【完結】デジタルモンスターA&A~紡がれる物語~   作:行方不明

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第三十四話~アーマー体VSハイブリッド体!~

「っく!」

「どうしたんですか?調子でも悪いんですかねぇ?」

 

 謎の男二人組のうちの一人がメルキューレモンへと進化して、戦闘が始まってからはや数分。現在の大成たちの状況はお世辞にもいいとは言えなかった。

 まあ、状況が悪いのは毎度のことだ。大成もそこら辺のことを苦々しく思うことこそあれ、それで取り乱すことなどない。が、さすがにメルキューレモンの狙ったかのような皮肉には、イラっときていた。

 現在、ワームモンはトゲモグモンへとアーマー進化して、ウィザーモンの研究室の外の大廊下にてメルキューレモンと戦っていた。まあ、今は研究室の外で戦っているとはいえ、初めからそうだったというわけではなかった。初めは研究室で戦っていたし、その余波で研究室は荒れに荒れている。きっと、後でウィザーモンは片付けに苦労することだろう。

 

「それとも……このハイブリッド体のメルキューレモンには敵いませんか?」

「ハイブリッド体……?」

「そう!古のスピリットを使って進化する……成長段階に含まれないデジモンのことですよぉ!」

 

 スピリット、とは進化前に男が取り出した謎の物体のことだろう。

 スピリットエボリューション。すべて男からの情報だが、道具を使っての進化、成長段階には含まれない――など大成たちが使っているアーマー進化と似通った進化だ。

 だが、成長段階が特殊であるというのは厄介だった。相手の強さが単純にはわからないからだ。まあ、相手の強さがわかろうと、わかるまいと、戦わなければいけないのだが。

 

「触った瞬間から凍りついていくそのトゲは厄介ですが……動きが鈍い。全くもってスマートじゃありませんねぇ。見た目通りに」

「……!」

「イモ!」

 

 現在、メルキューレモンは、当初の目的である時間稼ぎに重点を置いて戦っている。それゆえに、無理にトゲモグモンを攻撃する必要はなかった。

 触れた傍から凍りついていくトゲモグモンの超低温のトゲには、さすがに驚いたような素振りを見せたが、それだけだった。動きが鈍く、簡単に攻撃を避けられるトゲモグモン相手に時間稼ぎをすることなど、メルキューレモンにとっては造作もないことだったのである。

 短い足を必死に動かし、メルキューレモンに追いすがるトゲモグモン。その戦況を見ながら、大成は必死にメルキューレモン“を”見ていた。

 それは、大成がつい最近に学んだことだ。勇や好季が行っていた、戦況を客観的に見ることでパートナーを助けるということ。無力な人間がその場でできること。

 つまり、そういう彼らから学んだことを、大成は実践しようとしているのである。

 もちろん、未だ慣れない大成では勇や好季ほどうまくできはしない。見たところで、どうすればいいかわからず、頭がパンクするのがオチだ。だからこそ、彼は取捨選択をした。トゲモグモンを含めた戦闘をまるごと見るのではなく、メルキューレモンだけをまず見る。

 ようするに、メルキューレモンの隙や弱点だけに重点を置いて見ることにしたのである。

 そうした理由は幾つかあるが、最大の理由はメルキューレモンが大成の知らないデジモンであることが挙げられるだろう。情報がないということは、それだけで脅威だ。だからこそ、大成はメルキューレモンを観察して、少しでも情報収集を行っているのである。

 

「……?」

 

 そうしてメルキューレモンを観察して、大成は気づいたことがあった。それは、メルキューレモンが奇妙であるということだ。

 人間がデジモンに進化する。そのインパクトに誤魔化されていたが、メルキューレモンはパッと見では強そうではない。もちろん、大成の比較対象は零がなるキメラモン、さらには究極体のムゲンドラモンやスレイヤードラモン辺りである。

 比較対象がおかしいと言えばそれまでだが、大成には彼らのようなわかりやすい強さをメルキューレモンは持っていないように思えたのだ。

 メルキューレモンの両手に装備された、大きな鏡でできた盾が、大成のその考えを後押しする。いくらなんでも、両手盾装備で、武器を持たない戦士などいないだろう。さらに、大成のゲームで培った知識が、鏡という物に警鐘を鳴らしていた。

