯後にいつの間にかいなくなっていたのだ。戻ってきたばかりであるために、優希には状況がわからないのである。

 

「優希どこ行ってたんだ?」

「いや、スレイヤードラモン殿。そこはそっとしておきましょうぞ」

「……?なんでだ?」

 

 辺りに微妙な空気が満ちる。その原因は、顔を赤くしてイライラしている優希と純粋な疑問顔のスレイヤードラモンだ。そして、そんな二人にやれやれと首を振るピッコロモンとレオルモンの二人。だが、このまともな反応ができる者がこの二人だけというのも、微妙な顔にならざるを得ない話だろう。

 ちなみに、大成は未だに頭を押さえて蹲っている。

 そんな微妙な空気の中で、スレイヤードラモンは、ピッコロモンを問い詰めることにした。彼は、ピッコロモンが何かを隠していると気づいていた。だからこそ、この微妙な空気を改善させるためにも、ある意味で地雷臭のする優希のことは放っておくことにしたのだ。

 

「で?」

「で?ってなにっぴ?」

「で?」

「いやだからっぴ……」

「で?」

「えーっと……ぴー!?」

 

 結局、ピッコロモンは白状した。大成たちと会う前に、とあるデジモンの巣を見つけ、つい悪戯をしてしまったのだと。当然、そのデジモンは激怒。ピッコロモンを追ってきたのであると。そのデジモンから逃げている途中で、大成たちを見つけたのだと。

 もちろん、ピッコロモンにとってそのデジモンを倒すことなど造作もないことだ。だが、ピッコロモンがしたいのは悪戯であって、殺人ではない。ようするに、悪戯をした後は逃げ切る。それがピッコロモンの自分に課したルールなのだ。

 

「だったら、悪戯しなければいいんじゃないの?」

「それは私の誇りにかけて無理っぴ!」

「そんな誇り捨ててしまえ」

「ですな。自業自得……む?そういえば、逃げる途中で(・・・・・・)?」

 

 レオルモンは確認するように呟いた。そして、その言葉にピッコロモンは、苦笑いをしながら頷いている。

 逃げる途中で大成たちを見つけた。その言葉が示すことはただ一つ。未だそのデジモンはピッコロモンを追ってきているだろうということだ。

 その事実に大成たちが嫌な予感を感じた瞬間、辺りに沸き起こる地響き。しかも、地響きはだんだんと強くなっている。それは、まるで何者かが近づいてきていることを如実に表しているようで。そこまでくれば、もう大成たちにも予想がついていた。すなわち、そのデジモンが近づいてきているのだ、と。

 直後、大成たちの前を一陣の風が吹き抜ける。この夜の、視界の効かない一瞬のことだ。大成と優希には何が起きたのか、理解できなかった。

 だが、デジモン組はその一瞬で、正体を見極めていた。風のように感じたそれはデジモンだ。鎧のような体とサイのような頑強な角。先ほどの風は、モノクロモンと呼ばれる成熟期のデジモンの突進によって起こったものだったのだ。

 

「モノクロモンか。つーか、あの普段温和な種族が起こるって相当だぞ。何やらかしたんだよ」

「ぴ……いやぁ、寝ているところを、ちょちょいと……ぴ?」

 

 よく見ると、モノクロモンは体中に下手くそな絵が書かれていた。ようするに、ピッコロモンはモノクロモンが眠っている隙に落書きしたのである。眠っている時に体中に落書きされたのだ。それは怒るだろう。

 だが、あまりの程度の低さに大成たちのテンションは下がり続けていた。もう、一度痛い目を見ればいいんじゃないかな。そんなことを本気でお申し末である。

 一方で、モノクロモンはそんな大成たちのことなど関係がなかった。怒りで我を忘れているということもあるのだろう。ピッコロモンと一緒にいるなら、大成たちも同罪であると考えたのだ。

 モノクロモンの容赦のない攻撃が、大成たちに向かう。事の原因であるピッコロモンはいつの間にか何処かへと消え、頼みの綱のスレイヤードラモンは安全地帯である空を飛んでいる。どうやら、大成たちを鍛えるために手は出さないつもりらしい。

 災難どころではない。思わず彼らを呪いたくなる大成だった。

 

「うわっ!おいっ!イモ、なんとかしろぉ!」

「ひぃいいい!無理だよぅ!」

「セバスっ!」

「はっ!」

 

 逃げ惑う大成コンビにモノクロモンの意識が向いた瞬間に、レオルモンが駆ける。その鋭い爪で攻撃を仕掛けるレオルモンだったが、モノクロモンにはかすり傷しかつかなかった。割と本気でした攻撃が通じなかったことに、レオルモンは苦い顔をせざるを得なかった。

 だが、それも当然だろう。モノクロモンは、その体の半分以上を鎧のような硬い外殻で覆われている。ダイアモンドに匹敵するという硬度を持つ、そのモノクロモンの体をそう簡単に突破できる訳が無い。唯一の弱点と言えるものは、外殻に覆われていない腹部分だが、そもそも四足歩行のモノクロモンの腹を狙うためには、モノクロモンの体勢を崩さないといけない。

