【完結】デジタルモンスターA&A~紡がれる物語~   作:行方不明

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はい、というわけで、テストもレポートも無事に終了しました。
まあ、結果が出るのが休み明けというのがいやらしいですが……。
とにもかくにも、投稿を再開しますので、よろしくお願いします。


第二十四話~共闘!奇跡の昆虫と獰猛なる獣竜!~

 学術院の街からほど近い場所にて行われている戦闘。だが、その戦闘は蹂躙と呼べるほどのものではないものの、それでも一方的なものだった。

 片や、思い通りにいかない事態に腹立ちながらも、目の前の小さな者を倒そうと必死になる合成獣(キメラモン)。片や逃げるわけにも行かずに、圧倒的な戦力差の中耐えるしかない獣竜(ドルモン)

 その力の差は明らかというのに、どちらが有利か明らかだというのに、戦闘は未だもって続いていた。

 

「いい加減にっ!死っ……ねっ!」

「いやっ……ほっ……ちょ!無理~!」

「馬鹿にするなっ!」

 

 キメラモンの攻撃を掻い潜って、牽制にドルモンは攻撃する。ドルモンの口から放たれるのは、鉄球。“ダッシュメタル”と呼ばれるドルモンの得意技だ。

 だが、放たれた鉄球はキメラモンに直撃するものの、キメラモンは気にした様子がない。完全体と成長期というどうしようもない差があることは明白だが、こうも通じないと泣きたくなるドルモンだった。そんなドルモンがキメラモンに確実なダメージを与えたいのならば、目や口といった急所を狙わなければならないだろう。だが、それも現状は難しい。

 いよいよ八方塞がりになりつつあるドルモンだった。

 

「くそっ!舐めるなっ!」

「うわぁ!危なっ!タンマ~!」

「……!っち!」

 

 そんな時、キメラモンの四本の腕から放たれたのは、四本の熱線。それらは混ざり合って、巨大なひとつの熱線となる。それは、受けたものをバラバラに四散させる死の熱線。それは、キメラモンの必殺技である“ヒート・バイパー”。

 変わらない現状に苛立った故にキメラモンはそれを放ったのだが、結果はさらに苛立つ結果となってしまった。必殺の技であるそれすらもドルモンは避けることができたのだ。キメラモンからすればこれで決めるつもりだったために、躱されたというこの事実は腹立たしいことこの上なかった。

 一方で、ドルモンからすればラッキーだったと言えるだろう。ドルモンは、キメラモンの攻撃の精度がかなり甘いことを気づいていたのだ。それはキメラモンの焦り故か、不調故か、それとも経験不足故か。ドルモンにはわからないことではあったが、とにかく少ない労力で避けることができたというのは僥倖の一言である。

 

「死ぬかと思った~!」

「なら死ねっ!」

「わっ!」

 

 とはいえ、ドルモンの方も限界が近い。以前の傷が治りきっていないということを考慮しても、完全体のキメラモンと成長期のドルモンでは体力面においても差がありすぎるのだ。そして、それを示すかのように、ドルモンの回避に危ない場面が幾つか出てきている。

 そんな時だった。この場に、今までなかった光が乱入してきたのは。世界を照らすような、眩い光。そんな光を前に、キメラモンもドルモンも動きを止めていた。二人共、意識していなかった方向から突然発せられた光に驚いていたのだ。

 そして、そんな硬直状態から一刻も早く脱したのはキメラモンの方だった。なんだかよくわからないが、その光は自分にとって不味いものであると直感的に悟ったのだろう。ドルモンに背を向けるという愚行をしてまで、その光の方へ――大成たちのいる方向へと駆け出した。

 見れば、大成たちはその光を発している物体をワームモンに与えている最中で、キメラモンが近づいてきていることに気づいていない。不味い。そう思ったドルモンが駆け出すより早く――。

 

「ウィッチモンめぇえええええええ!」

「ぐはっ!」

 

 どこかデジャヴを感じる叫び声と共に上空から高速で落下してきた何かが、キメラモンに直撃した。

 言葉にすればそれだけ。だが、たったそれだけのことで、ドルモンはなんとなく察していた。その予想していた通りのことが起こったのならば、ドルモンとしてはむしろ喜ばしいことのはずだ。だが、その時のドルモンの表情は、喜んでいるような、呆れているような、懐かしんでいるような、複雑な表情だった。それでいて恥ずかしさもあるのだろう。両手で顔を覆っている。