 考えられるのは二つ。メルキューレモンが単純に防御用のデジモンで直接的戦闘力があまり無い。これはまだいい。だが、不味いのはもう一つの方だ。

 そして――。

 

「っくぅ……!ならぁ!」

「イモ待てっ!」

 

 大成の嫌な予感は的中することとなった。メルキューレモンが、大成の考える不味いタイプのデジモンだったのである。

 状況を打開したかったのだろう。トゲモグモンは背中のトゲを一斉に発射。“ヘイルマシンガン”と呼ばれるトゲモグモンの必殺技にて最大火力の攻撃。トゲモグモンはメルキューレモンと戦いながら、この前のグレイモンみたいに全弾叩き落とされる、などということがないだろうと踏んでそれを放った。

 そして、トゲモグモンの読み通り、メルキューレモンはヘイルマシンガンを全弾叩き落とすことこそなかった。メルキューレモンのとった行動はその腕の盾を構えただけ。

 決まった。トゲモグモンがそう思った瞬間に――。

 

「ふんっ!」

「っ!えっ!」

 

 鏡の盾に当たった分だけ、ヘイルマシンガンがトゲモグモンの下に跳ね返ってきたのだ。

 トゲモグモンは鈍足なデジモンだ。跳ね返ってきた攻撃を避けるなどということはできず、またそれらすべてを迎撃することができるような技量もなかった。つまり、自身に跳ね返ってきた攻撃を、トゲモグモンに防ぐ術はない。

 そして一瞬後、自分が放った必殺技でダメージを負って退化しながら、ヘイルマシンガンの凍るという追加効果を受け、氷像になってしまったワームモンがそこにあった。

 

「イモ!」

「無用心ですねぇ。私のこのイロニーの盾はすべての攻撃を跳ね返し、相殺する……まさに絶対防御の盾!つまりぃ……私は何もせずして勝つことができるのですよぉ!」

 

 凍りついたワームモンの下へと向かいながら、大成は最も当たって欲しくない考えが当たってしまったこと、そしてこうなる前に忠告できなかった自分に歯噛みする。

 鏡、といえば目の前のものを映すというその不思議とも言える特性上、古今東西あらゆる神話伝承に登場してきた。メデューサ退治に始まり、最近でも七不思議の合わせ鏡など、挙げればキリがない。だからだろう。ゲームでもよく登場する。

 ゲームに登場する鏡の敵といえば、大抵は強大なスペックを持つのではなく、強力な特殊能力を持つものが多い。敵の能力を写し取ったり、敵の能力を反射させたり――メルキューレモンもその例に漏れない、姿から能力が想像しやすいわかりやすい敵だったというのに。

 だというのに、大成は気づくのが遅れ、ワームモンは自分の攻撃でやられるという間抜けなことになってしまった。

 

「……」

「フフフ……あまりの凄さに声も上げられないようですねぇ」

 

 だが、まだ負けた訳じゃない、と。

 大成は心の中で自分を叱咤する。ダメージを負ったワームモンには辛いだろうが、誘拐されていったウィザーモンのこともあって、ここで負けるわけにはいかないのだ。まあ、ウィザーモンのことについては大成の頭から半分以上すっぽ抜けていたりするのだが。

 この状況で大成の心を占めるのは、人から見れば取るに足らないと言える彼自身の意地のようなもの――つまり、汚名返上、名誉挽回という訳だ。

 反省は後で、いつでも、いくらでも、できるだろう。だが、名誉挽回はそういう訳には行かない。そもそも、名誉挽回のチャンスなど訪れなことだって多い。だからこそ、できる時にするのだ。名誉挽回は今。いつかではない。今するのだ。

 未だ自慢げに語るメルキューレモンを尻目に、ワームモンの氷像に大成は“勇気のデジメンタル”を当てる。

 

「……イモ」

「……」

「無駄ですよ。自分自身の全力攻撃を受けて無事で済むはずが――」

 