 

「っく……セバス!止まらないで!大成!遊んでるくらいならワームモンを手伝わせなさい!」

「遊んでるように見えるのかっ!病院行けっ!」

 

 成長期であるレオルモンと成熟期であるモノクロモン。いかにレオルモンが優れているとはいえ、成熟期であるモノクロモンの方がスペック的には優っている。そんな状態で勝とうというのならば、モノクロモンにはない何かを武器にするしかない。この場合、それは優希の奥の手とワームモンの存在だ。

 優希の奥の手は文字通り奥の手だが、ワームモンの方はそうではない。数というのは、最も単純かつ強力な力だ。だからこそ、優希としてはその力を借りたいのだが、当のワームモンは怯えていて、助力は期待できそうになかった。

 

「っ!大成危ないっ!」

「へ?こっち来てる!?まずっ!助け――!」

「大成さん、危ない!ふやっ!」

 

 モノクロモンが標的と決めたのは、大成だ。その硬い外殻に匹敵する硬度を持つ角で突かれれば、人間である大成はひとたまりもないだろう。

 そんな大成の危機に、ワームモンが勇気を振り絞って動く。ワームモンの口から放たれたのは、網状の糸だ。強い粘着性を持つそれは、“ネバネバネット”と呼ばれる相手を捕縛するワームモンの必殺技。

 それが、放たれる――。

 

「って!足が動かな――!」

 

 大成の足元目掛けて。

 ワームモンは、焦りのあまりに狙いを外してしまったのである。しかも、外れたソレが逃げている最中の大成の元へと飛んでいったものだから、足で纏いどころの話ではない。実質のトドメだ。

 己がしてしまったことがわかり、ワームモンは顔を青くする。だが、どうすることもできない。大成の下には、もうモノクロモンが迫っているのだから。ワームモンが動くよりも早く、大成はその角によって貫かれるだろう。

 優希も、レオルモンも、ワームモンも。誰もが一瞬後の最悪の未来を予見した。だが――。

 

「あれ?」

「え?大成さん!?」

 

 いつの間にか、大成はワームモンの隣にいた。狙いを見失ったモノクロモンは、そのまま地面に張り付いたネバネバネットに突っ込み、それから逃れようと四苦八苦している。

 突然の現象。何が起きたのか理解できない大成だったが、やるべきことだけはしっかりとわかっていた。ワームモンを持ち上げ、思いっきり両腕で握り締める。とどのつまり、報復だった。

 

「何なの!?何なのお前!?俺に恨みでもあんのか!」

「うぐぅうう!ごめんなさぃいいいいい!」

「大成殿!遊んでいる暇ではありませんぞ!」

 

 そのレオルモンの言葉でハッとなった大成だったが、時はすでに遅し。モノクロモンはネバネバネットの呪縛から逃れていた。しかも、よほど腹に据えかねたのか、明らかに先ほどよりも怒っている。

 私怨による報復をしていたために、千載一遇のチャンスを逃す。なんとアホな行動だろうか。そんな大成は、自分がしたアホな行動を気にもせず、現状を見据える。現在、モノクロモンは次なる標的として優希とレオルモンを追っていた。

 明らかにモノクロモンの意識から大成たちは消えている。何か仕掛けるなら、今のうちだ。

 

「……おい!イモ!」

「ひぃ!ごめんな――」

「それはもういい!それより、さっきのアレもう一回できるか?」

「ネバネバネット?えっと……あんまり遠くには飛ばせないです……ごめんなさい」

「だから――……いや、いい。なら、ここら辺の地面にたくさん撒けるか?」

「えっと……」

「できるかできないか!はっきりしろっ!」

「ひぃぃいいいい!できます!できますです!はい!」

 

 その言葉を聞きたかった。そうニヤリと笑った大成は、すぐさまワームモンを酷使する。数秒も経たずに、それは完成した。ワームモンの尊い犠牲によって。もちろん、ワームモンは死んだ訳ではない。ただ、疲労で虫の息となっているだけである。

 そして、大成は手頃な幾つかの石をモノクロモンに投げつける。普段ならいざ知らず、怒りで我を忘れているモノクロモンだ。簡単に標的を優希たちから大成へと変更した。

 

「大成!?」

 

 悲鳴のような、優希の驚愕の声が辺りに響く。

 再び己に迫るその巨体を前に、大成も恐怖を感じなかった訳ではない。だが、ここで逃げ出したら本当に死んでしまう。ここだけが、安全地帯なのだ。だからこそ、大成はモノクロモンを睨む。

 そうして、大成の下へと突進してきたモノクロモンは――。

 

「ァあ!?」

「よしっ!狙い通り!」

 

 先ほどワームモンが大量に吐き出したネバネバネットのゾーンに突っ込み、その動きを止めることとなった。必死になって抜け出そうとするモノクロモンだが、ワームモンが虫の息となるほどの量だ。そう簡単に抜け出せるものではない。