 そして――。

 

「イテテ……アイツ、今度会ったら覚えとけよ」

「……旅人……相変わらず過ぎだよ……」

 

 残念ながらというか、やはりというか。確信を抱きながらも、その微妙に外れて欲しかったドルモンの予想は結局外れることはなかった。ドルモンとしてはこの事態は思わぬ幸運ではあるのだが、このような間抜けな感じでの再会(・・)はさすがに居た堪れなかった。

 そう、予想外の衝撃を受けて昏倒しているキメラモンの上に立っていたのは、ドルモンとスレイヤードラモンのパートナーにして、二人が最も再会を望んでいた人物――旅人だった。

 あの後、旅人はウィッチモンの魔術によって、この場に飛ばされてきたのである。

 ちなみに、行き先が学術院の街からこの場へと変更されているのは、ウィザーモンからウィッチモンへと緊急連絡があったからである。まあ、いきなり飛ばされた旅人には関係のないことではあるのだが。

 

「おお!ドル!久しぶりだな!」

「……久しぶり~。こんな時じゃなくちゃ、ゆっくり話したいけどね」

「そういえば、緊急とかなんとか……何かあったのか?」

「足元見たら~?」

 

 念願の再会だというのに、どこか呆れたような自分の相棒に疑問を抱いた旅人は、ドルモンに言われるままに下を見る。そこにあったのは、自分をギロリと睨むキメラモンの顔。思わず頬を引き攣らせてしまった旅人である。

 そして、その直後。いきなりキメラモンが立ち上がった。当然、旅人は振り落とされる羽目となる。だが、振り落とされながらも、旅人は空中で体勢を整えて着地した。まあ、キメラモンとしては無様に地面に叩きつけられる旅人の姿を望んでいたので、腹立たしいことこの上なかったのだが。

 

「何かアイツ怒ってね?」

「足蹴にされたんだから、そりゃ怒るでしょ。それよりも!旅人行くよ!ドルゴラモンでけちょんけちょんだ!」

 

 旅人が来たことによって、ドルモンは進化することが可能になった。この場から逃げてもよかったが、今までやられっぱなしだった分を返したいという思いもあったのだろう。多少の疲れを無視しても、やる気になっている。

 だが、そんなドルモンとは対照的に、旅人の返答は素っ気ないものだった。

 

「あ、それ無理」

「え?」

「だって、ドルゴラモンに進化するためには白紙のカードがいるだろ?忘れたのかよ?」

「……!あぁ~!そうだった~!」

 

 ドルゴラモンとは、ドルモンの進化形態のひとつのことであり、究極体である。ドルモンは旅人の持つカードによって進化できる――のだが、ドルモンが究極体にまで進化するには、白紙のカードという特別なカードがいる。そして、五年前の一件以降、その白紙のカードは失われている。

 つまり、ドルモンは究極体に進化することができなくなっているということだ。まあ、進化する手段が全くないという訳でもないのだが、それらはすべて効率が悪いので、方法がないも同然なのである。

 

「そんな~……」

「仕方ないだろ。さすがに」

「……お前ら……俺を馬鹿にしてるのか!」

「怒りっぽいな、アイツ」

 

 無視に無視を重ねられたキメラモンは怒鳴る。現状、この場で強者なのはキメラモンだ。だというのに、旅人たちは余裕そのものといった対応をしている。そんな旅人たちの反応も、うまく運ばれていない事にも。とにかくすべての現状が癪なのだろう。その怒鳴り声には、キメラモンの余裕のなさがはっきりと現れていた。

 一方で、旅人が来たことによってドルモンも余裕を取り戻したし、旅人に至っては初めから焦ってすらいない。まあ、それはキメラモンがたいして強そうな相手に旅人には見えなかったからなのだが――旅人は五年前の一件でさまざまな強者達と出会っていて、旅人自身の中での強者の基準がおかしいことになっている。ぶっちゃけると比較対象がおかしいことになっているである。

 

「くそっ!当たれッ!」

「ほっ……はっ……」

「よっと……!ほいさっと……旅人~」

「なんだー?」

「いつまでこれ続けるの?」

「さぁなー」

 