 ここで大成が勇気のデジメンタルを選択したのは、以前それを使ってアーマー進化した時のワームモンが炎を使っていたからだ。

 つまり、氷像となったワームモンをなんとか出来るかもしれないという安直な思いで選択したのである。もちろん、大成の持つそれは勇気のデジメンタルであって、炎のデジメンタルではない。氷を溶かす能力などあるはずもない。

 だが、まだ先を望む大成の声はしっかりとワームモンに届いていた。

 

「いい加減にしろよ。イモ!」

「ぅ……あー……マーしん……化……!」

「何ですって!?」

「あぁああああああ!アーマー進化ァ――!」

 

 それは、気力を振り絞ったアーマー進化だった。

 ちなみに、氷像となりながらもアーマー進化できたのは、ワームモンが氷に閉ざされているような氷漬けになっていたのではなく、体だけが凍りついた氷像になっていたからだ。もちろん、その状態でも意識を取り戻さなければならないという、ある意味での気力はいるのだが。

 炎が上がる。直後に現れたのは、まるで虫人間とでも言うべきデジモンだった。シェイドラモンと呼ばれる、格闘戦に特化したアーマー体の炎を纏うデジモン。

 

「っく!」

「イモ!盾を避けるように接近戦で攻撃しろ!」

「うん!」

 

 まさか戦闘が続行されるとは思っていなかったのだろう。メルキューレモンが初めて動揺を見せた。

 一方で、シェイドラモンは先ほどの失敗を踏まえて、接近戦を心がけている。あのイロニーの盾を避けてメルキューレモンに攻撃を当てる、などという超絶技量をシェイドラモンは持っていない。あのイロニーの盾がある限り、遠距離戦は部が悪い。だからこそ、あえて接近戦一本に絞ったのだ。

 もっとも、シェイドラモンはたいして遠距離攻撃を持っていないのだが。

 

「しつこいですねぇ!」

「ま、まだまだぁ……!」

「……!」

 

 一度やられたからだろう。今、シェイドラモンのイロニーの盾に対する警戒心は最上級だった。また攻撃を反射されてはかなわない、と無理に攻撃をしていない。

 まあ、無理に攻撃しないとはいえ、体力的にも長期戦になって不利なのはシェイドラモンの方だ。だからこそ、シェイドラモンは大成の言った通りに、盾を避けるような攻撃を繰り出している。

 そもそも、メルキューレモンの持つイロニーの盾は、その全てが鏡という訳ではない。盾の縁の部分(・・・・)は鏡ではないのだ。だからこそ、その縁の部分を積極的に狙う。

 

「盾を……!」

「も、もう食らわないぃ!」

「っく……ですがねぇ!こちらとて、負ける気はないんですよねぇ!」

「……!」

 

 先ほどまでとはうって変わってシェイドラモンに戦況が傾き始めていた。それは、メルキューレモンが弱くなったように感じるほどだ。そして、そのことを薄々と感づいている大成は、同時にその不自然さに首を傾げていた。

 まあ、そのことについて大成がわからないのも無理はなかった。メルキューレモンの事情を大成は知らないのだから。

 つまり、零と同じなのだ。元が人間なために、メルキューレモンは戦闘経験が少なく、それ故に戦闘技能が拙いのである。

 まあ、その特殊な能力があるから、初見相手や格下相手には高い勝率を誇ると言えるだろう。だが、その特殊な能力を超える強さを持つ者やネタが割れてしまった相手に対しては途端に脆くなるし、元が人間なためにそれを補うような技量もない。完全な能力頼りの初見殺しタイプである。

 だが、そんな状態なのに、自分の能力について自慢げに語ったメルキューレモンは、阿呆と言うしかない。

 

「こ、この距離なら、力は使えない!」

「っ!しまっ――!」

「ゼロ距離!」

 

 盾の縁を蹴り上げるようにして、メルキューレモンの胴をがら空きにしたシェイドラモン。そのままその両手をメルキューレモンの胴にゆっくりと当てて――直後、その両手から炎が放たれた。

