【完結】デジタルモンスターA&A~紡がれる物語~   作:行方不明

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すみません、遅れました。


第十九話~お試し!アーマー進化!~

 なし崩し的にウィザーモンからの依頼を受けることになった大成たち。

 現在、そんな大成たちは先ほどの部屋とは違う、体育館のような巨大な空間が広がる部屋にいた。

 

「なんで?」

「いや、デジメンタルを作ったのはいいが……使えるのが古代種の末裔でしかないこともあってまだ試したことはなくてね」

「古代種の末裔!?へぇ……って、それってようするに実験体にしたいってことか?」

「まあ、そうだな」

「実験!?いやいやいや……むりだよぅ!」

 

 嫌がるワームモンを無視して、大成とウィザーモンは話を進める。

 早速とばかりに、ウィザーモンが箱から取り出したのは炎のような素体に角が生えているデジメンタルだった。はい、と気軽にそれを手渡されたワームモン。だが、手渡されてもどうしていいかわからない。恐る恐るつついてみたり、触ってみたりするが、何も変化は起きなかった。

 それには、大成もウィザーモンも首をかしげている。デジメンタルを渡せば、何かしらの現象はあると思っていたのだ。

 

「おい、どういうことだ?」

「つんつん……何もないよ?」

「ふむ……妙だな。ふむふむ……ふむ?いや……そう……ふーむ……」

「ウィザーモン?おーい?……だめか」

「これ……どうするの?」

 

 黙り込んで思考の海へと漂流しているだろうウィザーモンのことは放っておいて、ワームモンが持ってきたデジメンタルを大成は受け取る。

 太陽のようなマークが描かれたそのデジメンタルは、大成の手からはみ出るくらいの大きさだ。持ってみるとまるで本物の卵のようで、微かに温かく、エネルギーが溢れているような気がする。これが作られたものだとは、大成には信じられなかった。

 ゲームでよくある力溢れるような物とは、このデジメンタルのような物のことを言うのだろうな。と、そんなことをぼんやりと考えながら大成はデジメンタルを持っていたのだった。

 

「ウィザーモンさんのこと信じても……大丈夫?」

「たぶん大丈夫でしょ。リュウの知り合いだし……」

「……。いや、そこは自分の知り合いだと太鼓判押せよ」

「そこまで深く知っているわけじゃないし……」

「いや……でもぅ……」

 

 ワームモンとしては何としてもウィザーモンの魔の手から逃げ出したいのだろう。ワームモンにとって、ウィザーモンとは自らに迫ってくるマッドサイエンティストでしかないのだ。

 だが、一方で大成たちはデジメンタルという物によって引き起こされる疑似進化に興味がある。よって、ワームモンがウィザーモンから逃げ出すことは不可能そうだった。 

 

「うぅ……どうすればぁ……」

「ほっ……ふっ……」

「いつの間に……って。デジメンタルでお手玉なんかして……怒られるわよ?っていうか、アンタ……地味にすごいわね。お手玉四つ出来るなんて」

「ふっ……ゲームコントローラーで鍛えた腕捌きをなめんなよっ!」

 

 それは関係あるのだろうか。そう思った優希だったが、口には出さなかった。この芸をもう少し見たいという気持ちもあって、集中力を欠かせるとた大成に悪いと思ったからである。

 だが、残念ながら優希の気遣いは意味がなかった。調子に乗って喋りながらお手玉していた罰が当たったのだろう。リズムを間違えたのか、手を滑らせて、一つのデジメンタルを落としてしまう。そして、一度間違えたリズムを再び取り戻すことなど大成にはできなかった。

 一つまた一つ、と次々とデジメンタルを落としてしまう。だが、せめて一つ、一つだけ。次にその手に取ろうとした真上に放り投げたデジメンタル。それ“だけ”はキャッチしよう、と大成は最後の力を振り絞ってその手を伸ばす。

 だが――。

 

「ぬぁああああああああ!」

 

