【完結】デジタルモンスターA&A~紡がれる物語~   作:行方不明

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第二十一話~キノコ嫌いなアイツ~

 戦闘音を聞きつけてやってきた警備員に事情を説明した大成たちは、泡を吹いて倒れたまま起きない獣竜を引っ張って、ウィザーモンの部屋へと戻ってきていた。

 ちなみに、獣竜も一緒に連れてきた理由は至極単純で、優希がその獣竜と知り合いだったからである。何度目になるかわからない知り合いの登場に、大成たちは“またか”と呆れ気味だ。

 

「ウィザーモンいるー?」

「おかえり。なかなか活躍したみたいだな。デジメンタルはうまく使えたか?」

「情報が早いのね」

 

 会議はもう終わったらしく、ウィザーモンはすでに部屋に戻ってきていて、ホワイトボードに何やら訳のわからない文字やら数字やらを書いていた。おそらくは何らかの研究中なのだろう。だが、その書く速度が尋常ではない。というか、腕の動きが早すぎて、見ていて気持ち悪くなるほどである。

 その後も、大成たちの顔も見ずに作業していたウィザーモンだったが、チラリと横目で見た時に大成たちが連れている獣竜に気が付いたのだろう。驚いたような、納得したような、呆れたような、複雑な表情でウィザーモンは大成たちに向き合った。

 

「はぁ」

「おい、なんで俺を見て溜息を吐いた!?」

「いや、君が引きずっているその馬鹿に溜息を吐いたんだ。相変わらず過ぎだな。ああ、君たち。そのキノコ服も脱いでいいぞ。また気絶されてはかなわんからな」

「……ってことは、こいつが?」

 

 大成たちのキノコ装備は、この事件をどうにかすることができる者を探すために装備していたものである。それを装備する必要がなくなったということは、つまりこの獣竜こそがその探していた者ということだ。

 まさか、キノコ装備がおびき寄せるためではなく、気絶させるための装備だったとは大成たちは思っていなかった。そして、本当にキノコ装備などというアホなもので見つかるとも思ってもいなかった。二重の意味で驚いている大成たちである。

 だけど……、とキノコ装備を取り外しながら大成はその獣竜を覗き見た。不安しかない。それが大成の、いや、ウィザーモンを除く全員の思いだった。まあ、キノコ一つで気絶するような者など、到底信じることはできないだろう。

 

「脱いだのはどうすれば?」

「そこの隅に隠しておけ。む?優希。何をしている。さっさと――」

「いや、ちょっと外に出ていてくれる?理由はわかるでしょう?」

「……なぜだ?」

 

 通常の服の上から着ているとはいえ、全身を包むキノコ服を脱ぐ時にはそれなりに服が肌蹴る。それもあって、人前で着替えるということに恥ずかしいという感情を持った優希。女の子として当然の反応だろう。

 優希にとって運がなかったのは、この場にいる面々は、そこら辺の機微を気にするどころか、思考に入ってすらいない者が大半だったということだろう。

 結局、優希はこの部屋の中で着替えることになった。もっとも、せめてもの抵抗としてか、部屋の隅で着替えていたのだが。

 ちなみに、レオルモンだけが目を瞑るという紳士さを発揮していたりするのだが、その他の面々は特に何もしていなかったりする。

 そして、そんな時だった。今の今まで気絶していた獣竜が起きたのは。

 

「……はっ!?ここは……キノコお化けは!?」

「何を言ってるんだ。お前は」

「あれ?ウィザーモン?久しぶり~」

「まったくお前は……この街に訪れたというから、こちらはいつ来るかと構えていたというのに……」

 

 呑気で間延びした話し方をするその獣竜は、ウィザーモンとも知り合いらしい。仲良く談笑している。まあ、実際には仲良く談笑というよりも、ウィザーモンが好奇心のままに質問している感じなのだが。

 だが、元々知り合いであるウィザーモンや優希はともかく、その獣竜を知らない大成たち三人はその獣竜のことを知らない。当然、話にもついていけないし、退屈な時間だ。

 そして、そんな大成たちの雰囲気を察したのだろう。ウィザーモンは、その獣竜に自己紹介を促すのだった。

 

「あれ?優希ちゃん?久しぶりだね~!」

「久しぶりね。ドル」

「僕はドルモン。んで、名前はドル!」

「ドルモンだからドルか……安直じゃね?」

 

