【完結】デジタルモンスターA&A~紡がれる物語~   作:行方不明

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第二十五話~過去の遺産がもたらす未来は~

 旅人の参戦と奇跡のデジメンタルの力によってキメラモンを倒した大成たち。

 壊れてしまった奇跡のデジメンタルについては、元の持ち主と察することができるウィザーモンに謝るということで、全員一致した。

 

「まあ、街の脅威を取り除いたんだから、許してくれるだろ」

「そそそ、そんなぁー……だだだ大丈夫だよね!?」

「ドル、あれってそんなに貴重なものなのか?」

「さぁ。研究室に放っておいたやつだから、そんなんでもないんじゃない?」

 

 呑気に構える大成と不安で震えているワームモン。そんな二人を見てあれこれと推論する旅人たち。当然だが、あの奇跡のデジメンタルはかなり貴重なものである。

 

「……っていうか、どちら様?」

「あれ?一度会ってるんだけど……」

「……悪い。覚えてない」

「まぁ、一瞬だったしな。オレは旅人。んで、こっちが――」

「僕は自己紹介したよ」

「ってことは、ドルの相棒か!あれ?旅人……あぁ!優希との恋人疑惑のある妙な人!」

「妙っ――……はは、そうか。妙、か……」

 

 妙な人という部分に自分のことを思い返して、言い返せない旅人は落ち込む。オレって人から見たら、そんな風に見えるのか、と。

 ちなみに、先ほど言った大成の言葉だと、優希の恋人になるくらい妙な人という意味と、妙な人であり優希の恋人疑惑もあるという二つの意味があるのだが、どちらの意味で言ったのかは大成のみ知ることである。

 落ち込み座り込む旅人を慰めようと、ドルモンは言葉を発した――。

 

「旅人~。ほらほら、落ち込んでな……あれ?」

「どうか……って!おぉ!?なんだっ!」

「ぇえええええええええ!」

「どうせオレは……え?どうかしたのか?」

 

 のだが、残念ながらその慰めは途中で終わってしまった。

 不自然に言葉を途切れさせたドルモンを疑問に思った大成たち。そんな大成たちがドルモンの方に目を向けると、ドルモンはあるものを見て驚愕に目を見開いていた。まあ、そのことに疑問を深めた大成たちも、ドルモンの見ているものを見ると同じく驚愕の声を上げることとなったのだが。

 大成たちの視線の先にあったのは、キメラモン――ではなかった。いや、キメラモンであることには違いない。だが、その姿が光と共に人間へと変化していったのだ。デジモンが人間になる。話に聞いていたドルモンでさえ、実際に見るとその異様さに驚くしかなかった。

 

「あぁああああ!くそっくそっくそっ!ゴミ共の分際で……!」

「……」

 

 誰もが唖然とする中で、大成はその人物に見覚えがあることに気づいた。

 数日前、この世界に来て初めて訪れた街にて出会った人物。その雰囲気と言葉の悪さ故に、良いイメージを抱くことができなかった人物。そう、零だった。

 自分たちを殺そうとしてきたキメラモンが実は人間で、さらに言えば顔見知りだったことに、大成は唖然とするしかない。先ほどから驚きのバーゲンセール状態だった。

 なんで、と零に尋ねようとした大成。だが、その疑問が口から出ることはなかった。出会った時の会話を思い出して、尋ねるまでもないことに気がついたのだ。

 

「……はっ……はっ……」

「零……お前……」

「ん?大成くんはこいつと顔見知りだったのか?」

「呼び捨てでいいけど……いや、顔見知りっつーか……初対面じゃないってレベル?」

 

 大成の口から零という名前が飛び出したことで驚く全員。だが、大成からすれば、顔見知りというには交流がなく、されど初対面でもないというレベルでしかなかった。

 一方で、零は大成や旅人を親の仇を見るかのような目で睨みつけている。そこには、よくも邪魔してくれやがって、という意思がありありと感じられた。

 目は口ほどにものを言う。その言葉の意味を初めて実感した大成だった。

 

「生きてる価値すらないゴミに組する愚か者共が……!何故邪魔をする!」

「何故って……」

「関係ないだろう!貴様ら人間と!このゴミ共と!なぜ命を賭してまで邪魔をする!なぜ、ゴミ共も!貴様らも!俺の邪魔をする!」

 

