【完結】デジタルモンスターA&A~紡がれる物語~   作:行方不明

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第二十八話~広がる噂!研究の手伝…い…?~

 最近、学術院の街にはある噂が流れていた。

 学術院の街の中では、毎日のように殺戮が行われている。そんな馬鹿げた噂が、零たちの襲撃以降広まっていたのだ。そして、それを裏付けるのように、毎日のように大地が揺れ、叫び声が聞こえる。果ては、空を吹き飛ぶデジモンを見たという者まで出る始末だ。

 デジモンにも空を飛べるものなどザラにいるではないか、と思う者もいる。だが、現場を目撃した者たちは、一様にこう言うのだ。“空を飛んでいる(・・・・・)のではない。空を吹き飛んでいる(・・・・・・・)のだ!”と。

 噂の出処は定かではないが、目撃証言まであるくらいだ。真偽について盛んに議論されているし、それでもかなり信憑性が高いとされている。のだが――不思議なことに、何かしらの被害にあったという話は出ていないし、吹き飛んだデジモンが落ちてきたという話も聞かない。信憑性が高いとされながらも、噂の域を出ていないという不思議な状況になっているのである。

 そして――。

 

「そらよぉっ!」

「ぬわぁああああああああああ!」

 

 その噂の大本となった幼き獅子は、今日も元気に空を吹き飛んでいる。

 噂の広がりようとは裏腹に、起こっていることは至極単純だった。レオルモンがスレイヤードラモンにフルボッコにされているだけである。いや、こう言うと私刑みたいだが、当然だがそんなことはない。ワームモンの修行を再開するまで暇となったスレイヤードラモンが、ウィザーモンからあることを聞いて、レオルモンに半ば強制的に修行をつけているだけの話である。

 ここ数日、毎日行っているこの修行。そのほとんどが模擬試合形式で行われている。成長期のレオルモンが究極体のスレイヤードラモンをどうにかできるはずもなく――結果、フルボッコされたり、あの不名誉な噂が広がったりすることとなったのである。

 まあ、本人たちは噂について気づいていないのだが。気づいているのは、事の起こりであるウィザーモンだけだ。

 

「よし、ちょっと休んだら次行くぞー」

「うぐ……ちょっと待ってくだされー!」

 

 そんなこんなで、少し参り気味のレオルモン。彼にしては珍しい弱音だった。

 まあ、優希の護衛を自認しているレオルモンの意思を汲んで、修行時間自体はそれほど長くはない。密度というか、運動量というか、そういうのは時間に合わないくらい濃いのだが。

 ともあれ、ここ数日はレオルモンとしても自分の力不足を感じることが多かった。ゆえにこうしてスレイヤードラモンからの修行をありがたく受けているのだが――。

 

「ぜっ……はっ……」

「そろそろ無理か。今日はここまでだな。やっぱ全体的に体力ねぇなー」

「それは……スレイヤードラモン殿と……比べたら……誰だって……!」

「疲れてるなら黙っといたほうがいいぞ?ちゃんと優希のとこまで連れてってやるから」

 

 ワームモンよりはマシだろうが、それでも先は長そうだった。まあ、(目標)を決めてもいないのだが。

 

 

 

 

 

 時間を少しさかのぼって。スレイヤードラモンとレオルモンが修行していた頃のこと。

 優希はウィザーモンの研究室にて、彼の研究を手伝っていた。のだが、優希の顔は暗い。別にウィザーモンの研究の手伝いが嫌というわけでもないのだが――。

 

「えっと……優希?」

「っ!な、何?」

「……」

「それ取ってくれる?」

「あ、……はい」

 

 優希にとって辛いのは、時々来るウィッチモンの存在である。別に優希がウィッチモンのことを嫌いだという訳ではない。のだが、初めて出会った時に、少々苦手意識を植えつけられてしまっていたので、同じ空間にいるのが辛いのだ。