 その獣竜は自身のことを“ドルモン”と“ドル”という二つの名前で名乗った。例によってドルモンが種族名で、ドルの方が名前だろう。ドルモン。デジモンの中でも特殊な部類に入る成長期のデジモンである。

 一方で、“ドル”というツッコミどころ満載の名前に思わず口を出した大成。だが、その名前を付けたのはドルモンではないし、ドルモン自身はその“ドル”という名前は嫌いではない。

 まあ、“もうちょっとかっこいい名前が良かったな”、とドルモン自身とて思ったことがないわけでもないのだが。

 

「あはは……僕の名前については……僕の相棒に言って。うん」

「ふーん?……ああ、俺は大成って言うんだ。あ、なあ……ドル。俺のパートナーになってくれっ!」

「えぇっ!大成さん!?」

「ごめんね~。僕には相棒がいるからね。無理だよ」

「マジか……っていうか、デジャヴ……」

 

 相変わらずのパートナーになってくれ宣言をする大成だった。ビジュアル的に気に入ったデジモンがいればこのナンパ発言をする大成。もはや、恒例行事となっているために、優希たちもいちいち気にしない。毎回、律儀に反応するのはワームモンだけだ。

 そして、そんなワームモンを尻目に、一方のドルモンは即答だった。その断られ方にデジャヴを感じた大成である。

 

「レオルモンと言います。セバスとお呼び下され。ドルモン殿。お嬢様共々よろしくお願いしますぞ」

「ぼ、僕はワームモン。よ、よろしくお願いします……」

「よろしく~」

 

 どこか、セバスの口調にデジャヴを感じたドルモン。だが、どこにデジャヴを感じたのかわからず、結局は気のせいということで流すことにしたのだった。

 自己紹介もそこそこに、仲良く談笑を楽しむ大成たちとドルモン。あのワームモンでさえ、初対面であるはずのドルモンと話をすることができている。やはりそれには、ドルモンのその間延びしたような、幼い雰囲気も一役買っているのだろう。

 

「いや、仲がいいのは結構だし、優希は積もる話もあるだろうがね。本題にいっていいかな?」

「あ、ごめん……」

「まったく。本題を忘れていたな。大成たちは引き続き仕事を頑張ってくれ」

「え?まだやんの!?」

「当たり前だろう。この街で衣住食を保証しているんだ。それくらいはやってくれ」

「う、それを言われると……」

 

 衣住食。人間の世界のようにはいかないこの世界において、それらは何が何でも手に入れないとならないものである。

 結局、それらを対価として依頼を出されているというのならば、受けないわけにはいかないのだ。大成たちは、この世界に来てから嫌というほどそれらの大切さを知った。それらが保証されている今の状況をみすみす逃すことなど、大成たちにはできるはずもない。

 あれよあれよという間に、再びパトロールに駆り出された大成たちだった。

 ちなみに、本来の警備員がいるのに大成たちがパトロールするのは、非常事態の現在では人手不足だからである。

 

「さて……どこから話そうかな。知っていると思うが――」

「ねぇ、何かあったの~?ここ数日、寝てた間にみんないなくなってたんだけど?」

「数日前からこの街にいるのに気づかない君もどうなんだかな」

 

 とりあえず、大成たちを部屋から追い出したウィザーモンは、今後についてドルモンと相談しようと思った。が、肝心のドルモンが事態を把握していないという事実に、ウィザーモンは頭を抱えるしかない。

 詳しいことはわからなくても、今が避難の必要があるほどの非常事態であるという情報は、街にいれば自然と入ってくる情報だ。だというのに、ドルモンはその情報を知らなかった。呆れを通り越して、天然記念物を見るかのような視線でドルモンを見てしまったウィザーモンは悪くないだろう。

 

「最近起こってる街の消失事件は知っているか?」

「ああ。知ってるよ?」

「それの犯人がわかった。が、事は思ったよりも大事でな」

 

 あまり頭の良くないドルモンにもわかりやすいように、簡潔に、それでいてわかりやすく今ある情報をウィザーモンは伝えていく。

 敵が、究極体のムゲンドラモンと完全体のキメラモンであること。キメラモンのその正体は人間であること。スレイヤードラモンが、大成たちを庇ってムゲンドラモンに負けたこと。今はピッコロモンのおかげで時間稼ぎが出来ているが、そのうちにこの街までやってくる可能性が高いこと。