 その零の言葉には、思い通りにいかない現実に対する反感が込められているで。この零の行為には、心の中に溜まった愚痴を吐き出しているようで。それでいて、ガキの癇癪のような拙い叫びだった。

 一方で、旅人たちは揃いも揃って、何を当然なことを、と呆れていた。自分たちの命がかかっているのに、自分たちの居場所がかかっているのに、邪魔も何もないだろう、と。巻き込まれた旅人やドルモンでさえ、そう思っているのだ。それくらい、それは“当然”のことだった。

 だというのに、その“当然”のことさえも零はわかってはいない。

 呆れてものも言えない旅人たちだったが、そんな面々とは打って変わって、その零の疑問に答えたのは大成だった。

 

「そんなもん……好きだからに決まってんだろうが!」

「……」

「あれ?違った?」

 

 珍しく、ゲームのキャラなどのセリフではない、大成の本心から出た言葉であった。が、それを聞いた零を含めたこの場の全員が、唖然として大成を見ていた。その固まった空気に、思わず言うことを間違えたか、と焦った大成である。

 数秒後。その空気を打ち崩したのは、誰とも知れずに始まった笑い声だった。

 

「くくく……あははっ!さらっと言い切るところ、なんだか旅人に似てるね~……あ、でも旅人は意外とグズグズ悩むし……そういう意味じゃ大成の方が図太いよね?」

「ドルお前久しぶりに会ったのにキツくね!?」

「久しぶりに会ったからだよ~」

「……これが子供の成長ってやつか。親の気持ちがわかるな」

「僕は旅人の相棒でしょ!?そっちこそひどいよ~!」

 

 などと、外野は好き勝手言っている。

 ――が、当然だが、肝心の零の方は、そんな和やかな雰囲気一つで誤魔化されるような感じではない。突如として広まった和やかな雰囲気を前にして、余計にイライラしているようである。

 

「ごほん!とにかく、だ。まぁ、そういうことだろ。零くんとやら。誰もがその大好きな……それこそ譲れないものがあるから、それを侵そうとする者に抗うんだ。案外、そんなもので、生き物は動くもんだよ」

「ふざけるな!そんな理由で納得できると思っているのか!」

「えぇ……」

 

 どうやら、零は何が何でも認めたくないらしい。体は動かないはずであるのに、随分と元気なものである。まあ、体が動かないからこそ、と言えるのかもしれないのだが。零の敗北は、彼自身の目指すデジモンへの復讐の失敗を意味する。敗北を認められないから、失敗を認められないから、多少の無茶をしても喚くのだ。

 大成や旅人の言葉を聞き入れようとしないのも、それと同様の理由からなのだろう。零にとって、デジモンとはそのまま復讐の対象であり、ただの駆逐されるべきゴミでなければならない。だからこそ、そんなゴミが、自分と――いや、自分たち人間と同じような、生きている(・・・・・)者であるということは認められない。否、認めてはいけない(・・・・・・・・)のである。

 

「どうしよっか?」

「ふん縛って、ウィザーモンに引き渡せばいいんじゃね?」

「え?それでいいの~?」

「あいつらがオレたち任せにしたんだ。それくらいは向こうに任せてもいいだろ」

「嫌がらせか!なあ、ドルの相棒って……」

「……ノーコメントで」

 

 ともあれ、旅人の意見に大成も賛成である。

 いくら相手が、非道な行いをしてきただろう零であっても、んじゃ死刑ね、とは大成は言えない。目の前で起こる人殺しを肯定するような、そんな擦れた考えを大成はしていないのだ。まあ、学術院の街に引き渡して、その後の零がどうなるかを考えていない辺り、考えが浅いというべきなのだが。

 ちなみに、旅人とドルモンはその辺のことを自業自得と思っているし、先ほどから空気になっているワームモンは大成と同じくその辺のことを考えていなかったりする。

 そして、そんな時だった。ようやくと言うか、なんと言うべきか。遅れながらも、スレイヤードラモンがこの場に到着したのは。

 

