【完結】デジタルモンスターA&A~紡がれる物語~   作:行方不明

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すみません。先週に引き続きかなり遅れました。


第十八話~ウィザーモン教授の研究成果~

 大成たちは、ウィザーモンと名乗るデジモンに連れられて学術院の街の中を歩いていた。

 学術院の街は山脈の地下に作られた円形の巨大な都市だ。その面積だけで言えば、人間の大都市と比べても遜色ないほどである。とはいっても、建物の大きさは大きなものから小さなものまで様々。何を考えてこんな建物を作ったのか。そう思えるくらい、巨大な一階建ての建物があれば、大成たちの腰程度の小さな建物もある。さまざま過ぎて、言葉も出ないほどだ。

 だが、それほどの大都市だというのに、妙に人影が見当たらない。まあ、デジモンのデの字くらいは存在するが、その程度である。閑散とし過ぎていて、閑古鳥すら何処かに行っているレベルだ。

 

「へぇーでっかい街だなぁ!」

「……まあ、普段はもっと賑やかなのだがな。今は緊急事態でね。皆避難しているのだよ。この街の外へと行った者が半分。この街の地下シェルターに入ったのが半分というところだ」

「緊急事態……?一体何が……」

「君たちがそれを言うか」

「あ、アイツか」

 

 思い出されるのはあの機械竜。今まで忘れていた、とばかりに優希などまた震え始めている。どうやら、まだ吹っ切れている訳ではなさそうだった。

 そして、ウィザーモンが言った通り、現在、この街の住人はその半分がこの街から外へと避難し、もう半分が地下にあるこの街のさらに地下にあるシェルターへと篭っている。

 だが、どちらの選択も一長一短であることには違いなかった。外へと避難して行っても、追いつかれては意味がない。逆にこの街の中にいても、見つかっては意味がない。この街の住民はそれぞれメリットとデメリットを考えた上で、避難の仕方を選択したのだ。

 

「ふむ。それにしても、人間の成長は侮れないな。あの小さな子供がたった五年でこうなるとはな……」

「あれ?優希はウィザーモンと会ったことがあるのか?」

「え?まぁ……前にこの世界に来た時にね」

「へぇ?っていうか、デジモンの進化の方が凄いだろ」

 

 デジモンの進化を思い出して、大成はそう言うが、ウィザーモンから言えば、そっちの方が何を言ってるのだという話だ。

 デジモンは進化できなければ、何年もそのまま変わらないということもザラにある。だが、人間は時間が経過すれば否応なしに成長していく。かつてデジモンもそのような進化の形だったこともあったとは言え、ウィザーモンからすればずっと変わらない人間の成長の仕方の方が驚きなのだ。

 

「そういえば、さっき……名誉教授だっけ?とか言ってたよな。偉いの?」

「偉いに決まってるでしょ」

「正確には特別名誉教授だな。僕を含めて数人しかいない。それぞれが専門を持っていてね。僕の場合は進化について研究している……さあ、着いたぞ」

 

 ウィザーモンが大成たちを案内したのは、とある建物の中の一室だった。その建物は、人間が使うには巨大すぎるほどのサイズだ。だが、大成たちが案内された部屋は、ウィザーモン用の部屋なのか、十分人間でも使えるサイズの部屋だった。

 だが、部屋に入って直後。大成たちは頬が引き攣ることとなっていた。もっとも、優希だけは大成たちとは別の意味で頬を引き攣らせていたのだが。

 

「……物置?」

「失礼だな。僕の“研究室”だ。言っておくが、この部屋に他人を滅多に入れない。僕の生徒なら泣いて喜ぶことだぞ?」

「って言われてもな。訳のわからんものばっかり」

 

 そこら辺に古臭い石版やら何やらがいろいろと置いてあるが、価値がわからない大成からすればゴミも同然だ。それ以外にも、部屋はさまざまなものが散乱しており、この部屋の状況を見た人は口を揃えて言うだろう。片付けろ、と。それほどまでに汚かった。

 ちなみに、先ほど大成が価値がわからなかった石版は、古代時代の歴史が綴られた産物であり、価値がわかるものからすれば喉から手が出るほど欲しがられるものだったりする。

 

「お嬢様?何をそんなにキョロキョロとしてるのです?」

「え?いや……ウィザーモン、この部屋には私たちだけ?」

「ふむ?そうだが……あぁ、彼女か。彼女ならいないよ。僕が教授となった時に、彼女も一緒に教授にという話だったんだがね。堅苦しいのが嫌だ、と出て行った。時々フラッとやってくるが……今どこで何をしてるのかは不明だ」

「そう……よかった」

 

 どこか納得したようにウィザーモンが言った彼女。

 優希は、その彼女がこの部屋の中にいるかどうかでキョロキョロと辺りを見渡していたのである。かつてこの世界へと来た時に、優希はその彼女によってトラウマになるような仕打ちを受けている。そんなこともあって、優希はその彼女と会いたくないのである。

 当然、そんなことを知らない大成たちとしては、優希が挙動不審になっているようにしか見えなかったのだが。

 