 初めは興味半分で聞いていたドルモンだったが、事の重大さがわかってくるに連れて自然と真面目な顔になっていった。特に、スレイヤードラモンが負けたという部分は、ドルモンも大層驚いたくらいだ。ドルモンもスレイヤードラモンの強さはよく知っている。その強さを知っているが故に、足でまといがいたという部分を差し引いても、彼が負けたということを信じられなかったのだ。

 

「そんな……リュウが?」

「今彼は治療中だ。ああ、心配はいらない。この街の医者は優秀だ。もう傷は治っているだろう。まあ、しばらくは安静だろうがね」

 

 その言葉を聞いても、心配してしまうのは仕方ないことだろう。

 ドルモンにとって、スレイヤードラモンはライバルであり、同じ人物(・・・・)をパートナーに持つ仲間同士だ。とある理由で別れてからこの五年会うことができなかったとはいえ、五年前はそれなりの間、一緒に旅した仲である。

 まあ、“楽しく”や“仲良く”と言い切ることができない複雑な仲ではあるのだが。それでもかけがえのない存在の一人であることに違いはない。

 

「それで、だ。君にはこの街の守護に当たって欲しい」

「……え?」

 

 スレイヤードラモンが心配で仕方なかったドルモンも、ウィザーモンのその言葉でフリーズせざるを得なかった。

 ドルモンの聞き違いでなければ、ウィザーモンはドルモンに、この街を守ってほしいという旨のことを言ったはずである。究極体や完全体の襲来の可能性がある街を、成長期のドルモンに守れと。少しでもデジモンの成長段階に詳しいものならば――いや、そうでなくとも、あの全高数メートルはあろうかという怪獣にドルモンが挑むなど、誰がどう見ても無理だと言うだろう。

 

「いやいやいや、無理だって!」

 

 当然、フリーズから立ち直ったドルモンは無理だと言い、焦る。だが、ウィザーモンからすれば、そっちこそ何を言ってるんだという話だ。

 ウィザーモンは、五年前にドルモンが残した数々の武勇伝を知っている。だからこそ、危機的状態にあるこの街の未来を頼んだのだ。

 だが、ドルモンの方からすれば傍迷惑どころの話ではない。無理なものは無理なのだ。

 

旅人(・・)がいなくちゃ、究極体どころか完全体にすらなれないんだよ!?成長期で究極体と完全体の二体を相手取るって……無理だって!僕はあの天使の顔をした魔王の子供じゃないよ!」

「ふむ。ああ、それなら心配ない」

「え?それって――」

 

 心配ないと言い切ったウィザーモンのその態度に、ドルモンは疑問を覚え、どういう意味かと聞き返した。だが、ウィザーモンがドルモンの疑問に答えることはなかった。いや、正確には答えようとしたが、答えられなくなったというのが正しい。

 バンッ、と砕けたのではないかというほどの轟音をたてて、部屋の扉が開けられる。部屋の扉を開けたのは、ポーンチェスモンという白い成長期デジモンだ。よほど焦って来たらしく、ぜいぜいと息を荒げていた。

 

「ややややや、やつぅっえっ……げほっごほっ!」

「……どうしたのだね?落ち着きたまえ」

「ふーふー……ありがとうございます、ウィザーモン特別名誉教授……ってそうじゃないんですよ!奴らがっ!奴らがっ……遂に攻めて来たんですよ!もうそこまで迫ってます!」

 

 奴ら。攻めて来た。その言葉を聞いて事態がわからない愚鈍なものなどここにはいなかった。

 馬鹿な。早すぎる。この報告を聞いた誰もがそう思う。あれからまだ数日しか経ってないのだ。ピッコロモンの決死の妨害によって動けなくなった主犯の片割れは、まだ動けないはずである。だというのに、あまりにも早すぎる再びの襲撃だ。

 その事実に、この街の誰もが最悪の事態を想像した。そして、すぐにそうならないために行動を起こし始めている。ポーンチェスモンは、この事態を伝えるために行動した。当然、ポーンチェスモンの報告を聞いたウィザーモンたちも行動を始めようとして――。

 

「大変です!スレイヤードラモン様が!スレイヤードラモン様が病室から姿を消しました!」

 

 その時、先ほどとは違う黒いポーンチェスモンがとんでもない報告を持ってきた。事態はとんでもなく面倒くさい方向へと進んでいるようである。

 スレイヤードラモンの性格から彼の考えていることを予測し、呆れ、このまますべてを放り投げたい気分になりながらも、そうするわけにはいかないウィザーモンは、行動を続けた。