 “フレアバスター”。両腕から炎を放つシェイドラモンの必殺技。盾を蹴り上げられて、しかもゼロ距離でくらったその炎を避ける超絶技量は、当然ながらメルキューレモンにはなかった。

 

「がぁあああああ!」

「……ふぅ」

「よっし!よくやったイモ!」

「う、うん……えへへ……褒められた」

 

 炎に襲われたメルキューレモンは、既に人間に戻っている。しかも、人間の状態でも見るからにボロボロの傷だらけ状態だ。

 敵がそんな状態になっただろう。大成たちは、勝ちを確信した。

 シェイドラモンから戻ったワームモンも初めての大成から褒められたことで嬉しそうに照れているし、その大成も若干テンションが上がっていた。

 まあ、大成たちの初めての単独での勝利だ。嬉しくないはずがないし、嬉しくなる気持ちもわかるだろう。だから、ここで気を抜いたことも、ある意味仕方ないことなのだ。まあ、敗北が死に直結するかもしれないこの場で気を抜くなど、仕方ないで済ませられることではないが。

 

「あぁああああああ!」

「えっ!」

「なっ!」

「よくも!よくもよくもよくもぉおおおお!スピリットエボリューション!」

「コイツ、また――!」

 

 絶叫と共に立ち上がった男は懐から取り出すのは、先ほどとは違う物体。緑の球体が幾つも付いたようなその物体を掴んで、激昂した男は叫ぶ。そして――男は再び進化する。

 男が進化したそのデジモン。それは、巨大なデジモンだった。そのあまりの巨大さゆえに、建物に入りきることができていない。つまり――建物を崩しながら存在しているのだ。

 崩壊する建物。降ってくる瓦礫。

 それを前にして大成とワームモンは急いで建物の外へと飛び出した。デジメンタルをほとんど置いてきてしまったが、もはや贅沢を言っている暇はなかった。もう少し遅れていれば、大成たちが生き埋めになる所だったのだ。

 そして、外に出た大成たちは、ようやくそのデジモンの全容を確認することができた。複数の目の付いた緑色の八つの球体。どこかで見たような模様のついた緑色の球体。そして、口と模様のある緑色の球体。計十個の球体で構成された不気味なデジモン。

 それが、そのデジモンこそが、セフィロトモンと呼ばれるハイブリッド体のデジモンだった。

 

「気持ち悪……」

「た、大成さん!そ、そんなこと言っている場合じゃありませんよぅ!」

 

 あまりの不気味さに思わずそう呟いた大成だったが、ワームモンの言う通りそんなことを言っている場合ではない。大成たちは、セフィロトモンにロックオンされているのだ。

 すぐさま、セフィロトモンの攻撃が始まる。一つの球体の目が妖しく光ったかと思えば、直後に炎が放たれる。

 それを避けるようにして大成たちは近くの建物に身を潜めた。まあ、場所がバレているのだ。隠れ続けられる訳はないし、セフィロトモンなら大成たちが隠れた建物だって簡単に破壊できるだろう。だからこそ、大成たちはその建物の窓から別の建物へ、さらにその建物から――と別の建物に移り続けて身を隠し続ける。その間に打開策を考えるつもりなのだ。

 そしてそんな中で、いつも通り窮地に追い込まれていることを実感した大成は、崩壊寸前に咄嗟に掴んで持ってきた複数のデジメンタルを確認する。残念ながら、使い慣れた友情のデジメンタルと奇跡のデジメンタル以外で最も戦闘能力が高い勇気のデジメンタルは置いてきてしまった。

 そのことに舌打ちしながらも――少し考えて、すぐに持ってきたデジメンタルがこの二つで良かったと思い直す。

 走りながら幾つかの作戦を考えるそんな大成の手には、妙な形の黄色のデジメンタルと比較的卵に近い形をした白いデジメンタルがあった――。

 




というわけで、第三十四話。
アーマー体とハイブリッド体。どちらも古代に縁のある者同士の戦いでした。

次回はついにワームモンが?という回です。

では、次回もまたよろしくお願いします。
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