 思いのほかうまくいったことに、大成はガッツポーズをする。だが、大成は一つだけ忘れていたことがあった。大成とて、ゲーム時代にモノクロモンと対戦したことはある。その時、モノクロモンが使っていた技は、突進とあと一つ。そのあと一つの技を、大成は忘れていたのだ。そして、その技はこの場において忘れてはならない技だった。

 それは――。

 

「ごァっ!?」

 

 放たれようとしているのは、火炎弾。“ヴォルケーノストライク”と呼ばれるモノクロモンの必殺技にして、モノクロモン唯一の遠距離技だ。そして、その技は、口から放たれるが故にこの足が動けない状態でも放つことができる。

 つまり、モノクロモンを誘き寄せるために至近距離にいた大成は、その技を避ける術はないということで。迫り来る死に、大成は動くことができない。あと一瞬もあれば、ソレは放たれるだろう。しまった、と。大成が思う前に――。

 

「よくやりましたなっ!大成殿!」

 

 レオルモンが、モノクロモンの()を攻撃する。モノクロモンの目は、その外殻に囲まれていない部位の一つだ。目を攻撃されたモノクロモンは、たまらずに暴れる。その瞬間に、大成はワームモンを連れて遠くに避難した。

 痛みによって暴れに暴れまくった甲斐もあって、モノクロモンはネバネバネット地獄を脱出する。だが、すべては遅かった。抜け出たモノクロモンは、その代償として体勢を起こしてしまう。そして、その状態は、自身の弱点でもある唯一外殻がない腹を晒しているも同義だ。

 モノクロモンが元の体勢に戻る前に。レオルモンは、すれ違い狭間にその爪でもって腹を切り裂く。それが、戦闘終了の合図だった。

 

 

 

 

 

 戦闘終了後、その痛みによって頭が冷えたのか、モノクロモンは大人しくなっていた。まあ、シクシクと泣いてもいるのだが。落書きされ、腹を切り裂かれ。モノクロモンにとって、今日は厄日であろう。

 

「ぐすぐす……ひどいです……」

「わるい……っていうか、全部ピッコロモンのせいだろ!」

「一度助けてやったのにその言い方はないっぴ!」

「あ、あの時ピッコロモンが助けてくれたのか……って!そもそもお前が来なけりゃ、死にかけることもなかったんだよ!」

 

 グスグスと泣いているモノクロモンの背中に書かれた落書きは、現在優希が一生懸命に擦って消している。レオルモンはそこら辺に生えていた薬草のでモノクロモンの腹の傷の治療だ。

 そして、そんな二人の優しさがうれしくて、モノクロモンはさらに泣いてしまう。元を正せばこちらが悪いのに、それでもこんなことでうれしくなるモノクロモン。彼は今日、それほど酷い目にあったのだ。

 優希たちの行為によって、身も心も癒されたモノクロモンは、優希とレオルモンにだけ(・・)礼を言って去っていった。まあ、残る面々にされたことを考えれば当然ではあるが。

 

「っていうか、リュウこそ!何で助けてくれなかったんだ!」

「前にも言ったろ。出来事はいつだって突然だ。だったら、安全な時に経験しといたほうがいい」

「うぐっ……」

 

 その言葉に唸りながらも、尚も文句を言い募ろうとする大成。だが、それはできなかった。

 次の瞬間、とんでもないスピードでモノクロモンが吹き飛んできたのだ。モノクロモンは大成たちの近くに落下すると、そのまま光となって消滅した。つまり、死んだのだ。このモノクロモンが、先ほど別れたばかりのモノクロモンであることは疑いようもない。

 だとしたらなぜ。何があったのか。さまざまな疑問が、大成たちの頭の中に駆け巡る。だが、この場の全員が先ほどスレイヤードラモンが言った言葉を思い出していた。

 

――出来事はいつだって突然だ――

 

 パチパチとそんな音が辺りに響く。レオルモンの髪から警戒時に発せられる威嚇の音だ。いや、レオルモンだけではない。その場の全員が次に起こることを警戒している。

 まるで機械の駆動音のような、そんな耳障りな音が、地響きと共にどこからか聞こえてくる。それは、足音。彼らがやってくる、害意の足音だ。

 

「あれは……!」

 

 その存在に、大成は愕然とする。今この瞬間まで、大成は理解していなかった。ソレの意味を。

 それには、スレイヤードラモンという身近にその存在がいたこともあっただろう。いや、逆に遙か空の先のようなそれに現実味がなかったのかもしれないし、もしかしたら、ゲーム気分が抜け切れていなかったのかもしれない。

 とにかく言えることは一つ。大成は、いや、優希でさえ、本当の意味でソレの意味を理解してはいなかったということだ。

 この後、大成たちは身をもって知ることとなる。“究極”という、完全を超えたその存在を。“究極”という、その名の意味を。“究極体”の、その力を。

 

「見つけたぞ。スレイヤードラモン」

「ハイジョスル」

 

 それは、途方も無いほどの害意にして、究極の襲来――。




というわけで、前回分割された第十五話ですね。思ったよりも長くなりました。

さて、次回は襲撃(される)回です。
いよいよ、第一章からちょくちょく最後の方に出張っていた彼らの本格登場となりますね。

それでは、次回もよろしくお願いします!
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