「おーい!大丈夫かー?って、旅人とドル!?」

「おお、リュウか!久しぶりだな!って、何持ってるんだ」

「卵。っていうか、なんでいるんだよ」

「いたら悪いかよ。こっちは問答無用で連れてこられたんだよ」

「久しぶり~!僕もだね~問答無用でね~」

「相変わらず巻き込まれてんのな」

 

 来るならもっと早く来てくれよ。そんな大成とワームモンの視線を無視して、スレイヤードラモンは旅人たちと再会の挨拶をしている。

 一方で、スレイヤードラモンが持っているどこか機械のような雰囲気を発している巨大な卵が、何の卵か――さらに言えば、誰の成れの果てかわかったのだろう。零は忌々しげな表情を、卵とスレイヤードラモンの両方へと向けていた。

 ちなみに、機械のような、とは言うが、そのような雰囲気を漂わせているというだけで、実際は普通の卵である。

 

「って!リュウと旅人たちって知り合いだったのか!?」

「お?旅人、自己紹介はしたんだよな?」

「したけど、自分のことだけだぞ」

「俺のパートナーについて前に話したことあっただろ。旅人がそのパートナーだ」

 

 スレイヤードラモンのその言葉に、“へぇ……そうなのかー……”とボンヤリと思った大成だったが、そこであることに思い至った。

 先ほどまで大成は、旅人のことをドルモンの相棒として認識していた。――のだが、ここに来てスレイヤードラモンのパートナーという事実が浮上した。それはつまり、旅人はパートナーデジモンを二体も持っているということで。

 

「ずるっ!」

「え?何が?」

「だって、俺のパートナーデジモンはこんな芋虫なのに!かっこよくて、しかも強いっていう最高のデジモンが二体もパートナーデジモンなんだろっ!」

「お、おぉ……まぁ、そうだな」

「ずるいだろ?とにかくずるいだろっ!」

「いや、はは……」

 

 妙なテンションで旅人に詰め寄る大成。思わずというか、心の中に溜まりに溜まったものが飛び出したのだろう。そんな大成に、旅人は引き気味である。頬の引き攣った愛想笑いが張り付いて剥がれなくなっていた。

 そして、さらりと姿について馬鹿にされたワームモンは、何気に今日一番のダメージを受けて落ち込んでいた。ドルモンやスレイヤードラモンが慰めてはいるが、あまり効果はなさそうである。

 最後に、そんな賑やかな空気を発し始めたこの面々を、動けない体ながらも忌々しげに睨む零。

 状況はただひたすらに混沌としていた。そして、そんな状況を加速させるように――。

 

「スレイヤードラモン様ー!無事ですか!?」

「ん?あぁ、無事だぞ!」

 

 ダルクモンとウィザーモン率いる第二陣の警備部隊がこの場に到着した。まあ、キメラモンもムゲンドラモンも、両者とも倒されているので、もうやることはないのだが。

 その後、牢に入れられることになったらしい零は、現着した警備部隊のメンバーに縛られて、連行されていく。

 また、スレイヤードラモンと未だ気絶したまま起きない優希は、警備部隊のメンバーによって学術院の街の医療施設へと運ばれていった。忘れているかもしれないが、スレイヤードラモンは病室から抜け出してきた身である。大丈夫だと喚く本人の言葉も虚しく、強制的に連行されていった。まあ、口だけで大人しく連行されていった時点で、己の状態をよくわかっているのだろうが。

 ちなみにレオルモンは、優希に付き添って一足先に学術院へと戻っていった。

 

「全部終わってから来るとか……」

「そう言うな。こちらとしても、全部終わったから(・・・・・・)来たのだ。僕の本分は戦闘ではなくて、研究だ。そこら辺わかっているだろう?」

 

 そんなことをしゃあしゃあと言うウィザーモン。わかってはいるが、文句の一つも言いたくなるものである。特にドルモンと旅人は。

 一方で、この面々の中で一番ウィザーモンに話さなければならないことがあるのは、大成とワームモンである。

 

「ウィザーモン……あの、これ……」

「いやな。本当は優希の力で成熟期に進化させたワームモンに、友情のデジメンタルを使うって話だったんだぜ?」

「む?デジメンタルは擬似進化のための道具だ。よほどの例外を除いて成長期にしか使えないが?」

「マジで!?……これがあって本当に良かった……」

「これ?……!奇跡のデジメンタル。そうか、無いと思ったらドルモンが掴んでいったのか。何?これが使えたのか?……ほう?」

 