 そして、そのことはウィッチモンもわかってはいるのだが――以前やらかしたことをはっきりと覚えているために、どうしたらいいのかわからないのである。

 

「君たちは……もう少し円滑に動いてくれないか?」

「はい……」

「……まあ、私の用はもう済んだけどね。邪魔になりたくないから行くわ」

 

 とはいえ、ウィッチモンは無理してここにいる理由はあまり無い。まあ、全く無いというわけでもないが――わざわざ、居心地の悪い場所にい続ける必要もないということで、この部屋から出ていこうとする。単純に逃げようとしているだけとも言うのだが。

 

「もう行くのか?」

「アンタに差をつけられちゃったからね。追いつくためにはアンタ以上の努力をしないと」

「ふっ……そうか」

「それとも何?私がいないと寂しい?」

「いや全然」

「……。もう行くわ。またね」

 

 そんなこんなで、最後の最後に落ち込んだ様子となって、ウィッチモンは出ていった。

 なぜそんな様子で出て行ったのかわからない。とそんな風な感じで首を傾げているウィザーモン。一方で、最後のウィッチモンの様子を見て、なんとなく察した優希だった。

 そして、ウィッチモンと入れ替わるような形で、スレイヤードラモンが帰ってきた。もちろん、未だグッタリとしているレオルモンを脇に抱えて。荷物のような扱いである。まあ、動けなくなった者など荷物でしかないのだが。

 

「セバス、大丈夫?」

「お嬢様こそ……大丈夫ですか?先ほどまでウィッチモン殿がいらっしゃったようですが……」

「ええ。思いの通じない女の悲劇を見た気がするわ」

「……?」

 

 自身も女性だから共感できる部分があったのか、しみじみとそう言った優希。

 一方で、優希が何を言いたいのか、今来たばかりのレオルモンとスレイヤードラモンにはわからなかった。あとついでにウィザーモンも。だが、スレイヤードラモンとレオルモンはともかくとして、ウィザーモンはウィッチモンと長年の付き合いである。気づけなければおかしい。

 頭が良いことと成績が良いことは別だ。とテレビでいつか言っていたことを思い出した優希だった。

 

「まぁ、彼女のことはいいだろう。それより……む?ドルモンは一緒ではないのか?」

「ああ、ドルのやつは旅人に置いていかれたと思い込んで、今は学術院中を探し回ってんな」

「……?旅人は大成の所へと行ったと聞いたが?」

「そこはドルの勘違いだな」

「教えてやればよかったものを」

「教える前に出てったんだよ」

 

 てっきりスレイヤードラモンと行動を共にしていると思い込んでいたドルモンがいなかったことに、疑問を抱いたウィザーモンはそのことを尋ねる。結果わかったことは、至極面倒くさそうな事態が起こっているということだった。

 ちなみに、この頃。旅人は大成と勇の試合の審判をしていて、ドルモンは半泣きで学術院の街を駆け回っていたりする。

 

「はぁ。相変わらずというか、進歩はないというか……まぁいい」

「いいの?」

「その労力が惜しい。レオルモンの修行の方はどうなっている?」

「厳しいな。同世代の平均より少しマシってレベルだ」

「うぐ……」

 

 スレイヤードラモンの酷評に思わず唸ってしまうレオルモンだが、だからといって言い返すことはできなかった。事実だからだ。

 確かに、レオルモンは優希を守るという考えの下、人間の世界でもトレーニングをしてきた。そのことと――そして、元々の種族の潜在能力もあって、総合的に見れば現在でもそれなりの力はあると言える。だが、それだけだった。

 いくら才能があろうと、一人だけでトレーニングしてきたレオルモンは、経験に乏しい。それゆえに、その才能や潜在能力をうまく活かすことができていない。実際の能力的にはもう少し高いのに、経験不足が足を引っ張っているのだ。

 