 もはや気軽な運動気分である。こうも余裕そのものといった対応をしていると、必死になって攻撃を当てようとしているキメラモンの方が哀れになるレベルだ。

 ちなみに、そんなキメラモンの頭の中からすっかりと抜け落ちていた。自分が、旅人が来る前に何をしようとしていたのかを。

 直後、再びの光が辺りを照らす。二回目なので、さすがのキメラモンも動きを止めるようなことはしていない。が、次の瞬間にキメラモンの動きが止まった。いや、止まったのではない。止められたのだ。その、黄金の闘士(・・・・・)に。

 

「なっ……にっ……!」

「ぐぐぐ……!」

 

 この場に新たに参戦したその乱入者。全身が黄金色に輝くメタルボディー。どこか神聖なる気配を漂わせた六本腕の昆虫型のデジモン。アーマー体という特殊な成長段階のデジモンでありながら、時に完全体以上の力を発揮することもある。それが、コンゴウモンと呼ばれるデジモンだった。

 突然の乱入者にキメラモンは吃驚しているが、一方で旅人たちは何があったのかすべて把握していた。というより、キメラモンの方が周りが見えてないだけである。

 起きた事実は単純だ。先ほど誕生した黄金に輝く奇跡のデジメンタルによってワームモンがコンゴウモンへとアーマー進化した。それだけである。

 

「っく!この……!」

「イモー!やっちまえー!」

「ぉぉお!破壊をもたらす者よ!これ以上好き勝手はさせない!」

「いやぁ、あのピカピカしてる奴……カッコつけてるけど……」

「旅人!茶々入れない!」

 

 その実、コンゴウモンの体は傍から見てもわかるくらい震えていた。かっこいいのは後光っぽいその輝きと口調だけである。が、その力は本物である。それはキメラモンの拳を正面から受け止めていることからも明らかだ。

 キメラモンの身長は、どう見積もってもコンゴウモンの数倍はある。それほどの体格差であるのに、さらに自身の身長ほどもある拳を真正面から受け止めたのだ。そのパワフルさがよくわかる。

 

「っく!次から次へと……!」

「ぬおぉおおおお!」

 

 キメラモンの四本腕から放たれる連続殴打を、コンゴウモンは六本の腕から繰り出される強烈な連射張り手で応じる。その連射張り手こそが、コンゴウモンの必殺技である“鉄砲”だ。

 一方で、自分の数分の一ほどの大きさしか持たない小さな者に、先ほどからいいように扱われているキメラモンは我慢の限界だった。今すぐにでもこの戦闘を終わらせたいのだろう。バックステップでコンゴウモンから離れ、その四本の腕に力を貯め続ける。最大火力で“ヒート・バイパー”を放つためだ。

 だが、キメラモンにその準備をする時間があるということは、コンゴウモンにもそれに応じるための時間があるということで。

 

「死ね!」

「ふん!」

 

 簡潔なまでの一言と共に四本の腕から放たれた、キメラモンの死の熱線。だが、キメラモンの全力を込めたその攻撃がコンゴウモンに届くことはなかった。

 有り得ないその事態にキメラモンは目を見開いた。先ほどのドルモンに躱された時とは違う。コンゴウモンは躱す素振りさえ見せていないのに、熱線が外れたのだ。そんなことなど、奇跡でも起きない限り有り得ない。その事態に唖然とするキメラモンの前で、いつの間にかコンゴウモンの六本の手にあった“ヴァジュラ”という武器が輝いていた。

 

「っく!この!死ね!死ね!死ねぇえええええ!」

「はっはっ……ぐぅ!?」

 

 最大火力を叩き込めなかったのだ。また正体不明の技で躱されるかもしれない。その思いが、キメラモンに再び同じ技を使わせるのを躊躇わせていた。結局、そんなキメラモンに残された選択肢など、一択である。ひたすら殴る。それだけだ。

 まあ、頭に血が上っていて、勢いのままに攻撃しているということもあるのだが。

 そして、そこには技も何もない。まるで癇癪を起こした子供のように、力の限りその四つの拳をキメラモンはひたすらに叩きつけるだけだった。

 対して、それを己が全霊を持って捌くコンゴウモン。

 だが――。

 

「あれ?旅人~……まずくない~?」

「……だなぁ」

 

 外から見ている旅人とドルモンには、コンゴウモンがだんだんと弱っていく様がはっきりと見えていた。

 いや、弱っていくというよりは、その力が衰えているというべきか。先ほどよりも勢いがない。戦闘時間に制限があるのか、それともあの進化に使ったアイテムに不備でもあったのか。