 伸ばした手はどこにも届かなかった。いや、正確にはその手はデジメンタルに届いた。だが、当たっただけだ。

 そして、真下に向かっていたそのデジメンタルの勢いは大成の手が当たったことによって別の方向へと向かうことになる。ようするに、デジメンタルはあらぬ方向へと飛んでいくことになったのだ。

 あ、と呟いたのは誰だったのだろうか。放物線を描いて飛んで行ったデジメンタルの先にいたのは――。

 

「え?」

 

 ワームモンだった。

 ガツン。とそんな音が聞こえて、デジメンタルがワームモンに激突する。傍から見ていて、思わず満点をあげたくなるような一連の出来事だった。だが、本当に驚くべきことはこの後から始まる。

 突如として、ワームモンを炎が包み込んだのだ。轟々と巻き上がる炎。突然の事態に大成たちはついていけずに呆然とするしかなかった。

 

「ぁああああああああ!」

「っ!おい!イモ……イモ?あれ、何か違う……」

 

 一瞬の後に炎の中から現れたのは、炎を纏う昆虫人間だった。

 進化した。そのことをすぐさま大成たちは理解する。だが、残念ながら大成たちにゆっくりと考える時間はなかった。

 この場の面々を代表して、無事かどうかの確認の意味も込めて大成が話しかけようとした、その瞬間。炎が舞ったのだ。

 

「あぶねっ!イモ、何する!」

「怖いぃいいいいいいいい!死ねぇえええええええええ!」

「はぁ?って!あぶっ!ちょっ!待っ!助け――!」

 

 割と本気で大成は意味がわからなかった。

 炎を纏う昆虫人間がワームモンだったデジモンであるということはほぼ間違いない。だというのに、いきなり昆虫人間は辺り構わず攻撃し始めたのだ。

 炎が辺りに舞い散り、大成が逃げ惑う。そんな中で、優希とレオルモンは部屋から姿を消していた。消える気配を大成に悟らせずに、部屋から出て行った辺り、実にちゃっかりしている。

 

「……ふーむ……そうか!わかったぞ!ん?何かあったのか?」

 

 そんな時、ようやくウィザーモンが思考の大海から帰還する。今の今までこの騒ぎにずっと気づいていなかったようである。不思議そうな顔で、辺りを見渡して、事態の把握に努めている。

 思わず突っ込みたくなる大成だが、そんなことをすればもれなく丸焦げだ。全力を持って避けることしか、今の大成にできることはないのである。

 

「なるほどな。フフフ……まさか先を越されていたとは……」

 

 直後、炎が舞う。昆虫人間の炎とは別の炎が。そのあまりの熱気に目をそらした大成が、次に前を見た時。そこにあった光景は、倒れ伏したワームモンと転がっているデジメンタルだった。

 割と本気で意味がわからない。今日何度目になるかわからない混乱の最中に大成はいた。だが、実際に起きたことは至極単純だったりする。事態の収拾を図ったウィザーモンが、己の技でもって暴走する昆虫人間を鎮圧した。事実はそれだけである。

 

「おい!何が素敵アイテムだよ!すっごい危険物じゃねぇか!」

「君たち双方と相性が合わなかったようだな」

「相性?」

 

 自身渾身の怒りを軽く流されたことに、若干イラついた大成だったが、仕方ないことだと割り切った。ウィザーモンの言った“相性”という言葉に気になったということもあるのだが。

 

「とりあえず、ワームモン単体だとデジメンタルを使って進化できそうにないな。アーマー進化は現代では失われている進化だ。材料があっても、設計図がないようなものだ。だから、単体では進化できないのだろうな」

「アーマー進化?」

「デジメンタルを使った擬似進化のことだよ」

 

 つまり、ワームモン単体だと、デジメンタルを使って進化できないということである。

 ウィザーモンが言った理由以外にも、おそらくはワームモン自身の性格や心情のせいも多分に関係しているだろう。あと考えられる可能性といえば、このデジメンタルはあくまでレプリカだったこともあるかもしれない。

 だが、ウィザーモンはあえてそのことを言わなかった。不確定要素が大きかったためである。

 