「さて……僕はデジモンの進化について研究していてね。人間の客人は久しぶりだ。いろいろと聞きたいこともある」

「聞きたいこと?っていうか、いいのか?緊急事態なんじゃ……」

「まあ、そうなんだがね。ほら、よく言うだろう?知的好奇心に勝るものはない、と」

 

 よく言うのかどうかは知らないが、ウィザーモンが微妙にアレな人物であることを認識した大成だった。

 その後、大成たちにさまざまな質問がウィザーモンからされる。どんな食事を好むのか、どんな眠り方をしているのか、どんな性格なのか。

 数分後。一通りの質問が終わった時には、大成たちは疲れ果てていた。人間側、デジモン側共に自分たちのみならず双方のことについてしつこいほど詳しく聞かれるのだ。疲れもするだろう。

 

「えっと……た、大成さん大丈夫?」

「お前逃げたな」

「ひぅ!?ごめんなさい!」

 

 ワームモンが労いを兼ねて話しかけてくるが、大成にとっては火に油でしかない。

 立て続けの質問と妙なテンションのウィザーモンの相手をすることが怖かったワームモンは、隅に移動して空気となっていた。ようするに、逃げたのである。そして、そんなワームモンの分の質問は大成が捌くこととなったのである。

 本気でワームモンを呪った大成だった。そして、そんな大成の怒りがわかったのか、ワームモンは縮こまってごめんなさいと呟いている。

 

「ふむ。気弱で臆病……ワームモンの性格は変わりがないか」

「……?どういうことだ?」

「そうだな。せっかくだし、授業をしようか」

「授ぎょっ――……いやぁ、遠慮……」

「しなくてもいいぞ」

 

 授業という言葉に嫌なものを感じた大成は制止の言葉を発したが、肝心のウィザーモンはその言葉を無視して話し始めた。

 ウィザーモンが話し始めたのは、彼の研究成果とも言えるもの。進化についてだった。授業という言葉に初めは苦手意識があった大成だったが、大好きなデジモンの進化についてのことが聞けることや、ゲームなどでも世界観等の設定を知りたいタイプであったこともあり、すぐにその話にのめり込むことになる。

 まあ、今後のことを考えて聞いておいた方が良いという考えも無きにしも非ずだったのだが。

 

「まず進化についてどれくらい知っている?」

「……いや。そういうものだとばっかり」

「このセバスもそうですな」

「僕も……」

「私もね」

 

 大成と優希はともかくとして、我が事ながら首を傾げているデジモン組にはウィザーモンも呆れ気味である。

 だが、ウィザーモンとて教授。頭がアレなと者たちと付き合ったことだってある。すぐに思い直して、説明を始めるのだった。

 

「さて。では、進化についてだが……太古の昔にその現象が確認されてから、幾度かその在り方は変容している」

「へんよう?……変容か。変わってるってことか?」

「ああ。五年前は時間による経過が主な進化の仕方だった。君たち人間と同じような成長する……という感じだな。そこからしばらくの間、進化という現象が氾濫しだした」

「えっと……つまり?」

「ちょっとしたことでも進化という現象が起こるようになったのだ。それこそ溢れかえるようにな。それからしばらく経って、今の形に落ち着いた訳だが……」

 

 気軽な雰囲気のウィザーモンの言葉に、大成たちはそういうものか、と納得している。だが、当時の現状から見れば、そんな気軽なものではなかったのだ。

 必要もないのに進化をし、生態が変わり、この世界中が混乱した。この街でも多少の事件があったほどである。

 世界中で溢れかえった進化は、いつの間にか収束し、現在の、稀に起こることがあるという形に落ち着いた。

 今でこそマシになっているが、五年前の変化の最中にあった時期は、ありもしない噂が飛び交ったりして、ひどい混乱があったものである。

 

「それで、だ。デジモンはそれぞれの種ごとに特徴がある。外見だけではない。性格にもだ。同じ種で、その特徴から外れた者など滅多にいるはずもない」

「なんか、ゲームのモンスターの設定みたいだな」

「設定……フフ、確かに。僕は進化という現象を研究するうちにあることに気づいた。何らかの要因によって、その種族の特徴を外れたものに進化という現象は起きやすいことに、だ」

 

 ウィザーモンが気づいたのは、そこだった。経験など、何らかの要因によってその種族の特徴を外れた者。その種族の特徴ではどうしようもない壁にぶつかった者。そのような者たちに進化という現象が比較的置きやすいということに。

 もっとも、あくまで“比較的”にである。必ずではないし、そのような者たち以外にも進化する者はいる。だが、進化の手助けとなる条件であることには間違いがなかった。

 

「進化についてはさまざまな論がある。僕の持論としては……可能性だな」

「可能性?」

「ああ。未来を切り拓くための、新たな可能性。特徴から外れた者が進化しやすいのも、そう考えれば都合がつく。まあ、本当のところはまだわかっていないがね」

「なんだぁ……結局わかってないのかー……」

 

 あれだけ話しておいて、そこに着地した結論に大成たちはガッカリする。もっとも、口に出したのは大成だけだが。話を聞くだけでいい部外者は気楽なものである。

 だが一方で、せっかくの研究の成果をその一言で片付けられては研究者側としては溜まったものではない。大成の言葉を聞いて、どこか怒ったような雰囲気を放ったウィザーモンだった。