「そんなになの?今まででも勝ってるし、もう少し上だと思うんだけど……」

「こういうのは厳しめに判定した方がいいんだよ。まあ、成長期でもすごい奴と比べたらセバス単体はどう見ても見劣りするけどな」

「……じゃあ、リュウが成長期だった時は?」

 

 自分のパートナーが不当に評価されているとでも思ったのだろう。優希としては、やはり身内の贔屓目もあって、もう少し評価が高いと思っているのだ。

 だが、この場でそう思っているのは優希だけである。まるでわがままを言っているみたいで、気持ちのよくない優希は、これ以上そのことには触れようとしなくなった。が、やはり気持ち的には納得できないのだろう。何とか一矢報いたいのか、そんな評価をしたスレイヤードラモンに向かって口を開いた。

 傍から見ていると拗ねた子供のようである。とても微笑ましい。まあ、この場に大成がいればそんな優希を思わず二度見してしまうだろうが。

 

「俺の時?もっとマシだったよ」

「どうだか……」

「拗ねてんのか?」

「そ、そんなわけ無いでしょ!」

 

 まあ、スレイヤードラモンがどんなに昔のことを語ろうと、それが昔のことである以上、優希には確かめようのないことである。なんとなくそのことをずるく感じた優希は、後で旅人とドルモンからスレイヤードラモンの昔話を聞くことを決心する。

 ちなみに、そんな感じで優希が軽い気持ちで聞いた結果、旅人とドルモンがあることないこと語り、怒ったスレイヤードラモンと全力の喧嘩にまで発展することになったりするのだが、それはほんの余談である。

 さらにその結果、スレイヤードラモンと旅人とドルモンが喧嘩するとシャレにならないから、とウィザーモンを含めた学術院の偉い人たちが土下座を持ち出してまでその喧嘩を仲裁することとなったりするのだが、やっぱりそれは余談でしかない。

 

「だが、レオルモンは鍛えといたほうがいいだろう。そうだな……例えばだな、優希。君の力でドルモンを進化させたとしよう」

「ドルを?セバス以外で試したことはないけど」

「例えばの話だ。それで、しばらくして退化しても、ドルモンは筋肉痛にはならないだろうな」

「なんで?」

「セバスが筋肉痛になるのは、ようするに成熟期の力に体がついていけてないからなんだよ。だから、鍛えれば自然と筋肉痛とか軽くなるはずだ」

 

 なるほど、と優希とレオルモンは自然と頷き合う。

 確かに、今のレオルモンの現状は変えたほうがよかった。一度進化したらその後は筋肉痛でブッ倒れて動けなくなるなど、特に連戦の場合は足でまといにしかならない。事実、数日前の零たちの学術院襲撃の際は、そのせいでレオルモンは戦うことができなかった。

 

「それに……優希。君はレオルモン以外で試したことがないからわからないと言うがね」

「いや、そこまでは……」

「奇跡のデジメンタルを完成させたのは同様の力だ。君の力は、おそらく進化の力に必要となるエネルギーに関するものだろう。君の意思を下にペンダントで補助され、対象へと効果を発揮するというところか」

「このペンダントに?」

「デジメンタルに使えたことを鑑みても、まず間違いないし、であるならレオルモン以外でもできるはずだ」

 

 優希のペンダント――より正確に言うならば、そのペンダントに取り付けられている石は、デジモンの力を増幅させる効力がある。とはいっても、持ち歩ける程度の大きさではその効果は微々たるもので、あってもなくても変わらない。

 優希の場合は、あくまで優希の力の補助として使われているということである。パソコンのマウスと同じだ。なくても構わない。が、あった方がいろいろと楽。優希のペンダントはそういうものであり、仮に優希がその力に慣れたならば、ペンダントはなしでも構わないだろう。

 つまり、今の優希は、ゼロか一か、という感じで制御ができていないのである。

 

「そういえばこれ、前に別れる時に旅人に貰ったんだけど……もしかして、そのことわかってたのかな?」

「そうなのですか?」

「ああ、そういえば何か渡してたな。アレか」

 