「進化できない……あれ?さっきのは?」

「言っただろう?単体では、と。おそらく他者による介入があれば、進化できる訳だ」

 

 つまり、ワームモンがデジメンタルを持って進化を望むのではなく、大成からワームモンへとデジメンタルを手渡しすれば言いということだ。だが、なぜ自分を挟むことでアーマー進化が成り立つのか、大成は理解できなかった。

 ウィザーモンはそのことを、“ワームモンではない他者(大成)対象者(ワームモン)に渡す”ことに意味があると考えている。

 デジメンタルは元々心の働きに関係するアイテムだ。だからこそ、単体ではアーマー進化できなかったワームモン以外の、誰かの心に触れていることがキーなのだろう。そう分析したウィザーモンだが、例によってそのことは言わなかった。

 

「半ば暴走気味だったのは……さっきも言った通り相性だ」

「だから相性って……?」

「デジメンタルには、それぞれに心の働きによる特性がある。先ほどのデジメンタルは勇気だな。君たちはあんまり勇気を出すタイプじゃないのだろうな」

「すぅううううっごい!失礼なこと言われた気がする」

 

 デジメンタルに確認されている特性は全部で十一個。勇気、友情、愛情、知識、誠実、純粋、希望、光、優しさ。そして奇跡と運命。このうち、ウィザーモンが複製できたのは前者九つだけだった。一応、劣悪品とでも言えるものはできたとはいえ、奇跡と運命のデジメンタルだけはどうしても複製しきれなかったのである。

 そんなこんなで、とりあえず大成は、勇気のデジメンタルとは相性が悪いことを、しぶしぶ理解した。まあ、明らかに納得していないようであったが。

 

「じゃあ、どれが相性いいんだよ」

「ふむ……先ほどを見た感じ、どちらかといえばワームモンよりも君の方の相性が重要そうだ。もちろん、ワームモンとの相性も考えなければならないがね」

「ふむふむ……相性ってのはどうやってわかるんだ?」

「それは君次第としか。さて、君はどんな性格だ?勇気を振り絞る性格か?友情や厚い?愛情深い?知識欲があるか?至極誠実な人間か?純粋無垢な――」

「ちょ、ちょっと待て!考えさせてくれ!」

 

 矢継ぎ早に話し続けるウィザーモンに耐えられずに、大成はストップをかける。そして、ウィザーモンを黙らせた上で、考え始めた。ウィザーモンの言葉からすれば、デジメンタルの特性とは、おそらく性格や考え方と関係のあるのだろう。

 大成は、九つの中で最も自分の性格や考え方にマッチするだろうものを探す。だが、考えれば考えるほど、これらのどれもが自分とは遠い場所にあるような言葉である気がして、上手く決められない。

 結局。決められなかった大成は、先ほど試した勇気のデジメンタルを含む九つすべてを試すことにしたのだった。

 ちなみに、そのことを告げた時、ウィザーモンが棚から牡丹餅というような、そんな顔をしていたのだが、それはほんの余談である。

 

「どれもパッとしないな……」

「ぐぅ……気持ち悪……もう嫌……」

「確かに。ていうか、君。もう少し特徴を持ったらどうなんだね?」

「失礼なっ!」

 

 その後、一時間かけてすべてのデジメンタルを試した大成たちだったが、結果は芳しくなかった。

 一応、全部のデジメンタルで進化ができたことにはできた。だが、どれも大成とワームモンと相性が良いとは言い難かったのだ。

 ちなみに、アーマー進化するたびにワームモンは奇妙なテンションになる。深夜テンションとか、酒に酔った時のテンションというのが近かったのかもしれない。そんなワームモンだが、現在はぐったりとしている。

 

「ふむ……問題はワームモンだな。心が中途半端すぎる」

「心が中途半端って何だよ?」

「言っただろう?デジモンには種族ごとに特徴があると。たいていのデジモンは進化するとその性格は進化先のデジモンの特徴に準じたものとなる。まあ、進化前の性格のままの者もいるのだがな」