 旅人たちにはその理由も何もわからなかったが、このままではコンゴウモンが負けるだろうということはなんとなく予測がついていた。であれば、旅人たちのやることは一つである。

 

「行くぞ、ドル」

「よっしゃ!久しぶりにね!」

「set『進化』!」

「ドルモン!進化――!」

 

 旅人の持つ“進化”のカード。その名の通り、デジモンを進化させるカードだ。そのカードを旅人が使った瞬間、ドルモンに変化が訪れる。

 全体的な印象はそのままに、より雄々しく、翼が生えた姿へと。竜の知性と獣の獰猛性を併せ持つデジモン。それがドルガモンと呼ばれる、重量級の成熟期のデジモンだった。

 そして、進化が完了した瞬間にドルガモンは旅人と共に走り出す。

 

「おぉおおおおおお!」

「ドル!しっかりとな!set『加速』!」

「もちろん!」

 

 アイコンタクトだけで意思疎通したドルガモンと旅人は、二手に別れる。“加速”のカードで自身のスピードを上げた旅人がドルガモンに先行する形でダッシュしたのだ。

 ドルガモンより先んじてキメラモンの下へと辿りついた旅人は、そのままジャンプしてコンゴウモンとの攻防に夢中になっているキメラモンを殴った。

 威力はたいしたことがない。と言い切ることができないレベルであったが、一撃で倒されるほどの威力でもない。キメラモンの受けた打撃は、そんな程度のレベルである。

 だが、コンゴウモンに夢中になっていたキメラモンは一瞬何があったか理解できていなかった。一瞬の間を置いて、誰が自分を殴ったのかを理解したキメラモンは、己を殴った旅人を睨みつける。が、そんなものは隙でしかない。事実、旅人の攻撃は次へとつなげるための牽制でしかなかったのだから。

 

「ナイスだよ!旅人!」

「これで終わりだ。破壊をもたらす者!」

「なっ!くそぉおおおおおお!」

 

 旅人に気を取られたキメラモン。

 そんなキメラモンを、コンゴウモンの六本の手から繰り出された強烈な張り手とドルガモンの口から放たれた巨大な鉄球が襲った――。

 元々キメラモンは傷が治りきっていなかった。二体のデジモンの必殺技の直撃を受けて、それでも尚、戦闘を続行できるほどの体力を持ち合わせれていなかったのである。仮に体が動いたのならば、また襲いかかってくるだろう。それを示すかのように、轟音を立てて倒れ伏したキメラモンは、尚も旅人たちを睨んでいた。だが、現実にはキメラモンはもはや動くことすらできない。

 

「疲れた~!やっぱり久しぶりだと疲れるね~」

「ドルは最後の一撃しかやってないだろ」

「僕はその前に戦ってたんです~!」

 

 そんなキメラモンの前で、旅人とドルモン(・・・・)は話していた。そう、旅人のカードで進化した場合は、優希の強制進化で進化した場合と同じく、戦闘終了後に成長期まで戻ってしまうのである。

 一方で、コンゴウモンから戻ったワームモンは顔を青くしていた。

 

「どうしたんだよ?イモ」

「これ……」

「あぁああああああ!」

 

 ワームモンに言われたものを見て、突然奇声を上げた大成。

 突然の事態に、旅人とドルモンは何事かと大成を見た。そこには、奇声を上げながら気持ち悪い顔をしていた大成がいた。同じように、ワームモンもその体以上に顔を青くしている。軽いホラー的光景である。

 そこまでいってようやく、大成とは以前会ったことがあると気づいた旅人。知らない仲でもないので、どうしたのかと話しかけると――。

 

「壊れちまったー!もったいねぇー!」

「は?壊れた?……あぁ」

 

 そこには、粉々になった奇跡のデジメンタルが転がっていた。

 




というわけで、旅人参戦回。そしてキメラモンフルボッコ回。
まあ、旅人たち前作タッグの面を押し出しすぎて、コンゴウモンの活躍が少し薄かったかもしれませんが……。
ちなみに、この戦闘の間、優希は気絶中。レオルモンは優希の付き添い。大成は影からの応援です。
さて、次回は、第二章エピローグ。

それでは、また次回もよろしくお願いします。
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