 そして――。

 

「それではドルモン。後は頼むぞ?」

「……はい?あっ!まっ――!」

 

 ドルモンの制止も聞かずに、ウィザーモンは先ほどから準備していた魔術を行使する。次の瞬間、ドルモンはこの部屋から消えていた。

 

 

 

 

 

 学術院の町が慌ただしい雰囲気に包まれていたその頃。学術院の街から遠く離れた場所を歩いている三人組がいた。そのうち二人は人間で、太陽のような少年とパッと見冴えない男である。最後の一人はデジモンで、グレイモンと呼ばれる成熟期のデジモンだ。

 ちなみに、数年来の友のように仲良く歩いている三人だが、実を言うと出会ったのはここ数日である。数日前に出会い、なし崩し的に同行することになり、なんだかんだで仲良くなったのだ。

 

「だからさ、戦えないなら近くに行くなって……」

「いやぁ……はは……ついついゲームの時の癖で」

「いや、笑って誤魔化してもダメだから。おまえってバカだろ。何回同じこと言わせるんだよ」

――鳥頭ダナ。イヤ、鳥ニ失礼カ……――

「そこまで言わなくてもいいだろ」

「なぁ、いつも思うけど……旅人は誰と話してるんだ?」

 

 そんな時だった。平穏なこの時間が終わりを迎えたのは。

 初めに気が付いたのは、少年に旅人と呼ばれた男だ。見たことのある(・・・・・・・)魔女のようなデジモンが空の上からこちらにやってくるのを発見し、嫌な予感を抱いた。

 一方で、グレイモンはともかく、少年はそのデジモンに気が付いていない。傍から見て急にテンションが下がった旅人を心配するのに手一杯になっている。

 だから、という訳ではないが――。

 

「やっ!久しぶりね?旅人」

「うわぁあああああ!空から!空から変なのがっ!」

「……こいつ殺っていい?」

「やめてやれよ」

 

 実に良いリアクションである。良いリアクションすぎて、空からやってきたデジモンが不機嫌になるほどだ。

 空からやってきたデジモンは、ウィッチモンと呼ばれる箒に乗った魔女のような成熟期のデジモンだ。ウィッチモンは旅人に用があって来たのである。

 旅人の知り合いらしいことがわかって、何とか落ち着く少年。夢見る少年にとって、空から降ってきたのが女の子ではなく、怖い顔の魔女だったという事実は、心にそれなりの傷を作った。

 

「ウィザーモンから緊急連絡があってね。至急学術院の街に行って……何してるのかしら?」

「いや、ちょっと腹が痛くて……」

「そ、気にする必要ないわね。行くわよ!」

「おまえこの五年でオレの扱い悪くなってないか!?」

「え?オラたちも行くのか!?」

「アンタたちはいいわよ。事が収まってから、私が送ってあげるから」

 

 自分の懐から取り出した石をウィッチモンはその手に持つ箒で叩き割る。直後、風が旅人だけ(・・)を包み、猛スピードで移動し始めた。行き先は当然、学術院の街だ。対象を捕縛(・・)し高速で移動させる、ウィッチモンの魔術である。

 風の中で、なんとなく厄介ごとに巻き込まれつつあることを察した旅人は、一人だけ売られていく子羊のような気分になったのだった。

 




いよいよ第二章ボス戦開始。さて、いろいろな奴らが事態解決に駆り出されてますが……。
はてさて、優希や主人公である大成は、トラウマ製造マシーンたちにどう向かい合い、立ち向かうのか。

それでは、次回もよろしくお願いします。

業務連絡。
携帯のメモ帳を漁っていたら、ワールドトラベラーの番外編として書くつもりだった
ドルモン IN fate/extraのプロットを発見しました。
読んでいたら書きたくなったので、春休みに入ってから短編みたいな形で書くかもしれません。
そんなもの書くくらいならこっちを週3投稿にしろと言われるかもしれませんが……。
まぁ、先のことはラスボス(期末テスト)を片付けてから考えようと思います。
ええ。春休みの話題が出た辺りで薄々と感づいた方もいらっしゃるかもしれませんが、期末テストシーズンです。一応、来週は通常通りに投稿予定ですが、再来週はテスト真っ只中なので投稿を一時停止させていただきます。
再開は二月の一週目くらいの予定です。来週の最終投稿の時にもう一度報告します。
この作品を楽しみにしてくださる方には申し訳ありませんが、ご了承ください。
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