 

 ちなみに、無口だったデジモンがおしゃべりになったり、好戦的なデジモンが戦いを嫌うようになったりと、進化による性格の変容は凄まじかったりする。逆に進化前の性格が残る者は、精神が強い者だったり、特別な経験をした者に多い。

 だが、ワームモンの場合は中途半端なのだ。進化前の性格が残っているくせに、進化後の性格に引っ張られている。そのせいでテンションがおかしくなり、暴走する結果となっているのだ。

 

「覚えておくといい。先を目指すなら、心も鍛えとかないといけない」

「心ってどうやったら鍛えられるんだ?」

「さあ?そこら辺は僕は知らないな。ああ、良くも悪くも結果が出たら詳しく教えてくれ。研究の参考にする」

「……。お前も大変だな」

 

 ウィザーモンの実験対象扱いにされてしまったらしいワームモン。きっと今日は厄日だろう。

だが、実験対象扱いといっても、ウィザーモンが四六時中張り付くほどの扱いではない。それは、ワームモンにとって不幸中の幸いである。まあ、あまり嬉しくない幸運だろうが。

 そして、そんなワームモンに珍しく同情してしまった大成である。

 

「まあ、いい。一番マシなこれを持っていけ。くれぐれも壊すなよ?」

「ちなみに壊したら?」

「……」

「何か言えよっ!」

 

 その無言が怖い大成とワームモンだった。

 ともあれ、ウィザーモンから大成に貸し出されたデジメンタルは、雷のような角を持つ、牙のような模様の黒いデジメンタルだ。デジメンタル自体は手に余るくらいの大きさだというのに、妙に重く感じられた大成だった。

 ちなみに、大成がそのデジメンタルを初めて見た時、でかい落花生と間違えたりしたのだが、それはほんの余談である。

 

「友情のデジメンタル。しっかりと活用して、その成果を教えてくれよ?」

「……友情?冗談でしょ?」

「お嬢様……大成殿は友人が少ないとおしゃってませんでしたか?」

 

 いつの間にか優希とレオルモンが部屋に戻ってきている。

 今までどこに行っていたのか。そう疑問の視線を投げかける大成だったが、優希たちは大成に貸し出されたデジメンタルに夢中だ。その疑問は軽く流された。しかも、何やら随分と好き勝手なことを言っている。

 

「失礼だろ。俺にだって友達くらいいる!」

「友達?え?誰?」

「いや、あーっと……えーっと……あ、そうだ!優希だ!」

「え?私?」

「え?」

 

 苦し紛れに出した答えだったが、結局は地味に傷ついたような、そうでないような、微妙な気分となった大成である。どのみち大成は友達が少ないということは決定事項である。

 比較的とは言え、そんな大成が友情のデジメンタルと相性が良いというのは何かの冗談か、あるいはただの皮肉だろう。

 

「まあ、いい。それで?優希。頼んだものを取りに行ってくれたのか?」

「ええ。ちゃんともらってきたよ」

 

 ウィザーモンから質問されて、優希は背負った籠を中身を見せるように床に置く。

 そう、先ほど優希とレオルモンが部屋から出ていったのは、ウィザーモンに頼まれたからだったのである。そして、部屋から出ていった優希たちは、まだ避難していない住人からとあるモノを貰い、集めてきたのだ。

 事前にウィザーモンから話が通されていたこともあって、ソレはスムーズに貰うことができた。だが、これほどたくさんのソレを何に使うのか。貰ってきた優希たちだけでなく、大成も首を傾げている。

 

「これか?必要なんだよ。先ほど言ったこの事態を解決する者を探すのにね」

「だからってどうするんだよ……こんなにたくさんの……キノコ」

 

 力なく呟いた大成の目の前には、籠の中いっぱいに詰まったキノコがあった。

 




というわけで十九話。なんとか土曜日に更新できました。
何やら奇妙なものを貸し出された大成とワームモンのお話でした。

次回はいよいよ依頼編です。

それでは、次回もよろしくお願いします。
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