 その時、ウィザーモンの目が光った――ように大成とワームモンには見えた。そんな大成たちが視線をずらすと旅人とドルモンが、アイツやっちゃったな、とでも言いたそうな顔で合唱していた。

 この後、ウィザーモンの好奇心と探究心が満足するまで大成たちは拘束され、解放される頃にはやつれ果てた姿を見せることとなったのだが、それはほんの余談である。

 さらにこの数日後、もう一度完全な奇跡のデジメンタルを作るために、ウィザーモンの頼みで、優希はその力を酷使する羽目になるのだが、それはさらに余談である。

 

 

 

 

 

 大成たちが戦闘を終えて、学術院の街へと戻った頃。草原を歩いていたのは、かつての大成誘拐事件の際に優希を襲った貴英だった。何かを探しているのだろう。その手に持った通信機で誰かと話しながら、彼方此方に視線を飛ばしている。

 

「おい、本当なんだろうな?」

――ああ。空間の歪みと位相のズレ。すぐに収まったが……何らかの要因があるに違いないと見るがね。何かあったかね?――

「特には何も。大方、機器の故障というオチだろう。帰っていいか?」

――それはもう少し待って欲しいんだが――

 

 貴英のいる組織は、組織ぐるみでこのデジモンたちの世界について研究している。

 まあ、その組織は、有志によって作られたということもあり、構成する人数自体とても少ないのだが。はっきり言って、組織と言うよりも、チームと言った方がいいくらいの人数だったりする。だが、その構成メンバーの誰もが優れていて、少数精鋭というものに相応しいメンバー構成であることには間違いない。

 とにかく、その組織がこの世界に起きた異変を感知した。故に、肉体労働係である貴英がこうして調べに来たのだ。

 

「とはいえ、本当に何もないぞ。私も無駄なことに時間を使っている暇はない」

――そういえば……先ほど連絡があったが、失敗作がアンノウンと進化の巫女によって撃破されたという話だ――

「というか、結局……アンノウンもこの世界に来たのか。うまくいかないものだな。……それよりも、今それを言う必要性があるのか?」

――密かに進化の巫女の守り手にリベンジ精神を燃やしている友への心ばかりの報告だったのだが?――

「帰るぞ」

 

 先ほどから邪魔しかしない上司からの通信に、先行きの見えない調査。貴英は今すぐにでも帰りたかった。いくら組織内で肉体労働係である貴英とて、やることはいくらでもある。それらを後回しにしてまで、こちらに来ているのだ。くだらない用件なら帰りたいと思うのは、当然の反応だろう。

 一方で、通信先の上司はそんな貴英の心情を見切っているようだった。楽しそうな声が聞こえる。

 

「やれやれ。失敗作とは無縁じゃないだろう。その敗北に思うところはないのか?」

――……――

「……失言だったな」

 

 仕返ししたいという気持ちが心の片隅にでもあったのだろう。自分の口からその言葉が出た瞬間に、しまった、と貴英は舌打ちした。貴英は、通信先の上司と失敗作の関わりについて知っている。だからこそ、貴英は特大の地雷を踏み抜いてしまったことをすぐに悟り、そして軽率な自分を恥じた。

 そして、会話が途切れたそんな時だった。貴英がそれを見つけたのは。

 

「これは……?」

――……何かあったのかね?――

「ああ。だが、なんだこれは?」

 

 貴英が見つけたのは不思議な物体だった。貴英は知らないことではあるが、それはあのデジメンタルにも似ている。だが、デジメンタルとは違って黒い六角形の台座が付いており、本体部分も卵というよりは、デジモンそのものを象ったかのような形をしていた。

 だが、重要なのはそれが一つではなく、複数見つかったということである。

 

――とりあえず、危険はなさそうなのだろう?――

「我々の常識で、この世界の物を図るべきではないと思うが?」

――……ふむ。持って帰ってきてくれ。全部だ――

「……了解」

 

 釈然としなかったが、そんな明らかに何かありそうな不思議な物体を持って、貴英は組織へと戻るのだった――。

 




というわけで、次回から第三章に入ります。

もちろん、感想、評価、など随時お待ちしております。
それではまた次回からもよろしくお願いします。
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