 

「ごほんっ!まあいい。ここ最近、人間が各地に現れたという報告が上がってきていてね。人間という存在にも興味があるんだ」

「……研究対象として?」

「研究対象として」

 

 優希の言葉にも、何を当たり前なことを、とでも言うかのような表情で返答するウィザーモン。だが、あんまり即答して欲しくない言葉ではある。ウィザーモンから、ちょっと距離をとる優希とそんな優希の前にさりげなく立つレオルモンだった。

 そして、そんな優希たちに構わず、話を続けるウィザーモン。ちょっと引いてる優希たちの様子に本気で気づいていないようだ。

 

「人間というこの世界にとっての異物とも言える存在が、僕らデジモンにどんな影響をもたらすのか!興味が尽きない!」

「……」

「現に最近訪れた人間たちがパートナーにしているデジモンたちの多くに進化が確認されている!これを無関係と言い切ることができようか!?」

「……あぁ、うん……まぁ……そうだね」

 

 何らかのスイッチが入ったらしいウィザーモンから、大成たちは再度距離をとった。これ以上近くにいると、何らかの菌に感染しそうだったからである。

 ちなみに、ウィザーモンが正気に戻ったのはこの数分後。全力で引いている自分たちのことにも気づかずに嬉々として語り続け、挙げ句の果てには何かを思いついたのかしばらく黙り込んだウィザーモンに、大成たちはついていけなかったのだった。

 

「……なぁ、優希……こいつ大丈夫なのか?」

「……多分。いつもみたいにパートナーに誘わないの?」

「いやぁ……さすがに……」

 

 ある意味アレな大成にも引かれるウィザーモン。その時の大成の表情は珍しいものだったと、後の優希は語っている。

 そんなウィザーモンだが、正気に戻って早々に次の話題に移り始めた。いきなりの話題転換に優希たちはついていけない。だが、ウィザーモンの雰囲気から真面目な話だとわかったのだろう。何とかして頭を切り替えようとしていた。

 

「さて……話を変えるがね。今この街は非常事態となっている。だが、この事態に乗じて悪事を働くものも少なからずいてね。困っているのだよ」

「いるんだなぁ……そんな火事場泥棒みたいなことをする奴」

「ああ。そこで君たちに依頼が二つある。その者たちの退治と――」

「ちょ、ちょっと待って!こんな時に……?あの究極体が近づいて来てるのよ!?」

 

 驚きのあまりに震えながら声を張り上げた優希。優希としては、逃げるか、隠れるか、どちらにせよ避難と呼べる行動をしたいのだ。この街に無駄に留まり続けて、無駄な危険を冒したくはない。当然の心情だ。

 一方で、そう返されるのも承知していたのだろう。ウィザーモンは話の続きを聞けと言って、続きを話し始めた。

 

「二つあると言ったろう。一つはその退治ないし撃退。もう一つは……」

「もう一つは?」

「この街に来ているこの事態を解決する者を連れてきて欲しい」

 

 ウィザーモンの口ぶりからして、既に解決策は見つかっているらしい。それを聞いて安心した大成だったが、一方で優希はまだ不安そうである。まあ、究極体の圧倒的強さを見せられた手前、素直に安心することなどできないだろう。

 ちなみに、その解決する者とは優希の知り合いでもあるのだが、それがわかるのはもう少し先の話だ。

 まだ大成たちがその依頼を受けるとも言っていないというのに、ウィザーモンは大成たちにやらせる気満々である。依頼の役に立つから、と部屋の奥から箱を持ち出してきて、大成の前に置いた。

 

「なんだこれ?」

「フフフ……この僕の研究成果の一旦……この素敵アイテムを特別に貸し出そう。ワームモンじゃ心もとないからね」

「ひどいよぅ……」

「事実だろうが。それで、もったいぶらずに教えてくれ。このレアアイテムっぽいのは何なんだ?」

 

 ウィザーモンはニヤリと悪戯っ子のような笑みを浮かべたままで、なかなか言わない。よほど自分の研究成果を見せるのが楽しいらしかった。

 見た感じでは、箱の中に入っているのは、九つの卵のような何かだ。それぞれに何かのマークがついている。というか、研究成果や素敵アイテムという言葉の割には、入っているのはダンボールのような箱。管理が杜撰過ぎる。

 やがて、大成の反応をひとしきり楽しんだのか、ウィザーモンはその名称を言うのだった。

 

「古代において擬似進化を可能とした道具。“デジメンタル”のレプリカだよ。あぁ、レプリカといっても……制限を除けば、本物と遜色ない」

 

 デジメンタル。それが、道具の名前だった。

 




えっと、遅れた原因としては冬休み課題のレポートのせいですね。
ですが、これで1、2週間は何もないので、来週からは通常の間隔の投稿に戻れると思います。
本当に私事で迷惑をかけてすみません。

今週は土曜日に更新するつもりですが、もしかしたら日曜日になるかもしれません。
ので、申し訳ありませんがご了承ください。

それでは、また次回もよろしくお願いします。
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