 話題に上がったことで、かつてのことを思い出したのだろう。そんな中で、不意に浮かんだその疑問をポツリといった優希だったが――。

 

「ないな」

「偶然だろうな」

 

 それは、旅人をよく知るウィザーモンとスレイヤードラモンによって速攻で否定された。

 そのあんまりな即答に、レオルモンと優希のふたりは思わず唖然としてしまう。だが、そんな二人も、あくまで即答したという部分に唖然としたのであって、否定の事実だけは肯定していたりする。

 ちなみにこんな扱いをされている当の旅人本人は、最近オレの扱いが悪い、とドルモンに愚痴っていたり、いなかったり。まあ、それはこの場において全く関係のないことである。

 

「ふむ、こんなところか。ああ、今日のところはもう帰っていいぞ。明日またいつもの時間帯に来てくれ」

「え?今日は特に何も……」

「今日は君の力のことを測定するのが目的だからな。この部屋のあちこちに計測魔術を施しておいた。今君が座っているその椅子にも身長体重その他諸々を図る魔術が施されている」

「……」

 

 それはプライバシーの侵害なのではないか。人権無視なのではないか。せめて一言くらい言って欲しかった。というか、私の身長体重諸々が知られてるってことだよね。恥ずかしいんだけど!――などとさまざまな思いが優希の胸に去来し、ジト目で抗議の視線を送るが、ウィザーモンはガン無視だった。

 まあ、ウィザーモンは研究には熱心だが、そこら辺の人間関係などの機微に疎い。優希の抗議の視線など気づかないだろう。あるいは、気づいてもなんのことだがわからないか。そのどちらかだ。

 

「いいわ。今日の所は帰るわね」

「お、お嬢様……まだ疲れが取れていないので……もう少し待って……」

「私が抱いて運んであげるから、大丈夫よ」

「いや、それは恥ずかしいというか……情けないというか……!」

「それじゃ、またね」

「……ああ、そうそう。一つ言い忘れていたのだが――」

 

 などと、優希とレオルモンが仲良く帰えろうとしている傍で、何かを言い忘れていたのか、いきなりウィザーモンが声を上げた――。

 

「アイツ等もう出てったぞ」

「……」

 

 のだが、残念ながら優希たちは部屋を出てしまっていた。いつの間にか、部屋に残っていたのはウィザーモンとスレイヤードラモンだけになっていたのだ。

 なんというか、間が悪かったとしか言い様がない。優希の諸々を測る計測魔術の結果を見ながら、また明日言えばいいか、とウィザーモンもすぐに気を取り直す。言っておきたいことではあったが、別に今すぐに言わなければならないことでもなかったのだ。

 

「急ぎか?」

「いや、別にそういうことじゃない。初めて手伝いに来てもらった時に、優希の強制進化の力を見せてもらったのだが……」

「だが?」

「あのエネルギー量……いつもどおりだとは言っていたが……成熟期では釣り合わない。奇跡のデジメンタルを完成させた時の無茶で能力が上がったのかもしれないな。もしかしたら、完全体以降に……」

「でも、今のセバスだと筋肉痛じゃすまないぞ?」

「……だろうな。だから注意しておきたかったのだが……」

 

 注意する前に、優希は帰ってしまったのである。

 そして、これ以上研究の邪魔をしても悪いと思ったのだろう。会話が途切れた所でスレイヤードラモンも帰ることにしたのだった。

 




何気に(サブタイトルが)難産でした。
行きたいところまで行けなかった……。予想以上に長くなったので分割した感じです。
あとウィッチモンですが、ちゃんとちょくちょく出るので、安心してください。あれです。素直になれずに、何回も様子見する感じで。

さて次回も優希がメインの話です。
次回はついにあのキャラが登場……!いや、ゲスト系の新キャラなんですけどね。

それでは次回もよろしくお願いします。
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